そもそも「姫騎士」ってなんやねん。
往時のメイド流行に取って代わるかのように、最近では(LNなどの隣接領域とともに)騎士ヒロインが人気になっているが、非ファンタジーの白箱系(姫)騎士ヒロインものって、どのあたりからの流行なんだろうか。『プリンセス・ラバー!』が2008年だが、美少女ゲーム分野ではこのあたりが現在に至る流行の端緒になるのだろうか。近年では、とりあえずタイトルに「騎士」という単語が含まれる白箱系/ピンク系のタイトルで見ると、『ワルキューレロマンツェ』(2011)、『恋騎士』(2011)、『聖ブリュンヒルデ学園』(2013)、『きみと僕との騎士の日々』(2014)、『銃騎士』(2014)、『キシ×カノ』(2015予定)といった感じ。『Justy×Nasty』(2012)や『ノブレスオブルージュ』(2013)、『ユニオリズム』(2024)もそうだ。これらのほとんどは「現代相当の世界での、学園舞台での、騎士ヒロインもの」という点で、おそらく00年代末より前にはほぼ存在しなかった類型だ。
さらに「円卓の騎士」ネタの『Knight Carnival!』(2010)と『12+』(2011)などもあるが、これらは『恋姫†無双』に端を発する「歴史キャラクター(女体化)+大量ヒロイン」系タイトル群の中にも位置づけられる。もちろんこれらも、多くが「戦うヒロイン」「武士/将軍/騎士ヒロイン」だが。『3Ping Lovers!』(2014)も姫騎士がトップヒロイン。
黒箱系では、特にいつからの流行ということもなく、ずっと続いていると言っていいだろうか。『スイートナイツ』シリーズ(2002-)の頃から、そして『姫騎士ジャンヌ』(2006)や『姫騎士アンジェリカ』(2007)、『ステルラエクエス』(2008)といった里程標的作品群を経由して、現在に至っている。『ダンジョンクルセイダーズ』(2006)も、メインヒロインが騎士キャラだった。『PENDULUM』(2015予定)も、シリーズ前作の『ヴァルプルギス』(2010)が明らかに魔法少女ものの一種としてデザインされていたのに比べて、キャラデザの段階から明らかに騎士モティーフを取り込むものになっている。「縁」ブランドも、シリーズ第一作(2009)と第二作(2012)では剣士ヒロインだったものが、最新作『Knight & Princess』(2014)は騎士ヒロインを投入した。その他、ロープライスにもたくさん(――そもそも「姫騎士」という言葉を最初にタイトルに使用したのは、EGScapeで判明する範囲では、どうやら2004年の低価格作品『姫騎士リリア』のようだ)。やはり『アンジェリカ』の影響は大きかったのかなあと思うが。
こうしてみると、「白箱系学園騎士もの」は、非常に目立つ流行の一つではあるが、10年代に入ってからも年に2~3本程度しか出ていないので、(まだ)そんなに多いというわけではない。○迅社の最近のLNが赤い衣装の金髪姫騎士たちに占拠されているのに比べれば、ずいぶん穏健な状況に留まっていると言うべきだろう。
個人的には、べつに好みでもなんでもなく、今回挙げたタイトル群もほとんどプレイしていない。新作情報を得ていく中で知識として保持してはいた、という程度。もちろんその中でも様々な試行錯誤やコンセプト特化や多様性や洗練が、きっとなされているのではあろうけれど。
さらに個人的な話をするなら、『メイドさんと大きな剣』(2006)がメイドから騎士への転換の先触れになっていたのであったなら、美しいと思う。そもそもここでメイドを引き合いに出しているのは、メイドも(姫)騎士も「職業」属性だからであり、しかも規律と服従を旨とする(のだとフィクションでは一般に想定されている)プロフェッショナルな職業という共通性があるからだ。もちろんその他にも、代表的なところでは「教師」「ナース」「委員長」「巫女」「姫」「魔女」「魔法戦士/魔法少女」なども、職業(すなわち、特定の継続的な活動を行うことに関わり、生計乃至生存の手段でもあるような、社会的に認められた役割または社会的地位)の一種として存在しはするが。