2016/10/02

艦NEXT版「赤城」雑感

  FUJIMI社製、「艦NEXT」版の、1/700赤城についての雑感。書きかけ。


  【 キットについての大雑把な感想 】
  パーツの合い、スナップフィットのはまり具合は、十分な水準。飛行甲板の船体への嵌め込みも、パキパキときれいに出来たし、もちろんしっかり固定されている。特に艦底パーツが、特に気を遣わなくてもしっかり密着固定できるようになったのは嬉しい。今回は、嵌め込みの際の潤滑剤の役割も兼ねて接着剤を使ったが、おそらく接着剤無しでも十分な強度になるだろう。艦尾のアンカーや艦橋後部のマスト、艦首旗竿パーツなど、嵌め込みが緩くて接着剤を使った方がよいと思われるところもごく一部にあったが、全体としてはパチパチと気持ち良く嵌まる精度だった。プラ素材それ自体も、従来のFUJIMIキットよりも硬めのものになっている……ような気がしたが、これはただの気のせいかもしれない。

  大半の梯子類や一部支柱は、床面パーツ等と一体化されている。「特」版の組立説明書では取り付け位置が分かりにくかったし、不慣れなユーザーへの配慮という観点では大いに改善されていると言える。パラベーン、錨鎖、係船桁も一体化。

  棒状の支柱類はやや太めに感じる。嵌め込み前提なのと、おそらくは初心者への配慮とで、強度を確保するために太くしているのだろうか。着艦指導灯なども、妙に厚みがある(約1mm=70cm相当)。しかし、これら以外は、幸いなことに、スナップフィット化のためにパーツの精密さが犠牲にされているところはほとんど無い。

  飛行甲板表面の色分けのために、裏面にベージュ色突起が出てくるが、必要に応じて塞げるようにグレーのシールが提供されている。全体にツヤ消しコーティングをしておけば、覗き込んでの接写でもしないかぎり、シール跡は目立たないだろう。

  色分けのためのパーツ分割は、造形上は不必要な分割であるという場合も出てくる。特に飛行甲板面の分割は、精密工作をされる方々には邪魔になるかもしれない。

  ひとまずパチ組みしてみて、キット単体として見ると、スナップフィットの恩恵としての堅牢さと組み立てやすさ、パーツの合いの精度、全体のハイディテールと、たいへん満足のいくものだった。全体としては、一パーツ化できるところはできるだけ一体化していこうという方針が見えるし、その一方で、可動のためか、「特」版とは違ったところでパーツ分割を入れているところもあったりする。双眼鏡のような、さらに一歩踏み込んだ挑戦も試みている(――今回は、名目上はあくまでおまけの差し替えパーツという扱いだが)。

  パーツ数は、目視で数えたところ、257個(艦底部、艦載機、艦載艇、飾り台を含む)。さらに、おまけ扱いの接着が必要なパーツ51個(双眼鏡や艦載機の脚部など)を合わせると最大308個になる。同社従来品(フルハルキット)は383パーツ(艦載機9機の63パーツなどを含む)なので、かなりシンプルになっている。ちなみに、HASEGAWAの同スケールの「赤城」は、手許の洋上モデルだと、本体187パーツと艦載機13パーツでちょうど200パーツ(――フルハル版では、さらに12パーツほど増えるだろう)。


  【 「特」版との違い
  同社従来品(「特」系列)と比べると、基本的なシルエットとディテールは、さすがにほとんど変わらないが、素人目でざっと見たかぎりでは以下のような違いがある。
- 左舷後方の支柱の形状がかなり変わっている。
- 煙突の下に、三角形の支柱が4つ(8本)追加された。
- 双眼鏡表現がある(台座が突起として表現されている。双眼鏡パーツも別途入っている)。
- 着艦指導灯パーツが、ちゃんと2種セットずつある。取り付け指定位置も変わっている。
- 艦首フェアリーダーがやや大型化して立体感のある形になっている。
- それ以外のフェアリーダーは、一体成形のために奥行きが分厚くなっているものがある。
- 12cm連装高角砲もディテールが緻密になった。
- エレベーター表面に繋止眼環モールドが入った。
- 飛行甲板外周に雨樋ディテールがある。
- 舷外電路がモールドされている。
- 舷側の各所に、クレーンとおぼしきモールドが追加されている。
- 前部格納庫の側面外壁に、突起が増えている(通風筒か何かだろうか)。
- 舷側の鋼板継ぎ目表現のモールドが増えている。
- 水密扉モールドが一部追加されている。
- 艦底パーツも多少ディテールが入った。
- 飛行甲板の照明灯パーツは無い(閉状態で固定される)。
- 艦首錨鎖甲板上の予備アンカーは無い。
などなど。もちろんパーツ分割等も一変しており、従来の雑誌やムックの制作記事では対応できない箇所も多いと思われる。


  【 制作上のTIPS 】
  防水布などの白い部分は、シールよりも塗装の方が良い。特easy版にも言えることだが。
  飛行甲板の白線は、シールとデカールの両方が用意されている。

  スナップフィットのピンで嵌め合わせ位置が固定されてしまうため、艦尾先端の隙間を無くしてぴったり合わせるのが難しかった。

  艦底パーツはかなり透けるので、無塗装の場合でもここだけはブラックなどで裏を塗っておくべきだろう。ただし、舵とスクリューの部分が透けるのはどうしようもないし、それらと船底パーツとの間で色合いに違いが生じてしまうが。

  かなり重心が上に来る。艦底にバラストを入れておく方がよいかもしれない。

  双眼鏡(部品「S2」)を付ける場合は、キットパーツにある突起部分を切除して置き換える。あらかじめ突起を切り取らなければいけないので、いったん組み立てた後からの工作は難しい。

  工程9(右舷)の支柱パーツは、T10を先に嵌めてからT12を取り付けるようにする方がよさそう。T12を先に固定してしまうと、T10パーツをうまく嵌め込むことができず、やり直す羽目になった。

  工程12(右舷)の「W3」(艦尾のアンカー)は、「W31」の間違いと思われる。「W3」パーツは艦首側左右の碇で、取り付けピンの形状が異なる(W31パーツは角型ピン、W3パーツは丸型ピン)。

  組立説明書の手順では、起倒式マストは後から取り付けるよう指示されているが、奥まった位置にあるうえ、強度にも問題があって、後からの嵌め込みはかなりきつい。先にマストを嵌め込んでおく方がよさそうだ。

  シールは、飛行甲板白線、舷側のリノリウム部分、探照灯のシルバー、副砲および艦載艇の防水布、艦載艇の木板部分、艦載機の日の丸、軍艦旗(一枚分)、菊花紋章がある。ただし、マホガニー色プラパーツの部分には、リノリウムシールは用意されていない。
  また、組立説明書では具体的な指示は無い(あくまでボーナスパーツ扱い)が、スクリューシャフト(シルバー)、艦橋窓枠(線入りシルバー)、着艦制動索基部(グレー)、遮風柵基部(グレー)にもシールが用意されている(※対応箇所はいずれも推測)。

  デカールも封入されている。飛行甲板白線(着艦標識の紅白ストライプも)、艦載機用の赤丸、軍艦旗が含まれる。ただし、あくまでおまけ扱いとされており、組立説明書には具体的な指示は一切書かれていないが、シール版と見比べれば貼付位置に迷うことは無いだろう。白線デカール部分は、二本の白線の間のクリア部分もひとまとまりになっている。正確にデカールを貼れる技術があるならば、木甲板に被さる部分や、特にエレベーターに被さるクリア部分は切り取って、できるだけ白線部分だけを貼り付ける方が、仕上がりがきれいになるだろう。

  飛行甲板の着艦制動索基部と遮風柵基部は、モールドで表現されており、プラの色分けはされていない。対応するグレーのシールが用意されているが、シールだと色味や質感の違いが目立ちそう。あまり目立たない小さな部分なので割り切って無視するか、なんとか自力でグレー塗装するか(筆塗りでもよいだろう)、あるいはエッチングパーツ等を別途調達して取り付けるか、なんらかの対処を考えた方がよさそうだ。


(2016年10月2日、自宅にて撮影。)
(写真1:)全体写真。ひとまずキットを説明書の指示どおりに組み立ててみたもの。スナップフィット式嵌め込みなので、私のような初心者でも艦底部分をきちんと密着させられる。木甲板パーツの成形色は、ツヤ消し気味のシックな感触だが、色それ自体は明るくはっきりした色調。並のデジカメでも、このくらいには見栄えがする。
(写真2:)錨鎖はきれいな形が出ている。横になっている部分はθ型(スタッドリンク)がはっきりと認識できる。縦に立っている輪は、中が埋まっているが、よほど近づいて注視するのでもないかぎり、ほとんど気にならないだろう。錨鎖の下(周囲)のグレー部分にも、非常に繊細な滑り止めモールドが入っている。左記写真では靄がかって見えるが、キットパーツの成形色はきれいなマホガニー色。
(写真3:)艦首付近。スナップフィットをきちんと嵌め込めば、左右/上下の貼り合わせの隙間はほとんど出ない。同社従来品(「特」系統)と異なり、このキットでは舷外電路がモールドされている。とりわけ艦首フェアリーダーを回り込むところは、繊細で立体感のあるディテールになっている。梯子類の多くは床パーツと一体成形されているため、取り付け位置に迷わない。
(写真4:)飛行甲板と艦橋。白線は、シールとデカールから選択使用できる(左記写真はデカール)。シールは白線周囲だけをカバーする。デカールは、白線部分だけではなく、白線の間のクリアな面もつながって一枚になっている。トップコートを吹いていない状態でも、このくらい馴染んでいる。名目上はボーナスパーツ扱いだが、艦橋等に双眼鏡も取り付けられる。
(写真5:)左舷中央あたりの様子。資材置き場の支柱群も、同社従来品と比べて、かなり細くなっている。艦載艇の木板部分や舷側のリノリウムにシールを使うと、このような感じになる。シールは「特easy」と同等の出来。木板シールは色合いがやや下品なので使わない方が良さそうだ。艦底パーツは、そのままでは透けてしまうので、裏側をブラック塗装した。
(写真6:)左舷後部。同社従来品と比べて、このスポンソン支柱の形状が大きく変化している。支柱は、従来品よりもやや太くなっている。おそらく初心者向けの配慮と、嵌め込みの際の強度確保のためだろう。トップコートを吹かないままのキットプラは、照明と角度によっては、このくらい光の反射を生じる。
(写真7:)後部の様子。飛行甲板のパーツ群は、すり合わせをきちんとしておかなければ、ベージュ色パーツが浮き上がって不格好になる。20cm単装砲の防水布には、白色シールもあるが、きれいに貼るのが難しいし、質感が良くないので、筆で塗装した。スクリューシャフトには、シルバーのシールが用意されているが、シールよりも塗装の方がよいだろう。
(写真8:)いろいろな「赤城」を並べてみる。上が今回の「艦NEXT」版(パチ組みにシールとデカールを貼っただけ)。中央は、同社製の「スケルトンモデル」(クリアキット、ツヤ消しクリアを吹いてある)。下は、同社通常キットをベースに制作したネウロイ赤城。こうして見比べてみても、艦NEXT版は、無塗装のままでもなかなか見応えがある。


  【 エッチング 】
  同社製の特シリーズ「赤城」用エッチングを使ってみる。目的は二つ。
  1) 元々は「特」シリーズ用であるこのエッチングが、NEXT版に合うかどうかを確認すること。
  2) NEXT版の無塗装状態にエッチングを組み込んだ場合の様子を確認すること。

  以上の趣旨からして、今回はキットにあるパーツを取り替えることはせず、あくまでキットの構成に対する追加としてのみエッチングを使用する。実際には、各所の手摺、落下防止ネット、錨見台、煙突ジャッキステーのみということになる。言い換えれば、ホースリール外枠、ループアンテナ、各所の梯子類、ボートダビット、艦橋窓枠はプラパーツのままになる。なお、今回は舷梯は取り付けていない。

  「特」シリーズ用エッチングは、艦NEXT版キットにも、おおむねきれいにフィットする。ただし、いくつか注意点がある。
  1) 梯子類。キットの梯子パーツを切除する必要がある。また、飛行甲板につながる梯子類は、「特」用エッチングには含まれていない。対処としては、「梯子類はすべてキットのプラパーツのままとする」か、あるいは「不足する分の梯子類は再現省略する」、「他のエッチング製品から流用する」といった方策が考えられる。プラパーツとエッチングパーツを混在させるのは、見た目にあまりよろしくないだろう。
  2) 手摺。舷側の通路パーツが梯子類と一体化されている部分など、エッチング手摺と干渉しかねない箇所がいくつかある。また、一部はシールの上に手摺を接着することになり、強度不足のおそれがある(※シールを使わずリノリウム塗装すればよいが、それはそれで手間が掛かる)。
  3) 工程。エッチングを取り付けるタイミング(手順)をきちんと見計らっておく必要がある。特に飛行甲板をパチンと嵌め込む際に、その衝撃で各所のエッチングパーツが外れる危険がある。あらかじめピンを斜めに削って差し込みやすくしておくか、あるいはエッチングを後から接着するなど、破損しないためのやり方を考えておく必要がある。

  特easy版にエッチングを組み込んだ場合も、おおむね同じような外観になるだろう。

  後日追記:この艦NEXT版用の純正エッチングセットも発売された(「グレードアップパーツシリーズ No.117」)。そちらは購入していないので詳しいことは分からないが、支柱や起倒式マストなど、「特」エッチングには含まれていなかったパーツも含まれているようだ。基本的には、NEXT用エッチングを使う方が無難かと思われる。あるいは逆に、NEXT用エッチングを「特」版キットに使うこともできるかもしれない。