2024/12/02

2024年12月の雑記

 2024年12月の雑記。

 12/06(Fri)

 映画『ショーシャンク』は、私としてはかなり苦手な作品。ところどころ唐突感があるし、「放送室に籠城して好きな音楽を流す」のような俗っぽいシーンもあるし、犯罪の片棒を担いでおきながら最後に自分はその裏金を持ち逃げして悠々自適生活を手に入れるところもモヤモヤする。こういった[tw: 1864957916274667695 ]ところに、みみっちくて鼻持ちならない下品さを感じているのかもしれない。ある種の「さすおに」的慰撫コンテンツじゃないかとすら疑っている。


 何度でも書くけど、ヤード・ポンド法をバカにするのは、異文化蔑視であり、嵩に掛かったマイノリティ迫害そのものだからね。
 マジョリティであるメートル法ユーザーにとっては不便なものだけど、YP法もそれはそれで、使用者たちの生活文化そのものだ。マイノリティ文化に対して気軽に「滅べ」と言っている人たちは、自分たちが迫害の言葉をぶつけていることに、ものすごく鈍感だ。
 もちろん、度量衡は機械的、技術的な問題でもあり、それをできる限り統一的に――間違いのないように――運用することにも大きな意義がある。でも、それだけではなく、特定の文化に根ざしたものであることも、忘れてはいけない。


 『ネガポジアングラー』第10話は、予期されていたとおり、主人公の病状を巡る話に向かった。序盤の静かな進行では丁寧な布石を置いているし、中盤の釣りシーンでは、暮れなずむ隅田川の絶妙な色彩変化が物語を印象深くしている。控えめな夕陽から、主人公の迷妄を示すかのような紫色に映像は染まり、そこで魚を釣り逃がしてからは(※ここで魚眼風に映像を歪めるのも印象的だ)、ほとんど現実を離れた彼岸のような青い照明の世界に入っていく。美しいのだが、ゾッとするような浮ついた風景でもある。さらに、完全に陽が落ちて真っ暗になった空間で、主人公たち二人はもがきながらなんとかお互いの言葉をつないでいく。
 Bパートでも近所の子供たちが元気に駆け回っているシーンがくりかえし映されるのは、躑躅森の亡弟の存在を執拗に暗示しつつ、主人公佐々木常宏の健康不安とのコントラストをも形成している。もちろん、この仲良しな少年2人は「常宏と貴明」の裏返しでもある。Bパートは、躑躅森の伯父との会話シーンと、アパートでの二人のやりとりの2シーンだけで構成されている。不安感を煽るような不安定な構図、あるいは切迫感を強調するような極端な顔面クローズアップ、そして屋内の会話劇シーンでは、光源表現などもずいぶん凝っている。劇伴も、ドラマの動きに寄り添っている。
 入院中の弟が、ありがちな「良い子」ではなく、口の悪いキャラクターとして描かれているのも興味深い。「可哀想な、良い子」のステレオタイプを脱して独自の存在感を持たせるものと見ることもできるし、この沈鬱な回に対して明るさと力強さを――しかもいささか皮肉な形で――提供してくれているという側面もある。
 自宅アパートで、蛇口のカットが2回映されるが、その違いも面白い。1回目は、不安の漏れ出る様子を示唆するかのように、溜まった水滴が落ちる。しかし2度目は、一滴も落ちない。溜め込まれた緊張感の昂進と捉えることもできるし、二人のこわばった会話を反映して蛇口も固まっているかのようにも感じられる。
 一見すると「まるで地味で変哲もない映像」のように見えるが、実のところ、アニメとしては非常に意欲的な演出に挑戦し続けていて、そして充実した成果を挙げている、卓越した作品だと思う。確かな実績のあるスタッフだが、ここまで見事に洗練された映像をさらりと出してこられるとは……。こういうオリジナルアニメに出会えるのは、本当に嬉しい。
 前の第9話は楽しくて楽しくて、一週間のうちに何度も視聴していたが、この第10話はさすがに、おいそれと気軽にリピートできるような代物ではないなあ……。

 上村泰氏は、元々は制作進行や演出を担当してきた方のようだ(つまり、たたき上げのアニメーターというキャリアではない)。氏の過去作品――初監督の『ダンタリアンの書架』(アニメ版2011年)――も、ちょっとだけ視聴してみた。なるほど、上手い。シナリオ(原作)やコンテは別人だが、背景美術に深みがあるし(つまり、そこにコストを掛ける判断をしている)、画面構成や演出もしっとりと落ち着いているがスムーズだし、劇伴についても激しい弦楽器ソロなどを使っている。
 脚本(おそらく全話脚本)の鈴木智尋氏は、不思議なキャリアの持ち主だ。2008-2010年にTVドラマに脚本としてほんの数本関わった後、2011年に『Tiger&Bunny』に携わり(脚本としては2-3番手くらい?)、そこからはシリーズ構成(しばしば全話脚本)ばかりを連発している。仕事の速さと構成スキルを、よほど周囲から信頼されているのだろうか。


 アニメは一クールに0~2作くらいしか見ないが、次の冬クールはどうなるかな。
 例によってanimateの記事を参考にしてメモ。
 (五十音順、現時点で61本掲載)

 2期が9本、3期以上が12本(併せて34%が続編やシリーズもの)。オリジナルアニメは『空色ユーティリティ』(ゴルフ)、『もめんたりー・リリィ』(漫画同時並行、大阪もの?)、『RINGING FATE』(海外発のヴァーチャルバトルもの?)の3本。海外発のタイトルは『ARK』もある。

 ジャンル別では、
- 和風ファンタジー: 3
- 洋風ファンタジー: 15 +異世界転生: 7 ……36%が洋風ファンタジーは、従来通りの水準。
- 中華風世界: 2(ファンタジーとは限らない)

- 女性向け: 8 +その他女性主人公:6
- 恋愛: 3
- 現代コメディ: 3
- ラブコメ: 6
- 部活もの: 1
- 音楽(アイドル): 2

- バトル: 4(TCGや殺し屋)
- スポーツ: 2
- ミステリ: 2
- ロボット: 3
- SF: 2
- 魔法少女: 1(プリキュアのみ)
- 動物関連: 2
- ホラー1
- お色気1

 感想:大きなムーヴメントが見られない……こんな状況で大丈夫か?
 オリジナルアニメとして『もめんたりー・リリィ』を観てみるつもりだが、フル3Dアニメの日常コメディもののようで、あまり期待はしていない。あとは、ホテルミステリ(?)の『誰ソ彼ホテル』、未履修だった『アクエリオン』、女性向け恋愛もの『どうせ、恋してしまうんだ。』『魔法使いの約束』、コメディ枠で『ババンババンバンバンパイア』あたりを試しに見てみるかも。放送部もの『花は咲く』は、原作を途中まで読んでいたが、スタッフ/キャストともに不安がある。
 制作スタッフについは、よく分からない。脚本の髙橋龍也氏が『結婚することに』『没落予定の貴族』『Übel Blatt』で大活躍。

 声優については、種﨑敦美(6本)、富田美憂/久野美咲/早見沙織(各3本)、悠木碧/日笠陽子(2本)、園崎未恵/佐藤利奈/喜多村英梨/沢城みゆき/小林ゆう/金元寿子/長縄まりあ/長妻樹里/友永朱音/大地葉/ゆかな/田中美海/ファイルーズあい/大原さやか/折笠富美子/小松未可子/田村睦心/一色ヒカル(1本)。
 キャスト目当てだと、『異世界通販』(久野美咲/富田美憂/小林ゆう)、『Unnamed Memory』(2期、メインヒロイン種﨑敦美)、『グリザイアPT』(種﨑敦美/長妻樹里/友永朱音)、『魔神創造伝ワタル』(田村睦心氏の少年主人公)、『夜は猫といっしょ』(3期、種﨑敦美/悠木碧)あたりが有望だが、ストーリーや演出次第かな。『薬屋』(2期、悠木碧/種﨑敦美/久野美咲)は、1期時点で演出が口に合わなかったので観ていない。『同棲はじめました』をファイルーズあい氏(3番目?のヒロイン)目当てで視聴するのは、さすがにつらいか。

2024/12/01

漫画雑話(2024年12月)

 2024年12月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。

 カジュアル買い。
 唯島新『正式に魔女になった二度目の悪役皇女は、もう二度と大切な者を失わないと心に誓う』第1巻。長いタイトルどおりのシチュエーションだが、前世(?)を悔いる主人公の沈鬱で誠実な内省描写がなかなか読ませる出来。漫画としては動きが乏しく、ほとんどピクチャーノヴェル(イラスト付き小説)のような趣だが、主人公の表情に力があるので読み応えがある。検索してみたら、作者は京都芸術大学の在学生とのことで、作品も作者も今後が楽しみ。
 浜弓場 双『魔女の花屋さん』第2巻。ファンタジー世界の萌えキャラ日常ものだが、背景美術がやたら繊細に描き込まれているし、キャラクターについてもロングショットの俯瞰コマが多いので、作中世界の実在感と広がりがずっしりと伝わってくる。なんとも風変わりな作品。


 続刊ものなどのショートコメント。
 十三野(とさや)こう『ごぜほたる』は第3巻で完結した。難しい題材を誠実に描ききった意欲作で、作者としてはもっと掘り下げたいところもあったと思われるが、瞽女の生き方を正面から描きつつ、ひとまず全体の枠組に決着を付けるところまで見せてくれたことに感謝したい。
 松井優征『逃げ上手』第18巻。相変わらず、コマ絵が図式的、説明的なのがあまり好みではないので、そろそろ買うのをやめるかも。主人公がショタでなかったら、とうに止めていただろう。

2024/11/02

2024年11月の雑記

 2024年11月の雑記。

 11/29(Fri)

 『ネガポジアングラー』第9話。これは上手い。今回は素晴らしい。
 序盤(Aパート)はずいぶんスローペースでもどかしく感じたが、物語が進むにつれてバックヤードでの人間関係が微妙に変化していく。その彩りが面白い。
 それらと対比するかのように、主人公は一人でひたすらFGノットという難易度の高い結びに挑戦し続けているが、これはこれで大きな意味がある。これまで主人公は自堕落で自暴自棄で刹那的な生活を送っているだけだったのが、現在の彼は、そうした地道で難しい作業にも、腰を据えて取り組み続けられるようになっている。主人公の大きな精神的変化が、言外に――しかし明確に――描写されている。
 しかも、その結び目は、劇中でヒロインが説明するところによれば、複数の釣り糸を結びつけることによって双方の強みを生かせるものだという――「この二つは特性が違うんだ。それぞれ強みもあるけど、弱点もある。けど、組み合わせることで、お互いをカバーし合って、より強力なシステムになるんだ」。これもまた、いかにも示唆的な話で、人間関係の中に加わって協働しあうことの重要性を説くものだと言える。作品を第9話までじっくり進めてきたところで、あらためて本作の目指すところを明確に提示した、と受け取ってよさそうだ。
 さらに、以前に主人公を追い回していたヤクザの取り立て人たちも再登場する。しかしかれらは、もはや主人公にとっては敵ではない。今やかれらはごく普通の隣人であり、そして一緒にアンコウ鍋を囲むこともできるのだ。社会とは(他者とは)、見下したり敵視したり逃げたりするような相手ではなく、ただの、ごく普通の隣人たちなのだ。そういう穏やかな関係を、主人公は受け止めることができるようになっている。
 小松未可子氏の演じる取り立て人の最後の台詞も、なかなか複雑で微妙な解釈の余地を持っている。私見では、また金を貸してやるという台詞の穏やかさは、逆説的に、主人公がもはやそうしたことには関わらないであろうことを印象づけて、第1話時点の不幸な切迫感からは手を切っていることを示す大きな節目だと思われる。また別の解釈としては、主人公君が他人から信用されるようになっている(つまり、まともな意味で、お金を貸しても大丈夫な人物だという社会的評価を受けている)と見ることもできる。

 もっとも、主人公には余命2年という死病の問題がまだ残っているのだが、それがどのように扱われるかは分からない。これまでの雰囲気からすると、シリアス路線に舵を切れるかどうかは難しそうだし、かといってジョークとして吹き飛ばす(余命問題を無かったことにする)のも無理だろう。
 第1話がおそらく6月頃(?)から始まって、今回の第9話では10月か11月頃(?)まで進んできたので、最終話は翌年の春先くらいまで描いて、残された一年の生き方を暗示しつつ、苦いユーモアとして終わらせるくらいかなあ……。

 取り立て屋たちは、もしかしたら主人公にとって、父母に相当するような立場なのかもしれない。主人公を常にフルネームで呼び続ける彼等は、社会の代表であり、他者そのものであり、そして主人公にとっては逃げたくても逃げられない厄介な存在だった。そんな彼等だったが、この第9話では、長身眼鏡の男性が穏やかに主人公に語りかける雰囲気は「父」のイメージを伴っているようにも見えるし、もう一人の軽薄な男性は叔父か何かのようだ。そして女性(あねさん)は、硬質な小松未可子ヴォイスのまま、最後に主人公を力づける言葉を置いて去っていく。

 作画の面では、それほど大掛かりな動画は入れていない。しかし、雨滴の表現は緻密だし(撮影処理による演出)、結び目を作ろうとする手先と糸の動きをアニメーションさせるのは大変そうだ。
 絵を動かすタイミングも興味深い。一般的なアニメでは、カットごとに入りと終わり(原画)を固定してから中割アニメを入れていく。つまり、「静止状態でカットを見せてから、動きを入れて、そのカットの終わりまで進める」という形になる。しかし本作では、カットが切り替わった瞬間からすぐに絵が動いていく箇所が多い。これは、動画制作としても大変だと思われる(つまり、わざわざ手を掛けている)のだが、これによって、映像としての自然な流れを生んでいる。こういったところも、非常に意欲的で、そして上手いアニメだと思う。この作品に出会えて良かった。


 『悪食令嬢』アニメ版は、中村(カ)氏主演とのこと。キャリアはまだ浅いが、役には合っていると思う。主演の『それでも歩は~』は、薄目の呪いを発動させたりしていたし、現在の『歴史に残る~』はアニメとしては今一つな出来だけど……。


徹夜して3体目まで完成させた。共通パーツも多いが、主な違いとして、ツノ周りの形状、胸部(の中央)、両肩上側の突起、足首の突起は、三者とも異なっている。腰の前垂れも、金と青は同一形状だが、黒だけは違っている。また、背面の羽根は、金と黒で共通だが、青だけは独自形状のクリアパーツ。なお、3体の装甲をミックスすることも想定されている(※あしゅら男爵や『Dark Blue』のようなアレ)。
「オルタナティブジャスティスインフィニットドラゴン」単体で撮影。シルバーをきれいに筆塗りするのは(私には)ほぼ無理なので、「表面がガサガサデコボコなのは鋳造表現です!」ということにした。

 クリアパーツの効果を発揮させるには、光を当てたり透過させたりする必要がある。そうでないと、色が識別しづらかったり、パーツ裏側の凸凹が目立ってしまったりする。そういった箇所は、むしろきちんと発色する塗料で塗装した方がよい……というのが今回の教訓。

 上記のシルバーは、VallejoのChainmail Silverを使った。以前に買った一瓶を使い切りそうだったので、もう一つ買おうと思ったら、この「Game Color」シリーズはちょうどリニューアルされていて、塗料そのものも変わっているようだ。具体的には、旧版では粒子感がはっきりしてガサつき気味だったのに対して、新版は粘度が低く(濃度も低く?)水っぽくなっている。悪くはないのだが、あまりにサラサラだと塗料が乗りにくくなるし、発色が弱くて結果的に塗り重ねが必要なので、この変更はちょっと微妙かも。
 (※もしかしたら経年変化のせいかもしれないが。水性塗料は、店頭で手に取ってみると中身が分離してしまっていたり、固まりかけていたりするのよね……。特にシタデルでそういうのを見かけると、お値段の高さもあって悲しくなる)。


MG版のF2ザクは、もったいない出来でしたね……。両肩の引き出し関節などの創意もあったのですが、F2の特徴が無視されて、ベタなヒーロー体型とヌメッとした曲線的な輪郭になってしまい、さらに連邦カラー版と武器を分けあって……。それに対してHGUC版は、設定画どおりのゴツゴツ角張った形状で、大いに満足しました。


 しまった……ソーシャルメディアというのは、文字通り他人と交流する場だった。
 拙い英文でも、独り言の文章を投稿するだけならば、書きたい内容をゆっくり推敲してからポストすればいい。言い回しが「誤解を与えかねない」とか「想定外の別の意味を持ってしまう」という危険性についても、その都度調べればだいたい回避できる(※そのくらいしつこく辞書を引いてから投稿している)。
 しかし、ネイティヴスピーカーからリプライをもらうと、相手が何を言っているのか分からないという可能性がある。SNSでの会話は省略の多い短文になりがちだし、さらにネットスラングが含まれていると、会話の趣旨すら把握できないという可能性も出てくる。これは怖い……。
 以前に手掛けた翻訳書も、スラングで大困りしてネイティヴ話者に意味を尋ねたりしたのだが、もちろんネットでのやりとりを誰かに手助けしてもらうわけにはいかない。なので、「もらった言葉の意味が分からない時に、失礼にならないように質問する表現」をキープしておく必要がある。「すみませんが、英語に不慣れなので、あなたの○○というところが理解出来ませんでした。××という意味でしょうか? ならば……(I am sorry I am not a native speaker and I couldn't understand your words XXX.)」という感じになるだろうか。あるいは、単なるカジュアルなリプライであれば、☆(Like)や絵文字リアクションで済ませることもできる。
 でも、遠くないうちに、ひどい誤読をやらかしてしまいそうな、嫌な予感が……。

漫画雑話(2024年11月)

 2024年11月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。

2024/10/27

2024年10月の雑記

 2024年10月の雑記。

今月の一枚はVOLKS「ルピナス」。肩回転の自然さが素晴らしい。