2024年9月の雑記。
09/18(Wed)
新しい眼鏡の使用感に、ようやく慣れてきた(視界の見え方にも、眼鏡の装着感にも)。ただし、ヘッドフォンを付けたまま眼鏡を着脱しようとするとサイドが引っかかりやすいのは、想定外の問題だった。原因は、ツル(テンプル)がちょっと外側に湾曲していて、ヘッドフォンに干渉しやすくなっているため。まあ、この程度であればすぐに慣れる筈。
あまり良くない姿勢でゲームを長時間プレイしていたせいで、左肩が痛い。SLG(キーボードプレイ)では特定の動作を延々繰り返すことがあって、それは特定の筋肉を特定の仕方で反復動作させることになるので、局所的に大きな負担が掛かる。
気分転換のために、久しぶりにスケールモデルを手掛けている。
模型制作の原理論、方法論として、何を目指して作るのかが問題になる(あるいは、それを意識化して取り組みたい)。スケールモデル分野では、「実物の再現」を目指すのが第一目的になるが、それも一概に答えが決まるわけではなく、様々なアプローチが考えられる。おおまかに言えば、
1: 実物(モデル元)に在るものを、あるがままに再現する。
2: 実物に在るものが、見て取れるように再現する。
3: 実物を見たときと同じような姿に再現する。
4: 実物がそうなっていたであろう理想的な姿を再現する。
少なくともこのくらいの違いはある。
例えば、1/700縮尺の小さな艦船模型でも、実艦には細い空中線が張り巡らされている。これについて、
1)の立場であれば、できるかぎり正確な縮尺で、つまり極限まで細い金属線を使って、実艦どおりに張り巡らせることを目指す。実際には、かなり無理のあるアプローチになるが、誠実(忠実)ではあり、模型制作の一つの理想ではある。
2)の立場であれば、空中線は、当該艦船の機能-構造において、確かに存在するものなので、それがはっきり見て取れるように再現する。つまり、計算上の縮尺を外れてでも、空中線が模型として視認できるように表現する。例えば、太い金属線を使ったり、あえて濃い色で表現して目立ちやすくしたりする。これはこれで、実艦構造の理念的な再現として、意味のあるアプローチだと言える。
3)の立場であれば、1/700という極小スケールに変換したならば、空中線など見える筈が無いと考える(※現用艦の写真などでも、ほとんど見えないことが多い)。それゆえ、このアプローチでは、空中線は適宜省略することが認められる。むしろ、太い空中線が悪目立ちすることは、実艦らしさや見た目のスケール感を損なうものとして否定的に見られるかもしれない。
4)の立場は、個別的な判断や価値観に左右されるところが大きい。例えば、戦闘中の状態を再現しようとする場合などでは、付けないという判断もある。作品全体のディテールバランスを考慮する場合も、これに近いアプローチになる。ジオラマ分野にも親和的な発想だろう。
同様に、錨鎖や手摺を「どのように再現するか」、「どこまで再現するか」、そもそも「再現するか否か」の判断は、モデラーごとに異なっている筈だ。砲身についても、「艦船の迫力を表現するために、大きめに造形する」というアレンジが、キットそのものに施されていることが多いが、それに対して、正確な縮尺どおりの再現を目指すものもある(※その場合、砲身はほっそりして、やや目立ちにくくなり、模型としての迫力も乏しくなる)。
甲板面の金色のリノリウム押さえの表現も、しばしば議論されてきた。「実艦どおりに、極細の金色ラインをなんとかして表現する(エッチングパーツなり、専用のリノリウムシールなり)」、「実艦の構造を再現するために、リノリウム面の上から別パーツで乗せていく(エッチングパーツを使うなり、黄色の伸ばしランナーを接着したり)」、「実艦を遠景で眺めるときは、そんな細部まで見えた筈が無いので省略する(キットはうっすらとモールドが入っているだけで済ませる)」、等々。
WWII期のIJN艦船のカラーリングについても、「所属港の違いを反映させるために、艦ごとに異なったグレーで塗り分ける」というモデラーは多い(※そのための「佐世保グレー」「呉グレー」「横須賀グレー」といった専用塗料も販売されている)。それに対して、「規程上は同一の混合比の塗料を使っている筈なので、常に同じ色で塗るべきだ」という考え方もある。さらには、「実艦写真では明らかに異なった色合いに見えるので、そのありようを忠実に再現するように、別々のグレーで塗り分ける」という思想もある。このように、どのような作り方、どのような見せ方を選択するかが、モデラー各自の価値観や方法論だ。
他分野、例えばエアクラフトにも、特有の価値観が見出される。航空機のエンジンや、排気孔の内部は、完成状態では見えなくなってしまうが、それでもエンジンパーツを作り込んだり、わざわざ高価なレジン製アフターパーツを買って取り付けたり、排気孔ディテールの資料写真を探し回って実物どおりに再現したりする。これはまさに、「模型を作るのは、構造を理解するプロセスでもある」という観念の下にあると言えるだろう。完成状態の(表面上の)見栄えだけでなく、見えなくなるところまで忠実に作り込むという誠実さは、航空機モデラーの美質であり、また、実機(写真)を見る機会が多いエアクラフトならではの強みでもあるだろう。
ただし、こういった方法論(制作ポリシー)の問題は、模型誌の制作記事でもめったに論じられない。AFV分野では、様々な制作技法が開発されているため、「この作品ではこのような見せ方を目指した」という方法論に言及されることがあるが、艦船模型や航空機、カーモデルなどではめったに見かけない。基本的には、ただ闇雲にディテールアップするためのテクニックが紹介するばかりで、忌憚なく言えば、そこには美学や方法論があまり感じられない。一応、ディテールアップのバランスを取りましょうというアドバイスはあるが、中途半端だと思う。つまり、「模型制作の哲学」は、まだまだ開拓の余地がある仕事だと考えている。きちんとした言葉で体系化した価値観を確立し、それを具体的な制作テクニックと結びつけることは、モデラーにとって大きな意義を持つだろう。
私自身は、上の4分類で言えば、(2)に近い立場だ。実物がどのような構造で成り立っているかが、見て理解できるようなミニチュアを目指したい。例えば、立体的構造を見て取りやすくするために、AFVにカラーモジュレーション塗装をすることにも、かなり好意的だ(※もちろん実物には、そのような色調の変化は存在しない筈だが、それでも良いと思っている)。艦船模型の手摺がオーバースケールでも、「ここには手摺があって、乗員たちはここの梯子で移動していたのが」ということが見て取れるのであれば、取り付ける価値があると考えている。言い換えれば、各部の意味(機能)を適切に表現するような立体物を目指している。
ただし、スケール感の合わないぶっとい手摺パーツが立っているのを、「美しくないし、リアルでもない」と感じる人もいるだろう。そういう意見の違いは解決できるものではないが、「この模型作品は、こういうコンセプトの下で作ったのだ」という理念のレベルで相手の作品を理解するようにすれば、モデラー同士で架橋できるところはある筈だ。そういう架橋のための土台作業になるのが、「模型の理念論」「模型の方法論」「模型の価値論」「模型の哲学」の語りだ。そうありたい。
ロボットプラモやガールプラモでも、同じような論点が現れる。
例えば、シンプル路線で、そのロボットの最も基本的な(プレーンな)姿として、ロールアウト時のきれいな状態で、ロボットそのものの魅力を最大限享受するという人もいる。あるいは、ロボットの構造を理想的に再現しようとディテールアップパーツを盛り込む手法もあるし、使用感を表現するために汚し塗装に凝るものもある。内部構造を再現したり、ハッチオープンの演出をしたりもする。さらには、可動機構もそのロボットの大きな構造上の特質なので、隠し腕をちゃんと可動させたり、モノアイ可動を仕込んだりもする。劇中のダメージ描写を忠実に再現するアプローチもある(その最たるものが「ラストシューティング」のポーズ)。
ガールプラモでも、例えば頭髪塗装がしばしば問題になる(というか、モデラーごとに表現技法が異なる)。リアリスティックに毛筋を掘り込んでいくものもあるし、毛髪の軽みを表現するためにグラデーション塗装にするものもある。15cm級という小さなサイズなので、下品なツヤ出しではまずいと考えて、ツヤ消し(マット)にコーティングして無難にまとめるのもあるし、逆に、頭髪のつややかさを強調したい場合に半ツヤを吹くこともある。極端な場合は、植毛ドールヘアを利用するものもある。個人的には、「筆塗りを重ねて、細やかな毛筋表現をする(※手間を掛けてもいい場合)」か、あるいは、「パールコートで程々のツヤを出す(※キットの頭髪形状が十分に精緻な場合)」、「ツヤ消しコーティング(黒髪などで、上手い見せ方が出来ない場合)」など、いくつかのやり方を適宜使い分けている。
素肌部分については、「入念な多重塗装でしっかりお化粧をさせる」という本格派モデラーもいるし、「無塗装のままで十分(※塗装するとジョイントが割れやすくなるし、擦れて塗装が剥がれたらみっともないという考慮も含め)」というスタンスのモデラーもいる。トップコートについては、「現実の人肌はツケ消しなので、プラモでもツヤ消しにする」というのは一種のリアリズム思考だし、「肌ツヤの色気が欲しいので半ツヤにお化粧させる」というのも、明確な目的(価値選択)のあるモデラーの判断だ。「血色表現(肉付きの実感)を追求したいので多重塗装やグラデーション吹きを重視する」というのもある。もちろん、キャラクターごとの個性の表現として使い分けることもできる。私の場合は「グライフェン」「ラプター」のような全身タイツルックが好みなので、人肌塗装に関する定見はあんまり無いが、BANDAIキットの素肌成形色はマネキンのようにべったりしていて苦手なので、レジンキットのような多重(血色)塗装をしたくなることがある。
海外(英語圏)Vtuberは、模型制作をしながら流し聴きしていたが、最近はあまり聴かなくなっていた。3Dアクションゲーム配信で何時間もガンガン斬ったりバンバン撃ったりし続けるのは視聴していて辛いので、まあ、たまに聴くくらいで。