2016/08/08

『ジンコウガクエン』雑感

  『ジンコウガクエン』は楽しいよ、という話。
  ※以下の文章では「ヒロイン」と書いているが、基本的に男性キャラでも同じことが発生しうる。


  (2016/07/28)
  SS採取のために『ジンコウガクエン』をインストールしていたんだけど、ランダム作成(+ちょっとだけ手動調整)で適当なオリジナルキャラをたくさん放り込んでからプレイしてみたら、小柄でスレンダーで褐色肌で猫目っぽくてツリ目気味で眼鏡で癖毛で言葉に遠慮がなくて人をからかうのが好きで明るくて皮肉屋で社交性が高くて貞操観念皆無でマイペースで快楽主義者なボクっ娘キャラ(CV: 狛乃ハルコ)のところに、脇目もふらずまっすぐ突き進んでいってしまった。なんとも、こう、あまりにもアレな、冗談で流しにくいタイプの本格的に痛々しいキャラ志向だよね……。こんなキャラ、アダルトゲームにも全然いないぞ……。こうやって自分の好みが露呈してしまうからカスタム系は嫌いなんだよ……。自分のイタさを突きつけられたようで涙目。あーあ、もうこれが「私の自画像」ってことでいいんじゃないかな!(※全然似てません)

『ジンコウガクエン』 (c)2011 ILLUSION
可愛いんですよ。
ILLUSION作品の常でキャラ設定ファイルがPNG形式になっているのでここにアップロードすることは可能なのだけど、ウエストアップの全裸画像なので差し控えた。アップロード時のblggrの自動変換で設定データ部分が失われる可能性もあるし。

  日野氏や藤崎氏が書きそうなキャラ、という意味では確かに合っている。食わせ者な小柄キャラというと、『雪影』の紅紗たんとか、『coμ』の蝉丸繰莉先輩とか、『ときパク』の早川ミユキ(主人公)とか、『片恋い』の三笠先輩とか、あるいは、『R.U.R.U.R.』のタンポポとか、『魔法戦士』シリーズのスイートパッションとか、『英雄*戦姫』のアキレスやアショーカとか……いや、どれもあんまり似てないし、それらが特にお気に入りというわけでもない。SHCだと、クーとメリルとクムとエクリを混ぜた感じだろうか。あるいは、徹底的に世俗的なギャル系キャラという意味では、TechArts系あたりにいそうなタイプではある。

  ちなみにはキャストは無印(第一作)と第二作で甲乙付けがたくて、第一作(2011年)は一色氏、卯衣氏(男性ヴォイス)、鈴田氏、澄白氏、ひなき氏など。第二作(2014年)は秋野氏、北見氏、木村氏、陽月氏、琉花氏など。



  (2016/07/31)
  なんとなくちょいちょい『ジンコウガクエン』(2011)を再プレイし続けている。この手触りへの既視感は、なんだろうかと記憶のよすがを手繰ってみると、『南国ドミニオン』(2005)のものだった。多数のNPCアクターたちが適当に動き回って適当に相互交流していくのを楽しみつつ自ら(プレイヤーキャラ)もその一人として加わっていくという感触が。
  もちろん、双方のアプローチはまったく異なっている。『ジンコウ』には、3D空間のリアルタイムキャラモーションの豊かさがある一方で、基本的には好感度の上下以外の要素がほぼ皆無で、キャラメイキングと恋愛関係にゲームの焦点を絞っている。それに対して、6年前の『南国』では、綾風キャラと美峰背景のクオリティは素晴らしかったが、視聴覚演出としては見るべきものがあまり無い。その代わりに、探索、建築、収穫/収獲、財産管理(アイテムの確保/装備/交換/廃棄など)、自然(日々の天候変化、豊作と凶作、災害など)、会議、脱出と、恋愛/性愛以外の様々な活動に満ちあふれていた。
  無人島生活という意味では、その前の『人工少女2』の方が近いけど。

  先日の記事のSSでは、なんの疑いもなく女性ばかりを写していたが、当然ながら男性キャラも設定できるし登場できる。あるいは、いっそ男性キャラを0人にすれば、百合の園になる(女性同士でもアダルトシーンが発生する。男性同士でも一応)。

  どのキャラも、親睦を深めて、さぁこれから恋人同士になりましょう、というところで放置してしまう。おかしい、私は釣った魚にはちゃんと餌をあげる手まめなタイプの筈なのに……。まあ、これはやはり「ゲーム」だからなのだろう。手間暇掛けてクリアすべき関門はあくまで「告白成功させる」という瞬間なのであって、そこからアダルトシーンを発生させていくのは気楽なアンコール演奏みたいなものだし、私が最も熱中しているのはおそらく「周囲のお邪魔キャラをいかに回避して目当てのキャラとの会話を繰り返すか」というリアルタイムクリックACTの側面だし。アダルトシーンは、3Dの画質もキャラモーションもどちらも非常に緻密に作られていて迫力があるのは確かだけど、音声は基本的にはきゃーきゃー言うばかりなので、それほど面白味があるわけではない。



  (2016/08/08)
  『ジンコウガクエン』(ILLUSION、2011)は、うろうろ歩き回っているヒロインたちを眺めるのも楽しいが、マップが広すぎる(アクター最大25人に対して34エリアもある)こともあり、見ているだけではさすがに飽きてくることもある。しかし、この作品のシステムは基本的には、ヒロインとの会話コマンド(性交コマンドを含む)以外に出来ることが無い。なので、近くにいる相手を適当につかまえては一行会話をしていくのだが、そうすると次第に好感度が上がっていって、こちらが何もしなくてもヒロインの側から告白されるようになる。ヒロインの性格設定にもよるが、極端な場合には、授業前に数回会話しただけでいきなり告白してくることすらある。逆に、何回会話しても全然落ちる気配の無い不沈空母ヒロインもいるが。

  告白されるだけなら構わない(ひどい)のだが、プレイヤーキャラへ(PC)の好感度が高いヒロインは、PCが他のキャラクターと会話していると、嫉妬して会話にリアルタイム介入してくる。授業直後のように、好感度の高いヒロインたちに囲まれている状態だと、PCが誰かと会話しようとするとすぐに横から妨害してくるし、それどころかPCが誰かと接触しているのを見るや、遠くからでも一直線に駆けてきて会話に介入してくる。しかも、単なる会話妨害だけでなく、会話中のヒロインとの間で「私とその子、どっちが好きなの?」という対決選択肢を迫ってくることもしばしばある。そういうシステムなので、長期間(何日も何日も)プレイしていると、ガクエン内は常時一触即発の修羅場空間になっていく。廊下を歩いているだけで、ヒロインAがPCに近寄ってきて会話コマンドを仕掛けてきて、さらに近くにいたヒロインBが即座に反応して走ってきて介入してきて、対決イベントになってしまうといったことも頻繁に起きるようになる。ヒロインたちの「貞操」設定が低くて「社交性」が高かったりすると特にこうなりやすい。……ハーレムって大変なんですね。

  このようなシステムなので、ゲームがある程度進んだ状態では、PCの一挙手一投足がまるでFPSのような緊張感に満ちたリアルタイムアクションゲームのようになる。教室前を移動している時も、戸口からいきなりヒロインにアタックされたりしないかとビクビクすることになるし、ヒロインと会話している最中に別のNPCがのそのそと近づいてくるのが見えると、ゾンビに目を付けられたかのような気分になる。遠くからでも超高速で走ってきてPCを修羅場状況に追い詰めてくるので、視界の開けたところで迂闊にNPCと立ち話をするのは非常に危険な振舞いになる。プレイヤーの気が休まるのは男子トイレや男子更衣室に籠もっている時だけという……。そういう男子領域には、女性NPCは自発的には入ってこない(同様に女子トイレや女子更衣室には男子NPCは入ってこない)ので。ただし、その性質を活用することもできる。目当てのヒロインとゆっくり会話しようと思ったら、周囲からすぐには邪魔されないタイミングを見計らって(あるいは邪魔されないことを祈りつつ)接触して、急いで男子トイレなどに連れ込んで、そうすればようやく落ち着いて会話コマンドを展開していくことができる。それ以外にも、

社交性設定の低い(=あまり会話に介入してこない)ヒロインを見極めて、そちらを優先的に攻略しておいてから、社交性の比較的高いヒロインとのコミュニケーションを取っていくといった戦略的な立ち回りとか、

あるいは、ヒロインXとの会話中にヒロインYが介入してきそうな時は、遠くにいるうちにこちらから先制でそのヒロインYに会話を仕掛けておいて、その場に足止めしてから再び別のヒロインXに向かっていくというアクションゲーム的判断とか、

邪魔されそうなヒロインが近くにいる時は、そちらと会話して屋上食事などに誘って(=機嫌を損ねないような仕方で、遠い場所に連行して)おいてから、別のヒロインのところに向かうとか、

ヒロインたちに包囲されてどうしようも無い時は、その場にいないキャラクターを瞬時に識別して、そのキャラに向かって走っていく(そうやってその場を脱出する)とか、

遠くから歩いてくるヒロインYに会話介入されないうちに、マウスワークを頑張って、ヒロインXとの会話コマンドを連打して少しでも好感度を稼げるようにするとか、

ヒロインXとの会話中に近づいてきた別のヒロインYがすぐ傍で立ち止まってくれる(=会話待ち状態で済んでいる)と、一安堵するものの、睨まれているような気分になりつつ、おそるおそるヒロインXとの会話を続けるとか、

ストーキング状態になってPCを追尾してくるヒロインも、こちらから一度会話して満足させてあげて(同時に、ストーキング状態を解除してその場に停止させておく機能も果たす)、それから急いで逃げて別のヒロインの居場所を目指すとか、

対決イベントが発生してしまったらどちらに良い顔をしたら良いか(好感度を落としても致命的なことにならない相手はどちらなのか)を真剣に考えたり、あるいは対決コマンドで悪印象を与えてしまった側のヒロインには、後でフォローとして身体で慰めて好感度を戻しておくとか、

恋人関係が成立してしまったヒロインを放置しすぎないように、できるだけ順繰りに会話したり共同活動イベント(予習や部活など)を起こすようにスケジュールを立てるとか、

……いったい何なの、このゲーム。リアルタイム3Dゲームならではのハイレベルなバカゲーになっているのは、制作者がどこまで予見/構想したことなのだろうか。ちなみに、キャラクターに「心の闇」設定を付けておくと、そのNPCと恋人関係になったうえでその心証を一定以上害した場合、そのヒロインから殺害される(ゲームオーバーになる)という仕様もあったりする。NPC同士でも発生しうるが。こんなイベントを仕込んでいるのを見ても、このフリーダム空間はかなり意図的にチューニングされたものと思われる。

  学園生のステータス設定は、PCもNPCも基本的に同一である(プレイヤーキャラを途中で切り替えることも出来る)。そのため、日数経過とともにNPC同士でも好感度が上がっていき、恋人関係が出来ていったり、さらにはキャラ設定次第では教室や廊下でNPC同士が公然とサカり始めていたりする。『BE FREE!』かよ! 場合によっては百合カップルが抱き合ってイチャイチャしていたり。



  (2017/09/11)
  今日もまた、「『ジンコウガクエン』は第一作と第二作のどちらのキャストが好きか」を議題に一人会議をしていた。2011年発売の第一作が北都氏、ももぞの氏、楠氏、如月氏、一色氏、青葉氏と、00年代を通じて芯のある芝居を披露し続けてきた名匠たちを揃えた本格派の顔触れだったのに対して、3年後の2014年に発売された第二作では北見氏、井田氏(※お名前はここで区切ったらいいのだろうか)、秋野氏、琉花氏、鈴音氏と10年代のアダルトゲームシーンを華やかに彩ってきたブリリアントな役者たちを起用している。また、前者は前者でデビューから間もない卯衣氏を気弱男性キャラに配するという大胆なキャスティングを敢行したり、狛乃氏を快楽主義者の性格に割り振るという英断を下したりしており、その一方で後者は後者で凛々しい木村キャラや知性派の上田キャラといったたいへん貴重な(そしてもちろん中味も素晴らしい)芝居を聴くことができる。ゲームシステムは、無印の時点ですでに、学生たちが無節操に交流しまくる3D学園箱庭遊びとして基本骨格が確立されていたし、そしてそこから発展させるとなると『2』のような形態になるというのも理解できる。いずれにしても、ゲームシステムそれ自体による不条理スラップスティック生活シミュレーションとして、『南国ドミニオン』に匹敵する面白さがあった。



  (2018/09/26)
  『ジンコウガクエン』は、なんとなく再プレイしたくなる。なにかイベントがあるというわけではないし、ひととおり会話を済ませてしまうと後は性行為くらいしかヴァリエーションが無いのだけど、それでも一色ヴォイスや鈴田ヴォイスや萌花ちy…ひなきヴォイスの3Dキャラクターたちが学校内を好き勝手に走り回っている空間は、眺めているだけで楽しくなってくる。男性をプレイヤーキャラにする時は、やはり卯衣ヴォイスで。女性キャラをPCにするときはどうするか迷うが、澄白ヴォイスや狛乃ヴォイスのキャラを動かすのも面白い。

  SHCが『南国ドミニオン』風の自由なシミュレーションを『BB』以来の3D技術でリメイクしたら、『ジンコウガクエン』に匹敵する、あるいは超えられるくらいのリアルタイム生活シミュレーションが出来ると妄想している。全面的な3DキャラクターはSHC向きではないから、キャラクターの外見等は固定で。もしくはドットキャラ(3Dのボクセルデフォルメキャラ)が3D空間を走り回るというのも面白いかも。ただし、プレイヤーに何をさせるかと考えると、ちょっと難しい。食材採取やアイテム装備、建設や農耕といった種々の活動は、『南国ドミニオン』ではコマンドとテキスト表示のみで処理されていたし、『DAISOUNAN』では種類を限定したうえでアイコン的に表示されていた。しかしそれらを3Dグラフィックスで賄うとすると、相当な労力が掛かるだろう。