そしてSLG/ACT/STGなど、非AVG系ブランド群についての雑感。
精密な話ではないと断ったうえで書くが。Digital Cuteの作風は、既存の美少女ゲームブランド群の中では、Escu:deと引き比べて考えるよりもむしろ、あぼぱに近い位置づけで捉えた方が良いのかもしれないと思った。三者とも、デジタルゲーム演出に対して鋭く意識的であり、基礎的な技術力も高く、非AVG作品に継続的に挑戦しているという点で見れば随分似通っているのだが。
Digital Cuteの美質は、Escu:deのようなインターフェイスの機能的洗練(はなたか氏と水鼠氏)というよりは、あぼぱのようなグラフィカルな面でのはっきりした個性(『終末の過ごし方』と『Pigeon Blood』の両極端のCG)によって特徴づけられている。非AVG作品のゲームデザインに関しても、Escu:deがしばしば開陳してきたような、フラグの巨大建築に伴われたその都度のシステムデザインの独創的な案出というよりは、あぼぱのような、既成のゲームジャンルからの練達した――ただしどことなく無節操ではあるが――アレンジャーのアプローチに近い。「萌え」の感性や性的嗜好に関しても、Escu:deはこれまでは一貫した趣味を表明するようなことはほとんど無いにもかかわらず、いくつかの流行のきっかけとなったり(例:『プリマヴェール』と黒箱系魔法少女もの)あるいはちょっとしたブームを作り上げたり(例:『ふぃぎゅ@メイト』の主題歌)してきたが、それに対してabogado powersとDCは、最初から明確な――そしてニッチな――趣味嗜好への傾倒をまったく隠していない(――あぼぱでは、例えばボブカット[吉澤氏]、クトゥルフネタ[大槻氏]、眼鏡[小池氏?]など、個々のスタッフの好みの発露。そしてDCは、こうぐち氏の、どうやらドロレスキャラへのBDSM志向)。このような、「ニッチだが程良くまとまった趣味の良さ」は、他のブランドではなかなか見られないものだ。Escu:deにおいては趣味の表れは散発的であり、おそらくは天然(無自覚)であるが、apとDCは自身の外連味を武器として意識的にアピールしている(いた)ように思う。
SHCには、このような意味での「趣味」はあまり無い。「(狭義の)ゲーム」観においてもEscu:deとは大きく異なるし、相変わらずSLG+AVGの第三の道を進み続けている。CYC(白/黒)の最高のものは、Escu:deに肉薄する複雑さを持っていながら、ストーリー的/シチュエーション的コンセプトの面白さも同時に実現していた。ninetailの泥臭さは、Escu:de寄りのように思えるが、案外そうでもないかもしれない。『少女魔法学』のLittlewitchは、あぼぱ/DCの側。Leafは、結局、よく分からない。ゲームシステムのレベルでの「独創性志向 - アレンジ志向」、それからコンセプトワークの側面での「薄い(あるいはポップな)趣向 - 確立された(ただしニッチな)趣味」の二軸で見ると、このような感じになる。
言葉で考えたものを、図にすると、以下のようになるだろうか。ただし、例えばアレンジャーだから独創性が無いというわけではない。ごくおおまかに、あくまでブランドの方向性を示すものと捉えていただきたい。
※これらの他、アトリエかぐや、SkyFish、ろすくり、TechArts系列なども非AVGタイトルを複数リリースしているが、ここでは割愛した。非AVG作品の制作が例外的であったり、あるいはブランドとしての方向性を定めにくかったりしたため。