2026年1月の新作アニメ感想(※タイトル五十音順)。
今回は、試しに総合評価の点数推移もメモしてみる。それぞれ第3話までで『透明男』85点、『違国』85点、『シャンピニオン』80点、『アルネ』80点、『29歳』70点、『ヘルモード』70点、『魔王の娘』65点。『人外教室』『カヤちゃん』『アカウント』は中途離脱。
●『アルネの事件簿』
第1話。古式ゆかしき子供向けダークファンタジーのテイストで、低予算作画ながら、やろうとしている演出の方向性は明確に見て取れる。初回からショタキャラが2人も登場する点でも貴重。
ただし、キャストは好みに合わない(※つぎはぎ人造人間キャラの日笠氏(と桑島氏)くらいしか聴きどころがない)。ショタの一人は成長してしまうし……。ルイス役の伊勢氏も、頑張ってはいるのだが、力みすぎのように感じる。
ちなみに、料理名などから察するに、舞台はハンガリー(またはそれをモデルにしたヨーロッパ風の架空世界)のようだ。吸血鬼ネタからしてルーマニアかもしれない。劇伴でも、弦楽器の響きを活用して民族的な雰囲気を打ち出している。
評価はひとまず70点で、視聴継続してみるつもり。
第1話は顔見せの一発ネタエピソードで、本格的にメインキャラたちの物語が始まるのは第2話からのようだ。クラシカルな洋風吸血鬼ファンタジーというコンセプトが明確で、演出目標もはっきりしているので、視覚的表現が上手く構築されている。細かな効果音も付けていて場面ごとの情緒があるし、若きメインキャラが走り回ったり慌てたりする様々な所作もかわいらしくアニメーションされていて躍動感がある。台詞回しもユーモアがある。75点に評価上昇。
母親キャラが佐藤(聡)氏、そしてメイドのエリーゼが寺澤百花氏と、キャスティングもなかなか面白い。ともに数話限りのキャラクターと思われるが、それだけに贅沢。ただし、アルネの成人形態の芝居は、ちょっと苦手。
ところで、日本の学生ジャージやTV(映画)やバスがあるということは、作中の時代設定は現代なのか。だとしても、前世紀くらいかもしれないけど。しかしその割に、メイド付きの古びた家も出てくるという、微妙によく分からない世界設定だ。
リン役の貫井氏は、今期は『透明男』のヒロインも演じている。まだ勢い任せのきらいはあるものの、胆力のある踏み込みで声を出してきているのでライヴ感のある臨場感の手応えがある。鏡の中のモンスターを演じている榊原優希氏は、『シャンピニオン』にも出演しており、なにやらキャストの被りが多い。
第3話も、リンの屋敷でのファーストエピソードが続く。暗い室内での会話劇に、ところどころ外連味のあるレイアウト、そしてホラー寄りのグロテスク(流血)描写と、見ごたえがある。絵はあまり動かないが、コウモリ乱舞のような表現で補っているし、飛翔シーンなどの要所ではダイナミックに動かしている。80点に上昇。ただし、ミステリではなく、オカルトサスペンスとして受け止めるべきだろう。
第4話。物語進行は、余計なイベントも含めて行ったり来たりしてあまり洗練されないが、美術的にはたいへん面白く、引き込まれる魅力がある。ほのかな灯火に照らされつつ、夜の屋内のしめやかな雰囲気が映像的に演出されている。今回は特殊EDで、次回は解決編になるようだ。80点。
小柄メイド役の寺澤百花氏の芝居も聴きどころ。大人アルネの声優さんも、最初は空転気味だったが、この回ではようやく落ち着いてきた。
途中で出てくる手紙の文字は、ドイツ語のようにも見えるが、ちょっと違う。
●『違国日記』
第1話。劇伴を抑えた映像進行でじっくり見せていき、要所でシンボリックなカットを効果的に組み込んでくる。それらを視聴者に印象づけるためのリピート演出(フラッシュバック/フラッシュフォワード)も、作為を目立たせないように絶妙の味付けで挿入しているし、色彩設計も現代アニメとしてのオリジナリティと本作ならではのムード構築を両立させている。沢城氏の芝居もニュアンスと迫力に満ちているし、主演の森風子氏(※これが初レギュラーの新人)の演技についても、ひとまず不満は何も無かった。85点。
第2話は、サブキャラが増えてきた。Aパートの料理シーンは退屈だが、何気ない会話の時間を過ごした上でこそ「エポック」発言が効いてくるのだと考えれば、やはり必要なものだったのだろう。85点のまま最後まで行きそう。
第3話。前半は旧宅の整理を描いて、故人の過去のイメージとのギャップや、形見を残すことについて婉曲的に語る。後半は中学校の卒業式で、サブの無神経キャラの描写がやや図式的なものの、思春期の人間関係の貴重さを巡って厳しくも柔らかさのある語りが展開される。劇伴もしばしば軋みのある音響で、場面ごとの緊張感あるニュアンスを下支えしている。
主演少女役の森風子氏は、「えっ、これで新人?」と驚くくらい真に迫った芝居をされている。
この回は、内容がつらすぎるので、点数もつけられない。「めんどくさい(が責任感を持つ)」や、「てる/執着する」といったモティーフが複雑に織り込まれていて濃密なエピソードなのだが、しかし、「素晴らしいが、素晴らしいが故にこそ、一回性の体験だけにとどめておく」という場合もある。デリケートなまま逃避的な浮遊感にとどまっていた少女の心が、偶発的な惨事によって思いもよらぬ形で傷つけられてしまうのは、実に悲しい。この回は、もう二度と視聴しないだろう。
第4話は、それぞれの友人の来訪と、高校生活の始まり。モティーフの観点でも、アニメ一話ごとの対比的構成がきれいで、槙生が普段とは違ってくだけた雰囲気で、学生時代以来の旧友たちと飲み交わす一方、朝は入学式で新たに出会ったクラスメートたちとの距離感を覚える。また、槙生の友人笠町は朝に対して穏やかに接する一方、朝の友人えみりは槙生の雰囲気に当惑する。さらに、槙生の方は、亡姉への嫌悪にまとわりつかれつつ、相手の自立性を尊重することが相手の尊厳を大事にすることだという姿勢を繰り返すが、両親を喪失した朝の側は、亡母からの支配の記憶をまだ整理できていないまま、融和的な親しみを叔母(槙生)に対して求める。
人と人の間のこうしたズレをなんとか埋め合わせ、あるいは少なくとも繋ぎ合わせてお互いのためにより良い社会関係を形成させてくれるのは、善意なのか、倫理観なのか、対話なのか、あるいは食卓共有のような事実的な積み重ねなのか、それとも悲劇的な体験の共有なのか、はたまた共通の存在に関する思いを交換しあうことによって互いのトラウマを克服する過程――槙生は今回、このアプローチを明示的に拒絶したが――なのか。本作がどのような道筋を示していくのかはまだ分からない。
原作漫画は少し読んだだけで、筋書きはほとんど知らないが、コマ組みなどがいささか好みに合わなかった。今回、アニメ媒体の映像コンテに鋳直されることによって、視覚表現としての流れが良くなったように思うし、服装などに見られる色彩的暗示の要素もおそらく追加されている。その意味で、アニメに翻案されたのは、作品それ自体のためにも、そして私個人にとっても、良いことだったと思う。評価は引き続き85点。
友人えみりの母親は、園崎氏。
●『カヤちゃんはコワくない』
第1話。主人公の少女は怪異が見え、そしてそれらを打ち倒せる力を持っているが、周囲からは理解されていないという状況。幼稚園が舞台で、キッズ向けとしてもぎりぎり成立するくらいだが、作中のトーンはシリアス。映像面では、ややゆっくりしたテンポで、クオリティもまずまず。70点。
主演の橘杏咲氏は、2022年デビューの若手。淡々としているが情緒のニュアンスをきちんと反映する芝居をされていると思う。クレジットによれば、ジト目の先生が井澤氏、わんぱく少年が田村(睦)氏、そして強気少女が久野氏とのこと。
第2話。オカルトオムニバスで進んでいくのかな。主人公が何かを求めて道を切り開いていくという形ではなさそう。映像それ自体は、オーソドックスなホラー演出を適切に使っているが、総じて動きが乏しく、面白みに欠ける。ステレオタイプなモブ中年男性キャラがしつこく絡んできたのも大幅減点。もうスクショは撮らず、流し見だけでよいかもしれないが、もう一話だけ観てみて、物語がどういった方向性に進むのかだけは確かめておこう。65点。
第3話。冒頭から、鬱陶しいモブおじさんキャラが出てきたのでもうやめた。
●『シャンピニオンの魔女』
第1話。主人公自身はほとんど喋らず、ナレーションと相方(牛くん)がシチュエーションをリードしていく。作画は、名作劇場風の古風な味わいを志向しているようで、劇伴も民族音楽(ケルト?)風だし、背景美術もにじみのある絵を使って、クラシカルな幻想性を作り出している。
状況設定は、「瘴気をキノコに変える体質だが、そのことが理解されず、人々から避けられている魔女」というもの。周囲の人々から恐怖や警戒の目を向けられる過酷な孤立と、その背景にうっすら広がる悲劇の予感、しかしその中でわずかに抱くいくつかの憧れ(※繰り返すが、主人公の寡黙さがかえってその内心の情動へと視聴者の意識を引きつける)、そしてその憧れが実現されないであろう厳しい困難。少女漫画ベースの柔らかなタッチと穏やかな進行の中に、じんわりと不穏な気配も覗かせている。現代の深夜系アニメとして、かなり特異なアプローチであるように見受けられる。85点。
第2話も、基本的な方向性は同じ。どうやらロマンス基軸の展開になっていくようだ。しかし広場の噴水を真上から撮ったカットが、思わせぶりに頻出するのが、今後の展開を不気味に予感させる。それにしても、エンドクレジットの「ペンギンキャノン」はかなり気になる……(※おそらく中国のアニメ制作会社)。
それにしても、この魔女の力は、わりと笑えないきつさがある。曰く、「生身の人間が魔女に触れると肌が爛れる」、「魔女の足下から生えてくるキノコは有毒」、「魔女帽子の中に隠れて消えることができる」、「絵を描くとその相手の魂を奪える(遠隔地でも)」、「人の記憶を丸ごと吸い取る(特定の記憶を消せる)」、等々……。確かにこれは、未熟な魔女が迂闊に使ったら危ない。
第3話は、先輩魔女たちが勢揃いしての詰問会議。ゲストキャラたちのキャストが物凄い(大川氏の大キノコに、魔女たちは鳥海氏、日野氏、川澄氏、坂口氏、柚木氏、花江氏)。
ストーリーに沿って言うと、Aパートは静かに硬直したような緊張感に満ちており、正統派の幻想物語の風格がある。それに対して後半は、先述の会議シーンで、主人公たちの設定を一気に開示していく。台詞だらけで動きは乏しいもののカメラを水平から斜めに傾けたカットが頻出して不安定な動揺を表現しているし、モノローグ過剰の進行もキャストの迫力によって説得力を確保している。映像作りとしては、見るべきところは少ないのだが、ストーリー牽引型の魅力があり、「呪いの子」どうしの関わりと、それを救おうとする深刻なジレンマ状況の厳しさに引き込まれる。80点。
ヒーロー役が、15歳から6歳のショタに縮んだのは、予想外のラッキー。『アルネ』ではショタがたまに成長形態になってしまうが、こちらで元を取れた(?)。
第4話。丸々2話もかけてようやく会議が終わった。もっとコンパクトに整理できたのでは……。映像表現としても、室内での説明会話ばかりでだれるし、とりわけカラスキャラが、モノローグなのか台詞なのか判別しづらいのもマイナス要素。その一方で主人公は、今回は不自然なほど喋らないままで、ストーリーの推進力が失われている。もっといろいろ演出できたのでは? 75点に下がったが、今回で序盤の節目を作り、次回から正式におねショタ共同生活が始まるようだから、もうしばらく視聴を続けるつもり。
鳥の魔法使いが「鳥」海氏で、花の魔法使いが「花」江氏で、水の魔法使いが「川」澄氏で、焔の魔法使いが「日」野氏。いったい誰がこんなしよーもないネタを思いついてキャスティングしたのか……。まあ、そのおかげで(?)、普段なかなか聴けない声優さんが出演されたので良しとしよう。
●『人外教室の人間嫌い教師』
第1話。低予算企画のようだが、わりと良い雰囲気なのに驚いた。アニメーションはそれほどダイナミックに動くわけではないが、キャラクターたちの生命感を十分に伝えているし、静止画として見てもなかなかエッジが立っていて魅力的。ただし、劇伴がやけに少なかったりして、不足を感じないわけではない。
ストーリー面では、亜人学生たちに人間社会の知識を教えることになったシャイな教師の物語で、ヒロインは4人とまるで美少女ゲームのようなハーレム状況。エンディング映像も、ちょっとAC Promenadeを連想させるような作りで、なんとなく懐かしい。
キャスト面では、兎ガールの長縄氏は毒舌キャラで、雪女(?)教師は茅野愛衣氏、百舌鳥ガールの田辺留依氏もなかなか良さそう。福圓氏は、鼠ガールとして出演されるようだ。
期待していなかったが、これなら70点はつけてよい。ただし、視聴継続するかどうかは微妙。ストーリーを広げていくための手がかりがまだ乏しいので、どのようなエピソードが出てくるかが予想できない。
第2話。キャラの絵がちょっと動いて、台詞に声が付いている映像というだけであって、映像としては退屈。しよーもないカットのまま長時間止まるし、モノローグもしつこくて会話の流れが出来ていない。しかキャラはわりと可愛らしいし、種族特有のバックグラウンドもいくつか提示しつつ、キャラクターのアイデンティティはしっかり確立されている(※つまり、体質や行動原理に、きちんと一本筋が通っているように思える)。というわけで、良いところもあるが、総合的には60点に下がった。もう続きは観ないだろう。
ちなみに今回登場の体育教師は、斎藤千和氏だった。なんと贅沢な……。
●『デッドアカウント』
デジタルデビル除霊バトルもののようだ。OPのヴィジュアルイメージはわりと面白いし、本編映像にも目を引く演出があるし、ところどころ太い輪郭線を使っているのも大胆なのだが、90年代くらい(?)の少年漫画のようなノリはちょっときつい。また、バトルものにしては、絵があまり動かない(※エフェクトや振動などで誤魔化している)。
キャストは、白砂氏(ヤチヨさん)の妹キャラはおそらく今回だけでおしまい。これぞファイルーズあい、と言わんばかりのキャラも登場するが、それだけのために視聴するのも……。評価は65点(事前)→70点に引き上げたけど、2~3話くらいで切り上げることになりそう。
設定面も、いささか不安がある。例えば、「幽霊は、生前に強い思い入れを残した場所に現れる」という説明の中で……トイレ? トイレにどんな未練が……。「お手洗は学校のオカルト噂話の定番」というところから安易にスライドしてしまったのだろうけど、もう少し考えようよ……。主人公が唐突に覚悟を決めるくだりも説得力に欠けるし、そもそも暴力系YTerという設定も無茶苦茶すぎる。うーん。
●『転生したらドラゴンの卵だった』
第1話。激安ストーリーで、絵コンテも退屈だが、キャストと絵だけは良い。主演土岐氏の少年芝居もほのぼのするし、小清水氏の「神の声」(システムメッセージ)がたいへん笑える。穏やかで、端正で、そしてわずかな優しみのフレーバーを滲ませつつ、どことなくユーモアも感じさせるのは、小清水氏が自身の長所を巧みに引き出しているおかげだろう。そして個々の絵も、ほのかな曲線美になまめかしい魅力がある(※ここは作画監督の功績だろう)。こうしたパーツ評価を入れれば、45+10=55点くらいには楽しめた。
第2話。絵はわりとよく動いていて、主人公キャラ(ドラゴン幼体)のプルプルした弾力感も上手いし、背景美術もまっとうなクオリティ。モンスターの巨大感演出なども、良いコンテになっている。ただし、あまりにも手が足りておらず、止め絵も長いし、回想での尺稼ぎも露骨に行われている。モノローグ過多で設定をダラダラ語って話が進まないのも、あまりにもダルい。原作が不足しているわけではあるまいし、遅滞戦術はやめて脚本をきれいに刈り込んでほしいのだが……。作画評価込みでも、やはり60点は付けられない。55点。良くなっていく見込みも薄いし、第3話はもう無いかな……。
今回出てきた新規キャストも今ひとつ。年長の魔女キャラが、エンドロールを見たら釘宮氏だったのにびっくり。いや、もっと上手い芝居が出来る声優さんの筈では……?
第3話も相変わらず。主人公ドラゴンの絵は、尻尾に躍動感の動きがあったりして、そこそこアニメーションしている。だが、根本的にはやはりチープだし、とりわけBGMが安っぽいし、ストーリーもモノローグで喋りすぎだし、キャスト陣も妙に表現のレンジが狭くて味気ない(※音響監督の責任範囲)。
魔物のランクアップシステムは、多種多様な魔物が(生物学的には不思議なほどのヴァリエーションで)存在することの説明としては、わりと上手いと思った。55点。
●『透明男と人間女』
第1話。異種族共生社会で、獣人キャラやサイクロプス夫婦などが多数登場する。透明人間の男性探偵と、視覚障害の女性事務員を中心とする、ほのぼの日常のユーモラスな小話集。キャラ絵が簡素にデフォルメされているおかげで、作画コストは低めながらも隙のない絵作りがキープされている。視覚障害をめぐる描写もきわめてデリケート(※クレジットによれば、盲特別支援学校からも取材協力を受けている)。キャストは、目立ったところは無いものの、堅実な芝居を聴かせてくれる。「僕を見つけられるのは、夜香(やこう)さんだけかもしれませんね」は、作品の方向性を一台詞できれいに言い表しているのだろう。ちょっと面白いところでは、男性の方が背が高いのだが、頭部が透明なおかげで、男女がちょうど同じ背丈のようになっている(つまり肩口までの男性と、全身の女性が同じくらいの高さ)。二人のあいだの対等性、公平性を視覚的にも表現している。
予想外に繊細で充実した内容で、美術的な統一感もある秀作。80点。
第2話。素直で善良な全盲女性と、紳士的でデリカシーのある透明人間男性が、互いの個性や内心を認め合いつつ相手の存在を大切に感じていく様子が、繊細に描かれている。美術的にも、柔らかで落ち着きのある背景塗りがフィットしているし、周囲のキャラクターたちも人格的な複雑さや心身の特徴を押さえつつ、物語を豊かに機能させている。マイナー作品だとは思うが、よくぞここまでやってくれると感心する。難点と言えば、短いエピソードがどんどん切り替わっていくのが、一般的なアニメの感覚からするとやや忙しいのと、ED曲がちょっと好みから外れるくらい。脚本と絵コンテは、今回も瀬田監督自身による。85点。
原作漫画も数冊買って読んでみたが、そちらはそちらで面白い。そしてアニメ版も、漫画版に追随するだけでなく、細部の描写をデリケートに拡充していることが分かる。例えば、帰宅しても暗いままだとか、腕時計では振動で時刻を把握するとか……つまり、アニメ版のスタッフがきちんと調べたうえで、視聴覚的にシチュエーション表現を豊かにするように作り込んでいる(例えば、部屋が暗いままなのは視覚表現だし、腕時計のバイブレーションは音響表現だ)。
第3話。原作漫画とほぼ同じ台詞を使っているが、エピソードを組み替えたり多少アレンジしたりして、アニメ版ならではの構成を丁寧に作り出している。映像面では、前景のキャラクター会話の背後でも、脇筋トークの雰囲気や作業の様子などを動かしているという立体的な表現が多々見られるのもユニーク。さらに、キャラクターに対して細やかな所作のアニメーションを付与することで、作中描写の意味づけを豊かなものにしている。繰り返しになるが、アニメ版のスタッフは実に良い仕事をしている。85点。
ヒロインの母親(ゆかり)役は桑島氏。獣人「写螺子(じゃらし)」役の杉山里穂氏も良い。とりわけ台詞を突っ込んでくるタイミングが、妙に大胆というか、勢いがあるというか、「パワフルなキャラクターが、きちんとそれをコントロールしつつ、それでも滲み出てくる力感」のような手応えがある。
それにしても、おそろしい作品だ。というのは、メインキャラの片方が透明人間なので、表情演出のほぼ全てが封じられている。だから、全身の所作でその都度の表情を表さなければいけない(※汗や赤面などの漫符演出も禁欲されている)。台詞のニュアンスを伝えるのも、ほぼ声優の技量のみに支えられている。さらに会話シーンでも、キャラクターたちの配置と画面レイアウトに、相当な配慮をこらさなければいけない。何その高難度モード。
それと対になる全盲キャラクターについても、一定の難しさがある。こちらも常時両目を閉じた糸目状態なので、目の演出がほぼ全て使えない。ただしこちらは、コミカルな漫符演出を使っているし、口元の表情や身振りを強調しているので、透明人間の演出に比べればまだしも採りうる手段が多い。もちろん顔だけの問題ではなく、手先でのスキンシップや、カメラワークによる意味づけなど、できることはいろいろあるが、それでも一般的な演出が通用しない場面が多々ある。漫画版でも事情は同じで、台詞回しの妙味やコマ組み演出など、あらゆる手立てを総動員して……穏やかなイチャイチャをひたすら描いている。すごい……。
第4話は、透明人間女性の疑惑解消と、キャンプイベント。メイン会話の背後で別のキャラクターたちも会話している多重進行など、場面ごとの空間的-人間関係的な奥行きが丁寧に表現されている。脚本と絵コンテは、今回も瀬田監督による。
貫井氏はまだよく分からないが、阿座上(あざかみ)洋平氏は、この難しいキャラクターの心情的デリカシーを声で見事に表現している。ストーリーそのものは穏やかなロマンス路線なのだが、カップル相互の組み合わせに由来するシチュエーションの特殊性からして、映像演出としてはきわめてスリリングな作品になっている。世間的には「ほのぼの」「きゅんきゅん」「ニヤニヤ」などの感想がほとんどで、もちろんそれはそれで良いのだけど、個人的には全神経を集中させて視聴すべき繊細な緊張感に満ちた作品になっている。
ガマガエル副社長は、上田燿司氏が演じている。悪役キャラから人情ものまで、幅広く説得力のある芝居を披露される役者さん。
ED映像を毎回ちょっとずつ変える(その回ごとの要素を入れる)のは、最近の作品ではたまに見かける。前シーズンの『ツーリング』もそうだし、今期だと『アルネ』『魔王の娘』にも同種の趣向がある。『通販』は、EDではなくOPの最後のカットで、その回に登場するキャラクターが勢揃いしているというもの(※カーテンコールの逆に、本編前に役者たちが事前挨拶するような感じ)。
●『29歳独身中堅冒険者の日常』
第1話。作画や演出はチープきわまりない。主演の古川氏も、サブキャラ硬骨漢では存在感を発揮するが、今回のような軽薄寄りの若者キャラではやや空転気味。29歳という日和った年齢設定ではなく、例えば35歳くらいにしておけば、この役者さんの本領を引き出せたと思うのだが、まあ仕方ない。
その一方で、ヒロイン役の鈴代氏が抜群の輝きを見せている。この方は、あまりピンとこない芝居もあるのだが、幼くて元気なキャラは十八番のようだ(※『九龍ジェネリックロマンス』の小黒も、同じ路線で見事にキャラを立たせていた)。
というわけで、50点+ヒロイン(15点)=65点という、不思議な評価になった。しかし、このヒロインキャラの魅力の一点突破で、はたして最後まで突き通せるだろうか?
第1話からいきなりおもらしシーンという飛び道具については、あえて掘り下げまい。
第2話は、むしろ作画レベルがかなり上がっている。第1話がやたらチープだったのが嘘のように、誠実な絵コンテになっている。キャラの所作も生き生きしているし、走って角を曲がるという難しいアニメーションも敢行している。70点に上昇。
ストーリー面では、村内にとどまってハートウォーミングな話を続ける感じなのかな。OPムービーを見るかぎりでは、メインヒロインの他にも低年齢キャラが複数登場してくるようだ。
第3話は、ヒロインの友人も出来て、人間関係が豊かになっていく。台本(台詞)もマイルドなユーモアを交えつつ、スムーズにイベント進行していく。このまま、ほのぼのして健康的な成長物語になっていきそう。絵コンテも、ところどころ美しいレイアウトがあるし、幼いヒロインが元気に駆け回るところや、主人公の頭にまとわりつくところなども、かなり動画表現を頑張っている(※第1話だけがひどすぎたと言いたい)。70点、あるいは75点をつけてもいいくらい。
第4話。あくまでミニマルな日常の物語を徹底しつつ、作画に関してはかなり頑張っている。気持ちの良いカメラワークの動きも入れているし、キャラの表情もステレオタイプではなくユニークな感情表現を定着させているし、ところどころでユーモラスな演出を入れる余裕もある。ダンジョン風景の描写にも情趣がある。上手い。
表面的には、幼児ヒロインだったり、それがサキュバス成長したりといった奇手が目立つが、アニメ作品としての骨格は非常に堅実に出来ている。客観的な評価としては70点だが、個人的な好みを入れれば75点にしたいところ。
今回の新キャラ「セキヒメ(石姫)」役は、早見沙織氏。この声優さんには珍しく(?)、はっちゃけたキャラを担当しているが、その芝居が実に楽しい。
●『ヘルモード』
第1話。タイトルに反して、状況はそれほどハードではなく、むしろ異世界転生した赤子主人公を温かく育んでくれる両親との交流が描かれている。絵柄はキッズ向けのようにシンプルで、絵の描き込みはやや浅いが、アニメーションとしてはわりと動いているし、彩度控えめな中間色の彩色設計がなかなか意欲的。第1話段階での評価としては、70点を付けられる出来。
キャストは、主演の田村(睦)氏に、母親キャラが大原さやか氏と、なかなか贅沢。弟キャラは、小市氏とのこと。ただし、音響バランスに問題があり、BGMの音が大きすぎて声優の芝居が妨げられるのが残念。
第2話。予想外に面白い。スピード感のある剣戟シーンなど、動画表現も低予算ながらこなれているし、美しいカットもよく出てくる。洒落っ気のある演出も敢行されている。そして全体の雰囲気も温かい。絵コンテは、今回も玉川監督自身による。ただし問題点として、BGMの音量が大きすぎて、台詞が潰れてがちなのはつらい。75点。
主人公の母親キャラ(といってもおそらく二十歳くらい)が、今期一番チャーミングかも。これも意外。
第3話。今回はストーリーを追うばかりで、あまり面白くない。絵はそこそこ動いているが低調だし、ひたすら主人公のモノローグを続けるのも洗練されない(※田村睦心氏が良い芝居をされているので救われる)。しかし、原作を咀嚼したうえで映像にしているのは見て取れるし、大原さやか氏の母親役も要所を引き締めてくれている。虫の音のSEが「ジーイ」と鳴っているのも、開けた農村生活らしさを演出していて微笑ましい。70点。
●『魔王の娘は優しすぎる!!』
第1話。おそらくは低予算企画なのだが、意外に絵が動いている。とりわけ3頭身の娘キャラの可愛らしさが、ぽてぽてした全身の動きを通じて効果的に表現されている(※エンドクレジットを見るに、Production I.Gのモーションキャプチャを活用しているようだが、キャラ絵がかなりデフォルメ寄りなので、キャプチャーデータをそのまま下敷きにすることはできないだろうし、所作の魅力を作るのはアニメーターの創造性に因るので、最終的には現場の作画スキルで動画クオリティを維持していると見るべきだろう)。
それ以外も、洒落っ気のあるアニメーション演出が随所に見られ、安っぽさを上手く免れている。露骨なコピペカットや背景作画の省力もあるのだが、一見キッズアニメのような雰囲気の中では、牧歌的なとっつきやすさとして機能している。
そしてもちろん、久野美咲氏の芝居も凄味がある。低年齢キャラが得意なのは知っていたが、今作は4-5歳くらい(?)のキャラクターの訥々とした喋りを見事に披露されている。読み上げシーンの「にんげんどもよぅ、く?…くもつをさしださねば、そのにくえぐり、はらわたにひをつけておどりくるわせてやるぅぇ」のあたりの崩し方など、堂に入った出来栄え。
ストーリー面は、予想されるとおり、娘キャラの純真さに従者キャラが振り回されるパターンのありがちなコメディだが、娘キャラの善良さのおかげで、ミニマルなほのぼの美談としてまとまっている。しかし、あの長尺の「かくれんぼの歌」シーンはいったい……?
ヒロインの魅力込みで=80点と、予想外の高評価になった。ただし、根本的にはチープな作品なので、毎週観るほどのものかどうかは……。
第2話にして早くも、絵が動かなくなってきた。ストーリー面では、可愛い娘キャラが周囲を幸せにしていく路線を続けるようだが、その前提として、かなりの不幸イベントもストレートに描かれている(※今回だと妻子の死亡や、魔族との殺し合い、管理魔族からの殴打暴行など、わりと残虐な描写がある)。このギャップをどこまで許容できるか(視聴者に受け入れさせることが出来るか)のバランスは、ちよっと難しいかも。
そして、もしかして毎回、ヒロインによる歌が挿入されるのだろうか? 各回に付加価値を設けるという意味では成功なのかもしれない(※ちょうど前シーズンの『ツーリング』でも、こうした唱歌シーンが繰り返された。さらに言うと、ED映像がその回の内容を回顧するようにちょっとずつ変化するのも、『ツーリング』と同じ)。絵の面白みが減ったぶん、評価は75点に引き下げる。
これを視聴し続けていたら、たぶん私は千葉氏の芝居が大嫌いになる(※これまでもなんとなく苦手意識を持っていたが、アレルギー並に受け付けなくなりそう)。
第3話。今回はデュエットで〆。小児キャラがよたよた走り回るアニメーションはわりと頑張っているが、それ以上のものは無い。65点。