2015/04/01

Escu:deのAVGインターフェイスデザイン

  『Re;Lord』をプレイして思ったこと。


  AVGパートのインターフェイスデザインは、シンプル志向のアプローチではEscu:deのそれが一つの理想的な解答だと思う。

  通常時は、テキストボックス周辺には1)本文テキスト、2)話者表示、3)クリック待ちアイコン(ページ送りアイコン)のみが表示されているという、考えうるかぎり最も簡素な仕様。さすがにクリック待ちアイコンだけは、省略するわけにはいかない。ApRicoTやminoriのようにオートモード推奨の作品でもないかぎり、クリック待ちアイコンを削除してしまうと、ゲーム進行(クリック)のタイミングが掴めなくなってしまうからだ。また、話者表示も、省略してしまうと誰の発言なのかが分かりにくくなる。音声出力が標準化した現在でも、声からキャラクター(や声優)の違いを識別できるとは限らないので、よほどのことが無いかぎり話者表示は行われる。要するに、これは現代AVGの最小限必要な要素だということになる。

  それ以外の、様々なコマンドを実行するためのボタンはどうするのかというと、マウスカーソルをテキストボックス上に置くとコマンドメニューが現れるという仕様になっている。言い換えれば、それ以外の領域(つまり画面の上側7割)は、マウスカーソルを移動させてもボタンメニューが出てくることは無い。だから、普段は絵とテキストに集中することができ、必要な時にはすぐにメニューを出せるということだ。

  もちろんこれ以外にも似たような設計のエンジンはある。1)カーソルをいずれかの画面端(右端だったり上端だったり下端だったり)に移動させるとコマンドメニューが現れるタイトルはある。あるいは、2)右クリックをするとメニューが現れるというものもある。さらに、3)古典的にはウィンドウのメニューバーを利用するというものもある。しかし、それらに比しても、このEscu:deのインターフェイス設計は、最も明快であり、最も高速に操作でき、最も機能的なものだろう。というのは、カーソルを画面端に移動させるよりも(反応領域が広いので)容易だし、右クリック形式に比べるとメニューの所在があらかじめはっきりしているし、ウィンドウメニューバーと比べても明らかにテキスト表示領域に近いからだ。また、コマンドメニューはテキストボックスの右下にまとまって現れるため、ヴィジュアルデザインとしても統一感があるし、また、例えば画面右端にメニューがずらりと現れるパターンのような見苦しさとは無縁だ。

  プログラマーは、いつもの水鼠氏とKIT氏。美少女ゲーム分野の中でも、インターフェイス設計に繊細で、プログラマーの仕事に意識的で、システム改善にも意欲的な、つまり要するに有能なお二人だと思う。