2026年5月の新作アニメ感想。今のところ、『淡島百景』『上伊那ぼたん』『カナン様』『自称悪役令嬢』を視聴中。『鑑定士』『姫騎士』『楠木邸』は飽きたのでおしまい。最終的に、普段通りの4本にまで絞れてきたのは、良いのか悪いのか……。
きちんと観ると決めた作品は、各話を複数回視聴して、映像演出と音声のデリカシーをそれぞれ集中して追っていき、スクショも撮りまくるので、多数のタイトルに手を出している余裕は無くなる(※さらに言うと、今期は繰り返し視聴のきつい作品も多いのだけど。キャストが今一つだったり、ストーリーが重苦しすぎたり……)。
●『淡島百景』
第4話。今回は、外部からの視点かな(辞職したパートナー、学生の両親、そして男性ファン)。前話の厳しさから一転して温かなエピソードが続き、落差が大きいが、こういうのもありか。作画に関しては、イメージシーンの背景には、なまじのアニメーションよりも大変そうな動画装飾があって驚かされる。
第5話は、新興宗教一家の少女と、憧れの先達に対する思いが辿っていく道筋の素描の2本立て。どちらもモノローグ主体で進むエピソードで、前者は長縄まりあ氏が主人公を演じており(気づかなかった……)、後者の短い話は花澤氏がリードして、屈折の多い物語の中へ見事に引き込んでくれた。
●『上伊那ぼたん』
第5話。構図遊びがたいへん楽しい。遠近を強調したレイアウト、角度の付いたアングル、そして明暗のコントラスト、等々。今回の絵コンテ&演出は戸澤俊太郎氏。前話(第4話)でも絵コンテを務めていた(前話の演出は牧野秀則氏)。
第6話。河瀬氏演じる台湾出身の新キャラが登場。前半はカメラの動きが物珍しく、やけに広いパンニングや、広がりのあるズーミングを連続させている。ちょっと古い映像センス(10年代以前?)をあえて使っているようにも感じる。
しかしストーリー面では、相変わらず雑な百合もどきのままで、台詞回しも総じて凡庸で浅い。洞窟内の風景は、さすがにロケハンの成果できれいだが、ストーリー上の意味づけが弱すぎる。後半の民宿パートも、室内のディテールが単なる現実模倣のように見えて、ディテールの面白味が乏しい。
ED映像が、まるでCパートのような位置づけになっている……。
●『カナン様はあくまでチョロい』
第5話は、聖女キャラの登場。今どき珍しいほどの勢い任せのスラップスティックのスピード感は、これはこれで楽しい。程良くデフォルメの利いた瞬間的な動画表現や、路上を暴走するシークエンスの大胆なアニメーションなど、見どころも多い。キャラクターの頭のネジの外し方も面白く、カップルの手つなぎを「ファーストホールド」と呼称するなど、台詞回しにも意外性がある。
聖女「ジャンヌ」役は鈴代氏。視聴中は気づかなかったが、奇抜なキャラクターをクリアカットに造形する手腕はさすが。なお、OP映像を見るに、これからさらに何人も奇人キャラが出てくるようだ。保健室の喫煙者キャラは小林ゆう氏。
このしよーもないドタバタを釣瓶打ちにする感触は、『キルミーベイベー』をちょっと思い出す。
第6話。冒頭はちょっと絵が生硬に見えたが、そこからカップル二人のウブな内心の駆け引きにひたすら集中し、ロマンティックな一日の物語に拡大してみせた(※その一方で、電柱に登るメイドという、やたら尖った珍風景も挿入している)。今回の絵コンテ&演出は鈴木真彦氏。
第7話。前半は、脚本もコンテも退屈。キャラの表情の切り返しカットをベタベタつなぐだけで平板にだし、益荒男(※苗字)の変態化も、キャラ変化の面白味を引き出せていない。メイドキャラのモノローグ説明台詞も、見せ方として上手くない。
しかし後半はいくらか個性が出てくる。999ならぬ666鉄道のユーモラスな造形から、尿意を我慢するキャクラターたちの多彩な表情まで、ユニークな魅力が感じられた。それでも、けっして上手いとは言いがたいけれど。
聖女キャラは、前回はただの埋め草シーンのサブキャラ扱い、そして今回は単なる取り巻き同行者と、あっという間につまらない存在になった。突出したおばかキャラは言動が目立ちすぎるので、原作者にとっても扱いづらかったのだろうか。
●『鑑定士(仮)』
第5話。心底つまらない内容になってきた。間(ま)の取り方がおかしくて、声だけでは保たないレベルで映像進行がダレている。半ズボン姿のショタ主人公をたくさん拝めたのは良いんだけど、良いんだけど……そこは良かったんだけど、ね……。
●『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』
第5話。男性主人公サイドの心情にフォーカスしつつ、水平から傾斜したカメラや奥行きを強調したレイアウトで、静かな緊張感とひそかな困惑を巧みに視覚化して、二人の運命的な悲恋状況とすれ違いの深刻さを表現している。絵コンテは大宅光子氏、演出は上野謙矢氏。どちらも本作では初の起用。脚本は、これまで全ての話数を井上亜樹子氏が担当されている。最後まで完全単独脚本でやり通すのかな。
第6話は、中ボス的な悪人を吊し上げるエピソード。映像的にも美しいカットが多数現れる。絵コンテは、ロマのフ比嘉氏という、ちょっと珍しい起用。どうしてこの作品に?
男性向け(一般)と女性向けの大きな違いとして、悪人の造形や位置づけが決定的に異なるように見受けられる。前者では、悪役も強くてしばしば格好良い。言うなれば、打ち倒して主人公の価値を証明できるくらいの存在感が求められるのだろう。それに対して後者はしばしば、悪役を徹底的に反価値的なものと見做す。つまり、醜悪な外見を持ち、卑しい本性を露呈させ、そして叩きのめされて追い出されるのが当然の愚物として描かれる。前者のような少年漫画的マチズモが良いとは言わないが、後者のナルシシズムと差別主義的スタンスの混じり合った雰囲気は、個人的に非常にきつい。今回のようなリンチ的断罪シーンには、素直に乗ってそれをカタルシスとして楽しんでしまうことを躊躇せざるを得ない。
ともあれ本作の基軸には、ヒロインがひたすら純朴で健気で、それでいて自ら不幸に突き進んでいく哀しさもあり、それに対して男性主人公の側がそれを十分には理解できず(※ゲーム世界の都合というメタレベルの理屈は、ゲーム内存在にすぎない彼にとっては、本質的に不可解な観念だ)、傍観者にならざるを得ないもどかしさと、それを突破するドラマティックな転換がたいへん魅力的なシチュエーションになっている。コンセプト設計がとても上手い。
今回の悪人キャラを演じているのは、茜屋日海夏氏……えーと、あっ、『終末のイゼッタ』(2016)の主人公か! アニメ畑では近年出演が少ないが、舞台化作品などで精力的に活躍しておられるようだ。