ストーリーのつながっている連作や、世界設定を共有するシリーズものやオムニバスなど。
演出技術論Ⅳ-3-3も参照のこと。
【 近年のロープライス連作もの 】
近年、低価格連作ものがわりと出ている。10年代の新潮流の一つだろう。ざっと挙げると、
- 『さかしき人にみるこころ』(light、2008-)
- 『美少女万華鏡』(ωstar、2011-)
- 『はらハラしちゃう!』(アトリエかぐや、2011) ※2作品のみ。
- 『堕天の記憶』(Black Rabbit、2012-)
- 『満里奈』(アトリエさくら、2013-)
- 『ひめごとユニオン』(SEVEN WONDER、2013-2015) ※フルプライスとFD的連作。
- 『真剣恋A』(みなとそふと、2013-) ※フルプライス作品からのロープライス派生群。
- 『Re;Lord』(Escu:de、2014-)
- 『セイイキ』(feng、2014-)
- 『○○ウソ』(campus、2015-)
- 『雪月華』(Lass Lunatics、2015-)
- 『Pure Marriage』(Lass pixy、2016-) ※現在、まだ一作のみ。
- 『CoronaBlossom』(Frontwing、2016) ※未発売。
- 『FLOWERS』(Innocent Grey、2014-) ※全年齢タイトル。
先鞭を付けたのは『地っ球の平和をま~もるためっ!!』(C's ware、2003)だろうか。ストーリー上、明確に完結させたのは、今のところ『地っ球』『ひめごとユニオン』だけかな。『Re;Lord』『雪月華』も、オムニバスではなく直列のストーリー展開らしいので、完結編が作られる見込みは高い。『さかここ』も、ヒロイン3人でそれぞれ物語をきれいに完結させているので、続編はもう出てこないだろう。『ひめごとユニオン』『Floralia』『終の館』のように、フルプライスとロープライスの混合型もあるが、FDの性格が強いため、評価しにくい。『りとる・ピース』(2008/2008)は、短編・連作・競作のような体裁だったが、Vol.2までで途絶してしまった。『桜待坂』(2004/2005)も、Vol.2まで。
パターンとしては、ヒロイン基軸で並列型のオムニバスもの(例:『セイイキ』『万華鏡』)と、ストーリー基軸で直列型の長編もの(例:『Re;Lord』『雪月華』)とがある。前者のタイプは基本的に、どの作品を、あるいはどの作品からプレイしても問題無いが、後者はストーリー上の順序があるので順番にプレイした方がよいだろう。
私見では、00年代には、ロープライス作品は企画面/制作面/販促面で非効率だと思っていた。したがって、連作ものについては、制作者側にもユーザー側にもなんら得にならない分割販売だと考えていた。しかし10年代に入って、アダルトゲーム分野でロープライスの比重が高まってくるにつれて、連作ものの特有のメリットが浮き彫りになってきた。すなわち、1)フルプライスよりも機動的に制作できる(成否の見込みに応じて進退や方向性を判断できる)、2)連作ものとして継続的に広報露出できる、3)単発のロープライス作品に比べて様々な付加価値がある(ように見せられる)。fengの『セイイキ』シリーズのように、単一ヒロイン特化+抱き枕同梱販売という面白い試みも現れている。いずれにせよ、面白い制作形態/販売形態なので、今後もいろいろな形で発展させていってくれればと思う。
【 フルプライスの長期シリーズ 】
ちなみに、フルプライス級の方が、歴史は長いし長寿シリーズの数も多い。しかし、はっきり終点の存在を明示しつつ連作を謳って売り出した『グリザイア』(Frontwing、2012-)と『レイライン』(UNiSONSHIFT、2012-2015)は、耳目を集めた事件だったと思う。フルプライス製品を含むシリーズもので、現在も継続中と思われる中では、
- 『なう。』シリーズ(Waffle、2011-)
- 『真剣恋』(みなとそふと、2009-)
- 『恋姫†無双』(BaseSon、2007-)
- 『姦染』(SPEED、2006-)
- 『対魔忍』(BLACK LiLiTH、2005-) ※ロープライスが大半。
- 『つよきす』(きゃんでぃそふと、2005-)
- 『DAYS』(Overflow、2005-)
- 『操心術』(studio邪恋、2004-)
- 『神楽』(studio e.go!/でぼの巣製作所、2003-)
- 『マブラヴ』(age、2003-)
- 『D.C.』(circus、2002-)
- 『魔法戦士』シリーズ(Triangle、2002-)
- 『BALDR』(戯画、1999-)
- 『戦女神』(Eushully、1999-) ※長寿だがタイトル数は少ない。
- 『Rance』(alicesoft、1989-)
このあたりが長寿シリーズになっている(※発売年降順)。
『Tiny Dungeon』(Rosebleu、2010-)は、ちゃんとプレイしていないのでよく知らない。珍しい例だと、『Floralia』(xuse、2002-)のヒロイン個別ファンディスクというアプローチは面白かったが、この路線を採ったものはほとんど現れなかった。『真剣恋A』シリーズはこれに近いタイプと言えるかもしれない。逆に『終の館』(circus、2004-2005)は、それぞれヒロイン一人を取り上げた1000円のロープライス5本を受けて、最後のフルプライスタイトルはヒロインたちの来世の姿というシチュエーションだった筈。
『Piaキャロット』(カクテル・ソフト、1996-)、『闇の声』(BLACKCYC、2001-)、『アセリア』(xuse、2003-)、『ジブリール』(Frontwing、2004-)、『What a』(Liart-soft、2006-)、『ソレイユ』(SkyFish、2006/2007-)あたりは、もう新作は無さそう。studio e.go!のいくつものシリーズものも。
一昔前は、ピンク系に多かったという印象がある。『THEガッツ!』(オーサリングヘヴン、1999-)、『XChange』(CROWD、1997-)など。
こちらも内容上、いくつもの下位分類にカテゴライズすることができる。最初から連作としての規模及び結末を予定したもの、同一設定でのオムニバスもの、後発的なシリーズ化、実質的なFD展開、世界設定共有(ごく緩やかなクロスオーバー)、作品名だけのシリーズ化などを、それぞれ明確に区別することは難しい。最狭義での連作ものは、『マブラヴ(オルタまで)』と『グリザイア』くらいだろうか。『紅蓮天衝』(ZONE、2002)の2作品も、明確な連作ものだったし、『univ.』(カクテル・ソフト、2001/2002)も両方を続けてプレイすることが想定されていただろう。『シンフォニックナイツ』は、終盤で次作『エリクシルナイツ』のヒロインが登場して、次作へのつながりをはっきり示唆していた。上記『Re;Lord』も、エンディングで次作に続く旨、明確に告知していた。並列的なオムニバス展開は、上記のようにロープライス作品に多い。『真剣恋』『Tiny Dungeon』がこれに該当するようだ。『恋姫†無双』『つよきす』などは、後発的な(FD的、世界拡張的な)シリーズ化だろうか。
『人工失楽えn…ごほごほ。