2026年3月の雑記。
03/08(Sun)
「○○な作品9つ」について。書影に関しては、現在の著作権に関する慣行に鑑みてひとまずOKだとしても、「自分にとって印象深い作品」、「自分の芸術観や美意識や社会性に対して大きな影響のあった作品」、「客観的評価として最高だと思う作品」はそれぞれ違うし、漫画では前世紀の大家の名前を挙げていくだけでも10も20も埋まってしまう。手塚、藤子、萩尾、永井といった巨人時代の傑作群はひとまず措くとして、そして00年代半ば以降の大量の新人たちの爆発的なデビュー以降はもう数え切れないとして、世紀末をまたぐ頃(90年代から00年代初頭)に大きな仕事をしたクリエイターたちから挙げると、個人的にはアフタヌーン系の作家に集中してしまう。冬目景のレトロ趣味、岩明均の倫理的な厳しさと苦々しさ、岩永亮太郎の「技術と社会と個人の価値」に関する思弁、植芝理一のユニークな幻想性、曽田正人の陶酔的な熱狂の精密な表現あたりは、特に思い出深い。
……あっ、宇河弘樹氏の新作が発売されるのか。『朝霧の巫女』を思い出しながら検索していたら、ちょうど良いタイミングになった。
アニメだとどうなるかな……。素人なりに、円盤を持っている中から、シリーズものタイトルで(つまり単発の劇場版を除外して)年代別に5本くらいずつ挙げていくと:
90年代以前:
- 『宇宙船サジタリウス』(1986-87):労働問題から絶滅動物まで含蓄のあるエピソード多数。
- 『機動戦士ガンダム0083』(1990-91):ガンダムシリーズからはこの一本。2D作画によるロボットアニメーションの洗練の極地。『0080』『08小隊』もそれぞれわりと好き。本編シリーズは、どれもあまり好きではない。
- 『新世紀エヴァンゲリオン』(1995-96)、『少女革命ウテナ』(1997)、『serial experiments lain』(1998):この三者はベタだけど逸しがたい。
※単発の劇場版アニメだと、『ナウシカ』(1984)や『アイアン・ジャイアント』(1999)などもある。
00年代はちょっとしかアニメを観ていないが、
- 『スクラップド・プリンセス』(2003):異世界風ポストアポカリプスから魔法の科学的アプローチまで、この時期以降の様々な流れを決定づけた歴史的な先触れ。
- 『錬金3級 まじかる?ぽか~ん』(2006):のんびりした雰囲気と、余裕のあるユーモアに満ちたオリジナルアニメ。
- 『シムーン』(2006):ジェンダーSFオリジナルアニメとしてユニークな魅力がある。
- 『ストライクウィッチーズ』(第1作は2008年で、ぎりぎり00年代)。今世紀風のミリタリーネタのアニメとして先駆的。これも一応オリジナル作品。
※この他にも『NieA_7』(2000)とか『エルフェンリート』(2004)とか『蒼穹のファフナー』(第1作は2004年)とかいろいろ。GAINAXが元気だった時代でもある。
10年代初頭から半ばくらいまではちょっとだけアニメを観ていたが、10年代後半はほとんど観ていない。
- 『ヨスガノソラ』(2010):視聴覚演出が絶品。ヒロインごとの分岐展開も面白かったけど。
- 『ソラノヲト』(2010):架空スペインでのポストアポカリプスミリタリーオリジナルアニメby神戸守監督の傑作。個人的にリピート率が高めで、金元寿子氏主演も良い。
- 『キルミーベイベー』(2012):ネタアニメだが、高いクオリティで絶妙にまとまっている。アニメーションの動きも良いし、型に嵌まらないユニークな演出もある。
- 『輪るピングドラム』(2011):この社会の陰惨さをシンボリックに表現する手つきと、それを突き抜ける幻想性の取り合わせが面白かった。
- 『放課後のプレアデス』(2015):10年代の魔法少女ものからはこれを。佐伯昭志監督とGAINAX末期の若手クリエイターたちが描いた天文SFジュブナイルとして深い味わいがある。声優陣も、主演の高森氏から大橋歩夕氏、藤田咲氏など、実に良いキャスティング。
- 『終末のイゼッタ』(2016)。第二次大戦の小国に強力な魔女を投入したという架空戦記ものだが、一クールで突っ走ったドラマティックな展開は、オリジナルアニメらしい緊張感と魅力に溢れている。終盤の早見沙織氏の演説シーンの迫力が素晴らしい。
※『TIGER&BUNNY』とか『ダンタリアンの書架』とか『たまこまーけっと』とか『少女終末旅行』とかも良い作品だし、美少女ゲーム発アニメの流れの最後に来た『星空へ架かる橋』『蒼の彼方のフォーリズム』も上手くまとまっていたし、『蒼き鋼のアルペジオ』あたりで本格的な3Dベースのアニメが進出してきた時期でもある。
20年代は、完全に配信の時代。10年代は新人声優のクオリティが沈滞気味だったように思うが、2022年頃から優れた才能が頭角を現してくる。また、オリジナルアニメが激減し、原作模倣的なアニメ化や、人気タイトルのシリーズ化(複数クール化)が一般化した。
- 『望まぬ不死の冒険者』(2024):地味な作品だが、細やかな演出や、地に足のついた動画表現など、見応えがある。原作をきちんと咀嚼して再構成している点も良い。
- 『悪役令嬢レベル99』:こちらも、原作を大きく組み替えて、一クールでストーリーの最後まできちんと語りきってきれいにまとめ上げた秀作。ファイルーズあい氏の主演も抜群に良い。
- 『小市民シリーズ』(2024/2025):神戸守監督の映像演出にリードされて、メインキャラ羊宮妃那氏の濃密な芝居が存分に披露される。ミステリとしてはツッコミどころが多いが、映像としては傑出した美しさ。
- 『負けヒロインが多すぎる!』(2024):メジャー(?)タイトルからはこれを。風変わりなキャスト陣も上手くドライヴしつつ、情感豊かな映像演出を堪能できる。
- 『ネガポジアングラー』(2024):この時期のオリジナルアニメとしてはこれが一番。港湾や河畔の風景は開放的でありながら物寂しさもあり、そうした中で人生に悩む若者たちのデリカシーが巧みに描かれている。
※上記以外にも、オリジナルアニメ『全修。』も良かった。『九龍ジェネリックロマンス』は原作漫画を力業で再構成して結末まで語りきってみせたが、『ある魔女が死ぬまで』『鬼人幻燈抄』などは原作の途中で終わってしまったのがもったいない。動画表現の面白さでは、『クレバテス』が印象に残っている。
現在の冬クールだと、『透明男と人間女』が面白い。視覚障害者女性と、「見えない」男性のロマンスものというシチュエーションだが、獣人族なども含めた多種族社会で、それぞれの身体的-社会的環境の掘り下げっぷりがすさまじい。いわゆる「解像度が高い」……高すぎる。原作者も凄いが、アニメ版でもそれを丁寧に再解釈、再構成しつつディテールを追加しているという秀逸な翻案。
人格形成への(悪)影響、というか、「新たな価値観に触れる体験をした」という意味では、やはりPC美少女ゲームが決定的だった。それまでの小説やハイアートや全年齢コンシューマゲームや少年/少女漫画とは大きく異なり、なおかつ、TVのような大衆エンタメでもなく、露悪的なサブカルともまた違った空気を、初めて体験した。
そしてその中で、SLG系(データ攻略系)ゲーマーという形で、私はようやくオタク(当時)として自立することができた。また、一タイトルあたり20時間前後の長丁場をひたすら、声優のキャラクター芝居を聴き続ける中で、役者の優れた演技を聴くことの意義も理解していった(※一色ヒカル氏を初めとする、当時の一流声優たちのおかげでもある)。
ただし、美少女ゲーム文化≒「キャラ萌え文化」の隆盛は、「心地良い世界に耽溺する放恣かつ独善的な享楽的オタク」たちの本格的な始まりでもあって、それは2020年代の現在の目で見ると大きな問題含みではあったのだが。
漫画新刊もいろいろ買って読んでいる(※未読をほぼ消化しきったほど)のだけど、諸事情により、感想メモを書けないままベッドの脇に積んでしまっている。先月下旬くらいからずっとこの状態で、このパピルス土嚢がそろそろ20冊に近づいてきた。なんとかしなければ……。