2015/04/27

本編外のアダルトシーン

  本編中にではなく「おまけ」コーナー内にアダルトシーンが置かれる場合。


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  『クロノクロック』がこのような対処を取っているらしい。似たような仕様の作品はいくつかある。

  一例として、『Dancing Crazies』では、主人公に敵対する「出題者」三人を撃破した後のアダルトシーンが本編中ではほぼ省略されており、回想モードの中にアナザーストーリーの形で収録される。これは、SLG作品の進行テンポを阻害しないための配慮と考えられる。ただ単に消極的にアダルトシーンを排除するとか、あるいは本編に組み込めないアダルトシーンを無理矢理増量するといったようなものではなく、ターン制SLGのゲーム進行をコントロールするためのメカニズムだと考えるべきだろう。

  そもそも、SLG作品や大規模作品では、脇筋アダルトシーンが大量に含まれることがある。それらは、ゲーム進行/物語進行の本筋にはほとんど影響せず、適当なタイミングで自由に実行すればよい。それらは、本編進行中にイベント発生フラグを充足する必要があるが、実際にそれを見るかどうかは任意的であるという位置づけにおいて、本編外の「おまけ」シーンに限りなく近い。過去のF&C作品では、本編中にアイテム取得(例えばビデオテープ取得)などの形でイベント発生フラグを要求しておき、そしてそのシーンを実際に閲覧するのは本編中ではなく「おまけ」モード上でなされるというものがあった。

  『片恋いの月』も、メインヒロインとの交情シーンは、本編ストーリーをすべて読み終えた後に、タイトル画面上から入れる特別なコーナーの中に置かれている。同様に、本編クリア後のエピローグのようにベッドシーンが追加されるというタイトルは、他にもいくつか存在する。典型的なのは、本編のヒロイン別進行とは両立困難な、いわゆる「ハーレムルート」「ハーレムイベント」を、作品中に組み込むものだろう。近年のタイトルでは、例えば『ひなたのつき』『恋する夏のラストリゾート』などがこれを行なっている。『恋神』のように、追加パッチをDLさせる形式で、本編外に追加Hシーンを提供するというパターンもある。

  最も極端なのは、『はなマルッ!2』のアプローチだろう。本編の純愛ストーリーには、たしかアダルトシーンは一切含まれていなかった筈だが、おまけコーナー(「しろタンのバー」)の中で、形式上は「ifストーリー」という建前の下に、ヒロインたちに対する過激な蹂躙行為が描写される。ただ単にアダルトシーンを本編外にパージするのではなく、純愛とその薄氷下の蹂躙のコントラストをはっきり突きつけるものとして、非常に秀逸な構成だった。その他、FD作品では、事実上これに等しい作用を持つものがある。すなわち、本編には存在しなかった、ヒロインたちとの濡れ場の可能性を実現するものだという触れ込みが、FD作品においてしばしば掲げられている。

  こうしてみると、アダルトシーンを本編から切り離す外部化アプローチは、以前から存在する発想であり、(数は少ないものの)実際に行われてきた手法だと言える。[tw: 592035348957376512 , 592036130335297537 ]:このように否定的な反応を受けることはやむを得ないかもしれないが、作品コンセプトや作品構造デザインからして有効な処方となることは十分あり得る。もとより、現在のアダルトゲームは、完全に一貫した統一体を目指すものとは限らず、おおまかに言えば「性表現」「(広義の)物語表現」「ゲーム」への3種の要求が輻輳するところに商業的に成立しているものなのだし、一つの作品の中でそれらが別個に分離して扱われるということも、あり得てよい筈だ。