2026年4月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。
●新規作品。
むらたん『修羅幼女』第1-2巻(※2冊同時刊行、ファンギルド、原作あり、1-5話/6-10話)。表紙買いで、「この絵が描けるなら本編も行けるだろう」という期待が当たった。武を追い求めて戦死した剣士男性が、少女の身体に生まれ変わった話。ストイックな精神性のままに、ストーリーはひたすら過酷な戦いを描いているので、一気に通読するのはちょっとつらいが、しかし躍動感のある動きの描写も、レイアウトでの見せ方も非常に上手いし、その一方で小柄キャラのふわっとした長髪の軽みが、良いコントラストになって紙面を引き立てている。漫画家は、『【人形遣い】の成り上がり』(全3巻)に続く2つ目の連載とのこと。さらに『シロナガス島』コミカライズも連載開始予定のようだ。
遊喜じろう『前世は冷酷皇帝、今世は幼女』第2巻(アルファポリス、原作あり、6-11話。ちなみに昨年刊行の第1巻も買った)。偶然ながら、こちらも似たような趣向。しかし本作では、前世とは正反対に市井の日常を体験したいと主人公が願い、それでいて転生した経緯の謎を含めた因縁がつきまとうという路線になるようだ。身体を乗っ取られた元の少女の意識も、「不幸になる運命から逃がしてくれた」と霊体の形で平和的に同行して、しばしば主人公と会話をする(※他の作品でも見かけたことのある設定だが、上手いやり方だと思う)。視覚的表現に関しても、動きの描写は控えめだが、背景装飾を初めとした美術的な魅力や、返り血を浴びた主人公の凶悪な笑顔など、独自の個性がはっきりと打ち出されている。こちらも良作。作者は『二度と家には帰りません』コミカライズ版の長期連載(最新第9巻)も平行している模様。
●カジュアル買い、買い足しなど。
丸智之『捕食者系魔法少女』第3巻(ガンガン、12-17話)。昆虫型の巨大モンスターたちを使役できる魔法少女が、現代世界に侵略してきたゴブリン型の異生物に対抗する話。主人公本人の身体能力は一般人並で、戦術志向のドラマ作りにしているアプローチは面白いし、ポケモンに代表されるような使役バトル路線そのものは興味深い。絵と演出も良く出来ている。……のだが、「昆虫たちに指示して頭脳派主人公が戦う」というのは、どうにも子供っぽく感じてしまい、個人的にはあまりノれなかった。なお、衣服が破れて胸部露出するなど、お色気描写も妙に多い。今どき珍しく、主人公キャラはとても薄平べったい、善哉。
紺吉『若葉ちゃんは分からせたい!』第1-2巻(双葉社、1-10話/11-19話)。高校生女子が、朴念仁な幼馴染との関係を維持していくために、あえて彼の前ではボーイッシュな振舞いをしているというシチュエーションもののラブコメ。従来のありがちな「偽の恋人」ものが、アイデンティティや人間関係を偽ることによって強引に恋愛関係を形成してしまうのとは逆に、本作ではヒロインが自らのアイデンティティを偽ることによって、恋愛を意識させない(苦手意識を持たれない)ように努力するという構造になっているのがユニーク。もちろん、長期的には彼を落としたいと願っているし、その葛藤のモノローグは読者の前に明示される。ヒロインの可愛らしさと元気な魅力の両方を、正面から(文字通り物理的な意味でも)描いているのが気持ちよい。
コブラサナギ『センパイ、自宅警備員の雇用はいかがですか?』第3巻(マイクロマガジン、11-15話)。なんだか不思議な作品。成人男性が家出少女を住まわせるというベタなシチュエーションなのだが、本筋部分は意欲的なコマ組み演出や強烈な表情描写で深刻な感情を描いている一方で、やけにチープなデフォルメコメディやモタついたコマ組みも混じっている。ちなみにお色気要素は希薄。
●続刊等。
1) 現代もの(シリアス系を含む)。
遊維『大海に響くコール』第4巻(20-26話、完結)。終盤では、シャチの位置づけを「見て楽しい魅力的な実在」から「象徴的モティーフ」へと引き上げつつ、高校生たちが自分のアイデンティティ確立を求める思春期の物語として、きれいに締め括った。
小川麻衣子『波のしじまのホリゾント』第5巻(28-34話、完結)。こちらは終盤でも徹底してミニマルな日常の柔らかなデリカシーを描き続け、大袈裟なドラマは避けるというアプローチできれいに一貫させつつ完結した。
あむ『澱の中』第5巻(31-36話、完結)。凶行と逃避行、そして幻想の終わりまで。愛情と不気味さと依存と社会性の困難と人間の多面性を、強烈な拡大して表現してみせた。
ガス山タンク『ペンと手錠と事実婚』第7巻(48-55話)。一冊丸々使って、横溝リスペクトな山村因習殺人エピソード。シチュエーションの特異性ゆえか、今回はキャラクター個性は控えめだが(※新婚旅行ネタをちょっと入れた程度)、結構面白かった。トリックそれ自体は、ありがちな[二重底と氷]なのだが、それらを照れずに堂々と使っているのが好印象。
牛乳麦ご飯『ボーイッシュ彼女が可愛すぎる』第5巻(43-50話)。今回は対比的なサブキャラを登場させたが、ドラマとしてはベタな展開。
ナツイチ『三咲くんは攻略キャラじゃない』第4巻(31-40話)。初期の恋愛ゲーム準拠のメタネタコメディはチープだったが、キャラクターの内面造形や周囲の環境も掘り下げられてきて、今巻のクライマックスにまで持ってこられたのは幸い。次巻で完結予定とのこと。
2) ファンタジー世界(エンタメ寄り)。
竹掛竹や『吸血鬼さんはチトラレたい』第3巻(15-23話、完結)。タイトルだけで出オチのような作品だが、ウブで倒錯した吸血鬼ヒロインを中心とする(あまりえろくはない)ハーレム寸前の日常コメディを、マイルドに描ききった。読後感は悪くない。
柳原満月『魔法少女×敗北裁判』第3巻(case4の完結回から、case5の全体)。えろネタだが、演出の切れ味は良いし、キャッチーなギミック(例えば「人格排泄」ネタ)を大胆に取り込んでいるスレスレっぷりの刺激的で、さらに検事キャラが被告人になるという捻りも入れてきている。
kakao『辺境の薬師』第12巻(94-101話)。背景作画の質感と空間性を見事に描きつつ、それをコマ組みドラマの中で効果的に表現している手腕は相変わらず。ただし最近は、露骨なえろ展開に傾斜してきた。
背川昇『どく・どく・もり・もり』第6巻(29-34話)。……あっ、しまった、第5巻を見逃していたようだ。かなり好きな作品なのに(※基本的に店頭でのその場買いだけなので)。
のゆ『新聞記者ヴィルヘルミナ』第2巻(8-14話)。ジャーナリスト主人公というアプローチは個性的だが、センセーショナリズム報道やスキャンダル炎上など、現代的なネタに引き寄せすぎているようにも感じるし、16世紀ドイツ(※ドイツ風の架空社会)という状況設定の面白味があまり活用できていない。ちょっともったいないなあ。
緒里たばさ『暗殺後宮』第10巻(50-54話)。前巻から続く労役所編の締め括り。ストーリーとしては、主人公の成長を示唆しつつ、彼との関係のありようが決定的に変化した劇的な部分……なのだけど、いささか肩透かしに感じた。けっして悪くはないのだけど、ちょっと唐突だし、別の布石のための描写が混じっていてすっきりしない。