2026年5月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。
まだ先月分の新刊も読み切っていないけど、まあ仕方ない。
●新規作品。
やぶら『ロブレイブ』第1巻(講談社、1-4話)。第1話で、大ネタのどんでん返しと主人公の最終目的をきれいに提示し、2-3話で最初のエピソードを知略バトルで乗り切って、そして第4話ではミドルレベルの目標に挑ませつつ、改めて主人公のバックグラウンドに絡めた衝撃展開を出すといった具合に、いかにも教科書的にきれいな模範的ストーリー運びをしている……少々あからさまなくらいに。とはいえ、小柄(ショタ外見)主人公と、大柄なオーガヒロインという対比はいかにも今風で魅力的だし、虐げられる少数民族(オーガやドワーフなど、人類以外の種族)を解放するというストレートさも好ましい。作画と演出も、きちんと造形されている。ひとまず作者の力量に期待して、付いていこう(これが初の商業連載のようだ。優れた新人がどんどん現れてくるなあ)。
月結草(つゆくさ)『暗殺者は不死の魔女を殺したい』第1巻(OVERLAP/ガルド、原作あり、1-5話)。森の中に隠れ棲む不死の女性と、それを(救済するために)殺してあげようとする青年の物語になるようだが、この第1巻のうちは、最初のおねショタ時代をじっくり描き続けている。やったね! 言い換えれば、孤児の少年を拾って育てるという、ちょっと風変わりな二人の日常生活の同居風景をのんびり描いている。ドラマティックな悲劇性を前面に出すわけではなく、かといってお色気コメディになるわけでもなく、スローライフ路線というほどでもないようだ。どういう方向性になるのかはまだ分からないが、温和で整った絵柄は親しみやすいし、しばらく付き合っていこう。漫画家は、女性向けの商業アンソロコミックにいくつか参加しており、単著としてはこれが3冊目(?)のようだ。
夏野なえ『魔王さまに教えてあげる』第1巻(一迅社、1-5話)。主人公の女性は、幼時に迫害を受けて魔王の森に入り込み、そこで心優しく温和な魔族王子とスローライフ的に同居しているが、彼女自身はいまだに迫害者への復讐を考えているというシチュエーション。角の生えた褐色肌オリエンタル王子様との田舎同居生活ドリームに、格差カップルのロマンス、しかしその一方で女性主人公の方が主体的に振舞おうとしつつ自身の境遇に悩むアイデンティティ物語、さらに人間族と魔族の対立状況の中で政治的に利用されそうになるサスペンスと、かなり多面的な要素がどっさり投入されている。芯のある主人公の表情表現を初めとして、絵はなかなか良いし、次巻が出たら買おう。作者はこれまで、オンラインベースで3本の連載をしてきたようだ(※いずれも女性向け)。
●カジュアル買い、買い足しなど。
和サン(かのう・さん)『復讐は合法的に』(原作あり、一迅社)は、第2巻が新刊で、表紙の丸眼鏡少女に惹かれて第1巻ともども購入してみた(1-6話/7-12話)。私的な復讐を請け負う弁護士の話で、1冊につき1エピソードくらいでオムニバス的に進むようだ。復讐代行ものとしては、幸いにもそれほど下品ではなく(※露悪的な「スカッと」系はさすがに嫌だ)、また作画と演出も水準は高いのだが、相手を陥れる手段がみみっちいし、それでいてリアルに実行できてしまいそうなネタもあるのがかなりモヤッとする。ちなみに、作者はこれが初の商業連載のようだ。
ますやまある『白鳥運子(しらとり・かずこ)は31画』(原作あり、講談社)。これも第2巻表紙の眼鏡キャラに興味を持って、第1巻と一緒に購入した(1-5話/6-14話)。画数判断で自分はラッキーだと信じて全力で生きようとしている不幸な女性が、犯罪に巻き込まれる(手を下してしまった)クライムサスペンス。主人公の立ち回りがまずくて状況をしばしば悪化させてしまうスリルも、キャラクター設定によってあらかじめ正当化されている。登場人物たちの激しい表情も、手描き感の強いパワフルな作画も、たいへん魅力的。ただし、次巻で完結するようだ。作者は、くらげバンチなどでいくつかの読み切りを公表しており、これが初連載……って、あっ、あの
モデラー女性を描いた「熱帯夜」の作者さんだったのか。
藤村あゆみ『森の端っこのちび魔女さん』第2巻(TOブックス、原作あり、5-10話)。森の民の高度な医術-衛生知識を持った主人公たち(母娘)が、父親公爵の城に呼ばれるが、そこで政争に巻き込まれて大変なことになっているようだ。シリアス寄りの展開と、健気で頑張り屋な主人公少女のコントラストが趣深い。第1巻も、店頭で探して買っておこう。漫画家は、00年代初頭から通算4作の連載を手がけてきたベテランで、本作が5つめになる。
蘇募ロウ『じゅーくぼっくす』(講談社、既刊2巻。それぞれ一冊につき4話ずつ進行する)。店頭でカジュアル買い。なかなか面白い編成で、とあるアパートの3室の人間模様を順繰りに描いていく。それぞれ「悪魔父と天使娘のホームコメディ」、「エロ学生の部屋と扉が繋がった葛飾北斎(少女)の漫画創作話」、「魔女とその弟子の青年のマジカルコメディ」になっている。店頭では気づかなかったが、作者は『なんでここに先生が!?』(※私は一冊だけ買って読んだことがある)を連載していたクリエイターで、今作も裸体を見せるエロネタが多い。それはともかくとして、緩く繋がったオムニバス進行はユニークだし、状況の多面的な面白味を引き出しやすい。上手い作り方だと思う。例えば水瀬マユのラブコメ『むすんでひらいて』も似たような作りで、カップルを一つ一つフィーチャーして、順番にそれぞれの関係進行を描いていくスタイルだった(そちらも面白い作品だった)。
イズミダフユキ『夜鷹ふたたび』第1巻(講談社、1-7話)。『マダラランブル』(全4巻)の作者の新連載。だらしない生活をしている元殺し屋女性を巡る闇社会のトラブルストーリー。基本的なトーンはコメディ寄りだが、激しい全身アクションのバトルシーンを初めとして、外連味のある演出は今作でもたっぷり味わえる。ひとまず新刊には付いていこう。
●続刊等。
石沢庸介『第七王子』第23巻(189-195話)。ボスキャラのベイダー戦と、主人公キャラの復活、さらに兄キャラのグレードアップを描いている。パワフルなバトル描写と、それを支える心情表現の鮮やかさは相変わらず素晴らしい。
星野真『竜送りのイサギ』第7巻(41-48話)。身を寄せた州都で、文字通りの壊滅的な自然災害が発生する。災害救助描写の生々しい悲惨さは、ほとんど現代的な切実さがある。また、それに関わって一国全土に広がった政治的-軍事的抗争が露わになった。これまではミクロなエピソードが多くて大状況が把握しづらかったが、綱渡りの緊張状態がまさかここまで深刻だったとは。さらに終盤には主人公の剣戟バトルシーンがあるが、これも本作のここまでの描写の蓄積の上に、主人公が置かれてきた境遇上の困難と、それに伴う異様な切迫感、そしてそれを引き受ける覚悟の勁烈さが印象的に描かれる。
巖本英利『異世界バトルロイヤル』第6巻(29-33話)。今巻も、ポロリどころではなく堂々と放り出しまくっているが、作風が迫力重視のスーパーバトルもので、コマ絵もザクザク描いているので、ちっともエr…こほん。ストーリー面では、黒幕がはっきりしてきたところだが、まだ先は長そう。
中将慶次『カノンレディ』第3巻(13-18話)。服装のディテールや戦術描写、そしてコマ組み演出などの創意工夫はいろいろ見て取れるのだが、粗っぽいところが足を引っ張っているのがもったいない。
日向いろは『石神戦記』第7巻(30-34話)。ストーリーの骨格そのものは、80年代~90年代にあった古代アジアンファンタジーを継承しているのだが、現代風のチューニングを施すことできちんと受ける作品に仕上げているのが面白い。絵柄の洗練から、異能バトル的要素、おねショタ関係、サブキャラの充実、等々。5領主間の勢力争い(政治的駆け引き)も、近年のファンタジー戦記ものでわりと見かけるポピュラーなアプローチ。作者はこれが28冊目(?)の単行本で、押しも押されもしない立派な中堅クリエイター。
眞山継『シャンバラッド』第3巻(10-14話)。今一つ、物語の心がよく分からない。超常の力を持つ少女の悲劇に、野心ある青年のドラマ、そして王宮の人間関係に、外部からの登場人物たちと、局所的には面白いのだけど散漫に見える。うーん。
岩飛猫『狐面夫婦』第4巻(25-32話、完結)。屈折した情愛のプロセスと、鬱屈したコンプレックスへの直面、さらに異種族の生活行動のディテールを濃密に描きつつ、全体としてはスルスルと読めるように軽みのある描写も入れて物語をドライヴしていく手腕はさすが。……ところで巻末の作者既刊として、三頭のケルベロスキャラと三途の川の渡し守のBLというディープすぎる作品が紹介されているのだが……すごいな、買ってみよう。
江垣沼『生意気なギャル姉を解らせる話』第4巻(44-59話)。ストーカー的サブヒロインに刺激されて、男性主人公の執着の異様さが露呈してきた。こうした妄執のサスペンスは、物語がどのように進んでいくか見当がつきにくいので、読み進めるのが面白い。ちなみに、広島弁、お好み焼き屋、そして広島城など、ローカルネタが緩くちりばめられている(作者自身が広島出身とのこと)。