2024/10/25

ガールプラモ「カミオ(Camio)」について

 「新重研物所(Re: BODYTEC)」によるガールプラモ「Camio (Ver .JK:立夏)」の紹介。
 中国(江蘇省)の模型メーカー「橘猫工業」のサブブランドのようだ。

座り込み姿勢で。


サイズは約15.5cmと、現代ガールプラモとしては標準的な大きさ。ただし、細身の上半身にマッシヴな脚部と、かなり特異なプロポーション。頭部も、このサイズのキットとしては異例の大きさ。
キットの内容物(これ以外にもいくつかある)。スカートは3種類、腹部-腰部はしゃがみ姿勢用の差分パーツもある。頭髪、ヴェスト、スカートは色違いのランナーも入っており、選択式で自由に使える。ただし、内部ジョイントは1つ分だけなので、頭部や胴体を丸々2つ作ることはできない。
フェイスパーツは、印刷済み4種と、のっぺら5種、そしてアイデカールが8パターン含まれる。興味深いのは、両目デカールをきれいに貼るためのガイドパーツが用意されていること(左記写真を参照)。ちなみに、BANDAIキットにも、アイデカール貼付の手引きが書かれているものがある。
同社が2020年(?)に発売した「C.A.T.-00」(にドール服を着せたもの)と並べて。太腿がほとんど3倍も違う……。
腰部を座り込みパーツに変更した状態。KOTOBUKIYAの「創彩」シリーズと同様のアプローチで、スカートと可動性を両立させている。ちなみに創彩「寿武希子」は堂々とあぐらをかくことができるし、メガミデバイス「ナイト」もほぼそれに近いポーズを取れる。
他のキットと比べてみる。左からAnnulus「宝多六花」、カミオ、創彩「佐伯リツカ:夏服」、FAG「グライフェン(Violet ver.)」。とびぬけて太い……。頭身の低さ(頭部の大きさ)も含めて、いかにも現代日本風のキャラデザと言える。

 【 経緯と概要 】
 2024年10月に日本国内の模型店にも出回っていたので、購入してみた。価格は税込3300円と安価だが、海外版ではなく、大網(amiami)による輸入版のようだ。パッケージにはNON SCALEと書かれているが、説明書では1/12 SCALEと記載されている。どちらなんだ……。上述のとおり15.5cmのサイズなので、平均的な現代アジア系学生として見れば1/10スケール相当。
 海外のガールプラモとしては珍しく、キャラデザと原型制作がクレジット明示されている。キャラデザは、日本の成人系漫画家「もじゃりん」氏、原型制作は、日本のドールデザイナー「りゅんりゅん亭」。
 制作時間は2時間半。赤色パーツや頭髪パールコートなど、ごく一部は吹き付け塗装した。靴パーツはグロス処理してあって、そのまま組むだけでツヤツヤになる。頭髪パーツも、シボ加工のような繊細な表面処理が施されている。
 なお、本作は、「そろモン72外伝:二十四節気列伝」というシリーズ(世界設定)に含まれるとのこと。このキャラクターについては、アクションフィギュア版(チャイナ服、1/12スケール)も発売されているようだ。

 【 ごく簡単な評価 】
 パーツ精度は非常に高い。アンダーゲートではないこともあり、パーツの合わせ目はきれいにぴったりフィットする。各部の嵌め込みも、固すぎず緩すぎずで、押し込めばピタリと嵌まる。橘猫工業は、金型精度の技術力に関しては、全模型メーカーの中でもかなりの上位だと思う。
 金型精度は、各部の造形にも反映されている。例えば、セーターの裾(リブ)のディテールは歪みなく正確にモールドされているし、頭髪パーツも髪筋の流れをきれいに表現している。エルフのような尖り耳の先端部分もシャープに成形されている。各部のジョイントは、わずかな抵抗を感じさせつつスムーズに動く。同社のガールプラモ「CAT-00」の関節部は緩めだったし、「フェーディ」は嵌め込みが固かったが、このキットは程良い渋みでまとまっている。
 ただし、パーツ構成に関しては、全体の設計はやや古く感じる。可動域に関しても、例えば肘は90度しか曲がらないし、ロングヘアも首や肩の可動範囲を著しく制約する。膝は二重関節で180度まで折り曲げられるが、昔のBANDAIガールの肘のような垢抜けない構造を使っている。
 それ以外も、惜しいところがいくつかある。例えば、半袖の上腕部分は、なぜか六角柱のように角張っている。頭部の基部(首筋)も段差が目立つし、ツインテールも、髪留めが無いので付け根の見え方に気を遣うことになる。素肌パーツの成形色は、BANDAI同様に、マネキンめいたべったりした色合い。金型技術は一流なのに、パーツ設計やキャラデザがオールドファッションなのは、いかにもこのメーカーらしい。微笑ましくもあるが、「せっかくの技術力がもったいない」とも感じる。

 ※余談ながら。中国の模型メーカーでも、例えば「将魂姫」のMecha Pigは、最初のうちはロボットプラモのような古めかしい構成だったのが、その後は急速に進歩洗練されたキットになっていった。同様に、Eastern Model(御模道)も、最初期はメガミデバイス流の肩回転やオムツ腰部を素朴に取り入れていたが、試行錯誤に取り組んで、独自性のあるパーツ構造を実現するようになってきた。
 ガールプラモは若いジャンルであり、それゆえ技術革新や新アイデアも非常に速いペースで為されてきた。他社研究、業界研究はどのメーカーも力を入れていると思うが、それだけに、キャラデザの洗練度合いやパーツ精度の高さによって、キットの魅力に大きな違いが出てくる。

 キットの構成については、上の写真で示したとおり。フェイス基部パーツをもう一つ入れておいてくれれば、丸々2個の頭部を作れたのだが……(※もちろん、パーツ複製などの対処は可能だし、分解して頭髪パーツを入れ替えることもできる)。
 キャラデザは、かなり特徴がはっきりしている。全身がかなり肉感的なのは、キャラクターデザイナーが18禁漫画家であることも影響しているかもしれない。フェイスパーツはきつめのリス顔造形で(※下膨れの頬)、好みは分かれるだろう。

 座り姿勢のために、胴体の差分パーツを入れるのは、他社にも実例がある。例えばKOTOBUKIYAの「創彩」シリーズ、BANDAIの「チュアチュリー・パンランチ」、Guilty Grincessの下着キャラ。先日紹介した海外キット「STAPEL」にも、しゃがみ姿勢用のスカートが別途同梱されていた。こうした別パーツを入れる意義or目的は、
 1) スカートルックでも下半身の可動を妨げないようにする、
 2) 固定ポーズの曲げ膝を用意することで、膝関節の隙間が露出しないようにする、
の二つの場合がある。前者の例が多いが、後者の例としてGuilty Princessがある。類似の実例として、初期のFAGには、「武装を外した状態を表現するおまけパーツ(関節固定、片脚のみ)」があった。また、FAG「フレズヴェルク=アーテル サマーバケーション」には、腕を振り上げた状態を表現するための固定ポーズ用の肩パーツがある。つまり、肩のジョイントが無く、なめらかなツライチ(面一)の素肌になる。

 値段相応にシンプルなキットで、とりたてて大きくギミックがあるわけでもないのだが、完成したプラモを手に取っていろいろなポーズを取らせてみると妙に楽しいという不思議なキット。