2025年7月の新作アニメ感想。
『転生したら第七王子』『nine』『鬼人幻燈抄(2期)』はほぼ確定。その他、『クレバテス』『雨と君と』『陰陽廻天』『ホテル・インヒューマンズ』『傷だらけ聖女』あたりを視聴していくかも。
●『陰陽廻天 Re:バース』(オリジナルアニメ)
第1話。ヴァーチャル平安京っぽい世界での死に戻りストーリーになるようだ。出来は無難だが、カットイン多用などユニークな試みも見て取れる。「擬似平安+陰陽バトル+死に戻り+バンカラ主人公+ロマンス」は、どうにも散漫に見えるのだが、上手くまとめられるのだろうか。
第2話は、ループしてからの状況が見えてきた歴史のあるガジェットなので、ドラマとしての見せ方も洗練されている。サイケカラーな平安京というのも新鮮味があるし、音声芝居も賑やかでよろしい。
ただし、バトルシーンはエフェクト過剰でちょっと見づらい。作画そのものは頑張っているし、和風ロボットというのもオリジナリティがあるのだが。
●『鬼人幻燈抄』(2期)
初週はYT上での総集編。2週目も、総集編的なコンテンツ。
通算第14話は、仕切り直しのためか、葛野時代の回想が中心。ライティング(光源演出)が繊細なのも、バトルシーンが今一つなのも、1期から相変わらずのクオリティ。静かな劇伴も好ましい。そして早見沙織おねえちゃん。
今回の第2期版のOP映像は少々散漫に感じた。ED映像は、今回も絵巻物風の横スライド(パンニング)レイアウト。
第15話は、単体完結のエピソード。史実の幕末状況を織り込みつつ、あらためて主人公の目的意識を浮き彫りにしている。前半は屋内での緊張感のある会話劇が中心。型通りではあるが、江戸時代の武家屋敷の雰囲気がよく映し出されている。そして後半は、路上での戦闘がメイン。
●『クレバテス』
第1話は45分の長尺。予想外に良い出来だった。子供が走るアニメーションも朗らかで可愛らしい雰囲気を出しているし、魔獣の巨大感や重量感もしっかり表現されている。そして建物などの背景美術もディテール豊かに描かれているし、さらに触手うねうねも柔軟にアニメーションさせて、破壊の速度感とバトルの緊張感を見事に演出している。
ただし、後半部は天然ツンデレのようないわゆる「シリアスな笑い」に大きく傾斜しているが、これが吉と出るか凶と出るかはまだ分からない。また、一部キャラクターの音声芝居がやたら浅薄なのも気になった(※王や白馬騎士など。ハイデン王を演じていたのは、本職声優ではなくテレビ俳優だった)。魔獣クレバテスの芝居も、やや落ち着きすきで迫力に欠けたのはもったいない(中村氏)。アリシア役の白石氏は、えっ、前クールの鯨井令子役の方だったのか。気づかなかった……。なるほど確かに、慌てキャラの芝居は同じ雰囲気だった。
全体として密度の高い映像作品になっているので、今後も視聴していくつもり。
第2話は、盗賊団のアジトでの出来事。いきなり悠木碧氏(乳母キャラ)が怪演を披露したり、ファイルーズ氏(娼婦代表役)がシーンを引き締めたりしている。ただし、悠木氏は技巧披露を優先して情緒に欠ける憾みがあり、その悪癖が今回も出ている。主演の田村氏と白石氏はどちらも率直な芝居だが、場面に応じた説得力がある。
映像面は堅実なクオリティで、酒場での動きはなめらかにアニメーションさせているし、アクションシーンも適切に動かしている。輪郭線が、漫画のように強弱のある筆遣いをしているのもユニーク。さらに、前話同様にかなりの流血シーンや暴力シーンもある。
第3話は、ひきつづきアジトでの殺陣シーン。すでにしてナンセンスグロゴアスプラッタギャグアニメとしての地歩を確立しつつある(※今回はマニアックなボア=丸呑みもあるよ!)。迫力のあるクローズアップショットも多用しつつ、人物たちのフレームイン/フレームアウトも物々しい雰囲気を盛り立てる。また、作画についても、あえて荒々しさを残す輪郭線が高い効果を挙げている。シリアスなようでいて微妙にユーモラスなムードも漂わせているのも、明確に意図的なものだろう(例えば、主人公の身体回復シーンのマリオネットのような動きは、ギャグめかしたおかしみと不気味な奇怪さを両立させている)。劇伴と効果音も、臨場感のある作りになっていて上手い。
この作品は基本的には、かなりきつめのダークファンタジーなのだが、同時におかしみのあるユーモア要素も頻繁に取り入れているのが興味深い。
作中では殺人、人身売買、性的蹂躙、虐待といった陰惨な事柄を、日本のアニメとしてはおそらく珍しいくらい直接的に描いているし、流血描写や人体損壊描写もグロテスクなまでに映像化している。しかしその一方で、妙にコミカルな描写も入れている。例えば、主人公の驚嘆の表情はかなり大袈裟でほとんどギャグシーンに近い描き方だし、白石氏の芝居も「真面目キャラを突き詰めた笑い」を意識しているように聞こえる(特に苦労人的なツッコミ台詞)。さらに、「赤子に母乳を与えるために胸部を露出させられる」、「赤子に小水をひっかけられる」、「強大な魔獣だったのに、擬人化していたせいで野盗の一撃で気絶する」、「ゾンビとして復活するときにマリオネットのような珍奇な動きをする」など、本当にシリアスな作品を目指していたならば使わなかったであろう描写が度々現れる。
教科書的に言えば、状況の陰惨さを緩和してとっつきやすくするためだと捉えることができるが、それにしては(それだけの目的にしては)やり過ぎに見える。いずれにしても、真面目くさったダークファンタジー一辺倒として解釈するのは、本作の手触りを無視するものだろう。そもそもストーリーの枠組からして、「絶大な力を持った魔獣がたまたま人間の乳児を預けられて、その面倒を見るためにうろつき回る」という子育てコメディのような路線なのだし、しかつめらしい雰囲気だけではミスマッチになるだろう。その意味で、この監督の演出方針はなかなか面白い(※もちろん、描写は原作漫画をベースにしているのだが、漫画とアニメでは意味づけや存在感が異なってくる)。
第4話。どんな絵を見せたいかが明確なので、気持ち良く視聴できる。アニメーションもかなりの高レベルでよく動いている。状況説明の台詞がかなりしつこいが、白石晴香氏の芝居で臨場感豊かに聴くことができる。
●『転生したら第七王子』(2期)
第1話(通算13話):第1期と同じく、映像としては面白くない。コンテは漫画版を無思慮に踏襲しているせいで映像としての流れが悪く、説明のために時間が間延びしているし、カメラワークも乱雑でただの切り貼りに終始している。SDをそのまま流用しているのも良くない。漫画のコマ絵の「再現」しか考えていないとこうなるという悪例。転移魔法の発動のシーンも、もったりしていてヘタクソ。
ただし、キャラクターの細かな所作のアニメーションを振り付けしているのは評価すべきだろう(特にイーシャ)。グリモが物を吐き出す「う゛え゛え゛え゛」台詞も、相変わらず個性的。
それにしても、これは間違いなく、おねショタだなあ……。
第14話。悲しいほどに映像作りが拙劣、というか、何も考えていないので論外レベル。漫画版を猿真似しているだけなので、緊張感のある瞬間でも画面を止めて長台詞のモノローグを延々喋らせている(※漫画であれば小さなコマ一つでやり過ごせるが、アニメだとフルサイズで画面が止まったままなので動きが死ぬ)。また、台詞の意味づけと映像の切り替えテンポがズレていたりするし、カットの意味づけも全然成立していない。さらに、カメラワークがまったくと言っていいほど動かない(※例外的にバトルシーンの一部だけは派手に動かしていたが、それ以外は駄目駄目)。
漫画の擬音をそのままアニメに文字として描き込むのも、おそろしくチープに見える(※現代アニメでは、よほどの低コスト作品でも滅多にやらないイージーな見せ方)。その一方で音響としてのSEは薄いし、それでいて役者の台詞は劇伴に埋もれてしまっているし、視覚的エフェクト(VFX)の付け方も素人じみていて、魔法発動の迫力も見て取れない。とにかく最低にダルい。こんなのを作画させられている現場のアニメーターたちが可哀想になるくらい。駄目なのはあくまで監督や絵コンテや演出や音響であって、個々の作画そのものはおそらく誠実にきちんと作られているので。
ついでに、残念ながらジリエル役の声優もギタン役も、個人的には合わなかった。前者は元気さが足りないし、後者も低く沈んだ重みと深みを期待していたのだが当てが外れた。
視聴するのが苦痛だが、原作(漫画)との照合のために最後まで付き合う。
良い点をあえて挙げるなら、新規ヒロインのイーシャは第14話でもかなり良く描けている。表情の変化も多彩だし、振り付けもいろいろ動かしている(※ただし動きが作為的で、演出のセンスは無いけど)。
第15話は、「シビル・ウォー」登場まで。映像的美質はもはや皆無。
●『9 nine』
第1話。80年代以来の伝統芸能じみた学園異能ファンタジー。冒頭の作中作パートはやたら力が入っていたが、本編部分の表現は凡庸で、コンテも劇伴も良いところが見当たらない。しかしそれでも、ついていこう。
メインヒロインの福圓氏はかなり抑えた芝居で、もったいなく感じる(※ストーリーとともに変化していくと思うが)。妹役の種﨑氏は、相変わらず変幻自在。教師役の武田華氏も、妙に存在感がある。しかし悪友キャラは、演技も平板だしセクハラ台詞連発もきつい。
第2話。戦闘シーンは撮影エフェクトで誤魔化しすぎだが、まあ仕方ない。ストーリー進行も、葛藤や躊躇が無くてデリカシーに欠けるが、まあ我慢しよう。さらに映像的なリズムも乏しいし(※路上の会話シーンで妙にフラフラ歩き続ける)、シーンごとの情緒も無いし(※劇伴の付け方が鈍感で押しつけがましい)、さらには描写の説明的な意味づけも無いが(※例えば時間経過の表現など)、どうしようもない。しかし音声については、福圓氏のエンジンが掛かってきたし、ぬいぐるみキャラの新井里美氏も妖気に満ちた怪演を披露している。
河内和泉氏の漫画版と対照すると、第1巻の終わりまで進んだところ。かなりのハイペース。
第3話。うーん、良いものになってほしいけれど、やはりクオリティは低い。ストーリー面では、アニメ各話の区切りがぎこちないし、映像面でも、コンテが乱雑が不可解なカットつなぎが頻出する。原作ゲーム版から中途半端に台詞を掬い取っているせいで、浮いたシーンが出てきたり、妙に短いシーンが無理矢理挿入されていたりする。
しかし、福圓氏の誠実な芝居と、種﨑氏の自由闊達な芝居には、やはり聴く価値がある。怪しいぬいぐるみを演じる新井里美氏のねっとりした芝居も強烈な個性を放射している。それに、メインヒロインがふわふわしたロングウェーブ髪で歩いているところは、これはこれで特有の魅力がある(※もうちょっと柔らかく軽みを感じさせるアニメーションであってくれたら……)。
第4話は、告白シーンを誠実な言葉で綴っていく。そして正統派の急転直下展開。長所と短所はいつも通りで、ADV由来の台詞重視描写は良く出来ているが、映像のつながりが弱い。
それにしても、いまだに女性からは「○○くん」の敬態口調、そして男性からは「××」と名前呼び捨ての常態口調のギャップをそのままにしているのは、いかに男性向けフィクションとはいえ、そろそろ引っかかりを強く意識してしまう。
●『ホテル・インヒューマンズ』
第1話。アニメーションはあまり動いていないし、殺陣描写も期待したほどではないし、背景のディテールも甘い。また、モノクロの回想演出や、両目を不必要にキラキラ輝かせるところなど、いささかセンスが古いと感じた。大家アミノテツロー氏ならばたぶん良い映像を作ってくれるだろうと思い込んで期待していたのだが、OPムービーも意味不明だし、空中ジャンプ中に銃弾を避けるし……不満点が目立ちすぎる。
役者については、主演の小林氏は台詞のニュアンスをきちんと汲み取って演じているが、ヒロインの方はよく分からない。
劇伴はアコーディオンを強調したスペイン風のリズミカルなもので、まあこれはこれで個性と言える。このサウンドは、「社会の周縁で暮らす人々の生き生きした雰囲気」といったような趣旨のチョイスなのだろうか。理解できなくはないが、ホテルの静かなムードとは懸け離れているので、この音楽がハマるかどうかは演出の見せ方次第かな。
全体に期待を下回っているが、まだ評価は決めかねるので、3話くらいまで視聴してみる。
→ 第1話の印象が悪すぎたので、第2話を観る気分になれず、諦めた。映像の色彩感の落ち着かなさも、運動表現のとろさも、それ以外のコンテ演出の退屈さも、主演(ヒロイン)の魅力の無さも、がっかり度合いが大きすぎた。
●その他(※第1話で断念)。
オリジナル『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』:3Dショートアニメ。短すぎてなんとも言えない。
オリジナル『新星ギャルバース』:90年代風タッチ。全体に雑だし、せっかくの声優陣も覇気がなくて芝居の味わいが乏しい。
オリジナル『神椿市建設中。』:3Dアニメで歌手キャストがひどい。退屈。BGMはちょっと面白かったし、背景美術も良いのだが、それ以外が耐えがたい。何故かキャストクレジットが出ていなかった。
『フードコートで、また明日。』:日常トークもの。カット切り替えが非常に散漫で、おかしなアングルにフラフラ飛び回るし、カメラワークそのものも極端なクローズアップと作為的なロングショットの落差があまり馴染んでいない。エリア内の壁ポスターなどにカメラを向けるパンニング/ティルトも機会的で、映像的な意味づけに欠ける。というわけで、映像表現としてストレスが溜まりそうなので視聴撤退する。
とはいえ、主演の宮崎ヒヨリ氏と青山吉能氏の芝居はまずまずだし、作画そのものは丁寧で表情豊かに描かれているし、第1話の問題も主に絵コンテのひどさなので、第2話以降で面白味が出てくる可能性はある。しかしそれでも、第1話ののっけから監督の古賀氏+総作監の坂井氏の共同コンテというあたりに、どうも不穏な気配を感じるが……。
ちなみに、何故かキャラクターの耳が丸々と大きく突き出ていてやけに目立つのは、原作漫画準拠のようだ。アニメで絵を動かすとかなり目立つので、もうちょっとマイルドにしておいた方が良かったと思う。
そういえば、『キルミーベイベー』『少女終末旅行』のような若年女性2人だけでひたすら何かしている作品といったら、他に何があるだろうか。ショートアニメや漫画作品にはあるし、男女ペアもいろいろあるし、3人以上の日常ものも多いけれど……案外少ないのか? 春クールの『忍者と殺し屋のふたりぐらし』もこれに該当するようだけど、私は視聴していない。
というわけで、『フードコート』もキャラ替えしたキルミーダンスや終末ダンスのパロディや、逆にそちらのキャラたちがフードコートダンスをするパロディ動画なども、いかにも出てきそう(出してほしそう)な作品だった。