2019/08/16

「おまけコーナー」雑感

  イベントCGやイベントシーンを閲覧できる回想モード(閲覧モード、ギャラリーモード、エクストラモード)についての雑感。


  一度クリアしなければ閲覧コーナーが開放されないというのは、不合理だと思う。ユーザーとしては、本編中ですでに見たことのあるCGやシーンやムービーを取り出してもう一度閲覧したいというだけであって、新たな何かを提供してほしいわけではないのだから、その機能を封じておく必要は無い筈だ。SLGならばいざ知らず、読み物としての性格の強いAVGであれば、読み返しとしての閲覧機能は重要だろう。
  ましてや、アダルトシーンの回想(リプレイ)という、いわゆる「実用」目的があることを考慮すれば尚更、初期状態で閲覧コーナーをオープンしておく方が理に適っている。

  とはいえ、歴史的には、意味のある――意味のあった――仕様なのだろう。大昔の(アダルト)ゲームでは、そもそもCG閲覧機能などは存在しなかった。イベントCGを個別に抽出して閲覧できるモードは、文字通りあくまで「おまけ」コーナーであり、ゲームクリアしたプレイヤーに対して提供される「おまけ」に過ぎなかったのだ。CG回想が標準化したのは、90年代後半あたりだろうか。BGM回想も、90年代末頃からだったかと思う。
  さらにシーン回想機能に至っては、90年代の大半のタイトルには実装されていなかった。アダルトシーン回想が一般化したのは、00年代に入ってからのことだと思う。これに関しては様々な付随的事情があり、90年代当時は「ベッドシーンのテキストは非常に短く、わざわざ読み返すほどではなかった」、「まだまだ『ゲーム』意識が強く、イベントシーンを個別に『読み返す』という発想が生まれにくかった」、「複雑なSLG作品(例えば調教SLG)では、シーン回想を適切に構成するのが困難な場合があった」といった状況のせいでもあっただろう。
  それ以外にも、本編外の「エクストラストーリー」が開放される場合もあった。余興的なギャグシナリオだったり、本編とは異なるIFシーンだったり、ソフトハウスキャラのようなおまけシナリオだったり。そういうコンテンツが、まさに「おまけコーナー」だったのだ。

  私自身としては、閲覧モードが開放されていることには、以下のようなメリットがある。
  1) CG枚数の埋まり具合から、現在までのだいたいの進行度が分かる。読書でいえば、残りページ数などを把握できるのに近い。ただし、エンディングまでの作品規模が明確化されないのは、デジタルゲーム特有のアドヴァンテージだと考えることもできるが。
  2) どのようなCGが回想モードに登録されるかが分かる。つまり、本編中にスクリーンショットを撮っておく必要があるかどうかがあらかじめ判断できる。例えば、一枚絵の拡大画像やカットイン画像が閲覧モードに登録されるのであれば、わざわざSSを撮らなくてもよい。
  3) ベッドシーンの枠数から、何回くらいベッドシーンを読まなければいけないかの覚悟ができる。いつ終わるとも知れないアダルトシーンの連発はわりとうんざりするので。「ヒロイン一人あたり○回なんだな」と分かっていれば、我慢もできる。

  おまけモードの中にスタッフコーナーが含まれるタイトルも、少数ながら存在する。alicesoft、キャラメルBOX、Escu:de、Leafなどのタイトルは、主要スタッフの自由なコーナー(テキストやイラスト)が展開されている。たしかabogadopowersにもあったと思う。個人的には大好きなのだが、同人的というか、サークル的というか、まあ、いささかオールドファッションな気質の発露であり、現代の取り澄ましたお上品な商業作品では実行しにくいのかもしれない。近年のブランドだと、Laplacianもやっていた。

  その他。CYC系列には、おまけゲームがあったりする(※カードパズルや「上海」風ゲームなど)。10年代に入ると、フローチャートシステムと組み合わせた全シーン回想を実装するタイトルもいくつか現れてきた。歴史に的は、90年代の『YU-NO』あたりまで遡れるシステムだが、00年代には「あっぷりけ」ブランドが積極的に試みていた。
  OPムービーやEDムービーの回想機能は、いまだに多くのタイトルが実装していないが、10年代に入って多少増えてきた。立ち絵鑑賞機能も、ちらほら。