2025年7月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。
試しに今月からは、収録話数も記録しておくことにする。
●新規作品。
あきま『人喰いマンションと大家のメゾン』第1巻(ジャンププラス、1-5話)。地球滅亡の寸前で周囲の時間経過を止めて(?)いるスラム的近未来メガストラクチャーの話。『ナウシカ』と弐瓶勉をミックスしたようなアプローチで、他に逃げ場など無いが、しかしシステム内部では有限な資源を維持するために謎の邪悪な収奪機構が作用しているという状況は、いかにも現代的な苦みを感じさせる。スパッツ主人公が、元気なのか暗いのかやけっぱちなのか冷静なのか、ちょっと不思議なキャラ造形(※ブレているだけかもしれない)。この漫画家の前作『少女Null』(全4巻)は、たしか一冊だけ読んでみてそのままにしていた。悪くはないが、個人的な好みにはあんまり合わない。
●カジュアル買いなど。
柳井伸彦『死に戻り王女は生き延びるために百合ハーレムを作ることにした』第1巻(今年1月の発売。1-4話。小学館。原作あり)。タイトルどおりのコメディ。何度も死に戻りをしつつ原因(首謀者たち)を順番にハーレムに取り込んで生き残っていく形で、同一状況の繰り返し演出が楽しい。コマ組みや表情も力強く外連味があるし、能天気トンチキ姫が真面目に頑張るところも良い。エロ描写は控えめ。作画の柳井氏は、これまで原作付きのタイトルをいくつも手掛けてきたベテラン。
●続刊等。
江戸屋ぽち『欠けた月のメルセデス』第4巻(13-16話。原作あり)。昨年9月刊行なのを買い逃していた! 吸血鬼に転生した主人公の冷静で切実な内省と、それを反映する表情のデリカシーが素晴らしい。さらにバトルシーンも、ダイナミックなコマ組みと奥行きのある作画で、迫力と速度感がある。お色気要素は無くしているが、それでもブーツを脱ぐ所作の描写などにフェティッシュな魅力が盛り込まれている。本当に大好きな漫画なので、見つけられて良かった(※普段から刊行予定はまったくチェックせず、animateやJunkudoを巡回して店頭で見つけられるものだけを買っている)。そして第5巻は8月発売とのこと。
田島青『ホテル・インヒューマンズ』第11巻(52-55話)。現在の仕事に迷いを抱く主人公と、ラスボス側の苦い余韻を残す殺人行為。相変わらず視覚的演出は生硬なところがあるし、ストーリーについても少々制御しきれていない感じもあり、「どうしようもない運命的な結末」のオーソドックスな悲劇を衒いなく描いていることにいささか躊躇もあるが、良い作品ではある。