2026/10/13

2026年10月の雑記

 2026年10月の雑記。

 10/31(Sat)

 実社会に存在する邪悪行為と、それと関わるフィクションをどう扱うかの問題はやはり難しいよね……。

 1) 例えば、ヤクザを美化したり、コミカル(フレンドリー)な存在として描いた漫画。実際にこれらを真に受けたような、「義理人情のあるヤクザも多い」という投稿も見かけるようになった。またその一方で「昔のヤクザは一般人には手を出さなかった」という噴飯物の発言も散見されるが。そうした創作物が、実際にそれらをどれだけ助長しているかは分からない。しかし、ここ十数年で、ヤクザキャラを表に出すハードルはずいぶん下がってしまった。
 2) 刺青も、ヤクザの暴力的威圧の象徴だったり、罪人の象徴だったりする。こうした歴史的経緯から、海外のタトゥーに対しても同じように嫌悪する人は多いようだ。現代日本人でも、刺青やシールを誇示するタイプの人は……という見方もある。そういうのも、分からないではない。
 3) 競馬擬人化のキャラゲーが、現実のギャンブルに多くの人を誘導する作用を生んでいる。これはどうか。『ウマ』が始まる前は、競馬遊戯者たちは口を揃えて「現実の競馬には手を出すな」と警告していたものだが、今ではオタクたちの間では馬券晒しまでごく普通のことになってしまったよね……。
 4) 現実のストーカー被害体験から、ストーカーっぽい状況の漫画に反発するのも、構造としては似たようなものなのだと思う。現実のストーキングを助長しているか否かにかかわらず、ストーカーめいた思考の主人公を無邪気に(無害なものとして)描くことがきわめて危険だというのも理解できる。
 5) その他、犯罪行為(例えば闇金主人公とかアメリカン・ニューシネマとか)や、侵略戦争(WWIIもののSLG)を美化したりするのは、どこまで許容されるか。あるいは性産業従事者キャラはどうか、等々。

 これらの事例全てに対して、一貫した態度を取る、あるいはそれぞれに明確な論拠を持って対応しなければいけない。
 私の場合は、「禁止せよとまでは言わないが、いずれも悪影響は否定できないから、やめた方がよいとは思う。ただし、現実の行為を抑止させる注意書きが十分に存在する場合には、その度合いに応じて許容する」という感じ。

 1) ヤクザ漫画は一切手を出さない。ヤクザを身近に感じさせてはならないし、それは広告レベルでも同様だ。有害な反社会的存在であることを作中で十分強調しているならば許容するけど。
 2) タトゥーの人には、内心では最大限警戒するが、それによって扱いを変えることは無いように努めている。商業施設等がそれぞれの判断でかれらを排除することについては、ひとまずノーコメント。つまり、表立っては賛成も反対もしないつもり。
 3) 競馬ネタの創作物も、けっして肯定的に言及はしないし、一切買わない。『じゃじゃ馬』は漫画喫茶あたりで通読したけどね……。麻雀などの地下ギャンブル漫画のジャンルはどうするかという問もあるけど、あれらは「普通は手を出さない(というか、実在するのか?)」、「違法なアングラ行為であることが自明の前提である」から、まあいいのかなあと。『ウマ』関連は、ギャンブルの危険性が欺瞞的に脱臭されているように見える。
 4) ストーカー思考っぽい漫画についても、現実のストーカー被害と結びつけて反発する心情も分かる。万一にも現実の行為を助長されては大変なことになるという意味で。ただし、あの作品について言えば、「絶対にしてはならない」という戒めの描写がくりかえし書かれているし、作品の主題はそこではないので、ひとまず許容して読んでいる。ただし、一歩間違えばアウト側に落ちてもおかしくないし、実際、サービス的なお色気カットの多さは「踏み外している」と判断されても仕方ないだろう。

 要するに、素朴な二分法「現実とフィクションは別物」という基準は、多くの場合(多くの人々の多くの場面で)、当てはまっていないし、また、実際にも無関係として切断するのが困難な状況が多い。
 だから、実社会に対する悪影響を最小化する責務が、創作の側には課せられる。それは、ゲーム開始前の「18歳未満に対する性的行為を肯定していない」という注意書き程度でもよいし、ストーキングやヤクザは「悪」であると作中で明示するのでもよい。
 トップダウンに「フィクションは原則として現実と無関係な筈だ(だから内容について責任を負わない)」という無邪気な想定は成り立たないという話でもある。

2026/10/08

アニメ雑記(2026年10月)

 2026年10月の新作アニメ感想。大体1-4話あたりまで。
 暫定評価は、『ゾンビ』80点、『惚れ薬を依頼された』80点、『剣でした』75点、『ひた隠す』70点、『とある暗部』70点、『目覚めたら最強装備と宇宙船持ち』70点、『dreamland』65点、『野生のラスボス』65点、『Dark Machine』55点。『ロメリア』はどうしようかな。予想以上に、うまくまとまった良作が多そうで何よりだが、ストーリー面ではマンネリ傾向も感じる。
 オリジナル作品をどれか一つは残しておきたいが、『バーテックス』と『ダンデヴァイン』は失格、『Dark Machine』も今のところ陥落寸前。『dreamland』も、まだよく分からない。


●『ゾンビさがしてます』
 第1話。シチュエーションとシナリオはあまりにも陳腐で退嬰的だし、声優陣の芝居も今一つだが、元気よくアニメーションさせている映像は楽しい。クラシカルな残像式中割によって、運動表現の勢いと感触を表現しつつ、ところどころに外連味のあるレイアウトを使って劇的なシーンを上手く作り出している。作画枚数もわりと多そうな感じ。今回の絵コンテ&演出は、宇根信也監督自身による。
 小市氏のキャラもいずれ登場するようだし、ひとまず飽きるまでは視聴継続する予定。薄着主人公の頻繁なヘソ露出も、ちょっと物珍しい。
 しかし、現代文明を知らなかったキャラクターたちが、たかが廃ホームセンターの品揃えに感動するのは、あまりにもみみっちくて少々悲しくなる。こういう描写はけっして好きではない。

 第2話は、日笠ヴォイスのゲストキャラが登場。ゾンビに噛まれた者との切ない別離を正面から描くのは、なかなか意欲的。映像面では、BGMを極端に減らして、不気味な予感と非現実的な浮遊感を演出しつつ、クライマックスまでじっくり引っ張っていく。絵柄は一見シンプルなようでいて、情趣のある作品世界をきちんと作り出している(※ただし、ギャグ演出の見せ方だけは面白くない。たぶん機械的に漫画を模倣してしまっている)。絵コンテは、今回も宇根監督自身。
 花火のくだりは、原作には存在しない、アニメ版独自のシーン。噛まれた人間はもう救えない=湿気った花火はもう輝かないという、悲哀感の暗示的演出も良いし、こうした描写をさらりと取り込んでいるところに、アニメ版スタッフの志操と意欲と努力が見て取れる。これなら今後の話数も、信頼して付いていって大丈夫だろう。
 それにしても、ムチムチだなあ……。

 第3話は、脚本面がいささか散漫に見えるし、絵コンテもちょっともどかしい。たしかに良いシーンもあるのだが、作為的に飛ばされている箇所もあり、少々ぎこちない。とはいえ、映像面ではアクションを(適度に省力しつつ)ダイナミックに描いているし、廃墟背景の作画も良い雰囲気だし、劇伴も活力に満ちている。設定面では粗も多いが、「ノリと勢いを楽しむ作品」であることが最初から明らかなので、そこは問題にならない。
 前回のミカヅキは、主人公にとっても、初めて「知人だったゾンビ」を処理した経験だったのかもしれない。それにしても、片腕を失ったキャラクターは、今後どうなるのだろうか……。
 少女サクラ役は、貫井氏。こういうドスの利いた声色芝居もできるのか……。

 第4話は、雨天のエピソードだ! しっとりした空気の中に、心の奥底のわだかまりが漏れ出していき、その一方で外界の他者(ミカヅキを見捨てた一団)との対立という激しい状況も描かれる。この話数単体のストーリーとしても、「仲間(家族)を見捨てない」というテーマ性がきれいに描き出されている。映像面でも、ロングショットの雨天廃墟の情緒から、病院内では斜めに傾斜したカメラワークが不安感を煽り、さらに回想シーンは重苦しく黒ベタで塗りつぶされ、乱闘シーンでは地面ローアングルからの遠近法でスリリングさを演出している。サクラがユウに怒るシーンも、やたら元気で生き生きした動画振り付けになっていて楽しい。絵コンテは超ベテランの岩崎知子氏、演出の徐恵眞氏も00年代から演出家としてのキャリアがあるようだ。
 前回のミカヅキの話をしっかり引き継いで、それを今回のテーマと結びつけながらさらに劇的な展開を作り上げている手腕もなかなか凄い(※原作由来かどうかは知らない)。主人公アキの無謀な言動も、ヒヤッとするところもあるが、根本氏の率直で力強い芝居のおかげで説得力が担保されている。作中でも、フェミニンなかわいさを強調してきたキャラクターについても、右腕を切断された血まみれの包帯姿や、失血による唇のかさつきや目元の隈を正面から描ききっている胆力にも感嘆する(※それにしては、声優はちょっと元気に演じすぎていたが。これは声優と音響監督の不手際だと思う)。ユウ役の山村響氏も、このメイン回で濃密な芝居を披露している。
 想像していた以上に凄味のある作品が、今まさに育ちつつあるのかもしれない。「ここまでやるか」、「これを描いてみせるのか」と、毎回びっくりさせられている。


●『Dark Machine』(※オリジナル作品)
 第1話。うーん……つまらない。いかにもI.G.っぽく格好を付けているのだが、キャラクターの心情が空虚だし、映像的な抑揚も乏しく、脚本も陳腐で茶番的な没入型対戦ゲームもの(eスポーツ風)。今回のバトルシーンでも、ロボットの巨大化が映像的に分かりづらい(サイズ感の視覚的表現が欠けている)し、巨大化の効果もまるで分からないままなのでドラマとしてのまったく機能していない。以前の『メビウスダスト』の二の舞になってしまいそうだ。
 映像(絵コンテ)も駄目、脚本も駄目。作画も3D任せで、たいして動かない。うーん……ひどくはないが、あまりにも退屈な出来でガッカリした。要するに、見せ方が下手(演出が拙劣)という一番虚しいタイプ。キャストだけは良いのだが、沢城氏もこういうトリックスター的な役柄を任せるには真面目すぎるし、イサナ役の会沢氏も芝居が薄い。ブラン役の杉山里穂氏の出番が多ければいいのだが……。
 スラム街で船を爆破するという暴力的な手段を取っているわりに、eスポーツ対戦で負けたらすごすご引き下がるというのも、作劇の説得力を致命的に喪失している。対戦中のインターバルで次の戦術を口頭説明しているのに、そのすぐ隣に相手チームが座っているままというのも、状況設定のコントロールが利いていない。これは明らかに脚本家(鈴木たち)が悪い。
 第1話にして完全に失望したが、せっかくのオリジナルアニメなので、もうしばらくは視聴を続ける。
 大枠としては、第1話で一応、必要なことは描写しているのだけどね……。「主人公の行動目的(ゆるいけど)」、「その世界の状況(崩壊した水面上昇都市)」、「周囲の2つの勢力とラスボスっぽい存在」、「ロボットバトル第1戦の全体」。しかし、それらを形だけ提示しても、ドラマの駆動要素として構築できていないのは、やっぱり脚本(と視覚的演出)が下手だと言わざるを得ない。

 第2話も、90年代センスの真似事のようなマンネリ感が強い。名言キャラや「ナイス」連呼する口癖キャラ、そしてキャラクター像を確立させてもいないのに早速のギスギス展開。映像/設定面でも、ところどころにヌメッとした3Dめいた絵が目立つし、ドローンやUSBなどのチープな言及、そして「何故マウス(トラックボール)とキーボードでロボット操作をするのか」という根本的なおかしさ(※オリジナル作品なので、これから説明があるかもしれないが)。今回も、隣に対戦相手がいるのに自軍の戦術プランを堂々と説明しているという有様。
 とにかく悪いところばかり、引っかかるところばかりが目立つ。できるだけ好意的に見ようとしても、ロボデザインくらいしか見どころが無い。キャスト陣も良い筈なのに、台本(状況と台詞)の陳腐さのせいで演技を掘り下げる余地が無くて持て余している。
 次で駄目だったら切るかなあ。3話≒60分も掛けてもまだコンセプトや見所を打ち出せないなら、もう無理ということだから。


●『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』
 第1話。設定はいささか強引で、この第1話では回想シーンで描写をすっ飛ばしてしまっているが、主人公キャラの意志は把握できるし、森の中の不吉な雰囲気など、要所でニュアンスに満ちた映像表現を展開している。作画コストはせいぜい下の上くらいだと思われるが、絵の見せ方は意外なほど充実している。このペースで維持していってくれたら十分な出来。絵コンテは牧野友映監督。演出は副監督の村田尚樹氏と、堀川和人氏の連名。
 主演は若山氏。良いところもあるけど、薄いところも多く、あまり好みではない。基本的にノリで演じているようで、キャラの雰囲気にハマったときは魅力的なのだが、台詞の解釈が浅いのでこうした説明的な台詞の多いキャラでは言葉が上滑りして退屈になる。姉キャラは上坂氏。黒竜は、少年寄りの優しい声色なのがユニーク(※演じているのは徳留慎乃佑氏)。
 回想シーンでは画面アスペクト比が変わる(左右に黒帯が入る。たぶん4:3レイアウト)というのはちょっと面白い。

 第2話。映像面では、やけに良いカットがある。キャラの表情も個性的だし、レイアウトも上手いところがあり、剣戟シーンも折り目正しい2D作画でかなり迫力がある(※EDクレジットによれば、西洋剣術の特別監修を入れている)。今回の絵コンテは、超ベテランの辻初樹氏、演出は白石道太氏。
 しかし、それだけに、主演の芝居が浮ついて空転しているのが辛い。大雑把な雰囲気だけで演じているのか、流れ任せの大味な演技で、台詞ごとの感情の機微が出てこない。若山氏は、良いときもあるのだが、ここではそのスタイルの悪いところがもろに前面に出てしまっている。つまり、トーンを決めてただ声を出しているだけで、一つ一つの言葉に対する意味づけがまるで欠けている。要するに、小回りが利かない。それに対して、明確で強い感情表現のある台詞であれば、そのムードを鮮やかに表出することもできるし、あるいは、幼児キャラのようにテクニカルな芝居が求められる場合には、「自然な」「生っぽい」スタイルを外さざるを得ないので言葉の細部を丁寧に構築することになるし、そういう技巧的な構築作業が出来る役者でもあるのだが……。

 第3話。やはり、びっくりするくらい上手い。動画表現はきちんと神経の通った作りで、バトルシーンも迫力があるし、静かなシーンにも情緒があるし、キャラクターの表情にも明確な個性がある。脚本と台詞回しもユニークで魅力があるし、転生した聖女としての矜恃と責任感という精神性の描写も実に良い。今回はEDをカットした長尺ストーリーになっているが、息を詰めて24分間を視聴した。絵コンテは、これまた超ベテランの殿勝秀樹氏、演出は濱田翔氏。
 (それだけに、主演の上滑りした芝居だけがもったいない……。明らかなコミカル路線のシーンや、明確な感情を乗せられるシーンは良いのだが、それ以外の場面では皮相的な演技しかしていない。)

 第4話。今回も上手い。物語はスルスルとスムーズに流れていくし、映像は美しく瑞々しいレイアウトと繊細な音響演出で構築されている(森の葉擦れのSEや、木管の音色豊かな劇伴など)。ドラゴンの羽ばたくモーションや、それが巻き起こす衝撃波の気持ちよい迫力も小気味良い。その一方で、小型化したドラゴンを服の下に入れて、おなかが膨らんだまま歩き回るというユーモラスさも程良く表現しているし、ドラゴンの首を撫でる所作とその反応の愛らしさなども心をくすぐる。全体の作画枚数は減らしつつあるようだが、それを感じさせない充実がある。ストーリー面でも、表面上はなんか大したことは起きていないのだが、ドラゴンのバックグラウンドや現代聖女に対する苛立ちなど、細やかなニュアンスを湛えた描写が上手い(※たぶん原作それ自体が巧みに作られているのだろう)。補佐官パティ役を演じているのは、大西沙織氏。
 「お任せ下さい!」が、「おバカせ下さい!」に聞こえたのは、意図的なのだろうか。ここで相手を馬鹿にする意味は無いのだが、何かのネタなのかもしれない。
 (それにしても、何度も繰り返すが、やはり主演が良くない。上っ面の演技だけなのが辛い。感情表現の取っかかりを見つけられないところは、ただ声色だけの浅い芝居をしているように聞こえる。)


●『転生したら剣でした』(第2期)
 第1話は、やたらスムーズに話を進めて、さっそく浮遊島へ突入した。バトルシーンは躍動感があり、見えるか見えないかの瞬間的なコマに凄い表情のカットを入れていたりする。ただし、会話シーンは妙に説明的で凡庸なレイアウトもあるが、まあ仕方ない。第1期では石平監督自身が過半数の話数で絵コンテを担当しており、今回の第1話も石平氏のコンテ(※演出は副監督の清水一伸氏)。OPのクレジットでは、「アクションディレクター」として4人ものスタッフが挙げられているので、バトルシーンの動きはかなり期待できそう(砂金梨乃氏、西野武士氏、酒井智史氏、新田駿也氏)。
 OPの絵を見るに、その次の海洋国家編まで描いてくれそう。あの劇的なドラマを映像化してくれるのは嬉しいが、あまり話を急がず、ちゃんと情趣のある描き方をしてほしい。
 冒頭に登場する無名の少年は、井澤氏が演じている。三木氏の切れ味のよい芝居ぶりも相変わらず。しかし、黒猫少女役の加隈氏は、うーん、小柄キャラを演じているから声量が出ないというのは分かるけど、そうだとしても存在感が薄すぎる。

 第2話。飛ばすところは搔い摘まんでスキップしつつ、バトルシーンは駆け回るスピード感と複合攻撃の立体感を巧みに演出している。漫画版でリファインされた構成を、さらに映像的に再整理しているのが見て取れる。そして井澤氏の怪演も健在で、アンデッドショタという尖ったキャラをも魅力的に見せている。ケルト風+ロックのバトルBGMも良い。

 第3話も凄まじい。バトルシーンは、デコボコの地面を立体的に駆けていくスピード感と、宙を跳ねる身体の軽やかさ、そして衝撃とともにバウンドする力感、そしてロングショットとアップを巧みに使い分ける演出。力任せではない、アニメーションの技術の粋を尽くして達成された迫力だ。コンテは今回も石平監督。演出の山本英氏はweb検索してもよく分からない(※同名の実写監督とは別人か?)。
 そしてラスボスは速水奨氏……これは強い……。

 第4話。ボスキャラが強すぎるため、作劇それ自体は作為的なところもあるが、顔面殴打を初めとして生身の痛みを感じさせる血生臭い絵作りや、跳躍のスピード感と一撃の重たさを両立させる動画表現は真に迫っている。今回も石平監督のコンテで、ひたすら激戦バトルを描き続けているが、ダイナミックな遠近のついたレイアウトや、ほんの一瞬の中割でふんばりの力強さや剣戟軌道の心地良さを巧みに盛り込んでいる。つまり、絵作りが上手く、中割テクニックが上手く、動画演出の見せ方が上手い。
 騒々しいED曲が、Bパートの最後のカットにオーバーラップして割り込んでくるのも、そろそろ慣れてきた。しよーもない音楽ではあるが、本編のハードさを吹き払って読後感をすっきりさせるという意味ではうまく機能しているのかもしれない。


●『とある暗部の少女共棲』
 第1話。シリーズものの一部だが、きちんと読む(視聴する)のはほぼ初めて。高度研究学園都市という設定がいかにも「00年代の考える華やかな未来世界」で、懐かしくも微笑ましい。ドラマ部分は、謎の上司に指示されて活動する闇の粛清組織(?)という、これまた00年代風の設定。チンピラ悪役を殺戮してハッピーエンドにするあっけらかんとしたところも同じく。もちろんアクションシーンやキャラ芝居は20年代テイストにしっかりチューニングしている(※動画クオリティそれ自体はミドルレベルで、それほど動いているわけではない)。新人キャラの絹旗は菱川氏……かと思いきや、赤﨑氏だった。意外と似て…る?

 第2話。やはり00年代異能バトルものの軽薄で傲慢で残虐な雰囲気と、「結局~なわけよ」をひたすら連呼する口癖キャラのしつこさが、早くもつらい(内田氏の芝居も、悪くはないが、深みも無い)。絵作りそのものは良く出来ているのだが……。

 第3話。菱川氏の演じる5人目の変装上手キャラ(とのこと)が登場。騒々しい後輩キャラとして、肝の据わった演技を披露している。相変わらず、冒頭から、誠実に全力で遊んだ芝居をする小清水氏が素晴らしい。今回のふてぶてしい敵キャラ「警策看取(こうざく・みとり)」は富田氏が演じており、これも適役。
 巨大学園異能サスペンスものとしては、オーソドックスな作り。説明がしつこいのは仕方ない。ちなみに、「結局~」は13回、「超~」は11回連呼されている。

 第4話。「結局」は5回、「超」は20回。前半の異能バトルは、5対1という複雑な状況なのに展開が作為的。シリーズものの宿命で、サブキャラの背景を中途半端に匂わせるだけで退場(撤退)というもどかしい描写もある。しかし絵作りは、位置関係のレイアウトを意識していて面白いカットがある。後半は、日常シーンとも呼べないほどの退屈な状況。


●『好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です』
 第1話。びっくりするくらい出来が良かった。魔女の邸内の暗がりと、小物類いの充実したディテール、そして質感のある塗り、さらに扉前を初めとする印象的なレイアウト、そして台詞回しもレトリカルに気が利いている。静かな湖畔の風景と、そのニュアンスに満ちた着彩も良い。絵コンテ&演出は、監督の草川啓造氏自身による。
 内省的な少女の生活を描く短編として、この第1話だけで完結してしまっているのは、良いのか悪いのか……。ストーリーそれ自体は発展性が無さそうなので、どうなるかは分からない。「魔女は嘘をつけない」というのがギミックとして利いてきそうではあるが……。

 第2話。今回も草川監督自身が絵コンテ&演出を手がけており、美術的スタイルはきれいに一貫している。登場人物が3人しかいない、ひたすらミニマルな湖畔の物語だが、小さくて不器用な内省と、それを取り巻く世界の静かな美しさが素晴らしい。印象に残る映像を、嫌味にならないように端正に展開している。
 小松氏は、いまだによく分からない。訥々としたこのキャラクターの音声では、台詞の細部の掘り下げは控えめなのだが(そして彼女自身、典型的な声優養成での訓練は受けていないようなのだが)、キャラクターの中にナチュラルに生きた魂が宿っていくような不思議な感触がある。役者には、理知的に台本を掘り下げる「解釈」タイプと、役にのめり込んで没入する「憑依」タイプと、そして、何故か役の方から降りてくる「自然」タイプ(※プロ声優の中でもレア。もちろん役者本人が努力もしている)がいるというが、もしかしてこの3番目のタイプなのでは……。キャリア初期の『モーレツ』などでは、あまり褒められた演技ではなかったのだが、芯のある良い芝居をされるようになっている。

 第3話。冒頭に姫キャラが登場したが(なんと、関根氏だ!)、それ以降は事実上、たった二人でパンと紅茶を楽しみながら穏やかな会話をするだけの回をやりきってしまった。この尺をしっかり保たせている視聴覚表現の充実が素晴らしい。絵コンテ&演出は、井畑翔太氏(たぶんGAINAX系のクリエイター)。回想シーンの母親を演じているのは茅野氏。
 きれいなBGMだと思ったら、クレジットには「劇伴演奏:Heartbeat Symphony」とある。チェンバロから室内楽まで、繊細な生音演奏でレコーディングしているようだ。
 湖の中の島に地下室……リアルに考えると湿気や崩壊が心配になるのはともかく、たぶんどこかのエピソードで使われるだろう。


●『dreamland』
 第1話。フランスのアニメを、日本語吹き替えと日本版OP/EDにしたもの。母親を火災で失った少年が、トラウマを克服するとともに夢の中のスーパーパワーを手に入れた物語のようだ。火への恐怖を乗り越えようと踏ん張るシーンが、長くそして率直に描かれるのが面白いし、キャラと背景の作画着彩に統一感があるのも物珍しい。海外スタイルの力作らしく、火炎のアニメーション表現は非常にダイナミックに作画されている。いかにもベタな現代異能ものっぽくはあるが、「夢の世界」をフィーチャーした作品は日本の現代アニメでもなかなか見かけないので新鮮味がある。
 原作漫画は、2006年に開始された長寿連載とのことだから、現在の目で見ると古く感じるところが多いのはやむを得ない。その点を割引いたうえで視聴するつもり。

 第2話。古典的な「ファンタジー」(幻想物語)らしい風景が、むしろ新鮮に映る。しかしネタはありきたりだし、台詞回しも凡庸で、映像のつなぎも良くない(夢と現実のシーン切り替わりを適切に演出できていない)。アクションシーンだけは奥行き豊かに描いているが、それ以外は止め絵が目立つ。それ以外の演出も、欧米系の画風のキャラクターに日本アニメのギャグ顔を時折入れてくるのが、いかにもぎこちない。日本のアニメで言えば中の中くらいかなあ。あちらはあちらで、映像表現のノウハウの蓄積がある筈なのに、映像のリズムが悪かったりカットのつなぎが生硬だったりするのは、あまりにももったいない。視覚的イメージにはユニークなところもあるのだが、キャラの出し方も雑だし、主人公の動機付けも説得力に欠ける。
 国内アニメだったら切っているところだが、せっかくだから3~4話あたりまでは視聴してみる。


●『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので~』
 第1話。プロローグは、スペオペものとして派手な動きを楽しく展開している。筋書きそれ自体は、宇宙版の異世界ファンタジーのようなもので、たいした面白味があるわけではないし、ネットスラング的な台詞も多いが、スナック感覚のアニメとしては悪くない出来。主演の古川氏を初めとして、キャスト陣も良い顔触れ。
 「宇宙エルフ」というフレーズはなかなかのインパクト。今後も、このくらい面白く捻ったネタを出してくれたら嬉しい。

 第2話。転生+チート+ハーレムの3つめの要素まで投入してきて、ある意味、正統派路線を快適に進んでいる。スペオペ風戦闘シーンも雰囲気が出ているし、洒落っ気もある。ストーリー進行は、ミニマルにおっとりしているようでいて、どんどん快速に進めているような雰囲気もある。
 ミミ役の稲垣好氏は、『終末ツーリング』の主演だった方なのか。元気でツヤのある良い声だったが、今作のシャイなキャラ芝居では、まだピンと来ない。

 第3話。今度はエルフ先輩を、同じようにしてクルーに引き込む顛末。窮状のヒロインのためにお金を肩代わりして、事実上の交換条件として性的な関係を結ぶというのはいかにもゲスくて激安なシナリオだが、女性の側の内心の動きをまがりなりにも正面から描写しているので、印象は案外悪くない。永瀬アンナ氏によるエッジの利いた芝居と、映像面での洒落っ気のある演出も、雰囲気をマイルドに緩和している。前回のCパートのやさぐれシーンや、今回のCパートのほのぼのした事後描写など、見せ方のコントロールもいろいろと面白い。
 今回の永瀬氏の芝居は、一般的なアニメ演技ではめったに聴けないタイプの尖った表現が満載なのに驚かされる。極端に崩したやさぐれ台詞や、後朝の上擦ったカスレ声など。よくもまあ、こんな大胆な演じ方に踏み込んだものだ(※ちなみに、インタヴュートークによれば、本作のレコーディングはかなり自由にアドリブ芝居を許容しているらしい)。
 性的に放縦なところも含めて、ソフトハウスキャラの『プラネット・ドラゴン』を思い出したり。

 第4話。今回も面白く、わりと真面目にスペオペ戦闘をやっているのが楽しい。アバンパートでは俗っぽくお色気シーンを匂わせているが、それ以降はおおむね禁欲的なので、あまり気にならない。映像面でも、小気味良いレイアウトとリズミカルな映像進行、そして機嫌の良いBGMを付けることでやたらめったら快適なアニメーション作品に仕上がっている。これはこれで非常に上手い。
 主演古川氏は、享楽的な脳天気さと、「普通の人(現代人)」らしく肩肘張らない性格づけ、そして物語をきちんと推進するリード役を堂々とこなしているし、宇宙エルフの永瀬氏の闊達で大胆な芝居もそれと上手く共鳴している。


●『野生のラスボスが現れた!』(2期)
 通算第13話。砂漠を走る超巨大陸上戦艦に、味方メカキャラを模倣した量産型シリーズと、無節操なまでにロマンを追求しているのが楽しい。しかし、ストーリーは今のところ平板で、ネタに走りすぎており、作画も止め絵に頼って迫力に欠ける。キャラを増やしすぎる弊害も出てきそうで、先の展望はあまり芳しくない。今回登場のスコルピウス(たかはし氏)も、うーん、芝居は今一つ。

 第14話。設定説明シーンが延々続く。バトルシーンの超高速台詞も、感情が籠もっていない(籠められる余地が無い)ので、つまらないだけ。

 第15話。うーん。

 第16話。作画それ自体はとても充実しているので、今回のように話がきちんと進んだり、あるいはヴィジュアル面での見せ場が出てくれば魅力を発揮する。洗脳された本体よりもコピー体の方が元々の人格を保持しているというのはSF的なテクニカルなドラマになっているし、リーブラの追加武装実験も、今期のメカアニメ群に勝るとも劣らない痛快な外連味がある。音響面でも、薄井氏の芝居は彩り豊かで、主演小清水氏にも負けていない。
 ただし、相変わらず本筋はチラ見せするだけで、そちらには向かわずに仲間集めを延々続けていくという展開にはちょっとダレる。構成上、仕方ないと言えば仕方ないのだろうけど……。



※以下は、試し視聴のみ、または、途中で視聴を止めた。

●『幻想水滸伝』
 視聴を続けるつもりは無いが、第1話だけ再生してみた(2話分セットの50分)。映像面では、空間表現や小道具のディテールなど、きちんと作っているのが見て取れる。ただし、冒頭ゆえか型通りに説明的なシーンが続くし、視聴覚的なテンポも平板で、抑揚やリズム感が無い。

●『紫禁・御猫房』
 第1話だけ、試しに視聴。キャラは3Dだが、2D背景と併用しつつダイナミックなカメラワークを上手く処理しているし、3Dならではの立体的な表現も効果的に使っている(とりわけ冒頭で、二人が切り結ぶカットなど)。


●『獣王武神ダンデヴァイン』(※オリジナル作品)
 第1話。ひどすぎるわけではないが、良いところも全然無い。うーん。怪獣たちの設定も不明なままだし、玩具メーカーのパートも浅薄なうえパワハラ満載だし、「普通」モティーフもまるで活用されてこないし、シーンのつながりも悪くて散漫。この第1話の範囲では、ただ全方位に薄くて、SFでもないしギャグやパロディでもなく、シリアスでもなく熱血でもなく、恋愛系でもないしバトル系とも言いがたい。ライデンフィルムはちょうど夏シーズンの『キャラメリゼ』でも巨大怪獣ものを扱っていて、そちらではスケール感や遠近法的演出が抜群に優れていたのだが、それと比べてこちらは……(※エンドロールを見るかぎりでは、制作の大半は曹監督と中国スタッフに任せっきりのようだ)。脚本面で見ても説明台詞だらけだし、音響面もまるで昔のゲームのような硬直的な付け方で、面白味が無い。
 キャストだけは良くて、ヒロインが白石氏、三悪魔(?)のピンクが東山氏+イエローが久野氏、さらに黒幕(?)が井上喜久子氏、主人公の母親には中原氏。
 せっかくのオリジナルSF(?)アニメなので、ひとまずは我慢して視聴継続するつもりだけど……。

 第2話。砂を噛むような、このつまらなさはいったい……。キャラの目が死んでいて表情が無いし、カットつなぎもおかしいし、場面転換も滅茶苦茶だし、わざわざ訪問相手がトイレにいるときに話しかけるし、心理描写も全然つながっていないし、出撃バンクのあからさまな尺稼ぎは現代アニメではつら過ぎるし、ヒロインが戦闘に巻き込まれたことにも(少なくとも現時点では)何の示唆も無いし、挙げ句は声優までもが「職人気質(かたぎ)」を「気質(きしつ)」と発音しているし……。良いところが何も無くて、ただただ視聴時間が苦痛と退屈に浸されている。

 第3話。前回の散漫さに比べれば、ストーリーは「別れたカップル」に集中して見通しがはっきりしている。しかし演出面は、何も面白くない(繰り返しギャグも、ただの省力目的の尺稼ぎにしか見えない)。2機のロボが合体して、ダンデ+ライオンになったりするのかもしれないが、もう視聴おしまいでいいかな。


●『バーテックスフォース』(※オリジナル作品)
 3Dキャラがきもい。骨格から動いていなくて、重量感や力感や慣性もなくて、ぐねぐね動いているだけ。しかも、2D背景で制約されるせいでカメラワーク演出も使えずにいる(あるいは安易な青空背景で動かすばかり。3Dモデリングの自由度を活用できていない)。表情も生硬に固まったまま動くのがマネキン的できつい。3Dキャラ作画の悪いところばかりが露呈していて、とても視聴に堪えない。回想シーンだけは2D作画のように見えるが、それがさらに落差を強調している。キャラデザそれ自体は良いのだが、モデリングされた最初の絵の繰り返しばかりになるので、「これ以上魅力的なものはもう出てこない」ということでもあり、その観点でも視聴を続ける意味が無い。作り置きで使い回しの3Dスパッツなど、何回見せられてもちっとも嬉しくならないだろう。後ろ髪がふわふわ浮いている(動いている)のも不気味。要するに、2020年代の3D作画の中でも質の低い部類で、どうして今時こんな代物を出してきたのかとガッカリするし、ましてやキャラの魅力を売りにする筈のコンテンツがその最重要の要素を自らスポイルしてしまっているのが悲しい。
 個別の演出面では、メカのエンジン音(バイクのような音)が非常にしつこくてうるさい。

●『チート』
 試しに視聴してみたが、演出がダサくて10分も保たずに切った。漫画版は最初の数冊まで読んでいて、コマ組みによるリズムやキャラ表情の濃さに面白味があったのだが、その絵だけをアニメ媒体でべったり再現されてもクドみが浮いてくるばかりで非常につまらない。ストーリー面では面白くなっていく筈だが、この映像演出のセンスは受け入れがたい。

2026/09/17

2026年9月の雑記

 2026年9月の雑記。

2026/09/16

アニメ雑記(2026年9月)

 2026年9月の新作アニメ感想(※だいたい第9話以降)。
 『キャラメリゼ』(最終的な評価は80点)、『クレバテスII』(65点)、『グロウアップショウ』(80点)、『さよならララ』(85点)、『手札が多め』(70点、全9話で完結)、『ジャードゥーガル』(85点)、『透明な夜』(65点)、『ふつつかな悪女』(75点)、『BLACK TORCH』(70点)の9本を最後まで視聴した。

2026/09/15

『天幕のジャードゥーガル』原作漫画とアニメ版の比較対照:第12話

 第12話「いつもと変わらない草原」

 原作第24-25幕(単行本第4巻所収)の全体。さらにエピローグ部分では、第26幕の内容にも触れている。時代はひきつづき1232年の秋。
 サブタイトル「いつもと変わらない草原」は、作中の「以前と何も変わらない いつもの草原」から取っている。
 脚本は、シリーズ構成も務めている加藤還一(第1、5、11、12話を担当)。絵コンテの「ちな」は、本作には初参加。演出は中村亮介とちなの連名(中村もこの最終話が初参加)。
 今回もストーリーの大筋は原作に即しているが、シーン構成のアレンジ、映像的な独自演出、台詞周りの整理、そして印象的な独自シーンの追加など、最終話に相応しく手の込んだ調整が施されている。