2021/06/12

Figure-Rise Standard: レーナ


KOTOBUKIYA「創彩少女庭園:小鳥遊暦」の頭部を嵌めてみた。首との接続径は合わない(緩い)ので、適宜調整してやる必要があるが、プロポーションはおおむねきれいにフィットする。


 「86:レーナ」のボディは、非常に高いポテンシャルを湛えている。細部にきちんと色を乗せてやれば、軍服キャラの素体として抜群のクオリティを誇る。肘関節も、一軸回転のみながら、見栄えと可動を巧みに両立させている。脚部の肉付きも、既存のガールプラモと比べても傑出した造形美がある。
 
 問題は頭部(顔)。頭部がやけに縦長だし、フェイスパーツも非常に野暮ったい。ということは、他社キットから頭部を持ってきて差し替えれば、欠点を克服できるということだ。「安価な軍服素体」だと割り切って考えれば、非常に優秀なキットだと言える。いわば「肉体(ボディ)……来たか……」の気分。

VOLKS「FIORE:コスモス」の頭部を乗せると、北国の軍人らしい雰囲気になり、これはこれでたいへん魅力的。このボディはいくつあっても困らないな……。
BANDAIキットどうしでも、規格が合うとは限らない。同じFRSシリーズの「ダイバーアヤメ」は頭部を2つ作れるが、そのままでは「レーナ」に接続できない(※レーナの首のボールジョイントを多少削る必要がある)。

他社キットのフェイスパーツを組み込むこともできる。たいていのガールプラモはフェイスパーツの余剰があるので、こうした場合に流用できる。FAGシリーズのフェイスパーツも、内部を多少削れば嵌め込むことができる(※左記写真は「グライフェン」)。

やはり軍服ガールの素体として優秀すぎる……今ならかなり安価に入手できるし、構造がシンプルなので制作も容易だし、それでいてディテールはまずまずきれいに揃っている。脚部造形も美しい。写真左はKOTOBUKIYA「ランサー」の頭部。
「レーナ」4体セット。仲の良い同期どうしで集まったような感じ。ファッションはちょっとずつ変えてある(※ただし、眼鏡は全員に掛けさせた)。


 メガミデバイス「ウィッチ」「ランチャー」「ランサー」や、FAG「白虎」「フレズヴェルク:ルフス(アギト)」、創彩少女庭園シリーズ、BANDAI「ダイバーアヤメ」などは、一つのキットに頭部が複数入っている。つまり、余剰のヘッドが丸々一つ発生する。こうした余剰パーツを活用するうえでも、レーナのボディはたいへん魅力的だ。やはり人形は「顔が大事」なので、せっかくクオリティの高い顔面パーツが余っているならば、活用してやりたい。そうした時に、流用の利くボディがあるとありがたい。

 「素材ちゃん」や「ムーバブル・ボディ」のような汎用素体も市販されており、1/12ドール用の布服と組み合わせれば自由なコーディネートができる。ただし、素体2000円+布服3000円で、少なくとも5000円は掛かる。靴などの小物を揃えようとするとさらに費用が嵩む。そうしたことを考えれば、実売2500円程度の「レーナ」は、非常にリーズナブルだと言える。さらに「比較的安価」だけでなく、「軍服ボディは貴重」+「デザインもまずまず良い」+「プラモデルなので再塗装や改修が容易」といったメリットもあり、たいへん使い勝手が良い。

 「レーナ」は、同梱シールだけで色再現しようとすると、かなり安っぽくなってしまう箇所がある。しかし、本格的な全塗装も難しい。腕章などの細い線を塗装で再現するのは至難だし、中途半端にモールドの凹凸があるせいでマスキングもしづらい。シールと筆塗りを併用するか、あるいは金モールなどは汎用マテリアルから持ってくるのが良いだろう。ちなみに、キットのまま組むだけならば1時間で完成する。一部に筆塗りを施す程度でも、3時間もあればひとまずきれいな姿を作り上げられる。そういう手軽さも、このキットの魅力だ。
 「レーナ」の軍服は、水性塗料のファレホ「Dark Prussian Blue」が近似色のようだ。上記写真でも、内襟のブルーはこの塗料を使っている。あるいは、ラッカー塗料ならばCreos「フタロシアニンブルー」にブラックを適量足すと良いだろう。ちなみに、Dark Advent「ラーニア」でもこの色を使った。ゴールドは、シタデル「Retributor Armour」を使った。基本的には、ゴールドを筆塗りし、ホワイト部分をシールで表現するだけで、見栄えはかなり良くなる。


 【 個人的なメモ 】
 「レーナ」は、近場の店頭で余りまくっている。そして、可哀想なことに、値下げ販売の憂き目に遭っている。今のうちに、あと2~3個確保しておいていいくらいかも。上記写真のように、フェイスパーツさえ差し替えれば、ぐっと魅力が増すことだし。多数揃えても、「同僚どうし」という設定にしてしまえばいい(※制服キャラのメリットだ)。例えば、VOLKSのFIOREシリーズは印刷済みフェイスパーツを分売しているので、そこから調達してもよいだろう。
 ただし、欠点も無いわけではない。シールを多用しているので、自力塗装しなければ見栄えが劣るし、前腕のシルエットが直線的なのもちょっと気になる。また、各部の可動が致命的に小さい(特に股関節や足首は、まるで動かない)。さらに、制服のデザインが特徴的なので、ファッションを改造するのは非常に難しい。しかし、そうしたデメリットがあっても、全体としては非常に便利なキットであり、なおかつ魅力的キットであることは間違いない。
 とりわけ、2021年前半時点で見ると、「着衣ファッション」+「かなり安価(実売2000円台)」という点で、ガールプラモ市場の中でもオンリーワンの存在になっている。大半のガールプラモはバトルコスチュームなどの非現実的なデザインだし、学校制服の「創彩少女庭園」シリーズはやや割高なうえ入手困難で、素体として気軽に買い揃えるのには向かない。「人造人間18号」もあるが、やや特徴の強い私服なので、複数人を並べるのには適さない。
 同じくBANDAIの「ガールガンレディ」シリーズも、安価なコンバットスーツ風ボディとして使える余地がある。ただし、これらは、「襟が広くて頭髪に干渉しがち」「肘の保持力がきわめて弱い」「カラーリングが下品なものが多い」といったデメリットがある。スタンド無しでしっかり自立できるほど、脚部の安定性と可動性は優れているのだが、それだけでは褒められない。