簡単な解説と着用例写真など。
※AZONE「エッチングメガネ」と五菱重工の製品については、それぞれ別ページで。
KOTOBUKIYAの「M.S.G(モデリング・サポート・グッズ)」シリーズの一環として、金属エッチング製のメガネフレームが発売されている。公式サイトによれば、発売は2001年とのことで、現在は入手困難だが、眼鏡パーツとして手持ちのフィギュアやドールに幅広く使用できる。
「モデリング・サポート・グッズ」の「メガネフレーム1」。丸型とスクエア型の二形態が、それぞれ中サイズと大サイズの二種類ずつ入っている。価格は税抜580円。
大サイズは、正面のフレームの横幅は27mm程度(※曲げる位置によって多少調整できる)。中サイズのものは、横幅約20mm(実測値)。下は、比較用のAZONEエッチング眼鏡(※別掲記事を参照)。
【 加工について 】
金属製(おそらくステンレス製)のエッチングパーツである。なかなか頑丈なので、エッチングパーツ専用のベンダー(折り曲げ工具)を使うのがよいだろう。ラジオペンチやピンセットなどでもよいが、折り曲げの正確さや、表面毀傷のおそれがある。
上記写真のとおり、外枠の中に眼鏡が入っている。ラジオペンチなどで切り出す。かなり硬いので、普通のカッターでは切れないだろう。金属切断用のエッチングカッターがあればなお良い。
折り曲げる箇所は、特に指定されていない。折り曲げるためのガイド溝なども存在しない。着用させたいキットの顔のサイズに合わせて、適当に調整するとよいだろう。眼鏡表現としてのリアルさを重視するならば、正面フレームの両脇に、ツルを少し残しておく方がよい。
レンズは入っていない。眼鏡らしさを強調したいならば、適当なクリアシートを裏側から貼り付けてもよいだろう。ただし、レンズを入れるとフィギュア(ドール)自身の眼が見えにくくなるし、歪みなくきれいに貼り付けなければかえって見苦しくなってしまうおそれもある。
眼鏡フレームの一部を切除して、ナイロール(ハーフリム)やアンダーリムに加工することも可能だが、ステンレスフレームはかなり硬いので、うまく切るのは難しい。また、当然ながら、一度加工してしまうと元の状態(全周を囲むフルリム)には戻せない。
色について。筆者が持っているのは【ブラック】タイプで、あらかじめツヤ消しブラックで塗装されている。KOTONUKIYA公式サイトによれば、【シルバー】タイプもあるようだ。上から塗装すれば、赤眼鏡などにすることも出来るだろう。
【 着用について 】
1/6スケールから1/8スケール程度の人型フィギュア、レジンキット、ドールに幅広く使える。
基本的には、両脇のツルをフィギュアやドールのコメカミ部分に通して、挟み込むかたちで固定すればよい。顔面パーツと頭髪パーツの間に挟み込めば位置固定できるので、よほど衝撃を与えないかぎり、眼鏡が外れる心配はないだろう。ぐらつく場合は、頭髪に隠れて目立たない場所でテープ固定するという対処もあり得る。
植毛ドールの場合は、頭髪パーツとの間に挟み込んで固定するということはできないので、基本的には挟み込むだけになるだろうか。汚損を気にしないならば、頭髪に隠れて目立たない位置でテープ固定するという対処もあり得る。
ただし、ドールや完成品フィギュアは、ものによってかなり顔のサイズや輪郭が異なる。したがって、眼鏡を掛けさせたいフィギュアやドールのサイズを測って、フレームを折り曲げる位置を多少調整すると、きれいに眼鏡を嵌めることができる。
また、とりわけ市販の完成品フィギュアは、1)頭髪部分も塩ビ製の固定形状であり、前髪が干渉して眼鏡を嵌められないことも多いし、2)各部が接着固定されているので、前髪部分をいったん外して眼鏡を嵌め込む(挟み込む)ということも出来ないし、3)横髪が顔に張り付いている場合には、コメカミに眼鏡のツルを通すこともできない。なので、サイズが合っても、きれいに眼鏡を掛けられないという場合も多い。レジンキットも同様。
そうした場合には、思い切って横のツル(テンプル)を全て切除して、正面のフレーム(リム)部分のみを残して、鼻筋や前髪に眼鏡を接着固定するという対処もあり得る。ただし、側面のツルを失ってしまうし、フィギュア本体を接着剤で汚損してしまうし、取り替えもできなくなる。そういったデメリットも考慮して、覚悟のうえで眼鏡を掛けさせることになる。
眼鏡は、できるだけ水平になるように、また、左右に偏ったりしないように、掛けさせたい。上下の位置も、できるかぎり目の位置にぴったり合うようにしたい。眼鏡の位置は、上寄りにすると少々野暮ったく見えてしまうおそれがある。ただし、眼鏡を下寄りに掛けさせるというアプローチもある。ズリ下げ眼鏡にすると、柔らかい愛嬌が生まれることがあるし、また、眉毛の表情を隠さないし、頬のあたりの空疎感を埋めてくれる場合もある。
現在のKOTOBUKIYAは、1/6~1/8スケールの中型フィギュアと並んで、1/10~1/12相当のサイズのメカ少女プラモデルも多数リリースしている。「フレームアームズ・ガール」および「メガミデバイス」に適した1/12スケール用のエッチング眼鏡については、別掲記事「AZONE『エッチングメガネ』使用例」および「五菱重工のエッチング眼鏡着用例」を参照のこと。
【 着用例 】
フリューのプライズフィギュア「天々座理世」(1/8スケール相当)。このサイズのフィギュアは、基本的には中サイズ(横幅20mm)の眼鏡がちょうど合う。顔と頭髪の間に多少隙間があるので、眼鏡のツルはなんとか差し込める。
同じフィギュアを、別の角度から。少女キャラクターのフィギュアは両目がかなり大きく造形されていることが多いので、眼鏡フレームも大きめの方が、目の表情がはっきり見える。
さらに別の角度から。これも可愛い。眼鏡フレームのおかげで、キャラクターフィギュアの視線と「目の表情」が、よりくっきりと強調されるようになる。
同じくフリューのプライズフィギュア「国木田花丸」。赤眼鏡に加工した方が、華やいだ雰囲気になるかと思うが、この黒眼鏡もこれはこれで落ち着きがあって良い。高さは約20cmなので、1/7から1/8相当の縮尺。この写真だと上目遣いっぽく見える。
別の角度から。この向きからだと、正面から見つめている感じになる。麦藁帽子は他社市販品。眼鏡は、ツルを短めに切っておいて、顔と頭髪の間に差し込めば、なんとか固定できる。
これもフリューのプライズフィギュア、「イリヤ」(1/7相当)。前髪が重たく、さらにコメカミも空いていないので、そのままできれいに差し込むことは出来ない。左記写真でも、眼鏡は顔からかなり浮いている。ちなみに、このキャラクターを演じている門脇氏は、眼鏡声優としても名高い。
「EXQ」シリーズの「SAO ユウキ」。両目がくっきりとプリントされている製品は、眼鏡との相性が良い。このフィギュアは、顔の右側の横髪(画面向かって左側)に眼鏡を差し込むことで、簡易的に眼鏡を固定することができる。わずかに視線をずらして撮影すると、目の動きが感じられるような画面になる。
視線をまっすぐ合わせるような角度で撮影。正面から見つめ合う視線が、眼鏡フレームによって縁取られ、際立たせられる。素晴らしい。
さらに別の角度から。ここでも、眼鏡フレームのおかげで、目の表情にさらに豊かなニュアンスが盛り込まれる。なお、この写真では分かりにくいが、水着の質感(素材感)を表現するための表面ディテールが素晴らしい。
ほとんど横顔になる角度から。このような極端な角度でも、眼鏡を掛けているおかげで、顔の向きが把握しやすくなるし、右目の向きも無理のない自然な動きのように見える。
同じく「EXQ」シリーズの「時雨」。作業着(サロペット)姿には、大ぶりな眼鏡がよく似合う。
MAX FACTORYの1/8「金剛」。比較的高額な完成品フィギュアは、頭部の造形もかなり稠密で、眼鏡のツルを差し込める余裕がほとんど無いものが多い。左記写真は、眼鏡のツルを頭髪の外に出したまま、仮置きしてみたもの。
BANDAIの胸像モデルシリーズ「Figure-riseBust」の「初音ミク」。組み立てプラモデルなので、頭髪部分も塩ビ製ではなくプラスチック製であり、ほとんど融通が利かない。きれいに水平を出して眼鏡を嵌め込むのは難しい。
同じく「初音ミク」を、別の角度から。眼鏡は、角度次第でかなり印象が変わる。ノンスケールと思われるが、市販の20cmフィギュア(だいたい1/7から1/8)と同じくらいのスケール感覚だろう。
「ねんどろいど こ~で」シリーズの「初音ミク」。「ねんどろいど」シリーズは、頭部が大きめにデフォルメされているので、MSG眼鏡は大サイズのものが合う。ただし、横髪は固定されており、眼鏡のツルを差し込めない。左記写真でも、顔の右側(向かって左)のツルが途中で切れているのが見える。
撮影時には、角度を適宜調整すれば、側面のツルの問題はうまく隠せる。デフォルメフィギュアなので、完全なノンスケールの独自規格。
「ねんどろいど ぷち」シリーズの「琴吹紬」だったかと思う。高さ約6.5cmの小型フィギュアだが、SDデザインなので頭部が大きく、中サイズのエッチング眼鏡でもまだ大きい。頭髪が干渉するので、眼鏡は仮置き状態。
ロボット模型に眼鏡を掛けさせることも、一応は可能である。このMSGエッチング眼鏡だと、中サイズのものがBANDAIのPGシリーズ(1/60スケール)にフィットする。左記写真はPG「ガンダムMk-II」。
【 その他の汎用眼鏡製品 】
各社の眼鏡アクセサリーパーツ。PLUMとazoneのものは、比較的入手しやすいと思われる。
それ以外の市販「眼鏡」パーツも、いくつか紹介しておく。
ドール分野のAZONE Internationalは、ドール用のアクセサリーも多数販売している。1/7~1/8クラスのフィギュアには、1/6ドール用の眼鏡パーツがフィットする可能性がある。
「メガネset」(上掲写真の左上)は、ポリエチレンか何かとおぼしき柔らかい素材で出来ている。フレーム全体が一体成形されており、レンズは入っていない。軟性素材なので、柔軟に曲げてフィギュアに差し込むことができる。ただし、フレームの横幅が約27~28mmとかなり大きいので、1/7から1/8スケールまたは20cm級のキットには合わない可能性が高い。また、ツルが太くて差し込みにくかったり、素材の性質上おそらく塗装できなかったりするという難点もある。デザインも限られているようである。価格は税抜200円と非常に安価なので、購入できる環境にいてフィギュアのサイズが合いそうならば、試してみてもよいだろう。
同じくAZONEから発売された「エッチングメガネ」(上掲写真の左下)は、金属製(ステンレス製)である。レンズ表現は無い。ユーザーが自分で折り曲げる仕様なので横幅は多少変動しうるが、25mm程度(ぎりぎりで折り曲げれば24mm程度)になる。それでも本来は1/6ドール用の製品なので、1/8スケールや20cm級のフィギュアにはかなり苦しい。
フレームは角型と丸型の2種類の製品があり(A setとB set)、さらにブラックまたはレッドで塗装済みの製品もある(※無塗装のシルバーフレームの製品もある)ので、キャラクターイメージに合わせて選べる。デメリットとしては、高額であること(900円)、硬い金属製なので加工がやや難しいこと、入手手段が限定されることが挙げられる。それでも、エッチングパーツならではのほっそりした精密感は、サイズさえ合えば眼鏡の魅力を十分に発揮してくれるだろう。
小技。眼鏡の横幅が広すぎて顔から微妙にはみ出す場合は、眼鏡の中央部分(ブリッジ部分)を山型に曲げれば、多少は横幅が狭くなる。ただし、かなり作為的に形状をいじることになるので、鑑賞or撮影の際には角度に気を遣う必要がある。
PLUMからは、プラ製の「メガネ・アクセサリー」が発売されている(上掲写真の右側)。見てのとおり、レンズとフレームとツルが1パーツ成形されているのが特徴的である。何種類ものサイズの眼鏡が入っており、小さいものは約16mm(内側14mm)、最大のものは約26mm(内側23mm)とヴァリエーションが豊かなので、目当てのフィギュアにうまく合うサイズのものが見つかる可能性が高い。プライズフィギュアによくある20cm級の若年女性型フィギュアは、横幅20~21mm程度の眼鏡パーツがフィットするものが多い。最も小さい眼鏡は、1/12スケールのキャラクター立体物にぎりぎり合うかどうかというくらい、最も大きいものは1/6スケールにドール等にぎりぎり合うかもしれないというくらい。
このキットのメリットは:
- 比較的安価である(:定価500円)。
- 入手しやすいと思われる(※私は量販店のホビーコーナーで購入した)。
- 数が多い(:ランナー1枚に14個も入っている)。
- 形状も選べる(:フルリム5個、ハーフリム4個、リム無し5個)。
- サイズもそれぞれ異なっているので、うまくフィットする可能性が高い。
- クリアとスモークの二種類の製品がある。
- 軟質素材なので、クリアパーツでも割れにくい(:それなりによく曲がる)。
- 無塗装のままでも、それなりに眼鏡らしく見える。
それに対して、デメリットは:
- クリアパーツなので、ユーザーが塗装しなければ格好が付かない(一応は無塗装でも)。
- スモーク版は、中途半端な色眼鏡になってしまう。
- レンズがあるので、汚れやすいし、曇りでフィギュアの目が見えにくくなる可能性がある。
- ツルが太いので、差し込みにくい(※自分で削ればよいが)。
- 弾力性があるので、眼鏡が撥ね飛ぶおそれがある。
長所と短所がかなりはっきりしているので、きれいな眼鏡表現が実現できるかどうかはユーザー個々人の使い方次第だろう。発色の良いマーカーで縁をなぞるだけでも、それなりに眼鏡らしくなると思うし、技術と工具を持っているモデラーであれば、レンズ部分をマスキングしてきれいに塗装することもできるだろう。フィギュアに同梱されていた眼鏡が低品質だったり事後破損したりした場合の代替パーツとして購入するのもありだろう。
五菱重工のエッチング眼鏡シリーズについては、別掲記事「五菱重工のエッチング眼鏡着用例」を参照のこと。横幅2.5cmの大型眼鏡から、1/7フィギュア向けの中サイズ眼鏡、そして1/12ドール等にも使える横幅1.3cm前後のエッチング眼鏡など、さまざまなタイプを製造している。通販もしているとのことで、入手しやすい。
EPOCHに、カプセルガチャガチャの眼鏡アイテムがある(「EYEWEAR COLLECTION Basic」と同「EYEWEAT COLLECTION Classic」)。価格は200円と割安であり、眼鏡フレームとレンズが再現されており、しかもツルを曲げることも出来る(※ネジ留め)という凝った作りであり、さらに眼鏡ケースまで同梱する。ただし、横幅は約50mmとかなり大きく、1/7~1/8スケールのキャラクター立体物には明らかにオーバースケールである。1/6のドールやフィギュアでも、つらいかもしれない。基本的には、眼鏡それ自体を鑑賞するためのミニチュア製品だと考えるべきだろう。
これらの他にも、眼鏡パーツを小規模生産しているメーカーもあるし、金属線などで眼鏡を自作しているモデラーもいる。用途と要求品質と自分の技術と費用に応じて、最適な眼鏡をうまく調達できればと思う。
上記EXQ「ユウキ」フィギュアに、AZONEの1/6ドール用エッチング眼鏡を掛けさせた。上下の細い眼鏡なので、かなり知的に見える。ただし、眼鏡の横幅が広すぎて、顔の輪郭からはみ出てしまう。20cm級のプライズフィギュアには、かなり合わせにくい。
EXQ「渡辺曜(2nd)」。きれいにフィットする。
BANPRESTO「ねこ娘(Glitter & Glamours)」。こちらもちょうど良いサイズ。
EXQシリーズのフィギュア「緒方智絵里」。AZONEの軟質眼鏡はかなり大きいので、20cm級フィギュアに着用させるのはほぼ無理だろう。
ただし、眼鏡のサイズが大きすぎる場合でも、見せ方(撮り方)によってはなんとか体裁を整えることもできる。かなり作為的な対処だが、頭の上に眼鏡を掛けさせると、記号的デフォルメが作用して、サイズの違いに気づきにくくなる。
PLUMのプラ眼鏡。無塗装でも、わりと眼鏡らしく見えるだろう。ただし、中央部分(レンズとレンズの間のブリッジ部分)がかなり太い。デザインナイフで削って細くする対処もあり得る。
KOTOBUKIYAの「HXM-13 セリオ」。1/8スケールのフィギュアにも、上記PLUMの眼鏡セットはちょうど良いものがある。こめかみのあたりに眼鏡のツルを通して固定することができる。
Gift(GOOD SMILE COMPANY)の「1/8 アーサー」に、PLUMの眼鏡を掛けてみた。サイズを選べば、なんとか引っかけて固定できる。
EXQ「アンチョビ」。キャラクターの外見としては眼鏡が似合うのだが、PLUMのプラ眼鏡セットにはちょうど良いサイズのものが無かった。いや、この大きめの眼鏡も、愛嬌があって良いかもしれない。
「Eyewear Collection Basic」の眼鏡はかなり大きく、「ねんどろいど」や「キューポッシュ」シリーズのように頭部を巨大にデフォルメしたフィギュアですら、サイズが足りない。左記写真は「キューポッシュフレンズ 赤ずきん」(ケモ耳を除いた頭頂高は約11cm)。