2014/10/07

『神楽』シリーズについてのあれこれ

  『神楽』シリーズについての雑記集。
  以前にはこんなことも書いていた:別ページ『神楽』シリーズについての雑感


  (2014/07/30)
  [tw: 494130916562702337 ]
  思わず我が目を疑ってしまったが……これは、ナツ様?
  耳の位置が少し変わっているが、配色もヘアスタイルも猫耳も同じだし、右隣にはまさにあの書体とあの色で「夏」とあるし……暗黙の了解込みでの「単なるオリジナルイラスト」に過ぎないのか、それとも本当に作品自体が復活(再販?)したり直系続編が出たりするのだろうか!?

  ということでなにやら気分が高まったので、『夏/鬼』ディスクを引っ張り出してきて、まずは桂香さんにフライパンで起こされてこよう。先日たまたま『月神楽』に言及したのも、何かの虫の知らせのように思えてくる。
  タイトル画面でホタルがアニメーションしてる!(多数の光点が浮遊している)
  これこそ2003年の青山ゆかりだ! 大波こなみの「お兄ちゃん」キャラだ! この時期は特にキンキンでキラキラだなあ。しかも、新しいヘッドフォンで聴き返すと、昔とはずいぶん違って聞こえる。鉄仮面氏のツッコミも勢いがあってたいへん良い。向日葵の咲く廊下風景(背景CG)も懐かしい。そして、今なら、九尾の声が大波氏であることを確信できる。ぼく、せいちょうしたよ!
  [ www35.atwiki.jp/debo_wiki/pages/46.html ]:ちなみに、この『神楽』シリーズの周辺にも、こんな作品間クロスオーバーがある。半妖獣一族や、魔法力の時代的変遷、なんでも屋(HELPS)の存在など、どことなくSHC共通世界と似通っていたりする。



  (2014/08/02)
  『夏神楽』に続いて『鬼神楽』を再プレイ中。以前は、みすみ氏(天神かんな役)の声ばかりに注目していたが、あらためてプレイしてみると、イチ様役の木村氏も本当に素晴らしい。神様キャラなのに腰が低くて礼儀正しく、かといってけっして卑屈にはならずむしろそれは可憐さを引き立たせており、進んで家事をこなすところに温和な日常的ムードと巧まざるユーモアと真面目さがあり、そしてその真面目さは物語の劇的側面では切羽詰まった悲壮さとも結びついて、その感情を切々と滴らせていく。そういう性格と位置づけが、テキストとともにまさに声によって表現されているのだ。他の声優だったら、この同一のテキストの上で、もっと超然とした神格キャラにしたかもしれないし、あるいは天真爛漫な低年齢系キャラとして作り上げたかもしれず、あるいはもっと深刻な暗さのある無力な悲劇のヒロインや、ほとんど矛盾しかねないほどの強烈な二面性のあるキャラクターにしたかもしれない。しかし、木村氏の下では、木村氏の解釈の下では、木村氏の表現力の下では、イチ様はこういうキャラクターになった。真面目さと優しさと長閑さと悲しさを、一つの明瞭な個性としてまとめあげた。これこそが役者の仕事であり、そして、素晴らしい仕事だ(――そして、この芝居を十分には理解できいなかったあの当時の私は、申し訳ないことに、本当に愚かだった)。
  回想の「歩」役も、みすみ氏かな。

  ……はっ、敗北せずにプレイしていると、アダルトシーンが二つしか出てこないじゃないか。各キャラと満遍なく会話して特定ヒロインの告白イベントが発生しないようにすると、18禁場面は途中の霧襲撃シーンと回想上の木島家襲撃シーンだけで、しかもどちらもごく短いシーンで、CGにもモザイクが入らないという。もっとも、性表現要素以外では、芳賀の内臓露出CGなどの18禁的要素がある。大賀研究所屋上も、死骸こそ描かれていないものの、わりとスプラッタな画面になる。

  『紅神楽』まで行くと、シリーズ最新作としての価値以外に新たな魅力を見出すのは難しくなってしまう。せめて全体マップ(神社周辺の夜景俯瞰地図)を出してくれれば、その舞台設定をもっと良く実感できるようになっただろうに……。

  web検索してみたら、『紅神楽』については、十分な攻略サイトが存在しない模様。プレイガイド的サイトと、合成一覧を出しているwikiはあるのだが。せっかくだから、スキル一覧やスキル習得をしっかり調べて形にしようかな。しかし、掛かるであろう時間と、得られるであろう満足度とを、天秤に掛けて考えると……。
  ともあれ、ひとまずページを作ってみた。
- 「『紅神楽』ユニットとスキル習得
- 「『紅神楽』スキル詳細
- 「『紅神楽』各種メモ



  (2014/08/23)
  【 寺岡氏をめぐって少々 】
  『鬼神楽』で葉子さんとイチ様が、「ゾンビという言葉は正しくありません。正しくはタヒチの」と言っているが、一般的には(現実で言われているのは)「タヒチ」(太平洋の島)じゃなくて「ハイチ」(カリブ海の島)のそれ。最初にプレイした時も、内心ツッコミを入れた憶えがある。もちろん、フィクションの中のあらゆる記述が現実に即して科学的/学問的/常識的に正しくあらねばならないということは無いのだが、これは脚本家の些細な取り違えだろう。
  あの天丼コメディは、台詞の切り方や、主人公(木島)の反応まで含めて、あの作品の中でもとびきりに秀逸な一幕だった。寺岡氏のテキストは、初期の『わーきんぐDAYS』(2001)の頃から面白かったし、『がくパラ!!』(2003)や『夏神楽』(2003)ではやや通俗に流れすぎた印象があったものの、この『鬼神楽』(2005)では、とぼけた味わいとツッコミの的確さを併せ持って、切れ味良く後味の良いコメディを書かれていた。上記「ゾンビ」イベントのように、複数のシーンでネタの平仄を合わせるつなぎの巧さも気が利いていた。最近の作品でも、シリアスシーンにすらコメディの脱線を頻繁に差し込んでくる話芸は、『鎖』の枕流氏と双璧だと思う。
  [ tw: 23275248115777536 ]:以前にこんなことも書いていた。



  (2014/09/20)
  【 『夏神楽』リメイク:立ち絵サンプルを見ての感想 】
  ニュー桂香さんは、外見の印象は随分変わったが、これはこれで可愛らしいと思う。e.go!版の絵も、(あの時期の山本原画に特徴的な)横広の顔立ちの上に柔らかく広がったつぶらな垂れ目と、わりと直線的な髪の毛の輪郭、そしておおぶりなエアインテーク――このため横髪を垂らしているようにも見える――が、キャラクターの個性を描き出していたのだが。凛々しくもあったし、 レンジ破壊エピソード(に代表されるような、隠れた変人ぶり)にも説得力を与えていた。
  緑の黒髪なニュー葉子さんは、外見でも「青山ゆかり度」が増している感じ。(なんだそれは)



  (2014/10/06)
  【 『夏神楽』リメイク:CGサンプルについての感想 】
今回のリメイク『夏神楽』の一枚絵はあまり感心しなかったが、そう感じた理由の一つは巫女装束の質感のせいだろう。旧版ではわりと濃いめの臙脂色で、生地の柔らかさを窺わせたのだが、今回の一枚絵ではほとんどアニメ塗りのようなぺったりした着彩になっている。色合いも、明るくなりすぎていて安っぽい。しかも、それでいて、特に人体部分は、全体にぼんやりライトが当てられているかのように、陰影が乏しい。旧版では、夜中のシチュエーションということもあり、影の部分は暗さを意識させるようになっていた筈だ。たとえば背景の空も、旧版では明確に「夜の闇」として黒く塗られていたが、リメイク版はどうやら珊瑚色(ダークサーモン)程度の明るめな彩色になっている。ただし、影の暗さが無くなっているのは、でぼ時代になって以来ずっとこうだし、これはこれで「見やすい」と言えるのかもしれない。背景部分の塗りや描き込みがいかにも浅くなっているのは仕方ないとしても。また、破れを表す断面部分も布地らしさが無くて直線的なギザギザになってしまっている。これはCG班よりも原画サイドの責任範囲と考えるべきであろうが。あまり簡略化しすぎるとコミカルに見えてしまいかねないので、ここは配慮されるべきだったろう。
  ただし――その代わり、ということでもないだろうけど――触手の塗りはグレードアップしていると言ってよい。旧版のCGも、どこか神秘的な、非現実的な存在としての妖怪を描き出していたのだが、今回のサンプルCGを見ると――そして同社他作品を見ても――触手のジェル感が増している。生物的な質感と、粘着感、水っぽさ。神秘性に対する生々しさ。でぼの巣の(そしてこの分野全体の)この十年間の着彩技術の進歩がはっきりと見て取れる一側面だ。ただし、問題が無くもない。旧版では、妖怪の妖気が人体にまとわりついている表現がわりとはっきりしていた(例:水妖や天狗)が、リメイク版ではそうした妖気の表現が乏しいように思われる。雪女や雷獣のオーラ表現はあるのだが、妖気の浸食を強調するようなものではない。その分、ヒロインの人体部分が妨げなくクリアに見えるのは、でぼ時代のアドヴァンテージだが、作品のコンセプトと一枚絵の状況設定からすれば、きれい過ぎても趣に欠けるだろう。
  要するに、見比べてみると「質感や妖気のリアリティ」と「見やすさ」の間には一種のトレードオフ関係があり、そして旧版(e.go!塗り)は前者を重視しており、リメイク版(でぼ塗り)は全体のクリアな見やすさを優先させているように思われる。

  e.go!時代の『神楽』シリーズは、スピンオフ的なFD内ミニゲーム『天神楽』に銀髪キャラが一人いただけで、あとは6人(+1人)全員がストレートロングの黒髪ヒロインばかりだった。それに対して、でぼ時代に入ると金髪メインヒロインや銀髪ヒロインが現れ、さらに様々な頭髪色の非巫女キャラも増えてきた。今回の『夏』リメイクでも、初花のキャラクター紹介テキストが「黒髪」から「茶髪」にはっきりと書き換えられている。どちらが良いという話ではないが、e.go!時代とでぼ時代の間の制作方針(コンセプト設計)の変化を窺わせる一事実だ。