2018/01/23

「ガンダムMk-II」プラモデル4種の比較

  プラモデル「ガンダムMk-II」の、PG版、MG版(2種)、RG版の外見上の比較。


●パーフェクトグレード版(PG):1/60スケール、2001年発売。エアブラシ全塗装で制作。
●マスターグレード版(MG):1/100スケール。無印版(本記事ではver.1と呼称する)は1998年発売、「ver.2.0」版は2005年発売。ver.1は筆塗り全塗装、ver.2.0はスミ入れのみ。
●リアルグレード版(RG):1/144スケール。2012年発売。無塗装組み立て。

  スケールの大きいものから、PG→MG(ver.1)→MG(ver.2.0)→RGの順番で配列している。


  【 上半身 】

(fig.1-1:)PG版は、MG(ver.1)からわずか3年後のキットであり、基本的なプロポーションはおおむね踏襲されているが、装甲にディテールが増えている。ただし、コクピット収納メカニズムの都合もあってか、腹部の横幅がかなり広がっている。両肩先端部の切り欠きに、MG版2種ではイエロー部分が見えているが、PG版は内部フレーム色(ブラック)になる。
(fig.1-2:)MG ver.1。上腕のホワイト部分が、かなり小さくなっているのが特徴。上腕のホワイト~ブラック間の接続はボールジョイントになっているので、保持力が弱い。腹部は他のヴァージョンよりも細く引き締まっているし、胸部の上下幅も締まっている。ホワイトの外部装甲パーツは、細かな彫刻も無く、かなりすっきりしているが、1/100スケールとしてはこのくらいで良い。
(fig.1-3:)MG ver.2.0。胸部の構成はかなり平面的になり、ブロックらしさが増している。両肩の装甲パーツも四角形に近づいているし、股間前部の袴も大型化している。ホワイトの装甲は、PGを踏襲して細かなモールドが施されている。胸部ダクト(イエロー)は、フィンまで一体成形。胸部上面のカメラの位置を見比べると、ver.1からの変化がわかりやすい。
(fig.1-4:)RG版。かなりスケールが小さく、また、全体のデザインも独自路線を強めている。とりわけ肩の外部装甲の造形がかなり変化している。ホワイト部分が、2色の成形色で分けられているのも特徴的だが、少々やりすぎのようにも思える。また、キットには大量のマーキングシールが同梱されているが、ここではシール類はほとんど貼り付けていない。


  【 頭部 】

(fig.2-1:)PG版では、発光ダイオードを仕込んで両目とコクピットを発光させることができる(ボタン電池のみ別売り)。頭頂部カメラと胸部カメラは、キットではただの透明だったが、ここではクリアグリーンのパーツを別途調達して嵌め込んである。
(fig.2-2:)MG ver.1の頭部。両頬の脇の外部装甲も薄く、全体に引き締まった印象を受ける。頭部外装のパーツ構成は、MGはver.1とver.2.0のどちらも前後二分割。
(fig.2-3:)MG ver.2.0。頭部側面のダクトが、ver.1と比べて大型化している。そのおかげで、スミ入れはしやすくなっている。アイカメラは、シールを貼るとギョロ目気味に見える。
(fig.2-4:)RG版。他のヴァージョンと比べて、頭部の上下がやや寸詰まりになっている。小スケールだが、頭頂部(髷部分)は別パーツ化されており、前端のカメラもクリアグリーンで成形されている。頭部側面のダクト内部のグレーも、パーツ分割によってすでに成形色で再現されている。


  【 上半身(側面) 】

(fig.3-1:)PG版では、肩先端のダクト内部まで、成形色で色分けが再現されている。両肩の前後の外装は、独立可動する。
(fig.3-2:)MG ver.1。他のヴァージョンと比べて、コクピットハッチがかなり前に尖っており、特にスタイリッシュな雰囲気を持っている。写真で分かりにくいが、コクピットハッチの上面はわずかに凸面湾曲している。各所に色気のある曲面があるのがMG(ver.1)の特徴だろう。胸部左右の紺色部分は、他のキットよりも小ぶりに作られている。
(fig.3-3:)MG ver.2.0。側面のシルエットはPG版にやや似ているだろうか。Ver.1とはうって変わって、コクピットハッチは非常に直線的に造形されており、レッド部分の下端が大きく剥き出しになっている。左右の部分は、MG ver.1から趣を変えて、かなり分厚い作りになっている。
(fig.3-4:)RG版。胸部上面のカメラは、別パーツ化されてクリアグリーンが表現されている。小スケールでありながらMG版2種からさらに進歩している。


  【 下半身 】

(fig.4-1:)PG版。膝前の外部装甲のデザインは、各ヴァージョンでかなり異なっている。このPG版は、横幅がかなり広く、平たい「凵」型になっている。内部構造再現のためか、PG版の脚部はかなり太めで、がっしりした外見をしている。脛側面のダクト部分(イエロー)も、羽を一枚一枚作り込んである。脛内側の外装パーツはもっと深く嵌まる筈だが、うまく組めなかった。
(fig.4-2:)MG ver.1。このキットでは、膝前外装が角度のついた多角形状になっている。装甲の上端が「\_/」型になっているのが面白い。全体に、MG ver.1の脚部はメリハリのついた曲線的なシルエットで、ダイナミックかつ引き締まった印象を受ける。太腿側面も、前後になめらかなカーブがついている。ただし、ダクト部分(イエロー)の表現は簡素。
(fig.4-3:)このMG ver.2.0では、かなり太腿が細長くなっている。膝前部はほぼ直角の「コ」字型で、膝の内部フレームはほとんど見えない。向こう脛の外装の広がりもかなり控えめになり、全体として脚部は直線的なシルエットになっている。脛側面外側のイエロー部分は、内部のフィンまで1パーツ成形。なお、太腿の外装は、膝を曲げるのに連動して動く。
(fig.4-4:)RG版も、太腿は長めだが、向こう脛両脇は最も大きく広がっており、末広がりの安定感のあるシルエットを形作っている。MG ver.2.0と同様に、太腿外装が膝の屈伸に合わせて連動可動する。膝は内部フレームが大きく露出している。膝前部装甲は、大スケール版のように上端が内側に折れておらず、板状に薄く仕上がっている。
(fig.4-5:)MG ver.2.0の脚部。膝を曲げると、外装各部がフレームに連動して展開される。これに続くRG版でも、太腿前部の外装部分のみ、これと同様の連動引き下げメカニズムが実装されている。



  【 足先 】

(fig.5-1:)PG版は、足の甲の黒色パーツはかなり大ぶりで、つま先の方まで幅広に伸びている。このくらいの方が、向こう脛からのラインつながりも生まれて良いように思われる。ザクなども、足の甲は同じようなパーツ分割になっていることだし。
(fig.5-2:)MG ver.1。足首のシリンダー機構を組み込むためか、足の甲がいささか唐突に盛り上がっている。ただし、足先に力の入った緊張感があるようにも見受けられる。
(fig.5-3:)MG ver.1の反省からか、今度は足の甲が極端に薄くなっている。やりすぎのように思える。そもそもガンダムMk-IIは、足先がかなり平たいため、力強さに欠けるところがあり、それがこのver.2.0では足先の不安定感をもたらしてしまっている。他のヴァージョンと比べて、爪先が細長く伸びているのも、その印象に拍車を掛けている。
(fig.5-4:)RG版。小スケールの割に、きれいにまとまっている。ただし、足の甲は引っ込みすぎかも。脛外側のダクト部分は、他のヴァージョンのような縦並びの羽根ではなく、横向きの筋彫りで表現されている。


  【 全身 】

(fig.6-1:)PG版。脚部や腹部も太めで、全体にがっしりしたプロポーションになっている。
(fig.6-2:)MG ver.1は、全体に細身でありながら、メリハリの利いたプロポーションをしている。個人的には、この引き締まった造形がたいへん魅力的に見える。
(fig.6-3:)両肩や股間前部の外装がかなり大型化しており、また脚部のラインがまっすぐストレートに落ちていっているので、いかにも機械らしい雰囲気と重々しい印象がある。腹部パーツ(グレー)は上下に挟み込まれているだけなので、ポージングによっては隙間が空く。
(fig.6-4:)RG版は、両足を「ハ」字型に開いた時のラインがたいへん美しい。外装各部のモールドの入れようがいささか五月蠅いが、それを差し引きしても余りある魅力がある。

(fig.6-5:)MG二種類を並べてみると、このようになる。右がver.1で、左がver.2.0版。Ver.1の方は脚部の肉付きが良く、それに対してver.2.0は上半身が全般に大きめになっている。シールドの接続方式も、ヴァージョン毎にかなり異なっている。股間前部装甲が、ver.1では鋭い角度に切れ上がっていて、軽快な印象を与える。


  【 その他 】

(fig.7:)全てを並べてみる。左上から1/144のRG版、その下が1/100のMG ver.1、中央が1/60のPG版、右端が1/100のMG ver.2.0。1/60と1/100は体積比で約4.6倍、1/100と1/144も約3倍のボリュームになる。1/60と1/144とでは、実に14倍近いボリューム比。
(fig.8:)同一のスケールで、他種キットと並べてみる。1/60イングラム(BANDAI)と、1/60レガシィ(トミカ)、そして1/60ガンダムMk-II。中央は17cm定規。
(fig.9:)他分野の大型キットと並べてみる。1/350スケールの戦艦「金剛」と、1/60スケールのロボット。並べて撮影してみても、サイズ感がよく掴めない。
(fig.10:)PG版のパイロットは、このように塗装した。


  本記事では、主に佇立状態でのプロポーションを比較したが、ロボットプラモとしての美質はそれ以外のさまざまな観点で評価されるべきだろう。例えば内部構造の有無、可動範囲および関節強度、作りやすさ(パーツ構成や制作時間)、塗装のしやすさおよび成形色による色再現、変形やハッチ開閉などのギミック、武装等のおまけの充実度、致命的問題の有無、発売時期や入手容易性、そして価格や対象年齢、等々。その中で、本記事は外見上の相違点を簡単に紹介することを目指したものだが、BANDAIプラモデルにおける洗練を考えるうえで参考になればと思う。



  【補記】:上記作品のカラーレシピ。
  PGとMG(v1)は、Mr.Colorシリーズを使って独自色で塗装した。
●ホワイト部分:グランプリホワイト。単純なホワイトではなく、趣のある色合いにしつつ、ツヤを出してきれいな感じにしたかった。派手すぎず、厚みのある色合いになったかと思う。
●オレンジ部分:黄橙色。インストでは胸部ダクトなどはイエローが指定されているが、あまり軽すぎず、それでいてくっきりした色合いにしたかった。
●レッド部分:モンザレッド。ほどほどに落ち着きがあって良い。
●フレーム:メタルブラック。フレーム色が明るすぎると安っぽくなりそうなので重めの色にした。
●胸部:MG ver.1については、昔のことなので不明だが、意外に透明感のある色になった。PGはミッドナイトブルーにクリアブルーを混ぜた。
●弾倉部分など:PGはフィールドグレー。MG ver.1は焼鉄色で塗装した。