2025/12/08

2025年12月の雑記

 2025年12月の雑記。

 12/30(Tue)

 ガールプラモ「ボルチモア」の続き。ひとまず切り出しと仮組み。
 パーツ構成はシンプルに整理されつつ、立体感をきちんと表現している。
 甲板パーツの成形色がダークブラウンだったのは意外。当時の米軍艦だと、基本的にはネービーブルーで良かったのでは……(※もちろん木甲板とかもある。コロラド級とか)。イラストでもネービーブルー(ダークグレー)になっているので、設定を重視するならば塗り替えた方が良い。
 元艦のライトグレーに相当する部分(舷側など)は、先述のとおり銀色にアレンジされている。たぶんこの原作ならではのクリエイティヴなアレンジとして評価すべきポイントだろう。

ここでカラーリングの選択肢は:
 A: ダークブラウン(リノリウム?)+シルバー =プラモ版(成形色)の解釈。
 B: ネービーブルー+シルバー =イラスト版での設定に即した場合。
 C: ネービーブルー+ライトグレー =実艦の色彩に寄せた場合。
 C': ライトグレーとシルバーをパーツごとに塗り分ける折衷案。
 D: さらなる複雑な迷彩塗装(※実艦はそういうパターンも試していたらしい)。

 (A)は個人的に却下。
 (B)は、擬人化ゲームらしい個性があるので、派手でユニークな見た目になりそう。
 ただし、多数のモデラーはBを選択するだろうから、あえてスケモ的な(C)路線を試してみたい気分もある。第二世代オタクとして、他の人がやらないことを試して、表現世界の多様性を広げることに貢献したい気持ちもある。さらに、「ガール=銀色、武装=灰色」という違いも強調できる。ただし、デザインの整合性を取るなら、ジョイント部分の塗り分けまで求められることになるので、ちょっと手間が増える。
 (C')も、ありかもしれない。後からシルバーを筆塗りで塗装するだけなので、作業も比較的簡単だし、造形や機能性を視覚的にハイライトさせることもできる。可能性を考慮しつつ、ひとまず保留。
 (D)は面倒だし、曲面の多いこのプラモでは再現困難だし、きれいにならないだろう。

 (C)のアプローチを採用するのであれば、エッチングパーツのクレーンや射出機なども盛り付けてリアリスティックにする余地も出てくる。しかし、このガールのキャラデザは、(『艦○れ』とは異なって)かなり大胆な造形アレンジに魅力があるので、実艦ディテールに引き戻しすぎるのは長所をスポイルしてしまう虞がある。スケモ版の4連装機銃は、たぶんサイズが合わないし、このガールキットの機銃表現でも十分だろう。

 パーツの肉抜き穴は、背面ジョイントに多少存在するが、たいして目立たないので無視してよいだろう。今回は一応、埋めておくけど。

 設定再現のために塗装が必要なのは、。
- 着衣:ホワイトパーツに黒の縁取りなど。
- 上着:両脇のボルトパーツを銀色に。
- 袖口:シルバーだけでなく、一部は青色(上着の色)に。袖のベルト(黒)も塗り分け。
- 両脇から背中に回るライン:シルバーではなく灰色に。
- 太腿のストッキング金具:シルバーだけでなく、一部を金色に。
- 太腿の裏側:ストッキングのヒモ部分(※凸モールド)を黒で。ほとんど目立たないけど。
- 武装:シルバーの一部(ボルトなど)を金色に。
- 武装:半円形に垂れ下がるケーブル(?)を、シルバーから茶色(?)に。
- 武装:機銃座周囲の床も甲板色(ネービーブルー)に?
- 武装:背面の接続ジョイントを黒(?)や銀色で塗り分ける。
- 武装:錨鎖の基部を銀色に。
 原作ゲームを知らない(プレイしていないし二次創作でもほとんど知らない)ので、どうするのが適切なのか、どこに魅力のコアがあるのかはよく分からないけど、たぶんこんな感じ。

 個人的には、腹部もダークブラウンで塗装してSF全身タイツっぽくしてみたいけれど、いや待て、これをやると「かえって変態感が増してえろくなる」のでは……。

 チャイナドレス(?)のホワイトも、中途半端に透けているので、きちんと塗り直した方が色合いが引き締まりそう。ブルーの上着は、デカール貼付の後にトップコードだけで良いだろう。
 黄緑色は、もうちょっと彩度を上げた方が良いと思うのだけど、面倒なので今回はそのままに。

 それにしても、肘と膝の関節が、まるでfigmaのように丸々と出っ張って自己主張しているのは、擁護しがたい失敗ポイント。以前の「時雨改」ではごく普通の関節表現だったのに……。

 切り出し&組み立ての最中は、アニメ版『小市民』第2期を流しておいてちょうど一周した。ウィスパーたっぷりの羊宮ヴォイスの濃密な芝居を聴き続けて、最終話は年末の「良いお年を」な雰囲気で締め括られたのは、予期せぬ偶然ながら、なかなか幸せな気分になれた。

 最終的に、塗装プランCで完成させた。
 特にひねりもない制作だが、ほんのちょっとだけアレンジして色彩やディテールを整えた。例えば、袖の黄緑色はファレホ「Bile Green」でちょっと色を濃くして、「BALTIMORE」の文字が見えやすいようにした。リベットは、一部のみ、シルバーで色を乗せて目立たせた(※全てのリベットを塗るのは大変だし、細かいところは目立たないし、擦れて消える可能性が高いので)。
 艦船部分をシックなツヤ消しに変更したことで、ガール着衣のアクセサリーのキラキラ感が強調されることになった。結果的に、まるで「ガールに注意を集中させるための色彩設計」のようになってしまった。想定外の効果だが、まあ、これはこれで。
 太腿サイドの銀色装甲はシルエットを崩すので、上の写真では取り外している。ただし、接続穴が露出してしまうのが残念。

 というわけで、今年制作した艦船模型は、「時雨」、「出雲」、そして「ボルチモア」の3体。……どうして3「隻」ではないのだろうか。

2025/12/07

漫画雑話(2025年12月)

 2025年12月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。

●新規作品。
 長代ルージュ『イヴとイヴたち』(単巻、GOT)。SF百合短編集。戦場での幻想から、人類絶滅後の二人、漫画家とアンドロイドのぎくしゃくした関係、そして伝奇百合妊娠、そして脳髄ネタに絡めた「永遠の恋」への思弁的SFと、内容は多彩。全年齢扱いながら、ストレートなベッドシーン描写もある。キャラの表情はやや生硬だが、いずれもユニークな展開で読みごたえがある。作者は18禁分野でも執筆しているようだ。
 宇加創陽(うか・そうや)『odd and kind』(単巻、講談社、原作あり)。こちらも3作の短編(中編)が収録されている。ウラシマ効果とノスタルジーとロマンスを綯い交ぜにした宇宙開拓もの。宇宙人に6年間もアブダクションされていた少年と、その友人たち。そして、若者たちの祈りを聞き入れようとした神と、その青少年たちの行動との間の奇妙なズレ。豊かなイマジネーションと堅実なSF描写、そして切なさのある恋愛テイストが、濃い陰影に縁取られたキャラクターたちの力強い表情とともに描かれている。
 zinbei『この世でいちばん甘い毒』(単巻、小学館)。現代日本の若年都市生活者の、ちょっと風変わりな体験を様々に描く短編集。ややスノッブで掘り下げは浅く、イメージは類型的だが、キャラは可愛い。
 険持ちよ『内木小森のひきこもごも生活』第1巻(芳文社、1-5話)。四コマではなく、通常のストーリー漫画。ずっと引き籠もっていた少女が、大災害後の世界(※人類社会は一応維持されている)で少しずつ周囲との交流を作っていく。遠景のビル街廃墟は味付け程度だが美しく、少人数の寮生活から始めていくミニマルな展開の懐かしさ、そして自尊心の低い主人公が無力な大泣きを繰り返しながら少しずつ周囲の人々との肯定的な関係を経験していく描写がとても良い。作者は十年以上のキャリアのある漫画家だが、私が作品を読むのはこれが初めて。
 行徒『転生・暗黒騎士団 チェリー味』(講談社、1-4話)。悪魔との契約によって騎士団のメンバーたちは超人的な戦闘力を身につけているが、しかしその契約には「ヴァージンであることがバレると即死する」という呪いもかかっているというお話。ライト軍記物+未経験バレを避けるサスペンス+軽めの猥談+いわゆる「シリアスな笑い」+行徒氏の潤いのある作画が上手く統合されている。
 日暮ずむ『神の児(こ)』第1巻(集英社、1-4話)。地上の生き物(人間を含む)がランダムにアブダクションされては、合成生物としてふたたび地上に戻されるという状況。そうしたキメラは、「神の児」として作中の社会で広く信仰されている。キメラが人間に危害を加えた場合のジレンマや、キメラ化される前の家族との思い出、キメラとの共生の困難などが、一話完結型で描かれる。コマ組みはややもたつき、読みづらいところもあるが、理不尽とともに生きるメランコリックな雰囲気が良い。
 太田垣康男『Ignition6』、『Candy Box Creations』(ともに単巻の短編集、小学館)。前者は90年代(デビュー初期)からの短編6作、後者は今年公開された5本のSF/ファンタジー。手書きでの濃厚なシェード表現や、骨格レベルで多彩に描き分けられているキャラクターたちの存在感、SFメカデザインのオリジナリティ、苦みのあるユーモア、そしてユニークなアイデアを堂々と正面から料理するその姿勢が、個々の作品を読み応えのあるものにしている。多脚兵器、良いよね……。
 成太郎(なるたろう)『闇堕ちラスボス令嬢の幼馴染に転生した。俺が死んだらバッドエンド確定なので最強になったけど、もう闇堕ち【ヤンデレ化】してませんか?』第1巻(一二三書房、原作あり、1-6話)。タイトルどおりの話で、ストーリー展開にはやや粗があり、作画もまだ浅いが、禍々しい固有魔法を身につけてしまった薄幸可憐なヒロイン(闇堕ち寸前)の魅力だけで十分引っ張っていける。とはいえ、ストーリー展開のネタがどこまで出せるかにかかっているので、どうなるかは分からない(原作ネット小説は未読)。ひとまず読み続けていってよいかな。
 もくはち『異世界水族館のつくり方』第1巻(少年画報社、1-6話)。モンスターと会話できるスキルを持って異世界転移した飼育員主人公が、モンスターたちが安んじて生きられる環境のために、とある島で水族館を作ろうと思い立つ。基本設定が強引だし、水棲モンスターたちも主人公のスキルによって美少女化していくが(※モンスター状態の方がコミカルで可愛いのに……)、そこそこ楽しめた。


●カジュアル買いなど。
 薄雲ねず『レーエンデ国物語』第2巻(講談社、原作あり、5-9話)。クラシカルな、ややアジア風の架空世界の幻想的な物語で、絵柄からコミュニティ習俗描写の描きぶりまで、明らかに『乙嫁語り』以降の流れに棹さしたスタイルを採っている。絵の密度が素晴らしいが、やや圧力が強すぎて緩急が欲しいのも、このジャンルに特徴的。というわけで第1巻も買って読んだが、「本国の政治的駆け引き」「交易路の開拓」「村内のユニークな生活と人間関係」「主人公のアイデンティティの謎」「メインヒーロー側の謎」といった層が積み重なりすぎて、物語全体の目標設定が掴みづらい。悪くはないのだが、これほど重たく詰め込んだストーリーは、小説の速度でやるべきものであって、作画漫画のペースで進めていくのは大変すぎるのでは……。

 あむ『澱の中』(第3巻、講談社、15-22話)。カバーイラストに妖気を感じて買ってみたが、男性主人公は社会的な自信を喪失してコンプレックスに苛まれており、またヒロインはヒロインで変態的な性的執着を示す側面と社会的に抑圧されてきた側面(母親と夫それぞれからのDV)の両方を持っている。そして両者ともに、虚無的で捨てばちで自傷的な振舞いと、それを逃れられない人格形成上の困難を饒舌に噴出させている。
 せっかくなので既刊も買って読んだが、ああ、「澱(=澱んだ執着)」でもあり、「檻(=囚われた心)」でもあり、そして「下り物(経血ネタがある)」でもあるのか。近年増えている全年齢露悪エロ(※歴史的には90年代のSMを経由して10年代のNTRものの普及に触発された流行か?)の中に位置づけられそうだが、それらの中でもかなりシリアス寄りのスタンスで、しかしほとんどチープに陥りそうなギリギリの大胆なシチュエーション展開と、そして漫画演出技巧(コマ組みやレタリング)はかなり意欲的な挑戦も見られる。主人公の強烈な自意識描写も、ストーリー進行と歩調を揃えて展開している。

 元三大介(もとみ・だいすけ)『魔法医レクスの変態カルテ』第1巻(新潮社、1-6話)。以前から存在は知っていたが、気まぐれで単行本を買ってみた。なるほど、上手い。「ビキニアーマー」「淫紋」といった20年代現代のキャッチーなネタを踏まえつつ、それらを丁寧に咀嚼して独自の(ある種の合理的な)解釈に結びつけている。その意味では、ほとんどSF的なまでの知的なアプローチを採っている。演出面も、外連味を見せつつもコマ組みや作画や台詞回しは明晰だし、ネタの密度もきわめて高い。個人的には、第2話のパワフルでポジティヴなエルフガールがたいへん魅力的。
 最新刊(第2-3巻)まで買い揃えて読んだ。テイマー、壁尻、ユニコーン、エロトラップダンジョン、張型、リビングアーマーと、いかにもキャッチーなネタを俎上に上げつつ、そこにオリジナリティと説得力のある解釈を展開している。例えば、触手生物の分類論(捕食型/苗床型/寄生型)のように、非常に明晰な説明を与えつつ、そこから物語的な面白味をたっぷりと引き出していく手腕とイマジネーションが素晴らしい。作画に関しても、初老男性を現代漫画らしさを維持しつつきちんと描いているし、さらにそれが女体化した状態も的確に描き分けているところが素晴らしい(※これをやれる漫画家は、そうはいない。具体的には、顎のラインや睫毛の描写によって性差表現をしているのだが、キャラクターの同一性を確保しつつアレンジできる技量は、並大抵ではない)。

 谷口菜津子『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第4巻(ぶんか社、22-27話)。保守的-家父長制的-マチズモ的な価値観から次第に解放されていくキャラクターたちを描いている。
 谷口ジロー『神々の山嶺(いただき)』(文庫版、全5巻)もまとめて読んだ。主人公はジャーナリストという立場から、物語の中心にある孤独な登山家の精神性に迫っていく。登山サークルからも疎外されがちな気難しい性質で、登攀中に仲間(後輩)を死なせてしまったことを深く悔やんでいる。自分のアイデンティティだった記録を易々と乗り越えた若きライバルへの強烈な対抗心を持ちつつ、物語後半では彼がもはやこの世にいない状況で、無謀とも思えるほどエキセントリックな条件でのエヴェレスト登山計画に挑んでいく。タイトルの意味は、「そうした過酷な挑戦は、入念な計画だけではなく、天候条件などの運にも恵まれなければいけない。それはいわば、山上に踊るヒンドゥーの神々から認められるかどうかの賭けにも等しい」という趣旨だが、漫画の描写はそうした高みへ目を向けるよりもむしろ、極限環境での苦闘のリアリティに集中している。峻険な岩壁の立体感、高山の空気の下でくっきりと見えるディテール、そして登山家たちが一歩一歩踏みしめていく所作の迫力、そして氷雪に凍り付く顔の表情に至るまで、実在感と臨場感に満ちた絵作りが展開されている。
 柳瀬こたつ『貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士』第3巻(Overlap、原作あり、11-14話)。タイトルはともかくとして、内容が凄い、絵が凄い。のけ者部隊が血まみれ、泥まみれになって戦い続ける荒々しくも意志的な物語が、影の濃い作画と鋭い眼光、そして迫力のある演出によって展開される。凄まじい。
 ナニン『どうも、物欲の聖女です』第2巻(一迅社、原作あり、7-12話)。表紙買いしてみた。本編はストーリー、漫画演出ともにチープではあるのだが、物語は元気良くスムーズに新アイテムゲットを享受し続ける(コメディ寄り)なので、わりと楽しい。


●続刊等。

1) 現代ものやシリアス系。
 雁木万里『妹は知っている』第5巻(37-45話)。ミニマルなエピソードを各話完結で緩く繋げているのだが、日常的なシチュエーションから出発しつつ、読者に実感の手応えを持たせるような展開にしていくのは、まさに作中のラジオネタと同種の巧さだし、キャラクターたちもそれぞれに社会的な距離感をデリケートに(時には不器用に)意識しつつ、全体としては融和的な雰囲気を維持しているところも上手い。
 江戸屋ぽち『紙山さんの紙袋の中には』第4巻(20-26話、完結)。飛び道具的なキャラクターばかりで物語のコントロールが難しかったのか、これまでの展開は捉えどころが無かったが、江戸屋氏らしく優しい雰囲気と内面造形を感じさせる描写に、斜めゴマと陰影を多用した演出のおかげで、きれいな形で完結してくれた。『メルセデス』の方は、ひきつづき情趣豊かな連載を展開していただきたい。
 江垣沼『生意気なギャル姉を解らせる話』第3巻(30-43話)。姉の心情的な掘り下げはいったん収めて、ライバルヒロインとのサイコスリラー的駆け引きに焦点が当てられている。チープなシーンやギスギスした描写もあるが、妖気のある表情を大写しにする見せ場の大ゴマはたいへん魅力的。
 瀬尾知汐『罪と罰のスピカ』第5巻(30-38話)。いかにもミステリらしい孤立山荘殺人ネタから、主人公の危機、殺し合いの惨劇へと何重にもどんでん返しを敢行していき、そして主人公のバックグラウンドと動機に焦点が当てられる。連載漫画形式のミステリ/サスペンスは、そのエピソードが完結するまではトリックの公正如何を確定しきれないのがちょっともどかしい。小説媒体ならば、ほとんどは単巻で完結しているので一気に結末(真相)まで辿り着けるのだが。
 末太(まつだ)シノ『女北斎大罪記』第3巻(10-15話、完結)。クリエイター主人公としての掘り下げも良いし、作画も鮮やかでインパクトのある表情を描いているし、時代考証を踏まえつつその後の歴史展開への視線も示しつつ、意志的な主人公のドラマを展開していたが、残念ながら結末を巻き上げて完結した。とはいえ、物語にピリオドを打つのに相応しいところまできちんと描ききってみせたのは、作者の優れた力量の手応えを感じさせつつ、一読者として納得も得られた。作者は日本画なども手掛けておられるようだが、また機会があれば新作漫画を読みたい。


2) ファンタジー世界やエンタメ寄り。
 高山しのぶ『花燭の白』第10巻(61-67話)。過去の真相から、現在の決意へ。レイアウトに関しては、上下に狭く横一面に広がる水平コマが多用されているのが興味深い。時には畳み掛けるようなコミカルなコマ組みとして、また時には顔の表情を隠す緊張感のあるレイアウトとして、時にはワンクッションの余韻コマとして、また時には枠線からキャラクターが飛び出しつつ情景を示すコマとして、様々な活用されている。
 フカヤマますく『エクソシストを堕とせない』第13巻(94-101話)。忌憚なく言えば、挑戦的なモティーフとそのユニークな掘り下げが見られたのは5-6巻くらいで、それ以降はあまり面白くないのだが、最後まで付き合うつもりではいる。
 鴻巣覚『うさぎはかく語りき』第2巻(7-13話)。邪悪で挑発的な描写と、シニックなユーモア、そして露骨なお色気の暗示、さらにはSFだかオカルトだか分からない都市の暗部の不気味さとといった諸要素を、芳文社らしいkawaii美少女オンリーでコーティングしている怪作。ただし、登場人物があらかじめ限定されていることもあり、次巻あたりであっさり完結しかねない気配もする。
 からあげたろう『聖なる加護持ち令嬢~』第2巻(5-8話)。他者を力づける率直な情愛と、他者を救うための覚悟を決める倫理、そしてkawaiiものを慈しみあう朗らかなコミュニティ。このまま連載を続けていってほしい。
 ぬじま『怪異と乙女と神隠し』第10巻(40-45話)。怪異の条件を客観的に要素分解して、それを利用して自身の目的のために利用しようとするクールさが、相変わらず刺激的。ただし、一歩間違うと「後出しの御都合主義的ルール」になりかねないところだが、本作は十分な説得力を維持している。それにしても、サブヒロイン三輪の描写には、今回も異様な雰囲気がある。怪異によって引き起こされる深刻な苦難の境遇と、それによる痛々しい全身負傷描写、そして強烈な心理的屈折と、苛烈な攻撃性の表情。他の怪異系キャラクターたちと比べてもほとんど別世界のような空気をまとわせているのに、大いに引き込まれる。
 星野真『竜送りのイサギ』第6巻(33-40話)。竜の住処に近い領地まで来たところで、中央政治の彼挽きに巻き込まれるわ、逃走して河原芸人一座に紛れ込むわ、そのうえ女装してやたら可愛くなるわ、さらに相方には強面の姉キャラが出張ってくるわ、そしてそれらの間にコミカル描写も挟み込んでくるわ(※36話はたぶん囲みペンギンのミームをパロっている)、最後に同行少女が怪異の側面を見せるわで、大騒ぎの一冊になっている。本筋が本格的に進行し始める前の今のうちに描いておこうと言わんばかりで、実に楽しい。
 真木蛍五『ナキナギ』第3巻(14-22話)。人間社会を知らない海棲怪異たちが、人間の少女の初々しい片思いを見守っていくという、なかなかに倒錯したシチュエーション。常識外れのキャラクターたちを使って、時におとぼけコメディを展開し、時に神秘的な恐怖を覗かせつつ、それらを絶妙にドライヴしていく手腕は、さすがと唸らされる。今回登場した新キャラは、頭髪に複雑な波模様が入っているという、とんどもないキャラデザ。小柄人魚キャラの方も、とんがりだらけのやたら複雑な髪型で、よくもまあこんな作画の面倒そうなデザインにしたものだと感心させられる。本物の非常識存在たちが自由に闊歩しているスリリングな雰囲気と、その一方で彼女たちにもそれぞれに内面的な真率さがあることがひっそり暗示される陰影感の取り合わせがきわめてユニーク。
 きただりょうま『魁の花巫女』第6巻(46-55話)。漢字表記のオノマトペは今回も独創的だが、そろそろ読むのを止めるかも。
 閃凡人『聖なる乙女と秘めごとを』第8巻(56-63話)。ようやく四枚花弁の指標が出てきたが、このペースで4人×4枚だと30~40巻の規模になってしまう。ストーリーはだらだらしているし、これもそろそろ止めるかも……。コマ組みの紙面レイアウトを初めとして、旨味のある漫画ではあるのだが。
 aoki『王宮には「アレ」が居る』第2巻(7-12話)。小さな少女が、強烈な情念を抱えながら凜々しくも悲壮に頑張る姿は感動的だが、今巻では彼女を見守ってくれる支援者が現れた。ストーリー展開は、まだ本筋には遠い序盤をうろうろしているだけだが、力強くも緊張感に満ちた絵作りが実に良い。
 水辺チカ『悪食令嬢と~』第12巻(56-60話)。うーん、ストーリーとしてはわりと重要な話もしている筈なのに、漫画としての掘り下げが浅い。具体的には、コマ組みが退屈だし、簡素なSD絵を乱用しているわりにその都度の場面や視覚効果につながっていない。以前の巻ではもっとまともなクオリティだったと思うのだが……。勘繰りで申し訳ないけど、アニメ化対応で品質が荒れたのではないかという疑念もある。しかし、カバーイラストは相変わらず絶品。毎巻それぞれにインパクトのある色を使って、色彩的な統一感のあるカバー絵を描いており、今巻では丁字染のような彩度低めで深みのあるブラウンを基調にしている。色使いがものすごく個性的だし、それでいてよく目立ち、強く印象に残る。ただし、残念ながら漫画本編ではこの色彩センスが全然活かされていないんだけど……。もったいない。

アニメ雑話(2025年12月)

 2025年12月の新作アニメ感想。
 結局、最後まで視聴したのは『悪食令嬢』『終末ツーリング』『野生のラスボス』の3作。

2025/11/28

2025年11月の雑記

 2025年11月の雑記。

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ガールプラモ「星花・百合(Starflower Lily)」について

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細身のメカガールプラモ。