2025/12/08

2025年12月の雑記

 2025年12月の雑記。

 12/11(Thu)

 漫画の年間回顧(※学会回顧風の何か)を書こうと思ったが、紙の単行本だけでも600冊以上買っていて、しかも優れた作品ばかりなので、選ぶに選べない……。ある程度は絞り込みつつ、結局はたくさん挙げてしまったが、中でも特に傑出した作品は太字にしておいた。

●新作(第1巻が出たタイトル)から。
 1) 社会的困難との対決。山田はまち『泥の国』は、転生者によって身体を奪われた女性主人公が、自らを取り戻そうとする意志的な苦闘の物語。同じ作者による単巻『マイトワイライト』も印象的。にことがめ『ヒト科のゆいか』も、やや手つきはぎこちないものの、他者とともに生きる思春期の若者たちの苦みと軋みを描いている。さらに藤見よいこ『半分姉弟』は、ミックスルーツの若者たちをフィーチャーした力作。

 2) ストーリー漫画。soon茶『ヤン先輩はひとりで生きていけない』では、不器用ながら頑張り屋の大学生主人公が他人のために駆け回り、藤丸『レジスタ!』では、レジバイト少女が高潔に生きていく様子を中年男性主人公が見守っていく。三都慎司『ミナミザスーパーエボリューション』は、超常能力に目覚めてしまった普通の学生を巡る不穏なドラマで、この作者らしくリアリスティックな作画と超自然的な現象のイメージが見事に噛み合っている。
 現代ファンタジーでは、幌田『俺のカスみたいな人生は全部タヌキのせい』は、化狸一族と関わってしまった悩める若者主人公の物語だが、キャラ立ちも斬新だし、ストーリー展開も個性的。真木蛍五『ナキナギ』も、怪異存在の同級生との隠微な百合物語で、作者の演出センスは相変わらず絶品。さらに柴田康平『魔女とくゅらす』は、現代社会にひっそりと生きる魔女たちを、妖気に満ちた作画とスラップスティックな展開で、したたかにも幻想的にまとめ上げている。
 架空世界では、宵野コタロー『滅国の宦官』は後宮の連続殺人事件を追っていくという意欲的なシチュエーションで面白い。近江のこ『もうやめて回復しないで賢者様!』はグロリ○ナ分野としてはとびきりのハイクオリティだし、ストーリー展開も捻りが利いて味わいがある。鴻巣覚『うさぎはかく語りき』も、大都市の地下街に潜む超常の擬人化ウサギたちとのバトルものだが、kawaii萌えキャラばかりの割に、切羽詰まった空気が常に漂っている怪作。

 3) コメディ路線。達観したユーモアの雁木真理『妹は知っている』や、吸血ものの竹掛竹や『吸血鬼さんはチトラレたい』、エロ裁判ものの柳原満月『魔法少女×敗北裁判』くらいかな。

●完結した作品や、単巻作品から。
 1) 現代世界もの。空空北野田『深層のラプタ』(全4巻)は、軍事用人工知能とショタを巡る過激なサスペンスで、絵の説得力も素晴らしい。馬かのこ『ディディアディクション』(3巻)も、危険な犯罪者お姉さんに翻弄されるショタのサスペンス。シロサワ『水姫先輩の恋占い』(6巻)は、オカルト要素のあるシュール学園恋愛もので、展開はハチャメチャなのだがその異様なノリに引き付けられる。ミニマルで穏やかな雰囲気の作品では、落合実月『魔法使いにただいま』(3巻)は長命存在と結婚している男性のうるわしく幸せな生活を描いている。冬目景『百木田家の古書暮らし』(6巻)も、緩やかなホームドラマのまま完結した。

 2) シリアス系。小野寺こころ『スクールバック』(6巻)は学生たちの小さな悩みを誠実に掬い上げ、胡原おみ『逢沢小春は死に急ぐ』(5巻)は難病の弟のために安楽死を選ぼうとする学生の生の航跡を丹念に描いた。御厨稔『大きくなったら女の子』(3巻)は女性優位の社会像を展開することによって性差別的-性搾取的な世界に対する強烈な問題提起をしている。朝際イコ『カフヱーピウパリア』(単巻)にも、同種の問題意識が反映されている。
 さらに、歴史ものにも多大な収穫があった。熊谷雄太『チェルノブイリの祈り』(4巻)は社会的惨禍によって苦しめられた人々をオムニバスで描き、佐藤二葉『アンナ・コムネナ』(6巻)も歴史上の皇女をモティーフとしつつ女性と社会構造の問題を剔抉している。Peppe『ENDO』(5巻)も、第二次大戦中の日本で収容所に入れられたヨーロッパ人たちの物語から、巨視的-思想的な文化論にまで射程を延ばしている。そして小宮りさ麻吏奈『線場のひと』(上下巻)も、第二次大戦後の占領下日本から、日米のキャラクターたちの苦く複雑な関わり合いや、そこでジェンダーや国籍や人種的外見を巡って発生する社会問題をオムニバス式に大きく展開している。

 3) ファンタジー系、またはエンタメ志向。吉川英朗『魔王様の街づくり!』(12巻)は、楽しくも激しい異世界バトル+統治もの。白梅ナズナ『悪役令嬢の中の人』(6巻)も、傑出した漫画表現で、この異様な悪役主人公の魅力を、きわめて高い完成度で存分に描ききった。大久保圭『アルテ』(21巻)も、長い旅路を終えた主人公の将来まで語りきってくれた。異世界終末カウントダウンものの朝倉亮介『アナスタシアの生きた9日間』が3巻で終わってしまったのは惜しまれる。

●総合的な秀作や、印象的な作品、優れた表現世界を持っている作品、個人的な好みなど。
 1) 現代世界もの(エンタメ寄り)。瀬尾知汐『罪と罰のスピカ』は、犯罪者を暗殺して回る快楽殺人者の物語。捻りも利いているし、サスペンスとしてもスリリング。高津マコト『渡り鳥とカタツムリ』は、ストーリーは穏健だが、跳ねるような勢いのあるユーモラスな絵と温かな雰囲気に、わずかに影が混じるニュアンスが魅力的。mmk『隣の席のヤツがそういう目で見てくる』も、ライトお色気コメディのようでいて、初心な二人のわりと誠実な関係がたいへんユニークだし、眼鏡ヒロインの表情も繊細な絵で描かれている。増田英二『今朝も揺られてます』も、初々しい学生カップルを見守るラブコメだが、増田氏らしいストーリーテリングの妙趣と、見守りチームのちょっと暑苦しいノリと、そして何よりカップル(未満)の二人の可愛らしさが絶品。深海紺『恋より青く』は、たまたま知り合った二人の女子学生が、文化祭などでお互いのコミュニティとも関わりを広げつつ、二人が一緒にいることの手応えをじんわりと感じ取って成長していく。阿久井真『青のオーケストラ』も、相変わらず演奏シーンの迫力に唸らされる。

 2) 現代もの(シリアス系)。ウオズミアミ『冷たくて柔らか』は、30代で再開した女性二人の両片思い的状況だが、女性漫画の最先端の洗練された技巧的なコマ組みによって、登場人物たちの逡巡と迷妄と孤独と決意を情感豊かに表現している。こだまはつみ『この世は戦う価値がある』も、やけっぱちに暴走する女性主人公の肌感覚の鮮やかさを鮮烈に描き、ひるのつき子『133cmの景色』は低身長を初めとした社会的偏見に直面する女性たちの物語をデリケートに描いている。小川麻衣子『波のしじまのホリゾント』は、明暗のコントラストの強い濃いおねショタものの傑作。ユービック『メルヘン・ガール・ランズ!!!』は、ネグレクトされた少女たちを、童話出身のキャラとして設定しつつ、荒々しくも悲壮で、そして意志的な物語として造形している。三輪まこと『みどろ』も、古き昭和の地味な遊郭を舞台に、女性たちの心情のデリカシーを描いている。 

 3) コメディ。丸井まお『となりのフィギュア原型師』は、ネタの切れ味とキャラクターたちの飛び道具っぷりが相変わらず物凄い。しなぎれ『女装男子はスカートを脱ぎたい!』も、コミカルでありながら濃密に描き込まれた絵の質感と色気(ショタ)と、ヒロインのサイコっぷりが素晴らしい。コノシロしんこ『うしろの正面カムイさん』は、お色気退魔ものだが、これも切れ味良いネタを釣瓶打ちに出してくる密度に圧倒される……いや、お色気退魔なんだけど。

 4) ファンタジー系。ヨシアキ『雷雷雷』は異星生物侵入もので、スペクタクルの視覚的表現が抜群に上手いし、ストーリーも予想できない方向にどんどん進んでいく。恵広史『ゴールデンマン』も、ヒーローものサスペンスとして出発しつつ、並行世界SFの要素を強めて、堂々たる作品に成長してくれた。洋風ファンタジー世界では、石沢庸介『第七王子』がパワフルかつ大胆な視覚的演出をふんだんに盛り込んでいる。上田悟司『現実主義勇者の王国再建記』の、縦読み進行のセンスを巧みに取り入れたコマ割レイアウトには、歴史的にきわめて大きなオリジナリティがあると思うのだが、言及している人を見かけないのは残念。kakao『辺境の薬師、都でSランク冒険者となる』も、緻密極まりない作画をベースにしつつ、深い説得力のある空間演出やインパクトのあるレイアウトの醍醐味を享受させてくれる傑作。しばの番茶『隻眼・隻腕・隻脚の魔術師』も、個性的な絵柄と融通無碍の演出で、超人魔術師主人公の活躍を楽しく描いている。和風ファンタジーでは、松浦だるま『太陽と月の鋼』がたいへんな演出巧者で、有無を言わさぬ幻想的なドラマとそこで藻掻き生きるキャラクターたちの切羽詰まった表情を鮮やかに展開している。
 女性主人公ものでは、紫藤むらさき『運命の恋人は期限付き』のデリカシーには、溺れたくなる魅力があるし、水辺チカ『悪食令嬢と狂血公爵』には、朗らかなユーモアと瑞々しい作画の下に新婚カップルの幸せな生活風景が描かれている。そしてなにより上戸亮『ロメリア戦記』は、細部まで神経の通った精妙な作画の下に、少年兵との戦闘というきわめて深刻で苦しい状況を正面から扱って、緊張感に満ちた物語と驚きのある展開を連載し続けている。

 総評っぽく。結局のところ私は、紙面造形(コマ組み進行)と漫画的演出技巧にこそ最大の関心がある。ただ単に細かく描き込むのではない。どのようなシーンを、どのようにして見せるか、その表現効果を突き詰めて新しい表現世界を体験させてくれるような作品こそを求めている。その観点では、外連味に満ちた『悪役令嬢の中の人』や、少女漫画の伝統の最先端にある『冷たくて柔らか』のような女性向けジャンルに最も豊かな果実がある。その一方で、『現実主義勇者』の意欲的な試みもエキサイティングだし、『第七王子』が漫画表現の限界を叩き壊そうとするかのように様々な演出的実験を敢行していることにも最大限の賛嘆と敬服を覚える。
 漫画もまた、我々の現実社会のありようを所与として存在しており、そしてこの現実世界に生きる私たちによって受容される。その意味では、社会的なテーマに正面から向き合って深く斬り結ぶタイトルにも、感動させられる。こちらのアプローチは、『泥の国』から『大きくなったら女の子』から『線場のひと』『この世は戦う価値がある』『133cmの景色』まで、女性主人公ものが圧倒的に多い。これは、現代でも残念ながらいまだ性差別構造が存在していることの反映でもあるが、女性漫画分野が社会性と心情の機微に長く取り組み続けてきたことの成果でもあるだろう。


 現在の模型展示会のレギュレーションとしては、妥当なところかな。
 国内模型店で正規販売されているという条件は、少なくともキャラクター系プラモデルでは、ひとまず適切だろう。スケールモデルの場合は、海外のマイナーキットを使うことも多いので、事情が異なってくるだろうけど。海外ガールプラモは、国内で正規販売されているかどうかがしばしば確定困難なので、OK/NGの判断が難しいという点は気掛かり。例えばキョンシーガールは、国内の模型店で見かけたことが無いし、OUTと言われても抗弁できないだろう。
 「既存コンテンツを模倣したと思われる海外製キット」は、要するに海外メーカーの偽ガンプラを念頭に置いたものだろう。フィクションのメカデザは、著作権や商標権でもカヴァーしきれないグレーな領域だが、法的観点はともかく、モデラー倫理の次元で、やはり偽ガンプラは海賊版に限りなく等しいものとしてNGとするのが、筋を通したスタンスになるだろう。……ああいう超ハイディテールなガンダムも、一度くらいは作ってみたい気持ちもあるけれど、モラルの問題として禁欲している。
 使用キットを明記するというのは、面倒そうではあるけれど、大まかに芯にしたキット一つをあげるくらいならば、参加者たちも受け入れるべきだろう。
 ただし、オンライン購入した3Dキットを不可とするのは、少々疑問がある。上記の「国内模型店で販売されているキットに限る」という要件と整合性を取るためだろうけど、個人的には、不要な制限だと思う。レジンキットについて、版権許諾情報を明示するというのも、たしかに海賊版を展示させないためには必要な措置なので、甘受して対応すべきだろう。少々きついルールだと思うけど(※イベント購入したレジンキットの版権証明書は、手許に無いよ……)。
 近時の模型界では3Dスキャン被害が問題視されてるし、3Dデータを利用した海賊版も出回っているようだし、偽ガンプラのような問題のあるキットもあるしで、そういった問題のあるキットが展示会に出てしまうとイベントそのものの信頼が崩壊しかねないので、強めの制限を設けるのもやむを得ないだろう。

 ただし、面白いのは、「キットの版権侵害性は厳しく対処するが、クリーンなキットをベースにして何らかの既存キャラクターなどを再現する作品はOK」というところ。モデラー個人が、ミキシングをして既存キャラを再現するのは、
 1) 「プラモデルは自由に作れる」という大前提が共有されており、その上で、既存キャラを自力で再現するのも、あくまでモデラー個人の創作性として肯定される。
 2) 個人によるワンオフ制作は、IP権利者の利益を大きく侵害することはまずあり得ないという意味でも、規制する必要性はきわめて希薄になる(※それに対して、アクスタ量産などの場合は権利者の市場的利益を食ってしまう危険が生じるので、問題になり得る)。

 ちなみに、実在兵器をベースにしたスケールモデルであれば、そもそも「版権」が存在しないので、かなり自由にやれる。最新/現用の機種で、一定の権利が確保されている場合でも、公的な存在なので模型化が禁止されることはまずあり得ない(※むしろ怖いのは、うっかり機密に触れてしまった場合だね、hahaha)。
 それでも、カーモデルのように既存の商業製品をモデルにしたプラモでは、元メーカー(例えば自動車会社)との兼ね合いが生じるので、何でも彼でもぶっ通しというわけにはいかない。
 また、他社スケモキットを丸コピー(または一部のパーツをコピー)したキットというのもある。これについては、日本国内のメーカーも、加害側だったり被害側だったりする歴史があるので、ちょっとややこしい。基本的には、よほど悪質な常習犯企業でもないかぎり、NGにされることは無いだろう。

 そういえば、ガール「STAPEL」を展示会に持っていくのも良いかもしれない。あれは国内模型店でも販売されているし、造形面でも一般的なガールプラモとかなり異なった作りなので、実物をお見せする意義はあるだろう。通常のガールよりも一回り大きめで、濃いめのミリタリー要素があるし、金属関節という独自性もある。
 ただし、個人的に最大の問題は、「あれ、どこに行ったっけ。どこに仕舞い込んでいたか、探し出さなければ……」という点。来月までにちゃんと発掘できるのだろうか。
 昨年制作したキットで、まだどこにも出していない作品だと、SDキラキラガンダムズ(2024年11月制作)もあったか。

2025/12/07

漫画雑話(2025年12月)

 2025年12月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。

●新規作品。

●カジュアル買いなど。

●続刊等。

1) 現代ものやシリアス系。
 雁木万里『妹は知っている』第5巻(37-45話)。ミニマルなエピソードを各話完結で緩く繋げているのだが、日常的なシチュエーションから出発しつつ、読者に実感の手応えを持たせるような展開にしていくのは、まさに作中のラジオネタと同種の巧さだし、キャラクターたちもそれぞれに社会的な距離感をデリケートに(時には不器用に)意識しつつ、全体としては融和的な雰囲気を維持しているところも上手い。
 江戸屋ぽち『紙山さんの紙袋の中には』第4巻(20-26話、完結)。飛び道具的なキャラクターばかりで物語のコントロールが難しかったのか、これまでの展開は捉えどころが無かったが、江戸屋氏らしく優しい雰囲気と内面造形を感じさせる描写に、斜めゴマと陰影を多用した演出のおかげで、きれいな形で完結してくれた。『メルセデス』の方は、ひきつづき情趣豊かな連載を展開していただきたい。

2) ファンタジー世界やエンタメ寄り。
 高山しのぶ『花燭の白』第10巻(61-67話)。過去の真相から、現在の決意へ。レイアウトに関しては、上下に狭く横一面に広がる水平コマが多用されているのが興味深い。時には畳み掛けるようなコミカルなコマ組みとして、また時には顔の表情を隠す緊張感のあるレイアウトとして、時にはワンクッションの余韻コマとして、また時には枠線からキャラクターが飛び出しつつ情景を示すコマとして、様々な活用されている。
 フカヤマますく『エクソシストを堕とせない』第13巻(94-101話)。忌憚なく言えば、ユニークな掘り下げと挑戦的な姿勢が見られたのは5-6巻くらいで、それ以降は面白くないのだが、最後まで付き合うつもりではいる。
 鴻巣覚『うさぎはかく語りき』第2巻(7-13話)。邪悪で挑発的な描写と、シニックなユーモア、そして露骨なお色気の暗示、さらにはSFだかオカルトだか分からない都市の暗部の不気味さとといった諸要素を、芳文社らしいkawaii美少女オンリーでコーティングしている怪作。ただし、登場人物があらかじめ限定されていることもあり、次巻あたりであっさり完結しかねない気配もする。
 からあげたろう『聖なる加護持ち令嬢~』第2巻(5-8話)。他者を力づける率直な情愛と、他者を救うための覚悟を決める倫理、そしてkawaiiものを慈しみあう朗らかなコミュニティ。このまま連載を続けていってほしい。
 ぬじま『怪異と乙女と神隠し』第10巻(40-45話)。怪異の条件を客観的に要素分解して、それを利用して自身の目的のために利用しようとするクールさが、相変わらず刺激的。ただし、一歩間違うと「後出しの御都合主義的ルール」になりかねないところだが、本作は十分な説得力を維持している。それにしても、サブヒロイン三輪の描写には、今回も異様な雰囲気がある。怪異によって引き起こされる深刻な苦難の境遇と、それによる痛々しい全身負傷描写、そして強烈な心理的屈折と、苛烈な攻撃性の表情。他の怪異系キャラクターたちと比べてもほとんど別世界のような空気をまとわせているのに、大いに引き込まれる。
 星野真『竜送りのイサギ』第6巻(33-40話)。

アニメ雑話(2025年12月)

 2025年12月の新作アニメ感想。

●『悪食令嬢と狂血公爵』

 第10話は、主人公の驚異的なスキルを巡る政治的な配慮から、パートナーは魔鳥討伐のためにいきなり数日不在にするという宙吊りの展開。とりたてて上手いわけではないが、ざっくりした進行の中に挟み込まれる相互の情愛が美しい。公爵役の坂泰斗(ばん・たいと)氏は、穏やかでよく通る声色で、細やかなニュアンスを台詞に乗せている。
 残りは、狩ってきた魔鳥の料理と、結婚式のイベントかな……今のペースだと残り2話で語りきれるのか、ちょっと心配になるくらいののんびり進行。



●『終末ツーリング』

 第10話。満開の桜に蝉の鳴き声がオーバーラップするのはともかく、さらにしばらく進むといきなり紅葉の山々になっているというイージーさ。うーん。落石を雷が壊してくれたというのも、お仕着せの御都合主義そのもので驚きが無い。アニマルアニメとしても、ペンギンからイルカ、そしてシカにサルと、かなりベタな顔触れ。
 ただし、弁慶のような入道雲のカットは、ちょっと粋な演出。良い箇所もあるにはある。また、カット数が少ないにもかかわらず、間延びした印象を免れているのは、やはり背景美術の彩りと存在感のおかげだろう。原作の浅さをアニメ版スタッフの尽力で、なんとかぎりぎり映像作品として成立するようにしている(※ストーリーの骨格は、ノスタルジーとナルシシズムを混ぜ合わせたような代物なので、こんなストーリーはいっそ放棄して、ただのイラスト集で良かったのでは……とすら思う)。



●『野生のラスボスが現れた!』

 第10話は設定開示の回。前半は大迫力の空間戦闘をたっぷり描き、そして後半は一転して、画面そのものは止め絵で保たせつつ、明暗の濃いレイアウトと声優の芝居と真相への興味で引っ張りきった。何をどのように見せるべきかの取捨選択と、演出効果の最大化が巧みにコントロールされており、たいへん心地良い。コンテも小気味良く、激しいバトルシーンの中でも大胆な奥行きパースを設けたり、ユーモラスな瞬間を挟み込んだりしている(※今回の絵コンテは田中智也氏、演出は福元しんいち氏)。
 薄井氏(ディーナ役)も、丸々20分間を小清水氏と一対一で渡り合いつつ変幻自在の芝居を展開するという力演を披露している。
 それにしても、もう10話。残り2話でどのように締め括るのだろうか。配信視聴数などに鑑みて、続編(2期)もありそうだが……。

2025/11/28

2025年11月の雑記

 2025年11月の雑記。

 11/22(Sat)

 「星花・百合」について。青で塗るか緑にするかで迷うなら、青緑にすればいいじゃない。ということでエメラルドグリーン(ターコイズグリーン)を使ってみることにした。青っぽいクールな透明感がありつつも、緑色の瑞々しさも兼ね備えるので、これはこれでありだと思う。ただし、色調やコーディネート次第では安っぽくなりやすい色でもある。上手くいくかなあ。

 というわけで、ざっくりエアブラシ塗装。
 ライトグレー:クールホワイトできれいに。後でブルーのグラデーションを入れるかも。
 ブラック:メタルブルーブラック(混色)が余っていたので使ってみた。良い感じ。
 ダークブラウン:リノリウム色(またかよ!)。しかしこのチョイスは失敗かも。うーん。
 ライトブラウン:ターコイズグリーンでビビッドに。隠蔽力が高くて助かった。
 頭髪(イエロー):パールコートのみ。後で影色を入れたりするかも。

 ジョイント周りにディテールが多いので、筆塗りしてやるとさらに引き締まるだろう。
 スミ入れも、一応入れておく。 
 デカールも省略。ゴチャゴチャさせず、シルエットと色合いを見せることを最優先にしたい。

 というわけで完成(※リンク先はSNS投稿)。わりと上手く行ったと思う。
 ライトブラウンは、キットのままだと色が埋没してしまうので、ヴィヴィッドな緑色で塗り替えたのは正解だった。
 また、アドリブでホワイト面にブルーのグラデーションを掛けてみたが、これもキットの雰囲気を盛り立てることに成功したと思う。つまり、「色彩感の追加」、「青色のクールさを強調」、「花弁の柔らかさや軽やかさを表現」、「パーツの立体感を強調」、等々の効果を出せた。グラデ塗装は、これまでほとんど使ってこなかったが、便利なのは確かだ。


 買って読んで読んで買ってを繰り返しつつ、未読漫画はちょっとずつ減ってきた。
 カジュアル買いをしたがあまり読む気のないまま数ヶ月間ずっと枕頭に置かれている単行本も、そろそろ諦めて仕舞い込んでしまってよいかも。そうすれば未読(積み)は一桁になる。


 『斑鳩』の「銀鶏」(※リンク先はメーカー公式ページ)も、パーツ切り出し。
 複雑な境界線が多いので、細部は筆塗りした方が、速いし確実だろう。また、各部のカラーリングがよく分からないので、ディテールから推測しつつ適当に色を付けていくことになりそう。

2025/11/27

ガールプラモ「星花・百合(Starflower Lily)」について

 ガールプラモ「星花・百合(Starflower Lily)」について。

細身のメカガールプラモ。