プララジ#32で、『王賊』はSHCとしては珍しく分岐のない一本道だという話が出ていた。おおまかに言えば、目立った分岐が存在しないストレートな展開なのだが、細かく見れば必ずしもそうではない。たしかに本筋ストーリーは決まっているけれど、エンディングは進行度(アルイエットの成長度)によっていくつかのパターンに分かれる。その意味では、『うえはぁす』や『海賊王冠』と同じようなものだ。また、本筋以外にも多数のサブイベントがあり、それらに挑戦したり無視したりすることもできるので、完全な一本道というわけでもない。むしろ『BB』シリーズの方が、エンディングが一つしかないので、完全な一本道だと言える。
ゲーム進行が一本道かどうかという問題は、以前にも書いた憶えがあるが、せっかくだからもう一度整理してみよう。
1) エンディング。
1a) EDは一種類のみか、それとも複数のパターン(マルチエンディング)があるか。途中でドロップアウトするバッドエンドを、独自のエンディングとしてどこまで認めるかは難しい。SLG作品の場合は、ゲームパート上の失敗がバッドエンドになる場合も多い。
1b) 本筋のEDは一種類のみでも、サブエピソードにヴァリエーションがある場合。
2) マクロレベルの分岐。
2a) 択一的な分岐が生じるか。たいていのAVG作品は、選択肢によって事実上このレベルの分岐機会を持っている。SLG作品では、必ずしもそうではない。
2b) 択一的ではないにせよ、進行のヴァリエーションがあるか。それとも、進行するイベントチェーンそれ自体は完全な一本道強制であるか。
2c) AVG+SLG作品では、AVGパートの分岐とSLGパートをそれぞれ別個に考える必要がある。ゲームパートは基本的に変化しないがAVGパートのイベントは分岐するというタイプもあるし(例:『悪魔娘』)、AVGパートの本筋は変わらないがSLGパートには多くの変化が生じるという場合もある(例えば『BB』シリーズ)。さらに、双方がフラグ連動している場合も多い。
3) ミクロレベルの多様性があるか。
3a) 読み物AVGでは、このレベルの多様性は基本的に存在しない。その一方、SLG作品では、唯一解のパズルゲームでもないかぎり、ほとんどのタイトルはこれを満たすだろう。
SHC作品をざっとレヴューすると、以下のようになる(※記憶違いだったらゴメン)。
タイトル | ED分岐 | マクロ分岐 | ミクロ多様性 |
葵屋まっしぐら | ○ | ○ | ○ |
うえはぁす | ○ | ○ | ○ |
海賊王冠 | △ | △ | ○ |
真昼に踊る犯罪者 | △ | △ | ○ |
アルフレッド学園魔物大隊 | △ | △ | ○ |
ブラウン通り三番目 | ○ | ○ | ○ |
LEVEL JUSTICE | △ | △ | ○ |
巣作りドラゴン | ○ | △ | ○ |
南国ドミニオン | ○ | ○ | ○ |
Dancing Crazies | △ | △(姫子生死など) | ○ |
グリンスヴァールの森の中 | ○ モード制 | ○ モード制 | ○ |
王賊 | △ | △(鍋は択一) | ○ |
Wizard's Climber | ○ モード制 | ○ モード制 | ○ |
DAISOUNAN | ○ | △ | ○ |
忍流 | ○ | ○ | ○ |
BUNNYBLACK | × | △ | ○ |
雪鬼屋温泉記 | ○ モード制 | △ モード制 | ○ |
BUNNYBLACK2 | × | △ | ○ |
門を守るお仕事 | ○ | ○ | ○ |
BUNNYBLACK3 | × | △ | ○ |
アウトベジタブルズ | ○ | ○ | ○ |
悪魔娘の看板料理 | ○ | ○ | ○ |
その古城に勇者砲あり! | △ | ○(ルート分岐) | ○ |
プラネットドラゴン | △ | △ | ○ |
呪いの魔剣に闇憑き乙女 | ○ | ○(ルート分岐) | ○ |
領地貴族 | ○ | ○ | ○ |
その大樹は魔界を喰らう! | ○ | ○(ルート分岐) | ○ |
悪魔聖女 | △ | ○ | △ |
1) エンディング分岐について。○は、複数種類のエンディング(またはラストエピソード)がある。△は、本筋EDは一種類だがサブエピソードにヴァリエーションがある。×は、完全な一本道。
2) マクロ分岐(通常の意味での分岐展開)について。○は、イベントAを発生させたらイベントBは見られなくなるといったような択一的展開がある。ターン制限によって事実上併存不可能になる場合も含む。△は、絶対的な択一ではないが、裁量的な取捨選択ができる(特にサブイベントの実行が任意である場合)。×は、分岐多様性が一切存在しない(※そのためエンディングも一種類になるのが通例だが、ミクロレベルのフラグによってED分岐することはあり得る)。
3) ミクロ分岐について。ゲームパートの細かな変動があるかどうか。SHC作品の場合は、ほぼ全ての作品が○になるが、『悪魔聖女』のみは多様性がきわめて小さいので△。
こうしてみると、チーム++のタイトルはどれも、ゲーム中盤でヒロインを絞り込むルート分岐型の構造になっている。SHC作品の中では特徴的だ。