2019/08/18

爪、鼻筋、頭髪色、舌の表現

  さまざまな人体パーツの描き方についての雑文。


  【 爪を描くかどうか 】(2018/09/22)

  フィギュアや人型プラモで、手の爪を塗り分けていると、(私にとって)魅力が増す。ただし、塗装しにくいからコストが嵩むだろうし、小スケールの立体物だと下手に塗るとそこだけが悪目立ちしてしまう可能性がある。人体そのものであれば、爪の面積が大きいのでさまざまな色で塗っても鑑賞に堪えるし、肌の色とほとんど同じでも爪は爪として識別できる。しかし、小スケールの模型だと、爪を塗り分けると指先の点になってしまうのでかなり目立つし、目立たないような色にすると今度は塗り分けた意味が無くなる。
  人型プラモを自分で塗装する場合は、手の甲と指先を筆で塗り分けるだけでも大変なので、ネイル塗装は手を拱いている。指先に半ツヤを乗せるくらいでもいいかなと思う。

  オタク系諸分野でも、爪を描き分けたり塗り分けたりしているイラストレーターは多くない。ざっと3割くらいだろうか。例えば鳴瀬ひろふみやGo-1は爪表現をしているが、このくらいの描き方&塗り方であれば、爪のリアリティを確保しつつ、審美的にも収まりの良い感じになっていると思う。アダルトゲームでも少なめだが、CARNELIAN、M&M、さえき北都など、きれいな爪を描いている原画家は多数存在する。後述の『はにかみクローバー』なども、かなりしっかりと爪を描いていた。さすがに、凝ったネイルアートをしているキャラはなかなか思い浮かばないが、そういうタイトルもどこかにあるだろう。

『美少女万華鏡』
(c)2011 ωstar
アダルトゲームやオタク系イラストでは、爪は「境界線を薄く描く」「肌とほぼ同じ色」「ハイライトを少し入れる」のが主流。本作の原画家は八宝備仁
『姉汁』
(c)2005 アトリエかぐや
原画家chocochipは、若年女性キャラクターのほっそりとした繊細な指先を描いているが、爪に関しては肌との境界線をわずかになぞる程度であり、着彩も肌と爪を区別していない。

  爪表現の適切な実例を持ってくるのに、ちょっと苦労した。アダルトゲームでは、(女性キャラの)爪が大写しになる一枚絵というと、ほら、ああいう場面ばかりになっちゃうから……。





 【 鼻筋表現 】(2019/04/07)

  3Dモデリングされた萌えキャラの鼻筋表現が興味深い。立体表現なのに、2Dオタクイラストの流儀に合わせるような見え方にコントロールしている。つまり、正面から見ると、鼻筋はわずかな点にしか見えないが、横顔を映すとちゃんと鼻筋の突起を形成している。輪郭線の付け方や影の入れ方をチューニングして、どの角度から見ても可愛らしく見えるようにしているのだろう。

  本当の(リアルの)立体物であるフィギュアにおいても、似たようなことが追求されている。つまり、オタク系の(女性キャラの)フィギュアでは、顔の中央を摘まんで引っ張り出したかのような鋭く小さな円錐状の突起になっている。つまり、眉間に連なる鼻梁は形成されていないが、横から見れば明確に「鼻」として認識可能なシルエットになっている。

  とはいえ、正直に言えば、どれもこれも似たり寄ったりで面白くない。ティーンズ女性をモティーフとしているオタクキャラは、イラストでも立体物でも、あるいはどのクリエイターの作品でも、あるいはどのキャラクターでも、あまりにも画一的で、違いや個性を見出すのが難しい。理屈としては、現在のような形状に収斂してきたのは理解できるのだが……。つまり:
  1) 鼻が低く小さく造形されて、存在感をあまり主張しないのは、いかにも東アジア人ふうの顔貌であり、また、萌えキャラふうの幼児的な可愛らしさにも合っている。
  2) 鼻の下のへこみは、抉れ込まず、まっすぐ上唇へつながる(※おおまかに言えば、鷲鼻ではなく団子鼻寄り)。これも、低年齢寄り(≒非攻撃的)な印象を与える。また、これによって、鼻の影が出なくなっている。つまり、顔面に暗い部分が作られず、全体が明るく見える。
  3) 鼻がこのようにデフォルメされることにより、鼻の穴は完全に省略、あるいは消滅している。イラストにおいても立体物においても、鼻の穴を極力意識させないように作られている。そもそも鼻(の穴)は、美しい造形だとは見做されていないので、鼻の穴を消去するように洗練されてきたのは理に適っている。

  とはいえ……美しい鼻表現を新たに作り出してくれたらなあ、と思うことはある。

00年代初頭発売のコトブキヤ「1/8 セリオ」。鼻の下部は、顎下までまっすぐ単純な直線を成している。鼻全体は、顔の中央にほっそりした突起が出ているような形状である。これが00年代以前から10年代末の現在まで支配的な美少女フィギュアの鼻造形である。
BANDAI SPIRITS「人造人間18号」。2019年のプライズフィギュア。鳥山明デザインに基づくキャラクターで、鼻の下部が凹んでいる。言い換えれば、曲がりなりにも鼻柱が表現されている。現代日本の美少女フィギュアとしては珍しい(※他には『ONE PIECE』フィギュアなども)。

  同様に、口元も存在感を消す方向にデフォルメされている。閉じた口は、しばしばわずかな点か、あるいは薄い色でさっと描かれた短い曲線にまで切り詰められる。時折大きくパカッと開かれることはあるものの、基本的には、なんとか人間の顔と認識できるぎりぎりの限界にまで削り込まれている。唇もしばしば省略され、唇それ自体の厚み(立体感)も無く、それどころか唇の色も乗せられないことが多い。

  このような表現は、オタクたちの認識の精度に多くを負って成立していると言えるかもしれない。ほんのわずかな口元の変化や、あるいはドット単位の――古い言い方だなあ――眉毛の変化をも見逃さず、画像の差分変化から感情表現の変化を正確に読み取る。そういう文化だからこそ、思い切って簡素にデフォルメした造形を堂々と使えるのかもしれない。

『君が望む永遠』
(c)2001 age
00年代初頭のCGは顔に陰影表現を施すことが多く、鼻筋の影も明確に塗り分けられていた。鼻それ自体も「ゝ」字状の尖った輪郭線がはっきり描かれ、鼻の存在感は比較的大きかった。
『ケモノ娘の育て方』
(c)2018 SWEET&TEA
10年代末のCGでは、顔面の陰影は避けられており、鼻筋もわずかに引っ掻いたような控えめな線が置かれているのみである。ここでは鼻梁表現はほとんど消滅している。


  【鼻の穴を描くか】(2019/06/12)

  山下しゅんやは、わずかながら鼻の穴を描いている(※角度によって描いたり描かなかったりしている。だいたい半々程度)。ほんの小さな黒点での表現だが、鼻の下の窪みを表現している。それと併せて、鼻先が丸っこくツンと上向いているのも可愛らしい。
  唇の厚みをしっかり表現しているのも特徴的だ。唇の厚みをちゃんと描いているし、その部分は色も変えている。ただし、口の幅が狭く引き締まっていたり口の端が軽くキュッとつり上がっていたりするおかげで、重たい印象を免れてチャーミングな表情を維持させている。
  目元に関しても、上下の睫毛をはっきり描き込んでいる。瞳孔も写実的に真ん丸。
  顔立ちひとつ取って見ても、こういった一連のスタイルが、いわゆる「バタ臭い」絵柄のような第一印象を与え、しかしその一方で色彩感はポップだし、キャラクターの表情づけやポージングはジャパニーズオタク文化にも受け入れられるような親密感を伴っている。

  着彩に関しては、戦車や小物に関してはアナログ感のあるパステル寄りの色調をきれいに使っているし、その一方で、人物の肌などは太い輪郭線の中を明るい原色でフラットに塗っている、つまりアニメ塗りめいている。さらに、頭髪の彩色は、デジタル感の強いきれいなグラデーションで色を載せている……かと思いきや、作品によってはかなり繊細に塗り分けているところもあって、一筋縄ではいかない。要するに、ウェットなアナログ塗り、カラフルなアニメ塗り、メカニカルなデジタル塗りの要素が一つの絵の中に混在しているという、不思議な画風だ。

  [ twitter.com/ShunyaYamashita/status/1120649567094091779 ]
  上記のような特徴が見て取れる見本として、例えばこのあたりを挙げておこう。





  【 キャラクター頭髪色の流行(※とりわけ銀髪キャラについて) 】(2019/05/10)

  フィクション上の、要するにダークエルフ系の褐色肌キャラクターは、銀髪にデザインされることが多いが、この組み合わせは個人的にはあんまり好きではない。いや、現実にはアフリカ系の老人はしばしばそういう外見になるけれど、そういう話ではなくて。
  デザイン上の理屈は分からないではない。例えば、黒髪にすると全体のカラーリングが沈みすぎるし、逆に赤髪や青髪にすると浮いてしまう。茶髪だと、全体がモノトーンになってしまい、色彩的な面白味が乏しい。銀髪ならば、素肌部分ともども、つややかな魅力を発揮できる。そういった考慮から銀髪が選ばれやすいのかなと想像している。しかし、残念ながら私は、そもそも銀髪があまり好きではない。褐色肌=日焼け=アウトドア=元気=野性的という連想から、黒髪の方が受け入れやすい。

  銀髪キャラにも愛着のあるキャラクターは何人かいるけれど、たいていの場合、キャストによる底上げとか声優ブーストとかヴォイス補正とかが掛かっている。いろいろ考えてみても、外見上の銀髪にはとりたてて興味は無い。べつに苦手とか嫌いというわけでもないから、普段はまったく気にしていないのだけど。

  オタク界隈では10年代に入ってから銀髪が完全に定着した。90年代風の原色カラフルな赤髪や青髪がオールドファッションなものとして駆逐される一方で、無難な茶髪や、オーソドックスな金髪、柔らかなパステルピンク、シックな濃紫といったカラーリングが勢力を伸ばしている。それらと並んで、ホワイト基調でデリケートな着彩を施す銀髪(白髪)も、キャラデザのごく普通の選択肢の一つとして用いられるようになった。しかるべく統計を取れば、頭髪色の流行の推移ははっきり見出せるだろう。それは部分的には美意識の変化でもあろうし、キャラクターを登場させる状況設定(例えばファンタジーものが流行するなど)も関係するが、それとともに、CGの制作環境と表示環境の発展も影響していると思われる。

ALTER「サーニャ&エイラ(水着Ver.)」。どちらも一応、銀髪に分類してよいかと思う。


  今月(2019年5月)発売のPCゲームで、頭髪色をカウントしてみた。
  データはgetchu.com準拠。シリーズもの、再発売版(廉価版)、3Dカスタム作品は除外して、17タイトルを対象とした。女性キャラクターのみ。ヒロインとサブキャラは区別せず。色の判定は厳密なものではない。

頭髪色全体フルプライスロープライス
1165
グレー110
白、銀11101
1192
ベージュ431
オレンジ550
ブラウン1174
110
ピンク、ローズ11110
紫、紺651
水色550
薄緑220
796514

  ほんの一ヶ月分の新作なのでデータに偏りがあると思われるが、おおむね実感に即した分布になっている。
  オーソドックスな黒髪と金髪は依然として優勢。
  暖色系も非常に多い。現実的な茶髪がかなり多いが、茶髪の延長だとは認識できないようなオレンジ色やベージュ髪のキャラもいる。ただし、原色寄りの赤髪がほぼ絶滅しているのが興味深い。全体として、ビビッドカラーの頭髪は少ない。元気系の赤髪キャラは、柔らかなパステル系のピンクやローズに取って代わられていると考えてよいだろう。
  紫~水色のグループもまだまだ有力。ただし、全体としては寒色系は少数派。特に青髪がほぼ絶滅しているのが興味深い。00年代以前は、爽やかなブルーの頭髪がわりと多かったのだが、近年では上品な濃紺か、あるいは透明感のあるライトブルー(水色)のどちらかに分かれている。また、濃い葡萄色の頭髪も、00年代以前には年上キャラクターなどに用いられてゴージャスな雰囲気を表出していたのだが、これも近年でかなり減っているように感じる。
  銀髪もかなり多い。実際には、透明感のあるホワイトもあれば、ごく薄く青系の色を混ぜたものもある。いずれにせよ、00年代末頃までは銀髪や白髪のヒロインはかなり稀だったので、10年代に入ってから増加したという認識でよいと思う。
  ロープライスは、黒髪や茶髪といった現実的な頭髪色が支配的だが、これはシチュエーション設定のためもあるだろう。つまり、本格的なファンタジー世界ではなく、寝取られもののようなリアリスティックな状況を扱うことが多いからだ。また、ヒロイン人数が1~3人と少ないため、奇抜な頭髪色をあえて採用する必要が無い、あるいは奇抜な頭髪色をメインに据えるリスクが大きい。

  トップが11キャラずつで、同率で5つも並んだのは、ただの偶然。


  同じ調査を、十年前(2009年5月)発売タイトルで行うと、以下のようになった。

頭髪色全体フルプライスロープライス
19163
グレー541
白、銀880
19154
ベージュ14122
オレンジ871
ブラウン23194
752
ピンク、ローズ27234
紫、紺27189
水色12111
薄緑220
17113931


   2019年と2009年で比較すると、以下のようになる。総数が異なるので、比率で表した。

頭髪色2009年(%)2019年(%)増減
11.113.92.8
グレー2.91.3-1.6
白、銀4.713.99.2
11.113.92.8
ベージュ8.25.1-3.1
オレンジ4.76.31.6
ブラウン13.513.90.4
4.11.3-2.8
ピンク、ローズ15.813.9-1.9
紫、紺15.87.6-8.2
水色7.06.3-0.7
薄緑1.22.51.3
100%100%

  予想どおり、白髪&銀髪キャラクターが激増しており、オタク界隈全般の銀髪流行と対応しているのが見て取れる。クラシカルな黒髪と金髪も微増している。その一方、紫髪キャラが激減しており、暖色系の赤髪、ピンク髪、ベージュ(薄茶色)も減っている。


  昔の銀髪(白髪)キャラ。例えば、90年代alicesoftの大作『鬼畜王ランス』(1996)には、女性の銀髪キャラは「ラ・ハウゼル」の一人だけ(※艶のあるグレーなので銀髪に含めてよいと思う)。ただし、老人キャラや一部男性キャラ(例:エクス)には白髪が数人いる。『Piaキャロ』シリーズも、少なくとも第3作(2001)までは、銀髪はいなかったと思う。
  『銀色』(2000)のグレー髪はわりと先駆的だったかも。また、studio e.go!の山本和枝氏も、細やかな頭髪ライン表現を武器として、色の薄い頭髪色でも見応えのあるキャラクターを描いていた。さらに、『ONE2』(2001)や『サフィズムの舷窓』(2001)、『水月』(2002)、『ブラウン通り三番目』(2003)の頃になると、銀髪、白髪、薄紫髪のヒロインがたまに登場するようになった。『こころナビ』(2003)のフィンランド人キャラも銀髪(アッシュブロンド?)だった。このあたりまでは、グレーで銀髪を表現するのが通例だった(※輝くようなホワイトで銀髪を着彩するのは、00年代末以降)。氷川雫が初登場した『クロス』は2004年。
  00年代前半のうちはまだ鮮やかな赤髪が多用されていた。CO2A風のブリリアントなツヤ表現が高く評価されていた時期でもある。00年代半ばになると、CG技術の進展とPC環境の向上のおかげもあって、どぎつくないパステル系の色使いと、派手すぎない繊細なツヤ表現が優勢になっていく。頭髪色のカラーリングも、情熱的な赤髪を除いて、基本的に濃すぎる原色は使われなくなった。そして00年代後半~00年代末あたりから、銀髪が次第に増えてきたと思う。

  ソフトハウスキャラでは、上記『ブラウン通り』(2003)に白髪、『巣作り』(2004)に銀髪、『Dancing Crazies』(2005)に白髪(※魔族)、『Wizard's Climber』(2008)にベージュ、『忍流』(2009)に白髪姉妹、『BB』シリーズには白髪(※魔族)、『アウトベジタブルズ』(2014)には薄いグレーとベージュの二人、『悪魔娘』(2015)には白髪、『勇者砲』にも白髪(※魔術師)、『プラネットドラゴン』(2016)には白髪と薄紫、『呪いの魔剣』(2017)には白髪(※メインヒロイン)、『領地貴族』(2017)にも白髪姉妹、『その大樹』(2018)には薄紫キャラがいる。登場人物の多いSLG作品なので多様な頭髪色が現れやすいという要因はあるが、10年代に入って白髪キャラの頻度が高まっていると言えそうだ。


  それにしても、鮮やかな赤髪が減っているというのは、かなり驚いた。ほんの一ヶ月の発売タイトルを見ただけだから、たまたま少なかっただけという可能性もあるが、ここ数ヶ月を遡っても確かに少ないと思う。4月発売タイトルだと、赤髪ヒロインがいるのはシルプラの『缶詰少女』(やや薄めのレッド)の1本だけ。3月発売だとPULLTOPの『さくらいろ』(オレンジ寄りのレッド)だけ。2月発売ではういんどみるの『はぴねす!2』と、fengの『夢と色』(ピンク寄り)。いずれもキャリアの長い白箱系ブランドというのが興味深い。むしろ黒箱系分野に古典的な赤髪が残っていそうな印象だったが、案外そうでもないようだ。
  赤系統の場合でも、燃えるようなクリムゾン■■■やカーマイン■■■ではなく、紫に寄せたバイオレットレッド■■■だったり、パステル調の柔らかいトマトレッド■■■だったりする。
  似たような例で、一昔前までは、特にミステリアスな年上キャラの頭髪が深いガーネット色■■■やラズベリーレッド■■■になっていることが多かったが、最近はこの種の頭髪色は滅多に見かけない。まあ、たしかにオールドファッションな印象はあるが、あれはあれでやっぱり良いものだったし。上で言及した『アリスマチック』もまさに、メインヒロインが濃い赤髪で、ミステリアスな年上キャラが濃いワインレッドで、いかにも00年代真っ盛りなセンスだ。





  【 舌の表現 】(2019/08/18)

  kakao氏の絵は、「舌」が非常に官能的に描かれている。
  [ www.getchu.com/brandnew/906401/c906401table1.jpg ](※18禁画像注意。以下同様)
  [ pbs.twimg.com/media/DwOtLf1UUAALF2x.jpg ]
  [ pbs.twimg.com/media/Dme1nViU8AAxob4.jpg ]
  [ pbs.twimg.com/media/Dcv0lSwVQAAwM49.jpg ]
  たいていの場合、開いた口の中はあっさりと塗られているものだが、氏の場合はかなり細やかに描かれている。1)血色の良い色合いに塗られているのはもちろんとして、2)グラデーション塗りによってふっくらした立体感が表現されているし、3)ハイライトのツヤ(白い部分)も乗せられていて、文字通り艶めきがある。たとえば上の画像の4枚目を拡大して見ると、舌の中央の線まできちんと表現されているのが見て取れるだろう。つまり、kakao氏の絵は舌がえろい。
  アダルトゲーム原画業だと、着彩はその都度のメーカースタッフに委ねられるのが通例なので、必ずしもそれが再現されているわけではない。例えば『キミに迫るオトメのレッスン』や『ゆらめく心に~』では、残念ながらフラットな単色塗りになっているようだが、『はにかみクローバー』では、日常シーンの立ち絵からして、キャラが口を開くたびにたいへん色っぽい粘膜的なものが画面に現れ、それに釣られてスクリーンショットをバンバン撮ったものだった。氏の一冊目の単行本では、モノクロページでも上記のような特徴――「舌の立体的造形」「舌中央の凹凸の描き込み」「ハイライトのホワイト」など――が確認できる(※2014年の秋頃から導入されたようだ)。
  繰り返すが、kakao氏の絵は舌がたいへんえろい。

  アダルトゲームでも、舌のハイライトまで表現している例はかなり少ないと思う。例えば、『はにかみ~』を制作したすたじお緑茶の次作(姫原画は別の方)でも、
  [ www.getchu.com/brandnew/916835/c916835sample5.jpg ]
こんな感じで、「あっさりした舌造形、シンプルな塗り、かすかなハイライト」というのが通例だ。ネットのカラーイラストなどでも、唾液表現として口の端のねばつきを描いているものはあれど、舌のディテールを明確に意識しているものはかなり少ないと思われる。
  ただし、(商業/同人)18禁漫画の性描写では、舌を入念に描き込むアプローチはそれなりに普及しているようだ。突き出した舌をセンシュアルに描いたり、キスシーンで舌同士を絡め合う描写を生々しく描いたりするものは見かけるし、口内の舌にハイライトを乗せる流儀も目にすることがある。それでも、口内にある普通の舌にまで意識を配るのは、まだまだフェティッシュなアプローチだろう。つくづく、kakao氏の絵は舌がとってもえろい。

『はにかみクローバー』
(c)2016 すたじお緑茶
口内のディテールが興味深い。写実的には少々おかしな見え方だが、目指されている効果はよく分かる。なお、手の爪をはっきり描いているのも面白い。
通常シーンの立ち絵でも、舌が描き込まれている。本作の原画担当はkakao氏(佐伯/周防)とあなぽん氏(柊/碓氷)の二人だが、グラフィックの整合性を取るためか、あなぽんキャラの舌も同水準で描かれている。