2025年10月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。
●新規作品。
秦愛武(はた・あいむ)『ニーハオ! 猫猫(マオマオ)留学生』第1巻(小学館スピリッツ、1-6話)。作者自身が中国からの留学生とのことだが、自伝的要素がどのくらいあるかは不明。舞台はおそらく京都精華大学(作中では京都東華大学)で、猫一匹を連れて単身日本に留学してきた主人公が、日中の文物の違いに驚いたり、キャンパスで友人たちと交流したりする。絵はやや簡素だが、他国生活で感じたことのリアリティを上手く掬い取って描いており、予想以上に読ませる出来だった。
●カジュアル買いなど。
行徒(ゆきと)『魔王様、世界が美味しすぎて滅ぼすのをやめる。』(小学館ヒーローズ)。新刊(第2巻)を見かけて、「ガールプラモのキャラデザもしておられた方だなあ」と第1巻から買ってみた。シチュエーションは、埼玉の大衆レストラン(チェーン店など)で魔王様を喜ばせるというベタなコメディで、キャラクターの掘り下げをするようなタイプではないが、行徒氏の端正かつ精緻な絵と、河田氏の細かなシュールネタの取り合わせで、なかなか読ませる。
粥川すず『大正學生愛妻家』第3巻(講談社モーニング、17-24話)。第一高等学校(後の東大教養部)に通う男子学生(18歳)と、その妻になった元・女中の年上主人公(24歳)の物語。目元の表現や頭髪の描き込みにウェットな色気があり、実際に色っぽいシーンもあるが、基本的には大正時代の温かなミニマル日常もの。作者は、同じく大正時代に取材した『エリートは學び足りない』に続いて、これが2つめの連載のようだ。
ささきゆうちゃん『バトルミー』第1巻(小学館コロコロ、4月刊)。異能を授かったキャラクターたちがバトルするのだが、主人公の少女がホームレスになったり、増税に燃える総理大臣キャラと戦ったりと、コロコロらしからぬ――いや、らしく?――荒唐無稽でパワフルな描写が連続する。コロコロらしく、コマ組みもぎりぎりまで整理されているぶん、演出のインパクトも強く、外連味に満ちた怪作として結実している。
●続刊等。
水辺チカ『悪食令嬢~』第11巻(51-55話)。領内の砦を治める首長たち――当然のように全員が美形男性だ――が来訪し、主人公を巡る社会状況が大きく拡大する。それに対する主人公の決意のスピーチも、誠実で説得力がある。作画については、デフォルメ絵を多めに使って雰囲気を和らげつつ、魔物食のちょいグロ要素も忘れないというバランス感覚。
眼亀『ミズダコちゃん~』第4巻(22-28話)。かなり調子を取り戻してきた感じ。ストーリーを進めるよりは、キャラクターの内面造形や、亜人キャラたちの個性と社会性、そしてかれらとの関わり合いに集中しており、そこにユニークな掘り下げがある(例えば5m級の巨人同級生や、夢を食べる獏キャラの欲望など)。さらに、単なるフレンドリーな亜人同居ものに終わらず、人類とは思考原理の異なる知的生命体の不気味さも常に示唆し続けている(※クトゥルフ的な暗示も忍び込ませているくらい)。視覚演出もダイナミックで意欲的な見せ方をしている。