(→2018年1月~/2017年1~3月、2017年4~8月)
12/28
結局、今年は美少女フィギュアの一年だった。現在も机上にざっと30体ほどのフィギュアが立ち並んでいる。これまでの私のオタクライフ航路からすれば、きわめて順当な進展だと思う。1000円台からせいぜい3000円台くらいまでの比較的安価なフィギュアは、カジュアルに買えるし、売っている店が多い(行きやすい)し、ヴァリエーションも豊富だし、サイズも十分大きくて見応えがあるし、それでいて占有面積も小さいので、ついつい買ってしまう。
もっとも、これについては異論もあり得る。例えば、「2000円はそんなに小さな額ではない(リーズナブルなわけではない)」、「ほんの2000円では、塗装済みフィギュア一つを完成させるのに出来ることは限られている(クオリティは高くない)」、「購入した分の金額が制作者に還元されにくい(特に中古購入した場合)」など。その意味では、高価格帯のフィギュアにも、もちろん独自の重要な価値がある。
完成品フィギュア分野は、実売3000円くらいまでは低価格帯と呼んでよいと思う。その中には500円以下のガチャガチャフィギュアやソフビ怪獣なども含まれるが。4000円台から6000円台までは、小型の可動フィギュアやSDフィギュアが多いようで、固定ポーズフィギュアはあまり見かけないように思う。8000円台からは、ディテールの凝った固定ポーズの、つまり本格派の大型フィギュアになるが、ものによって価格は千差万別になり、9000円台から13000円台まで幅広い商品が存在する。さすがに2万円以上のものは稀だが。そしてドールは――隣接する別ジャンルと言うべきだろうが――その上(文字通り桁違い)の位置にある。
完成品ロボット模型は、ラインアップが限られるが、4000円台から8000円程度が主流だろうか。近年のハイエンドアイテムだと2万円を超えるものもある。
その一方、プラモ制作は、なんといってもwebラジオと両立できるというのが大きい。ヘッドフォンで聴いているのでケーブルが邪魔になることもあるし、塗装時の離席などで一時停止する必要もあるが、大半の時間は耳でラジオを楽しみながら目と手でプラモに取り組むことができ、人生の時間を豊かに(効率的に)使える。
(2017年12月28日、自宅にて撮影)
千石撫子(左)は、顔と腕の肌色がなぜか微妙に緑がかって死んだような色合いなので、左記写真は色調補正して撮影した。綾波レイ(中央)は、数多ある綾波フィギュアの中で、顔立ちが最も好み。写真では分かりにくいが、プラグスーツ部分はツヤツヤ。ステラ・ルーシェ(右)は、ポージングは面白いのだが、肩幅が広く見えてしまうのが少々残念。
上記の綾波レイは、原型制作は奥村幸生氏とのこと。クールな表情の顔は、角度によってかなりニュアンスが変わって見えて面白いし、どことなく碇ユイっぽい感じも気に入っている。完成品フィギュアとして見ると、パーティングラインやパーツ接着面の処理があまりきれいではない箇所もあるが、塗装はきれいだし、やや大きめの1/7スケール(と思われる)はたいへん魅力的。これまで、綾波レイのフィギュアは本当に買いたいと思えるものがなかなか無かったが、気持ちよく眺められるフィギュアにようやく出会えた。籤商品とのことで、駿河屋で購入した時の価格も2000円かそこらだったと思うが、価格以上の良い買い物ができたと思う。Nice bought.
上記、千石撫子の服を見て『るい智』のことを思い出したけど、実際に見比べてみるとずいぶん違っていた。[ www.getchu.com/brandnew/488365/c488365chara1.jpg ] オリーブドラブとベージュ(ホワイト)の二色ベースで、セーラー襟と赤いリボン(スカーフ)があって、腹部を縦に金色のボタンで留めている、といった点が共通しているが、全体としてはまるで別物。
『エヴァ』フィギュアだと、やはりアスカの方が全体的にクオリティが高い。性格設定からして、ポージングや表情のヴァリエーションが豊かにできるおかげもあるだろう。また逆に、レイはキャラクターイメージを展開しにくいというのもあるかもしれない。
12/12
ゴッドハンドニッパーが、ストッパーが割れたのに続いて、今度は落とした際にバネを紛失してしまった(発見できず)。刃部分はまだ健在なだけに、非常に悔しい。通常の2000円程度のニッパーに戻してみたが、切断する際にかなり力が要るし、手にも切断の衝撃が来て負担になる。ああ、ハイエンドニッパーは本当に素晴らしかったんだなあ……。適当なバネを仕込んで補修するくらいならば容易だけど、いっそ買い直してしまおうか。
分量が増えてきたので、FA(FAG)関係のテキストは別ページ「フレームアームズ(ガール)シリーズ雑記」にまとめた。今後も、FA関係はそちらに書くことにする。
美少女キャラの模型は、完成後のサイズ(占有する面積/体積)が箱よりもかなり小さくなるのがありがたい。模型実物のサイズだけでなく、ディスプレイに必要なスペースも小さくて済むし、しかも保管する際にもそれほど気を遣わない。ロボットやAFVも、総じて箱よりも小さくなる部類だろう。保管の際にも、適当な緩衝材で包んでボックスに収納してしまって構わない。
それに対して艦船模型は、完成させても箱とほとんど変わらないか、むしろマストの分だけ大きく(背が高く)なる。保管(輸送)の際にも、デリケートなパーツが破損しないように大型のアクリルケースなどに収納しなければいけないので、スペースも取るしコストも掛かる。向きを変えることもできない。洋上スタイルでベースにボルト留めする場合でも、横向きにするのはNGだろう。
航空機も、両翼を取り付ける都合上、しばしばパッケージよりも完成品の方が大きくなる。建築物(城郭など)や情景模型も、パッケージよりも嵩が増すだろう。 カーモデルは、完成品のサイズはかなり小さくなる(パッケージの半分以下になることも多いだろう)が、ミラーやアンテナなどの破損しやすい部品があるので、多少気を遣う。バイクも同様だろう。
ロボット模型や美少女プラモが敷居が低いというのは、子供向けの格好良さやオタク向けの魅力に満ちているというだけでなく、こういったユーザー環境に対する要求の低さにもあるのだろう。それに対して大型艦船模型は、ユーザーの私生活の余裕を要求する。すなわち、1万円以上の価格(ものによっては3~5万円にも)、60時間以上の時間、十分な制作スペースと展示スペースがほぼ必須になる。私の場合は、趣味の時間に融通が利くのと、完成状態の保守をほぼ放棄しているのでなんとか取り組めているが、それでもそろそろキツい。
12/04
ロボット模型は、バラすことも出来るし、適当に包んでおきさえすれば破損の可能性は低く、収納と輸送が容易だ。完成品フィギュアも、短時間の輸送であれば対処可能だ。AFVや小型艦船の模型も、ケースに収納すればいい。
しかし、大型の航空機模型や艦船模型は、輸送がきわめて難しい。分解することが事実上不可能だし、マストやアンテナ線などの超デリケートなパーツが多数存在する。特に1/350スケール艦船模型は、まともに収納できるケースがほぼ存在しない(あるとしてもメーカー直販だったり、かなり高額だったりする)し、そんなものがいくつもあったら……さしあたり引越をする予定は無いが、引越する時には、何隻もある室内のプラモをどうしたらいいんだろう。上積厳禁で大型段ボールに箱詰めするか、レンタルカーで慎重に運ぶか……。
11/20
【 艦NEXT信濃の第一印象 】
艦NEXT版の「信濃」は、色分けのためのパーツ分割などがほぼ「ちび丸」版の構造を踏襲している。言い換えれば、「ちび丸」版は明らかにNEXT版のためのトライアルモデルだった。シールによる迷彩再現に関しては、特easy版の瑞鶴や雲龍でも試験実績を積み重ねていたが、プラパーツ分割による色再現がさらに推し進められている。
実のところ、プラとシールはかなり色味が異なるので、きれいな信濃を作りたいならばやはり自分で塗装するしかないのだが、それでも局所的とはいえ「パーツorブロック毎に塗装→全体を組み立て」という工程が可能になっており、制作の柔軟性は高まっていると言えるだろう。従来型の「完全に組み立ててから→マスキング塗り分け」は、特に空母キットの場合は取り回しが難しいし。また、戦艦(比叡や金剛)でも「木甲板だけを塗装してから船体に嵌め込む」というアプローチが可能になっている。
ただし、対潜迷彩無しのプレーンな塗装をしたいという場合には、パーツ分割の合わせ目が気になるかもしれない。
TAMIYA版の「信濃」は、かなり古いキット――1999年製なのだとか――なのだが、このメーカーらしく全体のディテールバランスがきれいにまとまっているし、なにより、あの幾何学的形状のブルワークが見事な直線でしかも厚みも極薄に成型されているのが素晴らしい。あの精密感、ただ単に「細かい」のではなくて「正確な」造形は、今回のNEXT版と見比べてみても依然として勝るとも劣らないクオリティを誇っている。本当に、このブルワークだけでも、見て見飽きない。
(2017年11月20日、自宅にて撮影)
上はTAMIYA、1/700「信濃」の右舷前方。ブルワーク(高角砲座周囲の壁)は、おそろしく薄く、しかも端正な直線を出して成型されている。深さ(高さ)も十分。
下のランナーはFUJIMI、1/700「信濃」(艦NEXT)より、それに相当するパーツ。こちらのブルワークは浅くて厚いが、縞鋼板の模様がきれいにモールドされているし、嵌め込みで組み立てられる。
TAMIYA版「信濃」、左舷中央部付近。スポンソン(機銃座の出っ張り部分)の幾何学的な清潔さのある凸凹が面白い。室内にむき出しで置いていたため、塵埃が積もっているし、白線デカールも浮いてきているが、気にしないように。白線部分は、二本の凸モールドが並んでいる。塗装時のガイドにはなるが、デカール貼付する場合は削り落としておくべきものだろう。
ああ、そうか、NEXT信濃用のエッチングも製造される見込みが高いから、TAMIYAキットにエッチングを組み込める可能性があるのか。あるいはFUJIMIキットとのミキシングでもいいけど。ただし、マストに関しては、すでにFINEMOLDSからエッチングがリリースされている。ちなみに、NEXT版の艦底パーツをTAMIYA版の船体に合わせてみると、FUJIMI艦底の方が2~3mmほど長いようで、きれいにはフィットしない。
FUJIMIキットはしばしば、大きなランナー数枚ではなく多数の小さいランナーに分かれているけれど、これは何のためだろうか。
1) ヴァリエーション切り替えに対応するため? 実際にはあまりそのような機能を果たしていないように見受けられるが、可能性としては考えられる。特に年次対応の余地が広がるだろう。
2) 品質管理のため? 成形不良品が出た場合でも、大きなランナー一枚がすべて駄目になってしまうことが無く、失敗した小ランナーだけを捨てれば済むので、無駄を減らせるかもしれない。とりわけFUJIMIキットはモールドの細かいパーツが多数含まれるので、射出成形に失敗する可能性も比較的高いかもしれないから、それに対する(予防的)処方としてあり得るアプローチだろう。実際の歩留まりがどのくらいかは分からないが。
3) あるいは、とりわけスライド金型のような複雑な射出成形を行う場合には、金型合わせの精度を確保するのが比較的難しいということがあるかもしれない。そうした場合には、小型の金型を丁寧に合わせてプラ成形していくことで、精密パーツを作り上げているのかもしれない。
4) コスト面ではどうだろうか。ランナーとしては小さくても、実際には金型一枚で複数枚のランナーを同時成形できるならば、小ランナーに分けても費用増にはならないだろう。
5) プラ材の使用量に関しては、小ランナーに分けていく方がやや増えるかと思われるが、誤差レベルではないかと思われる。
6) ランナー枚数が増えるのに応じて、データ管理から箱詰めの手間まで、管理上の負担も増加する。これはやむを得ないので、上記メリットとのトレードオフで考えるべきだろう。
7) モデラーのためのユーザビリティ配慮という可能性はあるだろうか。個人的には、小さいランナーがバラバラになっていると扱いづらいと感じる。ユーザーにとっては、ランナー細分化はプラスになっていないように思える。
8) 複数キット間での部分的流用のため? そのような使い方はあまりしていないようだ。
9) なんらかの実験? 例えば色分け成形を念頭に置いたランナー分割という可能性はある。
こうしていろいろ考えてみると、クオリティ管理(精度確保と不良品排除)が主目的ではないかと思われる。実際にも、スライド金型を使った繊細なパーツが極小ランナーで構成されている(一つのランナーに含まれるパーツがほんの数個だけ)ということは、FUJIMI以外のメーカーにも見られるもので、射出成形の難しさが推察される。
ラッカー系/エナメル系(それから水性)の塗料の使い分けも、もっと開拓できないものだろうかと考えている。オーソドックスな「ラッカー塗装+エナメルウェザリング」の他にも、艦載艇類の細かな塗り分けに際して利用してみたことがある(はみ出した部分を容易に拭き取れる)。これは救命具などの細かな塗装にも、応用できる。エナメル塗料でコーティングして、金属塗装らしいぬめりのある質感を再現できないかという考えもあるが、まだ試していない。
いずれにせよ、複数系統の塗料を使うということは、塗料それ自体を別途調達しなければいけないというコスト面の問題もあり、また作業工程上も溶剤や筆をそれぞれ別に管理しなければいけないという手間の問題もある。表現効果のための使い分けや塗装精度確保のための使い分けならばまだしも必要なことだと納得できるが、作業効率化のための使い分けはコスト面/労力面の負担増大に照らして割に合わない場合が多そうだ。
11/10
旧HDDからのデータ移設中にダンケルクを開封。さすがに大スケールは迫力もあるしディテールも説得力がある。各所にスライド金型を使用しており、「(パーツ数減少による)作りやすさ」、「(各面をモールドできることによる)緻密さ」、そして「(一体成形による)強度確保」を両立させている。前部艦橋も三面の窓枠をきれいに抜いてある。これならば、なまじエッチングを使うよりも良い出来になる。素晴らしい……。エッチングも少量ながら同梱されており、手摺と梯子類、そして機銃の照準器がエッチング素材でカバーされているのが面白い。四連主砲も外連味があるし、佇立した艦橋も表情があって見栄えがする。フランスの戦艦ではリシュリュー級よりもこの級の方が好き。
艦橋パーツへのスライド金型の導入は、近年では1/700スケールのFUJIMIやPIT-ROAD(というかTRUMPETER)も行っている。特に多角形の塔型パーツは、プラキットではムクで成形するわけにはいかないし、四面四パーツの箱組みは非常に作りづらいし、かといって何もモールドしない平面のままではいかにも寂しいので、なにかしらの対処が求められるところであり、しかも艦船模型の「顔」とも言うべき艦橋部分なのでメーカーの腕の見せどころでもある。
英国の戦艦でも、レナウンやウォースパイトあたりの前部艦橋ががっしり屹立しているタイプの艦が好き。フッドやレパルスのようにマスト上部が不安定に見えるものはあまり好みではない。米国艦だと、以前書いたようにテネシー級やコロラド級あたりの、端正なレトロ感と兵器的機能性と籠形マストのユーモラスな雰囲気の取り合わせが好み。アイオワ級のような素っ気なくメカメカした佇まいは、見ていてそんなに楽しいものではない。
というようなことをいろいろしていたら、模型制作数が90個に達した。2012年以前(大学院時代)が24個で、2015年5月に本格的に趣味再開してからが66個。今年中には100個到達は難しいが、来年早々には大台に乗るだろう。何割かはただの無塗装パチ組みだから制作経験としてはかなり割り引いて考えるべき数字だが、それにしても意外なほど続いてきた(展開してきた)ものだ。
10/22
扶桑型と伊勢型も大スケールキットで作ってみようかな。艦としては外見も歴史もあまり好みではないのだけど、作ってみれば好きになれるところが出てくるかもしれないし、キットとしても挑戦してみる意義はあるだろう。すでに小スケールの方にも手を出しているので全体構造の把握も楽だろうし、あまり思い入れが無いおかげで気楽に取り組めるというメリットもある。キットそのままで作ればせいぜい60時間、エッチング込みでも80時間程度で完成させられるだろう。艦載機あたりを作り込むとなるとかなり作業量が増えるが。
FUJIMIの1/700扶桑(昭和13年版)は、のっけから「舷外電路(全周)を削り取ります」の指示に目を剥いた。細かなディテールに干渉するところも多かったので、見なかったことにして、そのまま作ることにしたが。たしかに、キット単体で考えると、無いものを追加することは出来ないが、あるものをなくすのは可能だから、どちらを選ぶかといえば後者になるのだろうけれど……。
舷外電路のモールドをきれいに削るのは、1時間や2時間では利かないだろう。考証上の忠実性という意義はあるにしても、切除整形の一連の作業は、模型としての創造性にはほとんど関係のない要素だ。人生の時間の価値を、たとえば時給1000円以上に見積もる人物であれば、電路削除に2時間掛けるよりも、電路無しのパーツを別途同梱して価格を2000円上げた商品を買う方が、得になるのだ。ただし、工作するプロセスそれ自体を楽しめるフェティッシュな人物や、あるいは電路削除の工作を練習として自分の中に位置づけられる人物であれば、電路削除指示にもメリットを見出せるかもしれないが、そうでなければずいぶん不満のある仕様だろう。
それ以外も、総じて「細かいけれど精密ではない」というFUJIMIの悪弊を露呈させていた。そこにある筈のものが、そうある筈の形状のように、一応再現されてはいるのだが、しかしパーツの造形はいかにももっさりしていて、まるで言い訳めいたダルさにがっかりさせられる。パーツ構成の観点でも、そのために過剰に分割されており、そのために非常に組み立てづらく、隙間などが出来やすく、さらに改修もしづらいという難儀な仕様になっていた。はたしてユーザーにおける実際の組立工程のことを考慮しているかどうかを訝らずにはいられないキットで、甲板上の各種突起物から艦橋の積み重ねに至るまで、いったいどうやって塗装制作したらいいのかというパズルめいた難所が頻出した。もちろんこれは部分的には私個人の制作技術の不足という主観的事情によるものでもあるが、客観的に当該キットの構成が適切であるか、巧妙であるか、合理的であるか、モデラーに過度な要求をしていないかということは問いうるだろう。
FUJIMIは、PITROADと並んでフルハル版を積極的にリリースしてくれるありがたいメーカーだが、1/700スケールは艦底パーツの合いがあまり良くないので、毎回苦労している。どういうわけか、艦底部と船体部の長さが微妙に違っていて、貼り合わせると艦首または艦尾に段差が出来てしまうことがある。FUJIMIの製作手法の技術的問題なのか、あるいはコスト上の手抜きなのか、それとも双方の輪郭をぴったり合わせるのは一般的に比較的高度な技術的要請なのだろうか……。ちなみにPITROADの艦底パーツも、合いはあまりきれいではなく、パテ修正を必要とするのが通例だ。
FUJIMIのフルハル版は、WL版と同時ではなく、後からリリースされる(あるいはされないままに終わる)。なので、「WL版を買ってしまった後からFH版が出て悔やむ」とか、「FH版を待っていてもなかなか出ない(メーカーとしても、まずWL版での売上が得られなければ、FH版をリリースしないかもしれない)」といった不幸な事態が起きやすい。
AGPシリーズにも一度手を出してみたいが、ラインアップを見るととりたてて欲しいものが無いのでモヤモヤしている。店頭サンプルなどを見ても、サイズは程々でボリューム感はあるし、主要な部分のクオリティは高いのだが、ところどころにイージーな出来のパーツ(未塗装?)が混じっていて、不満が残りそう。塗装に関しては、ユーザーが自前でなんとか出来る余地があるけど。大量の可動ギミックが売りの一つになっている分、造形や塗装のクオリティは同価格帯の無可動完成品フィギュアよりも一段落ちるということだろうか。
艦NEXT金剛。艦底パーツが透けにくい色になっている……ような気がする。MENG社製のと同じような、不透明で分厚いパーツになっている。NEXT赤城の時点ですでにこの色合いになっていた。「帝国海軍」シリーズの艦底パーツが紅色寄りなのに対して、このNEXTシリーズは朱色っぽい色調のプラになっている。
サーニャのフィギュアで、「固定ポーズ(関接部がきれい)」「制服姿(水着ではない)」「ユニット無し(人間の足で立っている)」「SDではない」「市販品である(私家製、イベント販売ではない)」の条件を満たしているものは、無いのだろうか? ユニット装着が前提の戦闘シーン固定ポーズだったり、関接部の凸凹が露出している可動フィギュアだったり、SDフィギュアだったり、水着姿のフィギュアだったりして、いずれもあのほっそりしたプロポーションをシックな黒服に包んだ愛らしさを表現してくれていない。なんともったいない……。比較的近いものを求めるならば、ALTERの1期版(ユニット付きの固定ポーズだがキャライメージには合っている)か、figma(可動フィギュアで造形も甘いがユニットを外せる)のどちらかだろうか。
サーニャ以外でも、このシリーズのキャラクターフィギュアで上記条件を満たしているものはほとんど存在しないようだ。ストライカーユニットの存在に縛られるのは、このシリーズの宿命か……。
web上でざっと調べてみると、サーニャの市販フィギュア(ドール)には以下のものがあるようだ。詳細の確認ができなかったものもあるので、実際の仕様(ユニットの着脱可否など)はこのリストの記載と異なる可能性がある。
メーカー | 縮尺 | ポーズ | 服装 | 脚部装備 | 備考 |
アルター | 1/8 | 固定 | 制服 | 有 | - |
アルター | 1/8 | 固定 | 制服&コート | 有 | ロケットブースター付き。 |
アルター | 1/8 | 固定 | 水着 | 有 | エイラとセット。 |
コトブキヤ | 1/8 | 固定 | 制服 | 有 | - |
マックスファクトリー | NS | 可動 | 制服 | 着脱 | figma。実寸1/12スケール相当。 |
フリュー | NS | 固定 | 制服 | 有 | プライズ品。 |
コナミ | NS | 固定 | 制服 | 有 | フィギュアコレクション Vol.1。 |
コナミ | NS | 固定 | 制服 | 無 | フィギュアコレクション Vol.2。 |
セガ | NS | 固定 | 制服 | 有 | プライズ品。 |
セガ | SD | 固定 | 制服 | 無 | ラッキーくじ賞品。 |
ファットカンパニー | SD | 可動 | 制服 | 着脱 | ねんどろいど。 |
角川書店 | SD | 固定 | 制服 | 有 | エイラとセット。 |
キャラアニ | SD | 固定 | 制服 | 有 | トイズワークスコレクション。 |
アゾンインターナショナル | ドール | 可動 | 制服 | 無 | ピュアニーモキャラクターシリーズ。 |
ずっと机の上に置いていた綾波と摩耶も、ずいぶん破損が目立ってきた。プロペラや手摺やボートダビットがいくつも外れているし、甲板上の埃もある。しかしそれでも、何物にも遮られずにこれらのミニチュアを見続けてこられたのは、大きな幸せだったと思う。適宜補修しながら、できるだけ長く付き合っていってもらいたい。
10/12
艦NEXT版「金剛」が店頭に出ていたので、喜び勇んで購入(※ついでに日向フルハルも買った)。ディテール水準やパーツ構成などの基本設計は「比叡」のままだと思うけど、主旨はむしろ1/350版の「金剛」との比較にある。今回も(「特」版の)エッチングを適当に組み込みつつ、塗装にはあまり力を入れずカジュアルに制作するつもり。同シリーズの「比叡」は、発売からしばらく経ったら店頭では全然見かけなくなったので、よほど売れたのではないかと思われる。
……と考えていたけど、「特」版金剛の純正エッチングはマストやトラスがカバーされていないようだ。窓枠もどうやらエクストラパーツ扱いのようで、制作指示は無い。主砲上面の手摺も無い。現在の目から見ると少々バランスの悪い構成なのは、比較的初期のキット(エッチング)のためだろう。ともあれ、カタパルトや電探、クレーンフック、梯子類など、だいたいのものは揃っているから、これはこれで十分ありがたい。
ところで、店頭在庫の余りっぷりを見ていて思ったのだけど……もしかして日向ってあんまり人気がないのだろうか。そういう世間的な人気不人気の傾向は、私にはとんと見当が付かない。まあ、どうでもいい話ではあるけれど、新キット開発やヴァリエーション展開にも影響する問題なので、まったく無関係というわけでもない。まあ、私自身、[ aokihagane.com/1757.html ]:この藤田ヴォイスのキャラがきっかけで興味を持つようになっただけだから、偉そうなことは言えないが。
先頃のFUJIMIとHASEGAWAの「隼鷹(&飛鷹)」は、わりと短いスパンでどんどんヴァリエーションキットがリリースされているので、「あれ……意外と人気が高い艦だったの!?」とびっくりしている。実際のところ、スケール系モデラーやミリオタ界隈ではどういう評判なんだろう……。大鳳や信濃に連なる特徴的な艦橋デザインだし、戦歴もわりと多い――1942年竣工から一応終戦まで生き残った――ので、わりと注目されやすいのかもしれない。
「金剛」はグレー部分の成形色を濃くしてあるのか。パチ組みでも色合いの違いが楽しめる。
1/350派になったとは言っても、作りたいキットにはひととおり手を出してしまったし、同じキットを二度三度と作るのも気が引けるので、今後の見通しは立っていない。1/350と1/700とでは、出来ることに大きな落差があるので、1/700スケールで極小の作り込みをしようという気分にはなれないが、だからといってイージーな制作ばかりを続けていても面白くない。外国艦にも興味が向いてきたところだし、海外キットでも対処できるくらいにはスキル(対応力)も身についてきたかと思うので、大スケールの海外艦に目を向けていくのもよいかもしれない。ただし、そろそろ本当に自宅のスペースが無くなってきて、完成させても置き場が無いのだが(「竣工しても載せる航空機の無い空母」の逆ヴァージョンみたいなものか)。
2017年現在の私のスキルで1/350「金剛」を再制作したら、どれほどクオリティの上積みができるだろうか。ミスは一桁減らせると思うし、制作速度もかなり上がっているだろうし、色彩コントロールもましになっている筈だし、各パーツの意味を理解して「それが何であるか」の模型表現に結びつけられる箇所もずいぶん増えてきたし、今なら外周手摺まで完成させられるかもしれないが、しかし総合的なクオリティや全体のコンセプチュアルな明晰性という観点ではあまり成長していないかもしれない。模型道、遼遠なり。
リノリウムの上に丸太のような真鍮線を置くのは、模型誌等でももはやほとんど行われなくなっている。私自身、ほんの2度ほど試してみたが、実際にやってみると相当見苦しい出来になった。あれは廃れて良かったと思う。
近年の日本国内のムックなどでも、「艦船模型」というと1/700スケールのIJN艦船オンリーで、大型キットや海外艦や現用艦や民間船が完全に無視されているものがわりと多く、その度にもやもやする。たしかに、店頭で見ても、おそらく艦船プラモの国内市場は7割方が1/700帝国海軍もので占められているので、市場的要求に適合していると言えば言えるのだけど、何の説明も無しにそれオンリーにふんぞり返っていられると、不平の言葉を挙げたくもなる。艦船模型一般のムックという体裁でありながら、制作記事もIJNメジャー艦ばかりだったりすると、どんだけ視野が狭いんだと言いたくなる。
模型乾燥機な食器乾燥機は、私は使ったことは無いけれど、その効用は「密封+乾燥」を両立させられる点にあるのかなと想像している。普通のケースに入れておくだけならば、安全に保管しておくことができるが、なかなか乾燥が進まないし、場合によっては高湿度の影響を受けて塗装がダメージを受ける危険がある。また、室内に剥き出しで置いておけば、自然乾燥はするが、塵埃が付着したり破損したり紛失したりする危険がある。その意味で食器乾燥機が、パーツを散らかったり汚れたり無くなったりしてしまわないようにまとめて保管しつつ、しかも高速で乾燥させることができるのは、大きなアドヴァンテージと言えるだろう。
正面から取り組むとなると、たしかに空母模型が一番大変かも。
- 飛行甲板のディテール表現(遮風柵)や塗装(細長いデカールを含む)は、非常に目立つ場所なので、無ければ空疎に見えるし、失敗したら誤魔化しが利かない。
- 飛行甲板パーツは、大抵の場合、一枚板なので、船体への密着取り付けが大変。
- スポンソンや飛行甲板の支柱は非常に細かく、しかも大量にある。
- 大量の艦載機を作るのが面倒。作らなければ飛行甲板上はのっぺりした平面のままになるし。
- 艦橋のサイズもしばしば巡洋艦よりも小さく、作りづらい。
- 多くのディテールが側面に来るので、制作中も手に持ちづらい。
- とりわけ、細いマストが何本も立っているので、破損リスクが高い。
- ものによっては複雑な迷彩塗装が施されている。
- 個々の艦毎の相違が大きく、情報収集(資料収集)しなければ構造がなかなか理解できない。
10/08
【 PG Mk-II 】
ようやくPGを手掛けられるだけの(心理的・技術的な)用意ができた。モデラーたるもの、一度はこのクラスに取り組んでそのクオリティを経験しておくべきだと常々考えていたが、なかなか手を出しあぐねていた。
とりあえず開封してみたかぎりでは、MG版Ex-Sよりもさらにパーツ数が多いようだ。1/100よりも縮尺が大きい分、特有の作りやすさと作りにくさがあるだろう。当然ながら色プラで、しかも各パーツのサイズが大きいため、表面にはウェルドラインが盛大に出ており、塗装せずに済ませるわけにはいかない(――最低限の見栄えをキープするために、せめて簡易塗装まででも、行う必要はあるだろう)。ヒケも各所に見られるが、こちらはうまく塗装で誤魔化せればと思う。
内部フレームは、ほとんどがABS素材で構成されているため、基本的にラッカー塗装はできない。PS素材の外装のみを塗装していくことになるだろう。超大型キットで可動部分の強度を確保するためだというのは理解できるが、いささか扱いづらい。
今回買ってきたのはMk-II。初代ガンダムから機械的なリアリティをほどよく上積みしつつ、全体はシックにまとめているデザインが好み。頭部バルカンすらアタッチメント方式にしているモジュール化アプローチも、メカニカルな露骨さとロボット本体のシンプルさを両立させていて面白い。そういう機能拡張の最たるものが件のGディフェンサーだが。「スーパーガンダム」のデザインはお世辞にも格好良いとは言いがたいが、もしかしたらSEED以降のロボット演出を先取りしていたという側面を見出すこともできるかもしれない。いずれにせよ、Mk-IIの本体それ自体はわりと上品かつシンプルにまとまっており、なかなか洗練されたデザインだと思うが、このような路線は21世紀の商業ロボットアニメの様式感覚の下ではおそらくもはや採用しがたいものだろう。
ちなみに、白色と紺色の2パターンは、Staedtlerの製図用シャープペンを連想させる。
プラモとしても、変形ギミックのような大掛かりな機構は組み込まれていないので、ストレートな作りになっている筈だ。だから、今回はひとまず教科書的に素直にキットに取り組むつもり。それでも、これをきちんと完成させられれば、キャラクター模型ジャンルの市販ハイエンド商品の一つをクリアしたと言えるだろう。スケールモデルのハイエンドに関しては、大縮尺艦船模型のエッチング込みのストレートな制作までは出来るようになっているので、キャラクターモデルのハイエンド経験を積んでおきたい。さらに、ここからもっと先へ進みたいならば、別の(より新しい)PGキットに取り組んでみれば、もっと凝った大型立体プラモの様々なメカニズムを体験することができるだろう。
Ex-S(パーツ数600以上)の時はたしか30時間以上掛かっていたので、今回(パーツ数739)は40時間ほど掛かると見込んでおこう。艦船模型だと、1/350巡洋艦でもエッチング込みだと50時間は掛かるし、戦艦クラス(パーツ数1000前後+エッチング数百)だと70時間掛かった。どのジャンルのプラモでも、ストレートに全塗装で組むだけならば平均して一パーツあたり3分と見積もっておけば良さそうだ。
プラモキットを制作する時は、毎回なにかしらのコンセプトを持って取り組んでいる。つまり、新たな技術的挑戦を含み、あるいは特有の到達目標を設定して、このキットを手掛けることの意義を自分なりに把握できるようにしている。
ただしそれは同時に、カジュアルな(手すさびの)模型制作の素朴な楽しみを掬いもらすことになっていたかもしれない。もっと適当に買って気楽にパチ組みを楽しみ、そうして模型メーカーにお金を落とすようにしてもいいのではないかという考えも生まれている。SDキットなどは手軽に作りまくってもいいだろうし、簡易塗装くらいで適当に折り合いをつけるのも良いと思う。
「適当? 適当ですって!? あなたのその『適当』が世の中をこんなに」、リイクニさんごめんなさい。
(2017年10月8日、自宅にて撮影)
一般的なPCゲームのパッケージと比べるとこんなサイズ。PG、すなわち、Period & Garden。さあ、両方のタイトルに出演している声優3人の名前を即答してみよう!
(答:大波氏、まき氏、小次狼氏。さすがにサブキャラ男性の声優さんはかなり難しいと思う。)
ここでも繰り返し書いていることだが、ハイエンドを、一流のものを、頂点を、最先端を、経験しておくのはたいへん有意義なことだ。現在の自分がそれを完全には理解できないとしても、そして自分がそこに到達することが(現在、あるいは一生涯)困難であるとしても、それでもやはり大いに意味のあることだ。それは、おおまかな意味で「視野を広げてくれる」だけではない。その分野のポテンシャルを最大限汲み上げようとするその達成に触れられる機会は、その分野の深みを瞥見させてくれる機会であり、その分野に対する自分なりの展望を形成するのを助けてくれるし、あるいは自分の美意識の蒙を啓いてくれたり、自分の論理的思考の要求水準を引き上げてくれたり、自分の行動の指針または模範となってくれたりするかもしれないし、現在までそのジャンルが到達している限界に対して自分がどのあたりに位置しているかを理解させてくれるし、そのジャンル全体に取り組み続けていくための希望(またはモティベーション)にもなる。
そのジャンルのトップランナーのありようを知ることで、夜郎自大なマンネリズムに陥ることを避けられるし、「こんなことまで出来るんだ」という様々な実質的刺激を受け取ることもできる。スポーツでもいい、アートでもいい、学術でもいい。どんな分野でも、どのような活動でも、おそらく人間活動のあらゆる領域で、このことは妥当するだろう。高みを――少なくともその存在を――知っているからこそ、自分自身の活動をもっと良いものに、もっと面白いものにしていくことができるのだという期待と信頼を持つことができるのだ。また、そうした高みは一つだけではなく、様々な鋭鋒が存在するということも分かってくるだろう。つまり、そうしたもの(の存在)を知ることで、現在の自分に「選択」の可能性が生まれてくる。そうした様々な機会を与えてくれるのだ。
精妙なゲーム演出を体験することは、そういうデリカシーに対する意識を喚起してくれる。一流の演奏家によるコンサート(実演)は、よく知っている筈の曲であっても、それを掘り下げて新たな光を当ててくれる。誠実に作り込まれたプラモは、私たちに出来ることのさらなる可能性を見せてくれる。一語一文字まで彫琢された短編や詩作は、私の言語感覚を劇的に磨き上げてくれる(ような気がする)。野心的な建築作品も、コストの掛かった劇場版アニメも、アヴァンギャルドなインスタレーションも、高額フィギュアやドールも、お高めのレストランも、STGや格ゲーのスーパープレイも、高級ヘッドフォンも、現クールで聴けるアニメ声優たちのニュアンスに富んだ芝居も、歴史上重要な論文も、そして一人の人間という創作物すら――もちろん人間に上下は無いとはいえ、誠実で真摯で公平で知的精神的に錬磨された人格者と接してその粛然としたアウラに触れることは、深い感銘をもたらしてくれる。
プラモデルに話を戻すと、精密を極めたハイエンドキット(≒大スケールキット)を体験することは、ディテール表現の可能性に気づき、縮尺の違いによる限界と可能性を知り、質感や量感の問題をよりいっそう強く実感し、各パーツのありようをよりいっそう注視し、大縮尺キットやレジンキットならではの趣を持つパーツを自らの手に取り、小スケールでは実現できなかった新たな種類の立体表現に晒され、大スケールのおかげで実行可能になった様々な技法の取捨選択をあらためて迫られ、そして数倍に増加したパーツ群の中で新たな泳ぎ方を身につけていく過程を体験することだ。それはスケールモデル分野でもキャラクターモデル分野でも変わらないだろう。そして、それは本当に楽しい体験なのだ。
ちなみに、PGの1/60よりも大きな、1/48のメガサイズモデルを見ても分かるように、大縮尺だからといって必ずしもディテールやメカニズムやプロポーションが高品質になるとは限らない。しかし、全体的傾向としては、おおむね比例する。
とか言いつつ、今度はレジンキットにも手を出したり……おれ、OVAだけはみてるから、このひとのことはくわしいんだ。
前面左は、大昔に作ったMG(ver. 1.0)。筆塗りでツヤツヤに仕上げたのだが、写真には反映されていない。1/100なので高さは18.5cm。右はRGのパチ組み。1/144なので12.8cm。1/60のPGだと高さは約31cmになる。
手先と頭部&首筋しか素肌露出していないデザイン。お色気に頼らず、それでいて独自の魅力を持っているキャラっていいよね。露出の少ないキットは、鑑賞の際に被服の質感に注意が向きやすいので、気をつけて塗装しなければ良い出来にならない。レジン材質の都合上、ディテールアップ加工も少々難しいし。ただし、このシリーズはカラーレジン成形で、しかも被服部分はツヤ消しになっているので、無塗装のままでもわりと見栄えがしそう。
モデラーはキットを完成させてからものを言え、という話ではある。
説明書を前にただ管を巻いてばかりではいけない。
ちなみに、完成させるとMGガンダムくらいのサイズになる(19.5cmとのこと)。公式サイトでは1/7スケールと書かれているが、さすがに19.5*7=136.5cmというのは不可解で、調べてみると設定身長は156cmとのことだから、実態は1/8スケール相当と思われる。この「キャラグミン」シリーズの他のキットで計算してみても、縮尺はあまり厳密なものではないようだ。せめて同一作品のキャラクター同士は、できるかぎり同一の縮尺でモデル化してあげた方が、並べた時に自然な説得力を持つと思うのだが。
このキャラは、つい先日キューポッシュ(SDキャラ)でも発売されたばかりで、店頭でどちらを買おうか迷った。
最近、つい見せ消しを多用してしまう。90年代風センスだし、
色分けはパーツ段階でおおむね再現されているので、塗装に関しては:
- 肌の色が薄すぎる(白すぎて血色が無い)ので、色を乗せる。
- 服装のディテールを際立たせるために、多少のスミ入れやウェザリングを施す。
- 口にも色を乗せる。ただし、閉じた口の中(縁)は、色のコントロールが難しい。
- できれば頭髪などにも多少陰影を入れたいが……。
- 襟章(ゴールド)やベルト(シルバー)などの細部を塗装する。
- 設定では鞭の手持ち部分に紐がついているので、できればそこも再現する。
- パーティングラインなどをヤスリで整形したのち、トップコートで質感を調整する。
最低限このくらいの処理をすれば、わりと見るに堪えるものに仕上がってくれそう。
(2017年10月10日、自宅にて撮影)
仮組み以前の単なるパーツ合わせ。これで無塗装状態。うーむ、塗装を頑張らなくても、わりと良い感じになってくれるかも。ただし、肌の色が血の気を感じさせない超美白ツルッツルなので、多少のお化粧は必要になるだろう。Mk-IIが塵埃で汚れまくっている件は見逃して下さい。何年も書棚に陳列していたので。
09/27(Wed)
【 1/350のIJN艦船 】
1/350日向もリリースされるのか。となると、IJN戦艦12隻のうち、残るのは比叡のみ……。そんなに後回しにされる(開発劣位に置かれる)ような艦でもないだろうし、1/700でもリリースしているくらいだから資料は十分足りているだろうし、ロングテール志向のハイエンド商品だから発売を遅らせることには意味が無いし、むしろタイミングとしてはここ数年のうちに出して稼いでおくべきだろうし、採算は取れるであろうに、どうしてどのメーカーも手を出さないのか不思議でならない。
主要国内メーカーの大スケールキット(1/350)では、現状こうなっている筈。
三笠(H)
金剛(A/F)、比叡(-)、榛名(F)、霧島(A)
長門(H)、陸奥(H) ※Fujimiの1/500長門もある。
伊勢(F)、日向(F)
扶桑(F)、山城(F)
大和(T)、武蔵(T) ※Hasegawaの1/450、Fujimiの1/500も。
だいたい安定供給されているようで、たいていいつでも買える。ただし、Hasegawaの長門型が品切れになりやすい(陸奥は買っておけばよかった)。また、Fujimi製品は「初回版(金属砲身入り)」だったり「木甲板シール入り」だったりと微妙なヴァリエーションがあり、ものによっては入手困難になっている。
1/350のIJN巡洋艦はわりと充実している。妙高型(A)、高雄型(A)、最上型(T)、利根型(T)、球磨型(A)、長良型(A)、阿賀野型(H)。キットが無いのは天龍型、古鷹型/青葉型、川内型。同型がすべてリリースされているわけではないし、品切れになっていることも多い(特に阿賀野型や高雄型)が、これだけリリースされていれば十分ありがたい。
その一方、空母のラインアップは非常に貧しい状況にある。現役製品は、加賀(F)、飛龍(F)、瑞鶴/翔鶴(F)、赤城(H)、隼鷹/飛鷹(H)、信濃(H: 1/450)のみだと思う。
駆逐艦は、T/F/H/AとFinemolds、Pitroad、waveからいろいろ出ており、近年とみに新製品のリリースが相次いでいる……が、人気艦(?)に集中していてラインアップはかなり偏っている。
潜水艦は、ほぼAoshimaの独擅場。Pitroad(伊54/58)とTamiya(伊400)などもある。
それ以外は、海王丸(A)、日本丸(A)、宗谷(H)、氷川丸(H)、二等輸送艦(P)、海防艦(P)など。
これらのほか、現用艦(Pitroad/Fujimi/Trumpeter)や海外艦(Hobbyboss、Trumpeterなど)も、もちろん多数のキットがある。一応excelリストで情報を整理しているが、海外メーカーや昔のキットはカバーしきれていない。
せっかくだから、新記事「1/350艦船模型のリスト」を公開。私用の中途半端なメモなので、ツッコミどころはたくさんあるだろうが、web検索するモデラーたちの一助になればと思う。
久しぶりに、ちょっと深めにデザインナイフを指先に……痛い。
BANDAIのロボットプラモのようなクオリティだと、高額キット(≒大スケールキット)であればあるほど、いろいろと動かして遊べるプレイバリュー要素が多いので、ダメージを気にしなくていいように、無塗装パチ組みをすることに一定の合理性がある。しかも、成型色のままでも設定色再現がほぼ完璧なので、無塗装でも貧相な姿にはならない。
しかしその一方で、高額キットはしばしばディテールの緻密なキットでもあり、それゆえ「せっかくだから全塗装できちんと作り込んでやりたい」という気持ちにもなる。塗装作業と見栄えの間のバランスが、高額キットであるほど、リターンが大きくなるのだ。
これはEx-Sの時も生じたジレンマで、せっかくこれほどの変形構造が仕込まれているのだったら、無塗装でガシャガシャ動かしまくって楽しんでみたいが、しかし無塗装で作ってしまうにはあまりにももったいないというキットでもあった。「2個買えばいい」というのは一つの解決だが……。そろそろPGシリーズを手掛けてみたいという気持ちがあるが、どちらのアプローチで作るべきかでずっと迷っている。
ちなみに、もう一つの要因として、ヒケ等のクオリティ面の考慮もある。つまり、ヒケがあまりに大きいならば、きちんと表面処理をして塗装すべきだし、パチ組みでもパーツ表面のクオリティがあまり気にならない程度であるならば、そのままでも構わないかもしれない。大スケールのキットだとプラ素材の収縮の影響も大きくなるだろうから、この問題は看過できない。
ドライブラシは、縮尺の極端な(小スケールの)模型に施すと、使いどころを盛大に間違えている感じが……。本来表現すべきスケール感と、その技法がカヴァーできるスケール感とが、全然噛み合っていないように見える。1/700くらいの縮尺になるとエッジのラインは目立たない筈だし、なまじエッジ部分が存在感を発揮してしまうせいで、質感やサイズ感がかえっておかしく見える。面の塗り分けで立体感を強調しつつ、ウェザリングを(控えめに)施すことでリアリティとスケール感を表現する方が理に適っていると思う。
もっとも、全体的に重厚さを表現しつつ各部の輪郭を立体的に際立たせるという作用は果たしてくれるので、1/700縮尺模型としてではなく1/1の立体物として見る分には、これはこれで見栄えのするアプローチだと思う。
【 エッチングに挑戦しよう 】
エッチングパーツは、私くらいの素人が深く考えずに手を出して、それで特に問題も無くまずまずの出来に作り上げられたので、臆することは無いと思う。ただし、一口にエッチングと言っても様々なので、ものによって向き不向きがあるだろう。例えば:
- 手摺はそのまま接着するだけだが、ものによっては微妙なカーブに合わせて接着する必要があるし、全体の工程の中での作業順序に気を使う必要がある。パーツ取り違えの危険もある。
- マストは取り付けるだけだが、ものによっては折り曲げの必要があるし、破損しやすい。
- 窓枠は、プラパーツを切除する必要がある(という場合が多い)。折り曲げも必要。
- 電探やカタパルトや梯子は、折り曲げのために専用ベンダーを調達する必要がある。
- 軌条は非常に細いので、精密ピンセットや瞬着使用スキルが必要になる。
- 扉類は、簡単だが見栄えがたいして変わらない。小さいパーツなので接着時汚損の危険も。
- ステンレス製はかなり硬く、丈夫だが切りにくい。真鍮製は柔らかめで、破損しやすい。
まずは自分がどこにエッチングを使いたいかを考えてから、コストとリスクを考慮しつつ、出来そうなところから試してみればよいだろう。FUJIMIなどの個別艦エッチングセットでも、いきなり全てのパーツを使い切ろうとしなくてもいいし、出来る範囲で試してみればいいと思う。失敗したら失敗したで、その部分は諦めていい。そして、完成したものを自分の目で見て、労力と満足度のバランスを自分なりに評価すればいい。個人的には:
- プラモ制作経験がそれなりにあるならば、1/350巡洋艦あたりが良い。いろいろ試せる筈。
- 駆逐艦は、ヴァリエーションが少なすぎる(手摺やマストくらい)ので、実験には向いていない。
- 1/700ならば、空母のマストや駆逐艦の手摺に汎用エッチングを投入するあたりが手頃かも。
- 支柱パーツの置き換えは、難易度も低いし見栄えも良くなるが、対応している艦が少ない。
- ベンダーは必須。これに投資できないくらいならば、エッチングそのものを止めた方がよい。
- 工程上、どのタイミングでどのパーツを組み込むかをあらかじめ構想しておく必要がある。
09/15(Fri)
【 ちび丸「信濃」 】
ちび丸「信濃」は、デフォルメキットながら(あるいは、デフォルメキットであるおかげもあって)、たいへんきれいな出来。寸詰まりにしたせいで機銃や高角砲が隙間なく等間隔にずらりと並んでいるのは、これはこれで新鮮だ。ただし、機銃と高角砲は嵌め込みが浅いので、接着剤で固定しておく方が安全かと思われる(飛行甲板の下に位置するため、外れてしまうと嵌め直しが難しい)。ちなみに、全てのランナーでスライド金型を使っているという贅沢仕様。
飛行甲板のシールは、ほとんどネービーブルーのような濃いブルーで、なにやらIJN艦船らしからぬモダンな色彩感になっている。対潜迷彩は、一部は成形色(艦橋周囲)、一部はシール(舷側)で表現されている。シールを貼ると舷側の各種モールドが遮蔽されてしまうので、塗装アプローチにも意味はある。この設計ならばマスキングもきわめて容易だろう。
正面から見ると、艦橋が船体から大きくはみ出している造形が、通常のスケモキットよりもはっきり分かる。ただし、このような型に嵌めてしまうと、縦横の寸法が似たり寄ったりになってしまう。個々の空母も違いが見えにくくなるのではないかという疑念がある。
艦橋の屋上などにリノリウムシールを貼るように指示されている。webや雑誌で見てきた信濃制作では、ここもライトグリーン一色にするのが多数なので、意外な仕様だった。もちろんユーザー個々人の判断で、好みでなければリノリウムシールを貼らなければいい。考証上どちらが正しいのかは分からないが、今回試しに貼り付けてみると、色合いのアクセントが生まれてなかなか良い感じになった。
FUJIMIの新ロゴは、大失敗なのでは……? 大丈夫かなあ。社名の文字が小さくて即座に判読できないし、Fuiimiの"m"の上にまでわざわざドットを置いてしまったせいで「Fijiiii」に見えてしまう。周囲に同じデザインのmimimi…が並んでいるのも意味不明。色合いも彩度が低くて地味すぎる。これが店頭に並んでいても、アイキャッチ効果は発揮されないだろう。
TAMIYAの鮮明な☆★は完全にブランドイメージを確立しているし、Aoshimaのシンプルな青色の「A」マークもシリーズ感をはっきり認識させてくれるし、Hasegawaのロゴマークも三原色を使ってよく目立つデザインになっている。とりわけスケールモデルでは、箱絵もかなり込み入ったイラストが置かれることが多いので、ロゴマークもこのくらいアピールの強いものにしなければ埋もれてしまうだろう。FUJIMIの以前のデザインも、くっきりしたブルーの極太フォントでFUJIMIと書いていて、あのままで十分だったと思う。今回のは改悪だろう。
あえて言うならば、円形デザインに対応したのはアドヴァンテージだろうけれど、利点がそれだけでは、上記のマイナス点をひっくり返すほどではない。安物のコースターにでもありそうな感じで、それ単体としてセンスが悪いわけではないが、ロゴマークとして求められる役割を果たせるかどうかはかなり疑わしい。
ロゴ制作者の名前も判明しているが、当人のサイトを見てみると……うーん、文字に対する可読性のセンスを持ち合わせていないという
これまで使われていたロゴは、模型メーカーらしく立体感のあるデザインで、しかも(意図してかどうか分からないが)艦船模型の得意なブランドらしく鮮やかなブルーの文字で、店頭でも一目でこのメーカーだと識別できるものだった。武骨なスケモメーカーであり、あまりファッショナブルなデザインにする必要も無かった。パッケージでも、ブランドロゴによるクオリティアピールよりも、名画のように大きく描かれた艦船や戦車のパッケージアートこそが、ユーザーに訴えかける。そういう分野的市場的事情を考慮せずに、ただ自分の好きな円形趣味を押しつけるのは、端的にデザイナーとして無能だろう。
私にとっての模型の原風景は、もしかしたら、怪獣ジオラマだったかもしれない。
09/11
【 MENGのミズーリ 】
国内発売がいつになるか分からずやきもきしていたところ、MENG MODELのビスマルク&ミズーリが店頭発売されていたので即断購入してきた。
ミズーリは、塗装指示では1945年9月(東京湾)となっている。まさかの降伏調印式仕様。歴史ネタとして、この艦に興味を持つようになったのはまさにこの出来事だから、たいへん嬉しい。キットは、意外なくらいパーツ数が少ない。TAMIYA版も大差なかったかと思うが(※TAMIYAキットは、機銃や救命浮き輪がすべて個別パーツ化されていたので、パーツ数はそれなりに多い)。
ディテールは程々な感じ。一部にスライド金型も用いているが、総じてアクのないシンプルな造形。単装機銃は、複数並んでいるものが基部ごとまとめて一パーツ化されていて、甲板の嵌め込み穴に挿入するという仕様。パーツ数を抑えつつスナップフィット化するための処方だろう。考証面は、よく知らないので評価できない。
色再現。ネービーブルー部分は成形色とシールとでかなり色合いが異なるので、パチ組みする場合は気になる人もいるかもしれない。シールは貼付面のディテールに正確には対応していない箇所がある(防弾板の回り込みなどが、シールの切れ込みのみで処理されている)ので、あまりきれいに貼れない。その意味でも、塗装した方がよい。簡略塗装として、ネービーブルー部分だけを塗装してグレー部分は成形色のままにしても良いかもしれない(※ネービーブルーのはみ出しは、溶剤綿棒で拭き取れば済む)。全塗装する場合でも、甲板面が色毎にパーツ分けされている分、塗装作業は多少楽になる。
艦底部は別パーツで、WL/FH選択式。WL仕様にする場合は、ブラックの部分までになる。太いピンのスナップフィット方式でしっかり嵌め込むので、接着剤を使ったりパテで合わせ目処理をしたりしなくても、ぴったり固定できる。艦底部分のプラは、しっかり色が乗っていて、FUJIMIキットのように透けてしまうことはしない。艦底パーツもかなり厚手で重量があるので、フルハル仕様でも安定感がある。
注意点:煙突頂部のブラックパーツは、船体パーツの中央部分に成形されている。これを切り出しておくのを忘れて(あるいは存在に気付かずに)、うっかり船体をフルハルで接着固定してしまうと、後から取り出せなくなってしまう。珍しいランナー配置なので、注意喚起しておく。
ビスマルクは、木甲板パーツのおかげで、かなりカラフルに見える。シールで賄うのはほんの少しだけ。塗装指示の対応年次は1941年5月。こちらもディテールは同水準。主砲の砲口もちゃんと穴が空いている。ティルピッツも発売されるのを期待していいのだろうか。
まだメリーランドが制作途中なのだが、こちらを先に作ってしまおう。特にビスマルク級は他のメーカーからもたくさん出ている(持っている)ことだし、今回はパチ組みでシルエットを楽しむくらいでいいかもしれない。ただし、実売4500円の最新キットをそうやって消費して終わらせてしまうのは少々もったいない。
ちょうど(16年前の)今日はアメリカが大変な目に遭った日だったということを思い出し、いささか皮肉な状況ではあるが戦艦ミズーリの方を触ってみた。一応はスナップフィット式に組み立てられるが、ピンが細いし、嵌め込みも硬いし、プラ材もかなり脆いので、接着剤を流し込んで固定するのが良さそうだ。シールはかなり硬くて丈夫だが、貼りにくい。いっそ自前塗装した方が、労力対見栄えのパフォーマンスは良くなると思う。機銃のディテールは00年代前半レベルで、良く言えば記号的、悪く言えばオモチャっぽい。ランナーは要所でアンダーゲートを使用しており、ゲート部分はほとんど目立たないように配慮されている。
いずれにせよ、パチ組みだけならばほんの6-7時間程度で、しかも特別な工具や高い技術も要求されずに、ひととおりのディテールと色彩を再現したミズーリをきれいに完成させられるというのが、この製品の強みだ。
艦船模型のように極小スケール&極小パーツがある場合は、スナップフィット方式にすると「極小パーツなので壊れやすい」「ピン穴/ダボの分だけディテールが制約される度合いが大きい」「角度等が固定しにくい(接着の方がマシ)」「極小パーツなので嵌め込みに力を掛けられない」「スナップフィット組み立て『のみ』の仕様にするため、細部を省略したり無理に一パーツ化したりする箇所が出てくる」といった問題がある。
艦橋ひとつ取っても、通常の接着固定方式であれば、仮組みで面のすり合わせをしたうえで、上に乗せて接着するだけできれいに固定できる。しかし、スナップフィット方式の場合は、小さなデコボコが出ている艦橋を甲板に嵌め込もうとすると、嵌め込むために力を掛けることができないし、嵌め込みの際に破損するリスクも非常に高い。可動ロボット模型とは異なって、強度確保というスナップフィット方式のもう一つの利点も生かされないし、ほぼ無駄な仕様になる。もちろん実践上は、ユーザーの側でピン部分をあらかじめ切り飛ばして接着すればいいのだが、無駄であることは変わりない。
うーむ、このプラの脆さは致命的なのでは……。ちょっと力が掛かっただけで内側からモソモソと割れ崩れてしまう。これほどの脆さは初めて経験した。これ、ABS製だったのか? リモネン系接着剤では良くなかったのか? 途中からは、接着剤を使う時はABS接着剤を使った。これならば、プラを侵さないし、接着剤それ自体の粘性によって固着させるので、安全に固定できるはず。FUJIMIの艦NEXTキットでは、嵌め込みの潤滑剤として流し込み接着剤を使っていた(これは有効な手法だと思う)が、これらのキットではそのような使い方は差し控える方が良さそうだ。
(2017年9月11日、自宅にて撮影)
上からRevell、Dragon、Pitroad(B/Tコンパチ)、そしてMengの2隻。時間と気力のあるかぎり作っているが、なかなか手が回らない。Dragon版とPitroad版は最近買ったばかりだからやむを得ないが、しかしそろそろ
MENGのミズーリとPITROADのメリーランド(仮組中)、どちらも1945年時。同時に同一国家に所属した戦艦同士でも、こんなに違うのかと驚かされるが、前者は1941年起工、後者は1917年起工と建造年代に24年もの懸隔がある。ミズーリが全長のわりに横幅がほっそりしている(メリーランドとほぼ同一)のは、パナマックス基準に対応させたためだろう。艦首が黒く見えるが、光の反射でそう見えているだけ。
MENG社製ミズーリの組立説明書(水色の丸は撮影者による追加)。機銃類は、このように複数が一パーツにまとめられて、甲板上の窪みに嵌め込む仕様になっている。極小ディテールを大きなパーツにまとめ、なおかつ接着剤不要の嵌め込み組み立てを実現するものとして、理に適っている。ただしこのキットでは、嵌め込み穴がきつすぎ、またプラ材の脆さもあり、十分に成功しているとは言いがたい。
【 MENGのビスマルク 】
ミズーリのキットは程々の出来だったが、ビスマルクの方は非常によく考えられた作りになっていた。シールにほとんど依存せず、木甲板部分のパーツ分けも丁寧に行っているし、パーツの合いもきちんとしている。艦載艇の木甲板部分まで作り分けするという細やかな仕様。機銃等の小物も、ひととおりきちんと再現している。カタパルトは伸縮選択式。
ただし、ミズーリと同様の欠点として、スナップフィットのピン穴側が小さくて嵌め込みづらい。ピンバイスで拡張すれば済む話ではあるが、メーカーとしては今後の課題だろう。
複雑な造形のパーツ群を多重嵌め合わせしてきれいな彩りを作り出すという、まるでBANDAIプラモのような楽しみ方が、まさか艦船模型ジャンルで味わえるとは、想像だにできなかった(ちなみに、BANDAIにもカラフルな「1/700ちきゅう」があるが、比較的クラシカルなスケモ風のパーツ構成で、色分けはそれほど細かく行われていない)。原始的なシルエットモデルから、おおぶりなモータライズキット、洋上模型のシリーズ展開、四面箱組みのクラシカルなスケールモデル、そしてスライド金型多用によるパーツ造形の自由度向上、さらには成形色による色分け再現とスナップフィット方式による新たなパーツ分割原理と、数年~十年単位でずいぶん変化を遂げてきたと言っていいだろう。
ティルピッツとの違いは(時期にもよるが)、まずは中央のカタパルト周辺が大きい。最上甲板のカバー範囲が違っているし、それに応じて副砲およびクレーンの位置も異なる。その後ろには魚雷も載せられている。さらに、各部に機銃が増えていたり、艦橋頂部の見張り台の形状がちょっと違っていたり、マストの形状も違ったり……塗装を別にしても、相違点はいろいろある。今回のプラモのランナー構成を見るに、どうやらビスマルク専用のワンオフキットとして設計されており、ティルピッツの製造は想定されていないようだ。まあ、造形それ自体としては、大きめの追加ランナーを一枚足せば対応できそうなくらいの比較的小さな相違なのだけど、スナップフィット仕様を完全なかたちで維持しようとすると大きな甲板パーツも差し替える必要が出てくるので、おそらくティルピッツ版はリリースされないだろう。
ミズーリは今一つ不満の残るキットだったが、ビスマルクは楽しんで作ることができた。今回はパチ組みで仕上げたが、もう一隻、二隻くらい作ってみたい。さっと塗装して多少スミ入れするくらいでも、かなり見栄えが良くなるだろう。
そういえば、どちらも艦載機が付属していなかった。
ともあれ、これでようやく制作率70%に戻せた。ただし、この制作率が維持できるとしても、このまま購入と制作を続けていくかぎり、積みプラモの「総数」はやはり増えてしまうのだが。
(2017年9月12日、自宅にて撮影)
MENG社製のビスマルク。木板部分を別パーツにすることで色分けしつつ、さらにその下にグレーパーツを挟むことで、木甲板上の小物類を色分けしている。船体部分と挟み込んで固定するため、グラつくことはない。塗装時もマスキング労力が大いに軽減される。同社のミズーリも部分的にこの手法を採っているが、このビスマルクキットの方が徹底されている。
手許にある各国の戦艦を並べてみるとこんな感じ。上からミズーリ(米/MENG)、ビスマルク(独/MENG)、ヴィットリオ・ヴェネト(伊/PITROAD)、そして比叡(日/FUJIMI特シリーズ)。それぞれ起工年は1941年、1936年、1934年、1911年。ビスマルクは1941年に失われ、比叡も42年にソロモン海に沈み、その一方でミズーリは44年に就役したので、歴史上同時に存在したことは無い。
上の4隻を、角度を変えて艦橋部分をクローズアップで撮影。クールな外観のミズーリ、重厚な構えのビスマルク、ほっそりと引き締まったVV、そして段積みの比叡と、それぞれに個性がある。一口に「戦艦」と言っても、時代状況(技術水準、経済状況、運用環境と運用目的、相手国)によってこのくらいには多様性が生じる。
ヴィットリオ・ヴェネトも、もう一度丁寧に作りたいなあ。春日尚樹氏もああ言っていたことだし。
今回は、GodHandニッパーの切れ味を堪能できる良い機会にもなった。細かなパーツも、力を掛けずにツプツプ切れるので、とても作業が進めやすかった。ただし、片刃であるため、刃の入れ方に気をつけなければいけない場面が生じるし、また、先端が尖っていないので、奥まったところを切断するのには不向きだった。まあ、複数のニッパーを使い分ければ済むことだ。
09/02
【 時間と成果 】
趣味の問題も、一応は「投入するコスト」と「得られる満足」のバランスの問題として捉えることができる。最終的には「得られる満足」を最大化することが目的になるが、個人が服する現実的制約の中では、コスト(金銭、労力、時間等)を手掛かりにして考えることによって最適化としての満足最大化を求めるのが有益だろう。
例えば艦船模型では、多くの人にとっては、一生涯のうちに制作できる数量はかなり限られるであろうから、「作り込みをどの程度まで追求していけば(あるいは、どの程度までにとどめておけば)、総合的な満足度を最大化できるか」を考えることができる。満足度評価は多分に主観的なものだが、私自身の場合はどうなるかを試しに考えてみる。
仮に1/700戦艦クラスのキットを対象として、現在の自分の技術で出来るかぎりのことをして最高の完成度に持って行った場合、完成品を手にして鑑賞することで得られる満足度を100とした場合に、そこまでは行わないさまざまなアプローチで完成品を手にした時に、私はおそらく以下のような満足を得るだろう。
時間 | 満足度完成度 | 効率 | アプローチ |
1 | 10 | 60 | キット(と説明書)をランナーのまま眺める。購入&帰宅に1時間と計算した。これはこれで面白いが……。 |
5 | 40 | 48 | 無塗装パチ組み。基本的に単色(船底部のみは赤色。探照灯などはクリアパーツのままだったり)だが、一応全体のシルエットと各部のディテールを鑑賞することができる。簡単なキットであれば3時間、細かいキットであれば7時間以上掛かる。 |
10 | 70 | 42 | 簡易塗装。ごくおおまかにのみ塗り分けをする(ランナー状態での塗装程度。マスキングもほとんど行わない)。各部の粗は多々あるが、一応は完成状態の艦船ミニチュアとして鑑賞できる。 |
15 | 80 | 32 | キットの指示そのままで、全塗装完成させる。合わせ目処理やヒケ処理くらいはきちんと行う。モデラーとしてはここが「制作(完成)」と言える最低水準だろう。 |
20 | 90 | 27 | さらにエッチングなどを独自に組み込んで、見栄え(ディテールとリアリティ)を高める。 |
25 | 100 | 24 | ウェザリングなどの処理、空中線の張り渡し、考証に基づく独自改修なども行っていく。 |
「効率」とは、時間あたりの満足度(を整数比にしたもの)。これが最大化されればいいということになる。
キット1個だけで言えば、「作る手間を一切掛けずに買いあさる」というのが正解になってしまう。これは正しいだろうか? 完成品を購入する鑑賞者ならば、これでも良いと思うが、私自身はそれでは満足しない。上記の計算に含まれない考慮があるからだ。すなわち、「模型制作という行為をしたいという強い欲求がある」、「複数制作すれば、それだけ同時に、しかも容易に鑑賞できる(一々箱から取り出したりしなくてよい)」、等々。だから、実際には満足度の効率はたいして良くはならない。
無塗装制作は、満足度は高くないが、少ない手間でさまざまな艦船のシルエットを楽しむことができる。彫像のような単色立体物もあることだし、これはこれで一つの楽しみ方なのかもしれない。特に近年のハイディテールキットであれば豊かなディテールを楽しむこともできるし、現用艦などはせいぜいデカールを貼るだけでもかなりまっとうな見栄えのするものになる。ただ、これだけではもったいないとも思うけれど。ちなみに、特easy版や艦NEXT版のようなキットであれば、工程としては無塗装でも、簡易塗装相当の満足度(70)を得られる。大昔のキットなどは、たまに手すさびでこういうパチ組みで済ませることがある。
簡易塗装(せいぜいF-toysくらいの塗り分け)。ようやく実艦らしくなってくる。とにかくたくさん作って、そしてたくさん並べて鑑賞したいという人は、こういうアプローチでもいいのかもしれない。ただし、ある程度作り慣れているモデラーでなければ、そもそも工程効率化を適切に構想設計することができない。私自身、このアプローチはほとんど試したことが無い。木甲板シートを使う場合は、これに相当するくらいの作業量になるだろうか。
標準的な全塗装。手早くイージーに作ったとしても、15時間くらいは掛かるだろう。要するに、丁寧にマスキングをする分の時間が加わる。製品見本レベルのきれいな姿を楽しめる。このあたりから、投入時間のわりにクオリティ上昇の効率が落ちてくるが、もちろんクオリティそれ自体は確実に上がる。極論すれば、仮に「1万時間掛ければ物凄い完成度の模型が一つ仕上げられる」として、その満足度がたいへん大きなものになることが見込まれるとしても、そのたった一隻のために十年間を掛ける(賭ける)という人はそう多くないだろう(――ただし、1/100艦船などの超巨大スケールに取り組んでいる方は何人もいる)。この仮設事例から考えてもやはり、複数キットで計算するかどうかで大きな違いが生じてくる。
追加工作を含む制作。満足度効率はかなり下がるが、「自分なりの取り組みで手を掛けたという満足」はかなり大きい。「完成度=満足度」という処理それ自体があまり適切ではないという反省が生まれる。また、完成品を鑑賞する時間を長く想定すればするほど、高い完成度で制作することのアドヴァンテージが大きくなる。ウェザリング等まで入念に行う場合も同様だ。
ひとしきり検討してみると、人生の中のサブ趣味として簡単な制作でつまみ食い的に楽しんでいくのも一つの有効な接し方だと思うが、腰を据えた趣味として付き合っていく場合には、時間を掛けてでも十分に高い完成度で仕上げていくことは、長期的にみて十分リターンが大きいと言える。一隻に何ヶ月も掛けるモデラーは、けっして非効率なのではない。
離型剤のことはよく分からない。ついているのかどうかも判断できない。外国のプラキットに手を出すことが比較的少ないせいもあるが、プラの表面がベタついているものに遭遇したことも無いし、塗料の乗りが悪いということも無かった。マスキングとともに塗装が剥がれてしまったという経験も無い。ものによっては、おまじないくらいのつもりで軽く洗っておくことはあるけれど、どこまで必要なのか、どういう場合に必要なのか、分からないのだ。ただし、水を張ってランナー洗浄するとなんとなくお湯が濁ってくることがあるので、やはりランナーパーツの表面は必ずしもきれいなものではないのだろうという認識は持っている。
レジンキットの場合はかなり事情が異なるようだし、表面塗装の斉一なツヤが重要になるカーモデルなどではとりわけ慎重を期して事前洗浄しておく方が良さそうだ。
メリーランド、うーむ、見事な箱組みよのう……。べつに負荷が掛かるわけではないし、嵌め込みの溝があるので位置決めもしやすいので、四面全てにモールドを入れるにはこれで必要十分なのだが、しかし問題点もある。すなわち、1)パーツ間の合わせ目が多いので整形が大変だし、2)接着剤漏れのリスクが高まるし、3)改修等の追加工作に際しても強度の低さが問題になりやすい。
キット全体としては、1/700相応のくっきりしたディテールが気持ち良い。
(→2018年1月~/2017年1~3月、2017年4~8月)