2014/07/23

オタクのDo It Yourself

  「無いものは自分で作る」という話。オタクの熱意の話でもある。自分語りも。


  オタクが育んだ美徳の一つは、「無ければ自分で作れ」だと思う。欲しいものがあれば躊躇せず買い、そして、欲しいものが無ければ(自分自身は完全なプロフェッショナルではないとしても、とにもかくにも)自分で作る。このような振る舞いは、オタクと呼ばれるような全ての人が備えているわけではないし、また、オタクのみの特殊な行動というわけでもないが、オタクの中心的美徳の一つだと思うし、他人のそのような行動を私は尊敬するし、私自身もできればそうありたいと思っている。古い世代の伝説的な逸話としては「アニメ好きが嵩じて実際にアニメ制作者になった人たち」があるし、現代でも「好きなカップリングがあれば(そしてその供給が十分でないならば)自分で同人誌を描く人たち」は無数にいる。ただ受動的な消費者としてあるだけでなく実際に自分の手を動かすことは良いことだと思うし、オタクライフにおいてもその価値観は保持される方が良いと思う。

  私の場合、SHC作品のシステムの特定部分についての詳細な攻略は、web上の既存の攻略サイトにも欠けているところが多々あり、それで「誰かやらないのか、それなら自分でやるよ!」と苛立ちを抑えられず、自分で腰を据えて着手するようになった(――ただし、攻略技法や着眼点、攻略方針、編集方針などについては、先行する攻略サイト群にたいへんお世話になったが)。最近では、総合wiki(を積極的に編集している方々)などがいろいろやって下さるようになったが、それでもやはり自分が興味を持つポイントを完全/即時/的確に攻略されるとは限らないので、こうしてやる羽目になっている。『雪鬼屋』や『門』では、私ごときがしゃしゃり出る必要はほとんど無かったので、それはそれでたいへん有難かったが。

  AVG演出技術についても同様で、この関心は元々のきっかけとしてはFool氏(攻略サイト管理人)と高橋氏(プログラマー)のサイトを拝見してして触発されたものだったが、きわめて重要な側面だと思われたにもかかわらず、少なくともネット言論の次元では、まとまった形での検討や議論はほとんど存在せず、それで癇癪を起こして(またそれか)一から調べ直し、書き出してみた。ただし、もちろん、これについては制作者サイドにはもっと深い理解をされている方々がたくさんいらっしゃるに違いないと思っていたし、そしてユーザー側にも、ふだん言葉にはしないが深く理解されているゲーマーがたくさんいらっしゃる筈だと考えてはいた(――そしてそのことは、のちにtwitterに出向くようになって確かめられた)。しかし、美少女ゲームの演出について集中的に取り組んで言葉にしていくような人は、残念ながらおそらく今後ともなかなか現れはしないだろうとは思っている。

  ゲームシステムやゲームデザインを幅広く(作品横断的に)あるいは理論的に(トップダウンできちんと枠組づけつつ)語るゲーマーも、90年代から00年代初頭まではweb上にもいくらかは存在したが、近年ではほとんどいないか、あるいはそうした存在が非常に見えにくくなっている。そして、実作者サイドとの間の懸隔と断絶も、再び大きくなっているように思われる。

  データベース的側面については、以前にも増して活発に行われているが、wikiなどの匿名的システムの下では、そうした方々の顔が見えず、そしてそれゆえその功績の帰属も見えにくくなっていることについては遺憾に思う。wkpdやEGScapeだって、あるいはgetchuであれ何であれ、自動的に生成されているわけではなく、個々人の実際の手作業によってその情報の精度と鮮度が維持されているということは、忘れられがちだがきわめて重要なことだ。特定の声優についてその出演情報を広汎に集約し整理し公開されている方々は、美少女ゲーム分野でもいまだ何人もおられ、それはオタクとしてたいへん心強くそしてありがたい。

  といったようなことを、[ gameomo.blog.fc2.com/ ]を拝見してあらためて考えた次第。