使用したのは、童友社の「1/144現用機コレクション 第22弾」からの、「(No.6) VF-31 トムキャッターズ 2006年」だが、カラーリング(マーキング)が異なるだけで全体のシルエットは同一であろうから、問題にはしていない。そもそも『シンシア』の方はフィクションなのだし。実はHASEGAWAの1/72プラモも作っている(現在、手許にある)のだが、写真で比較するにはサイズが大きすぎたので、今回は掲載していない。
(図1:)『シンシア』OPムービーのキャプチャ画像と、上記1/144プラモ(右下)とを並べてみた。映像では00分09秒頃(以下同様)。兵装が異なるが、下面から見た全体の輪郭はよく似ている。ただし、『シンシア』の方は、下面がかなりフラットなように見えるし、主翼もやや細めである。
(図2:)映像では00:41頃。似ているようだが、細部はいろいろと違っている。『シンシア』版では、コクピットの左右にまでストレーク(整流のための張り出し)が延びている。主翼前の縁取りが、『シンシア』版では丸まっているのに対して模型では側面が角張っているが、これは模型の方が実機(丸い)から逸脱している。
(図3A:)01:00~01:02頃。戦闘機がカメラの前を横切っていくダイナミックなショット。ロングショットなので細部は分かりにくいが、ほぼ同じと言っていいだろうか。模型の方が、主翼付け根が太く(分厚く)なっているのは、上述のとおり、造形上のアレンジのせい。ちなみに、主翼は閉じた状態(後退位置)にしてある。
(図3B:)上の図3Aから続いている。背面からの様子。模型の方がやや分厚く見えるが、それ以外はよく似ている。なお、画面が粗いのは、私の撮影環境が貧弱なせいもあるが、元の映像も意図的にノイズを掛けた演出を施されている。
(図4A:)01:15頃。上面からのシルエットは、かなり違って見える。上述のストレーク形状のせいもあるが、実機(模型)は機首が長く、『シンシア』版は全体が三角形にまとまっている。上面のディテールもかなり違うし、後部のエンジンノズルも微妙に異なる。ちなみに、上の図1と見比べれば分かるように、可変翼である。
(図4B:)上のショットで左上に見える僚機の方を模型と比べてみると、このようになる。機首のバルカン砲の突起に至るまで、側面からの外見はF-14実機と酷似している。なお、これらのショットの他にも、OPには何枚かの映像が含まれている(並列飛行中の様子やミサイル発射の瞬間など)。
まとめと私見。
これまで、「『シンシア』にトムキャットが出てくる」といろいろなところでイージーに書いてきたが、本当にそうなのかどうかをきちんと検証しておくべきだと反省したのが、今回の記事の出発点だった。比較画像を見てのとおり、全体としてはよく似ているが、細部はかなり異なっており、けっして実在のF-14そのままではない。ただし、それでも、全体のおおまかなデザインや、可変翼という特徴的なメカニズムなどを考慮すると、「これを実在の戦闘機に当てはめるならば、モデルはF-14以外にはあり得ない」と言えるくらいには、よく似ている。実際には、『シンシア』本編では機種の如何を明言していなかったと思う(未確認)し、ここはフィクション作品らしく、その正体や所属などはややにごして、あくまで架空機体なのだとしておく方が、物語の受け止め方として妥当なのかもしれない。