2025/07/04

アニメ雑話(2025年7月)

 2025年6月の新作アニメ感想。
 『転生したら第七王子』『nine』『鬼人幻燈抄(2期)』はほぼ確定。その他、『クレバテス』『雨と君と』『陰陽廻天』『ホテル・インヒューマンズ』『傷だらけ聖女』あたりを視聴していくかも。

●『陰陽廻天 Re:バース』(オリジナルアニメ)
 第1話。ヴァーチャル平安京っぽい世界での死に戻りストーリーになるようだ。出来は無難だが、カットイン多用などユニークな試みも見て取れる。「擬似平安+陰陽バトル+死に戻り+バンカラ主人公+ロマンス」は、どうにも散漫に見えるのだが、上手くまとめられるのだろうか。

 第2話は、ループしてからの状況が見えてきた歴史のあるガジェットなので、ドラマとしての見せ方も洗練されている。サイケカラーな平安京というのも新鮮味があるし、音声芝居も賑やかでよろしい。
 ただし、バトルシーンはエフェクト過剰でちょっと見づらい。作画そのものは頑張っているし、和風ロボットというのもオリジナリティがあるのだが。



●『鬼人幻燈抄』(2期)
 初週はYT上での総集編。2週目も、総集編的なコンテンツ。

 通算第14話は、仕切り直しのためか、葛野時代の回想が中心。ライティング(光源演出)が繊細なのも、バトルシーンが今一つなのも、1期から相変わらずのクオリティ。静かな劇伴も好ましい。そして早見沙織おねえちゃん。
 OP映像は少々散漫に感じたが、ED映像は今回も絵巻物風の横スライド(パンニング)レイアウト。



●『クレバテス』
 第1話は45分の長尺。予想外に良い出来だった。子供が走るアニメーションも朗らかで可愛らしい雰囲気を出しているし、魔獣の巨大感や重量感もしっかり表現されている。そして建物などの背景美術もディテール豊かに描かれているし、さらに触手うねうねも柔軟にアニメーションさせて、破壊の速度感とバトルの緊張感を見事に演出している。
 ただし、後半部は天然ツンデレのようないわゆる「シリアスな笑い」に大きく傾斜しているが、これが吉と出るか凶と出るかはまだ分からない。また、一部キャラクターの音声芝居がやたら浅薄なのも気になった(※王や白馬騎士など。ハイデン王を演じていたのは、本職声優ではなくテレビ俳優だった)。魔獣クレバテスの芝居も、やや落ち着きすきで迫力に欠けたのはもったいない(中村氏)。アリシア役の白石氏は、えっ、前クールの鯨井令子役の方だったのか。気づかなかった……。なるほど確かに、慌てキャラの芝居は同じ雰囲気だった。
 全体として密度の高い映像作品になっているので、今後も視聴していくつもり。

 第2話は、盗賊団のアジトでの出来事。いきなり悠木碧氏(乳母キャラ)が怪演を披露したり、ファイルーズ氏(娼婦代表役)がシーンを引き締めたりしている。ただし、悠木氏は技巧披露を優先して情緒に欠ける憾みがあり、その悪癖が今回も出ている。主演の田村氏と白石氏はどちらも率直な芝居だが、場面に応じた説得力がある。
 映像面は堅実なクオリティで、酒場での動きはなめらかにアニメーションさせているし、アクションシーンも適切に動かしている。輪郭線が、漫画のように強弱のある筆遣いをしているのもユニーク。さらに、前話同様にかなりの流血シーンや暴力シーンもある。



●『転生したら第七王子』(2期)
 第1話:第1期と同じく、映像としては面白くない。コンテは漫画版を無思慮に踏襲しているせいで映像としての流れが悪く、説明のために時間が間延びしているし、カメラワークも乱雑でただの切り貼りに終始している。SDをそのまま流用しているのも良くない。漫画のコマ絵の「再現」しか考えていないとこうなるという悪例。転移魔法の発動のシーンも、もったりしていてヘタクソ。
 ただし、キャラクターの細かな所作のアニメーションを振り付けしているのは評価すべきだろう(特にイーシャ)。グリモが物を吐き出す「う゛え゛え゛え゛」台詞も、相変わらず個性的。
 それにしても、これは間違いなく、おねショタだなあ……。



●『9 nine』
 第1話。80年代以来の伝統芸能じみた学園異能ファンタジー。冒頭の作中作パートはやたら力が入っていたが、本編部分の表現は凡庸で、コンテも劇伴も良いところが見当たらない。しかしそれでも、ついていこう。
 メインヒロインの福圓氏はかなり抑えた芝居で、もったいなく感じる(※ストーリーとともに変化していくと思うが)。妹役の種﨑氏は、相変わらず変幻自在。教師役の武田華氏も、妙に存在感がある。しかし悪友キャラは、演技も平板だしセクハラ台詞連発もきつい。

 第2話。戦闘シーンは撮影エフェクトで誤魔化しすぎだが、まあ仕方ない。ストーリー進行も、葛藤や躊躇が無くてデリカシーに欠けるが、まあ我慢しよう。さらに映像的なリズムも乏しいし(※路上の会話シーンで妙にフラフラ歩き続ける)、シーンごとの情緒も無いし(※劇伴の付け方が鈍感で押しつけがましい)、さらには描写の説明的な意味づけも無いが(※例えば時間経過の表現など)、どうしようもない。しかし音声については、福圓氏のエンジンが掛かってきたし、ぬいぐるみキャラの新井里美氏も妖気に満ちた怪演を披露している。
 河内和泉氏の漫画版と対照すると、第1巻の終わりまで進んだところ。かなりのハイペース。

 第3話。うーん、良いものになってほしいけれど、やはりクオリティは低い。ストーリー面では、アニメ各話の区切りがぎこちないし、映像面でも、コンテが乱雑が不可解なカットつなぎが頻出する。原作ゲーム版から中途半端に台詞を掬い取っているせいで、浮いたシーンが出てきたり、妙に短いシーンが無理矢理挿入されていたりする。
 しかし、福圓氏の誠実な芝居と、種﨑氏の自由闊達な芝居には、やはり聴く価値がある。怪しいぬいぐるみを演じる新井里美氏のねっとりした芝居も強烈な個性を放射している。それに、メインヒロインがふわふわしたロングウェーブ髪で歩いているところは、これはこれで特有の魅力がある(※もうちょっと柔らかく軽みを感じさせるアニメーションであってくれたら……)。

 第4話は、告白シーンを誠実な言葉で綴っていく。そして正統派の急転直下展開。長所と短所はいつも通りで、ADV由来の台詞重視描写は良く出来ているが、映像のつながりが弱い。
 それにしても、いまだに女性からは「○○くん」の敬態口調、そして男性からは「××」と名前呼び捨ての常態口調のギャップをそのままにしているのは、いかに男性向けフィクションとはいえ、そろそろ引っかかりを強く意識してしまう。



●『ホテル・インヒューマンズ』
 第1話。アニメーションはあまり動いていないし、殺陣描写も期待したほどではないし、背景のディテールも甘い。また、モノクロの回想演出や、両目を不必要にキラキラ輝かせるところなど、いささかセンスが古いと感じた。大家アミノテツロー氏ならばたぶん良い映像を作ってくれるだろうと思い込んで期待していたのだが、OPムービーも意味不明だし、空中ジャンプ中に銃弾を避けるし……不満点が目立ちすぎる。
 役者については、主演の小林氏は台詞のニュアンスをきちんと汲み取って演じているが、ヒロインの方はよく分からない。
 劇伴はアコーディオンを強調したスペイン風のリズミカルなもので、まあこれはこれで個性と言える。このサウンドは、「社会の周縁で暮らす人々の生き生きした雰囲気」といったような趣旨のチョイスなのだろうか。理解できなくはないが、ホテルの静かなムードとは懸け離れているので、この音楽がハマるかどうかは演出の見せ方次第かな。
 全体に期待を下回っているが、まだ評価は決めかねるので、3話くらいまで視聴してみる。



●その他(※第1話で断念)。
 オリジナル『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』:3Dショートアニメ。短すぎてなんとも言えない。
 オリジナル『新星ギャルバース』:90年代風タッチ。全体に雑だし、せっかくの声優陣も覇気がなくて芝居の味わいが乏しい。
 オリジナル『神椿市建設中。』:3Dアニメで歌手キャストがひどい。退屈。BGMはちょっと面白かったし、背景美術も良いのだが、それ以外が耐えがたい。何故かキャストクレジットが出ていなかった。

 『フードコートで、また明日。』:日常トークもの。カット切り替えが非常に散漫で、おかしなアングルにフラフラ飛び回るし、カメラワークそのものも極端なクローズアップと作為的なロングショットの落差があまり馴染んでいない。エリア内の壁ポスターなどにカメラを向けるパンニング/ティルトも機会的で、映像的な意味づけに欠ける。というわけで、映像表現としてストレスが溜まりそうなので視聴撤退する。
 とはいえ、主演の宮崎ヒヨリ氏と青山吉能氏の芝居はまずまずだし、作画そのものは丁寧で表情豊かに描かれているし、第1話の問題も主に絵コンテのひどさなので、第2話以降で面白味が出てくる可能性はある。しかしそれでも、第1話ののっけから監督の古賀氏+総作監の坂井氏の共同コンテというあたりに、どうも不穏な気配を感じるが……。
 ちなみに、何故かキャラクターの耳が丸々と大きく突き出ていてやけに目立つのは、原作漫画準拠のようだ。アニメで絵を動かすとかなり目立つので、もうちょっとマイルドにしておいた方が良かったと思う。

 そういえば、『キルミーベイベー』『少女終末旅行』のような若年女性2人だけでひたすら何かしている作品といったら、他に何があるだろうか。ショートアニメや漫画作品にはあるし、男女ペアもいろいろあるし、3人以上の日常ものも多いけれど……案外少ないのか? 春クールの『忍者と殺し屋のふたりぐらし』もこれに該当するようだけど、私は視聴していない。
 というわけで、『フードコート』もキャラ替えしたキルミーダンスや終末ダンスのパロディや、逆にそちらのキャラたちがフードコートダンスをするパロディ動画なども、いかにも出てきそう(出してほしそう)な作品だった。