ケンタウロスのような四脚ガールプラモは、VOLKSの「アキレア」(2022)と「ロベリア」(2023)、そして海外のNuke Matrix「ユフナ・マルキナ(Yefuna Malkina)」(2023?)が存在する。さらにKOTOBUKIYAからも、この種族タイプのキットが予定されている(2024年2月発売)。
通常の人間タイプを外れた、こうした意欲的なキャラデザのキットが複数発売されているという事実は、ガールプラモ分野の成熟と拡大を証明しているし、そしてキットの構造面でも興味深い。本稿では、「ユフナ」と「ロベリア」の2つのキットについて、造形と構造を簡単に紹介していく。
【 Nuke Matrix「ユフナ・マルキナ」 】
素体ガールは約15cm。サイズもプロポーションも、日本の一般的なガールプラモに近い。中国メーカーでは、脚部がスラリと長いスレンダー体型が多いが、Nuke Matrixは日本寄りの萌え系デザイン路線である。武装ガールは一回り大きく17cm。これは脚部が馬そのものであるため。バイクに乗せることもできる。サドル部分は幅が細めなので、一般的なガールプラモでも乗せやすい。各部の金色デカールは偏光プリントのようで、キラキラと輝く。バイクは約30cmと大きく、迫力がある(※KOTOBUKIYAのラピッドレイダーよりも大きい)。
黒-赤-金のゴージャスなカラーリングは、中国メーカーでは人気のようだ。Eastern Model(御模道)の「錦衣衛」(※写真右)や、Mecha Pigの「将魂姫:楊戩(ようぜん)」なども同様の路線である。関節部の硬さは、柔らかめなので重いものは持てないが、通常の可動には差し支えない水準。
背面から。金属的なフレームがそのまま露出するサイバーメカガールも、中国メーカーが得意としている。背面ユニットからはクローアームを伸ばすことができる(※盾や槍を持たせることができる)。例によってアンダーゲート方式なので、ランナーのまま吹き付け塗装して制作することができる。 バイクの前部パーツを外し、タイヤとの接続アームを組み替えて後脚を作る。武装ガールの脚部は、そのままケンタウロス形態での前脚になる。ガールとの接続は、背面+両脇+股間下の4箇所でがっちり組み合わせるので、強度は十分。 ケンタウロス形態。前脚には蹄鉄のようなパーツを履かせて高さを調整する。また、尻尾パーツ(頭髪と同じくPVC製)を差し込んで、馬らしくしている。各部関節は、柔軟な角度に対応するし、保持力も高いので動かしやすい。脚部は、機械的なゴツゴツしたディテールと、馬らしい曲線的なシルエットを巧みに両立していて見応えがある。
側面から。武装ガールの腰から馬の胴体と後脚を接続しているだけなのだが、全体のシルエットはきれいにまとまっている。
背面は、金属色のフレームが大きく露出するため、メカガールらしさが強まる。
武装。バイクのカウルだった部分を、盾として装備できる。ランスも、三つ叉に展開することができる。ただし、ガール腕もメカ腕も、保持力は低いのでランスを振り上げることはできない。
ケンタウロス状態の背中は、バイクのサドルであった箇所そのままなので、他のガールプラモを騎乗させることもできる。Nuke Matrixの2作前のキット「Lirly Bell(リリーベル)」と並べて。ウサギモティーフのキャラクターであり、腹部はクリアパーツ(スケルトン)仕様にすることもでき、脚部にはミサイルポッド(蓋が可動)も装着している。ガールプラモ分野における本格派のサイバー路線を代表するメーカーである。
【 VOLKS「ロベリア」 】
リンク:VOLKS公式サイトの「ロベリア」と、ロボット同梱の「ブレスフル・セット」の紹介ページ。
「ロベリア」の武装モード。水性ファレホ「ロイヤルブルー」を筆塗りしたのち、全体をパール(パープル)でトップコートしている。ガールキット単体でも購入できるが、後述のロボットとのセット販売で購入したので、クリアイエローのランナーを使っている(※同梱版だと、追加フェイスパーツもある)。
武装パーツは自由に組み替えることができる。弓を操るサジタリウス的イメージのキャラクターである。
両手で大弓を構えることもできる。関節強度はかなりしっかりしている。ただし、武装等を接続する「×」印のジョイントは、けっして精度が高いとは言えず、着脱には苦労する。ロボット「シュヴァール」。これ単体でも販売されている。「シュヴァール(cheval)」は、フランス語で「馬」を意味する。大きさは20cm弱で、MGガンプラに近いサイズだが、パーツ構成が恣意的だし、可動範囲も狭く、ジョイント強度も安定しない。あくまで組み替え遊びのための素材と見るべきだろう。「シュヴァール」の側面と背面。五指はそれぞれ基部のみの可動で、何かを手に持つことは困難だが、ポージングをさせるには十分だろう。背面はスカスカ。繰り返すが、あくまで合体のための補助パーツと考えるのがよい。「ロベリア」と「シュヴァール」の合体手順。「シュヴァール」の頭部を外し、四肢を四つん這いへ組み替えて、胴体の空洞を作る(※雑駁に言えば、ロボットが海老反りになっている)。そこに、膝立ちの「ロベリア」を差し込む形になる。合体の仕方については、上記「ユフナ」との違いが興味深い。合体状態は、「サジタリウスモード」と呼ばれる。尖ったクリアパーツを多用して、ファンタジー的な華やかさといくぶんのメカニカルな雰囲気をミックスしている。前部装甲の上に、素肌の太腿が露出しており、「一体ではなく合体である」ことを明確に示している。側面から。よく見ると各部の接続はかなり強引だし、装甲の裏側も剥き出しのままだが、他社ガールプラモには見られない特異なムードがある。背面から。パーツ精度が高ければ、組み替えの楽しみももっと素直に享受できるのだが……もったいない。各部のジョイントはクリアパーツで、しかも精度が低いので割れてしまいやすい。「シュヴァール」の胴体(前面だった側)が、サジタリウスモードでは馬の背中になる。山型の三角形なので、ガールプラモも脚を広げずに騎乗することができる。足を乗せる鐙(あぶみ)が無いのでいささか不自然になるが、やむを得ない。見た目の密着感は十分で、情景的な魅力が生まれる。「ロベリア」と「シュヴァール」双方の武装パーツを組み合わせて、ボウガンのような大型武器を作ることもできる(組立説明書で、作り方が指示されている)。ボウガンを構えた状態。掌との接続パーツも提供されているので、大型武器をきちんと把持することができる。こういった組み替えのポテンシャルとパーツボリュームは、近年のVOLKSガールプラモの大きな魅力であり、その前の「ローズ/リリィ」系統(2020年)や「ドラセナ」(2022年)でも発揮されている。
【 ロベリアとユフナの比較 】