画面振動演出いろいろ。
物理的/心理的な衝撃を表すために画面振動が多用されるが、これにもいくつかの種類がある。最も一般的なのは、1)画面全体を揺らすパターンだが、これだけではない。2)背景画像のみをクエイクさせるというものもあり、3)テキストボックスのみを揺らすというタイプもある。さらには、4)立ち絵(のみ)を揺らすというパターンも考えられ、5)それらの複合形態、つまり、複数の種類のパーツを振動させるものもある。
1)は、きわめて汎用的な、言い換えれば意味の特定性があまり無いような表現だろう。これは、戦闘時に主人公が受けた衝撃の表現から、作中世界で多くのキャラクターたちが経験した大地震の表現に至るまで、様々な局面で使用されている。
2)は、背景画像のみがシェイクされるが、テキストボックスや立ち絵(があれば)は揺れない。これは、以前に『あまつみそらに!』に関して述べた(cf. [tw: 12400464446 ])ように、物理的な震動というよりは主人公の心理的な動揺を表現するのに適していると考えることができそうだ。もちろん、それに限らず汎用的にも使われ得るし、実際使われているが。
3)は、テキストボックスのみが震動するということから分かるように、当該台詞の内容に合わせて用いられることが多い。典型的には、(主人公が)痛みや驚きで悲鳴を上げる場面で、それに合わせてテキストボックスを揺らすという使われ方がある。ただし、物理的衝撃の表現としてテキストボックスが歪むという表現も存在した(cf. [ twilog.org/cactus4554/date-110331 ])ということは注記しておきたい。
4)立ち絵単体での振動は、画面振動演出というよりは立ち絵演出の枠内で語られるべきものだろう。キャラクターの身体的動作を、あるいはキャラクターの心理的な動きを、立ち絵アクションによって表現するテクニックは、現代美少女ゲームの基本文法に属する。
5)複合表現のばあい。立ち絵と背景が揺れてテキストボックスが揺れない場合は、上記1)のヴァリアントと考えてよいだろう。テキストボックスを揺らさないのは、おそらく文字が読めなくならないようにするためだろう。配慮の行き届いたスクリプトだ。立ち絵とテキストボックスを揺らす(背景は揺らさない)タイプ、背景とテキストボックスを揺らす(立ち絵だけは揺らさない)タイプは、具体例が思い当たらないし、そのような形態の表現をあえて実行する意味も想像できない。
ただし、ここで一つ注意しておきたい点がある。4)の立ち絵振動では、その都度の登場人物が蒙った衝撃や力学的作用を表しているが、それとは対照的に、上記2)-3)では、通常、主人公自身が受ける心理的乃至物理的インパクトを表現するのに用いられているという点だ。ここから「ゲーム(AVG)の画面とは何であるか」についての結論を引き出すのは強引にすぎるであろうが、少なくとも慣用的になされている演出実践の事実として、振動演出が主として主人公(あるいは語り手、あるいはプレイヤーキャラ)のために割り当てられているという観察は記録しておきたい。