他社コラボが、ユーザーに対して公平に行われるかどうかは、デリケートな問題だと思う。
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えっ? ……そこでユーザーの利用権を制限することに何の意味が? しかも、『英雄戦姫G』の購入者のみにDL権を限定するならまだしも、『真剣恋』側(のシリアルコード)を要件にするというのは、本当に意味が分からない。これはもはやファンサービス的な「コラボ」などではなくて、単なるカルテル的「囲い込み」ではないのか?
ゲーム製品版に対して、別売り商品に基づいて内容追加するという行為それ自体は、でぼの巣やEushullyがやっているような追加ディスク販売と、同じようなものだと見ることは一応可能だ。また、内容面で見ても、『真剣恋』をプレイ(=購入)したことのあるユーザーを対象範囲とすることは、一応理解できる。しかし、この違和感はなんだろう……。
追加コンテンツを享受するための条件が後出しだから? 一つのタイトルを完全なかたちで楽しもうとするのに、本来まったく関係の無い他社商品の購入が要求されてしまうから?(ストーリー面でも関係は無い筈だし、また、例えば、モノクローマ作品は好きでも、みなと作品には興味が無いというユーザーはいる筈だ) 追加ディスクのような「関連商品」の範疇に収まる額(2000~3000円程度)ではなく、パッチ一つのために8800円+税という万札レベルの支出が要求されているから? ファンサービスであるように思われるコラボ企画で、このような締め付けが行われてしまっているから? いろいろ考えてみて、すっきりした明確な理由は見出しにくいが、私が抱いた違和感と不快感と不信感はけっして小さなものではない。
以前に概観した記事(演出技術論Ⅳ-4-5-ε)をふりかえってみても、関連商品としての別売り拡張パックはもちろんいくつも存在するし、ファンディスクでの自社旧作との紐付けや、他社作品との間の単なるお遊び的な結びつけはあるが、しかしそれらは、あくまで「関連商品」という内容上の関連性保障があるか、あるいは単なる「お遊び」的な機能であるか、いずれかのエクスキューズを伴っていた。しかし今回のものは、おそらくSLG作品の機能性そのものに関わる変更(ユニット追加)であって、しかも本来関連性の無い(しかも他社の)別作品に結びつけているという点で、おそらく類例が無く、そして非常にグロテスクなものに見える。
製品版の内容そのものを変更する他社コラボの華やかな例としては、『ティンクル☆くるせいだーす STARLIT BRAVE XTREAM!!』(Lilian、2012)が思い出される。AUGUST、ういんどみる、すたじお緑茶、TYPE-MOON、PULLTOP、ゆずソフト、UNiSONSHIFTといった錚々たる顔触れとともに、ここでもみなとそふとはゲストキャラクターを参加させているが、この時は誰でも無料DLできるという仕様だった筈だ。また、幅広く8社も参加しているという事実からしても、このコラボ企画は、それらの作品全てをプレイしていることをユーザーに期待しているわけではなかっただろう。そしてゲーマーたちも、この種のコラボ企画を、あくまで肩の凝らない「お祭り」(お遊び的ファンサービス)としてのみ認識してきた筈だ。
奇妙な他社コラボの例としては、『私は私のまま、誰にでも変われる』(匠、2008)がある。この作品の中で、『pianissimo』(Innocent Grey、2006)のキャラクターたちが登場する――というか変身する――という一幕がある。『pianissimo』プレイ済みのユーザーにとっても、べつに嬉しくもなんともない、意味不明イベントだっただろう。
無印『英雄*戦姫』も、alicesoftとコラボしていた。『Rance VII』の上杉謙信が登場するというものだが、パッチなどを必要とせず、最初から製品版に組み込まれていたものだった。
Liar-softの『腐り姫』に、すたじおみりすの「紅涙」氏をモデルにしたと思われる「紅涙先生」が登場していたことも思い出したが、あれはほんの一つか二つのおまけシーンにサブキャラとして登場しただけだし、別にたいしたものではない。
同一ブランド内だと、例えば『BUNNYBLACK2』は、PCに前作『BUNNYBLACK』がインストールされていると、初回プレイから追加ユニットが登場するというものだったが、その前作がインストールされていない場合でも、二周目以降で追加ユニットは入手できるようになるので、これは前作未所持ユーザーを不当に差別するものだとは言えない。そもそもシリーズ第二作なのだから、文句の出る筈も無いが。
Overflowも、同社旧作がインストール済みだとゲーム内容に微妙な変化が生じるというものがあった。共通エンジンで、インストール済みの過去タイトルからコンフィグ設定の引継ぎができるという仕様のものもある。
その他、色紙プレゼントなどの、製品版の内容に影響しないコラボキャンペーン企画は、いくつもあったと思う。そうしたものは、作品内容には直結しないので、上記の例とは意味が異なる。メーカー間の人的コラボも、もちろん別問題である。
追記:web検索してみたら、『ポケットに恋をつめて』(青空ビスケット、2013)が、オンラインゲーム『ペロペロ催眠』とコラボしているらしい。公式サイトによれば、「パッケージに封入されているアイテムコードでコラボキャラクターがもらえちゃう!」とのこと。ただしこれは、PCゲームの側の問題ではなく、オンラインゲームの側の問題であるため、当記事の問題関心からは外れる。
製品版パッケージにlyceeカードを封入するのも、似たようなものだろうか。