ガトーの四字熟語は、「捲土重来」(ケリーへのメッセージ)と「鎧袖一触」(核攻撃後の感想)はすぐに思い出せるけど、それ以外にあったっけ……。
ガンダムシリーズはほとんど視聴していない。『0083』はディスクメディアで持っており、『08小隊』も一度見たことがあるという程度。比較的初期のシリーズも、多少は見ている。でもって、この『0083』が「ティターンズはじめて物語」であるということがなんとか理解できるくらいにはリテラシーがある。小説版はいくらか読んでいたり、プラモデルを作ったり、模型関連でいろいろと間接的に知識を仕入れたり、部分的にはゲームでなんとなく筋書きを知っていたりという感じ。
『0083』は、2Dセル画時代のロボット戦闘アニメとして、きわめて高水準でしかも気持ち良い運動表現のあるアニメーションが展開されるし、メカデザインとしてもかなり好み。特にゲルググマリーネは、肩や脛の装甲が二段構造になっていて、重厚感と密度感がある(※通常のゲルググは、ここがのっぺりしていてあまり面白くない)。F-2ザクも、がっしりしたプロポーションと直線的なシルエットで、70年代に作られた元々のザクのデザインを90年代以降にも通用するように見事にアップデートしたと思う(※何故かMG版は気の抜けた造形に変わり果てていたが、HGUC版はかなり良い感じ)。同様の美意識はGP-03(ステイメン)にも見て取れ、「最も美しいガンダム」として挙げる人が少なからずいたというのも頷ける。GP-02は特異な造形だが、残念ながら、説得力のあるプロポーションの立体物がいまだに存在しない。難しいデザインなのだろう。ノイエ・ジールは、各部フル稼動の作り込みを目指したが結局挫折した。現在の知識と技術ならば作れると思う。
……こうして感想を書いてみて、ああ、私はやっぱり、アニメオタクよりもモデラーなんだな。
キャラクターたちの国籍がヴァラエティ豊かなのも面白い(※あの世界には近代的な国家は存在しないようだけど)。主人公は名前からしておそらく日系で、同僚にはステレオタイプなアメリカ人らしい先輩(アレン)やヒスパニック系(カークス)らしい先輩もいる。軽口と皮肉の多いキースはイギリス人だろうか。艦のクルーにはインド系とおぼしき人物(ハリダ)やロシア系(イワン)、フランス系(ジャクリーヌ)、ヒスパニック(アデル)、イタリア系(モンシア)もいる。アフリカ系とおぼしき登場人物もモーラ、バニング、コーウェンと多い。その一方で、英国貴族を気取った将軍(ワイアット)もいる。ルセットとデラーズも、おそらくフランス系の名前。こういった多様性が、90年代初頭のアニメでこれほど自然に描かれているのは、なかなか貴重だ。
本編中でも、スペースノイド差別(「宇宙人」呼ばわり)や、「ルナリアン(月面生活者)」への差別心、「アースノイドじゃあるまいし」の敵愾心などが示唆されている。
モーラ中尉は人格者だよねえ。すごく魅力的。部下を守りつつ不正に対して堂々と抗議する公明正大な人柄だし、ニナのように艦内で浮いている人物にも目を掛けてフォローしている。職位からして、メカニックとしての実力も高いのだろう。ユーモアを解する人柄だし、普段から朗らかな笑顔なのもチャーミング。
シナプス艦長も、戦術判断の的確さ、対応の公正さ、部下に対する寛容さ、情勢変化に対する決断力、現場的な統率力、そして責任感、素晴らしい人格だ。もっとも、それゆえに、腐敗した上層部からは「融通の利かない艦」といって煙たがられているし、たしか小説版では最後に責任を押しつけられて極刑に処せられている。
大学院時代にこの作品を薦めてくれた知人との話では、「シーマの連邦への寝返りが成功したとしても、0083事件の暗部を知っているから表には出せない。だから適当なところで強化人間にされて、強制的に記憶を失わせつつ戦闘力だけをいいように使われて、ΖΖあたりで悲惨な最期を遂げただろう」という結論だった。(かわいそう。)
ガンダム世界の人名の呼称がよく分からない。「名・姓」の順序なのは確かだとして、フォーマルな場面では姓(名字、ファミリーネーム)で呼び、そうでない場合は名前(ファーストネーム、ギブンネーム)で呼ぶこともある、というもののようだ。しかし、シーマ・ガラハウが「シーマ中佐」とファーストネームで呼ばれているかと思えば、アナベル・ガトーは「ガトー少佐」とファミリーネームで呼ばれていたりと、どうも一貫しない。本則はファミリーネーム(+階級等)であるが、状況や呼びやすさによってファミリーネーム(+階級)で呼んでも差し支えない、という文化なのだろうか。
せっかくだからとDVDを取り出して作業の横で再生している。
ドム・トローペンのアダムスキーさん、すごく優秀だ……。
第2話でGP-02が回収艇に飛び乗るシーンは格好良いな!
メカ静止画の濃い陰影表現、「スターダストメモリー塗り」が素晴らしい。
第3話から第7話くらいまでは辛気臭い話が続くのよな。(半分くらいはモンシアのせい)
ガンダムのコクピットを挟んだニナ&モンシアの構図が面白い。
第4話。腕を天へ伸ばしたまま動きを止めたザクが物悲しい。
オービルの声に聴き覚えがあると思ったら、『サジタリウス』のジラフ君か!(塩屋翼氏)
第5話。全力の宇宙戦闘表現の開始。光り輝く豊かな星空も美しい。ニナさんも可愛い。
第6話。月面生活環境のメカニズムを描いていて、オーソドックスなSFをやっている。
ガトーとニナ。新型ロボットの情報横流しをしていたのでは、と勘繰られる関係よなあ。
オサリバンの声は市川治氏。こう言うのも口幅ったいが、めちゃくちゃ上手いな。
宇宙空間に漂うロボットの残骸も精緻に描かれており、それが臨場感を高めている。
劇伴(BGM)の付け方が生硬に感じることがある。曲が悪目立ちしているのもあるかも。
「ガンダム vs ガンダム」の嚆矢だろうか。いや、『Ζ』にもあったのだったか。
第7話。脚本がもたつくが、高速戦闘の醍醐味が補って余りある、前半のクライマックス。
「こんな大地球的なことはやめて。みんなでちょっと我慢すれば済むことなのに!」
そういえばVHS版にはプロデューサーやデザイナーのトーク映像もあった。
うちのDVDは3枚目が再生不良っぽいのだった。なんとか再生できた。
第8話。「バニングの助平野郎」というのは、たぶん事実だったんだろうなあ。
ネタ臭さすら感じるほどにファーストオマージュたっぷりの第二OP。
OP映像にバニングの姿が無いことで、即座に察した視聴者もいたのだろう。
無重力の鬼ごっこアニメーションが面白い。
第9話。この一話で一気に発射まで行く、その密度がすごい。
モビルスーツの発進シーンのリアリスティックな描き込みも面白い。
星々、隕石とデブリ、艦船、地球、そしてロボットアニメーション。絵も素晴らしい。
Fbに肉薄し「十手か!?」と教養も覗かせた人物は、文武両道の隠れた英雄であった説。
核バズーカの白い光が何なのかについては諸説ある模様。
「Evergreen」。本編の熱気を程良くクールダウンさせる、良いED曲。
第10話。「ずいぶん肝を嘗めたようだな」は、「臥薪嘗胆」を踏まえている。
無反動砲を描いていたり、真空空間での接触会話を表現していたり。
ここからさらに科学的な描写やSF的ガジェットが出てくる。
第11話。艦橋やステーション内部など、場所に応じた様々な環境音が面白い。
ルセットさん、巨大メカの設計から政治判断の誤りからウラキ煽動まで、無茶すぎ。
このあたりも、無重力下の人体運動の表現がいろいろ面白い。
第12話。初視聴の時は、デンドロビウムの構造が分かっていなかった。まさかあんな。
拠点防衛用というけれど、この性能は明らかに突破用だよねえ。
核攻撃ガンダム開発は、実はコーウェン将軍がタカ派なのか、それともニナさんの暴走か。
コクピットの全方位ディスプレイの見せ方もたいへん楽しい。
「獅子身中の虫」「南無三」も、わりと古めの言い回しか。
第13話。大乱戦。ザクvsゲルググという珍しいシーンもある。
終盤のガトーは、コロニー落とし、MA決戦、人間ドラマと、やることが多くて忙しすぎ。
十年以上前に制作したMG版GP-02。本編中盤のイメージで、ホワイト部分をグレーで塗装している(筆塗り)。両肩のスラスターの内部も作り込んだが、閉じた状態ではまったく見えない。
MS-14Fs(HGUC版)。これも昔の作品。イエローとパープルは、シルバーを混ぜてクドみを抑えた。良い感じの色合いになったと思う。足の甲や膝先を塗り分けて独自性を出そうとした形跡がある。
ノイエ・ジール(HG Mechanics)。これも抑えめのグリーンに調整した。クリアパーツを使ってモノアイも再現しているのだが、小さすぎてほとんど見えない。知人が「ザクグリーンにすべきだ」と主張していたのを思い出す。このほかガーベラ(HG)、ザクF-II(MG/HGUC)、GP-03S(MG)、デンドロビウム(HGM)、ヴァル・ヴァロ(HGM)なども作った。全て昔の制作。