2015/10/14

SD雑感

  SDイラストについて。


  いわゆるSD(二等身アレンジ)は、昔からあまり好みではない。デザインの一種(例えば可愛らしさの強調)として、また演出技法の一つ(全身表現やアニメーションなど)として、商品展開ヴァリエーションの一形態(比較的安価で新たな質感/量感表現を導入できる)として、一定の意義があることは認めるし、可愛らしくデフォルメされたキャラクターSDはまだしも受け入れられるが、それ以外のデフォルメものは面白味を感じられない。ロボットであれ、車両(例:「チョロQ」)や航空機(「たまご」)や艦船(「ちび丸」)であれ、私にとっては、それらのアイデンティティや魅力や見どころは、個々のパーツのありよう(だけ)ではなく、全体のプロポーションもまた決定的に重要なものとして受け止めているからだ。

  ゲームキャラクターのSDを例外的に受け入れられる理由も、この観点から説明できるだろう。というのは、ゲーム作品(とりわけアダルトゲームに典型的なAVG形式)では、キャラクターたちは通常は全身を描かれることが無く、もっぱらバストアップ立ち絵で表示されており、そしてその状態が当該キャラクターの基本イメージになっているからだ。立ち絵のみではキャラクターの全身のプロポーションに対するイメージはまだ確立されていないため、SDによる拡張的な全身像導入の余地が大いに残されているということだろう。 また、SLG作品では、ユニットとして表示されるキャラクター画像はしばしば初めから寸詰まりにデフォルメされた等身であることが多く、SDそれ自体が基本形態として認識される。それに対して、3Dゲームや格ゲーでは全身表示が本則となっているため、それらのキャラクターのSD変容は、ストレートには受け入れにくい。実際、たとえば『スーパーパズルファイターIIX』のキャラクター表現は、あまり好きではなかった。

  気に入ったSDってあったかなあ……。例えばビグ=ザムは、元デザインは腰高で非常に不安定なうえ、ディテールもその設定サイズに比して中途半端だったが、SDプラキットではそれらの欠点が解消されたし、SD特有の丸みが奏功して全体のシルエットもきれいに整理された。斜め上方に申し訳のように生えていた黒い突起(?)も、SDではかなり大ぶりに造形されて、羽根のような襟のような面白いアクセントになっている。私が作ったことのある唯一のSDキット。



  キャラクターものでは、やはりここのか氏のデフォルメイラストが良い。ありがちなSDでは、二等身サイズに収まるように強引にデザインを単純化していたり、シチュエーションのはっきりしない汎用的な記号的イラストに終始していたり、SDカットインだからと通俗的な誇張表現に寄りかかっていたりする――そしてそれが嫌だ――のだが、氏のデザインにはそういうところがほとんど無い。かなり縮小されているにもかかわらず、元デザインのディテールはかなり忠実に維持されているし、それでいてデフォルメとしてうまく再整理されていて、過剰な細かさ(うるささ)に陥ることもない。描線も、SDにありがちなべったりした黒輪郭線を使わず、繊細なペンタッチで描き込まれている。また、ぼんやりした汎用的表情ではなく、それぞれにキャラクターの個性に根差した大胆な表情づけがなされており、そのことがSDキャラたちを生き生きと血の通ったものにしている。これらの形式的な特徴を指摘するだけでも、氏のSDデザインワークがいかに類型を脱した独創的なものであるかは明らかだろう。
  ということで、今月発売の『PH2』にも期待したい。

  一昔前では、娘太丸氏のちびキャラ(pajamas soft作品)が素晴らしかった。今でもいろいろなところで活躍されているけど。元「千世」ブランドの田口氏も、たっぷりと墨を含んだ雄渾な筆書きで堂々たるデフォルメキャラを描かれている。こういう筆致の変化は、SDの大きな武器であり得るのだが、ここまで大胆に踏み込んでみせるSDには、なかなかお目にかかれない。『Maple Colors』(TOMA氏)、『です☆めた』(日吉丸氏)、『Re;Lord』(水鼠氏)、『ぶるにゃんマン』(こうぐちもと氏)も良かった。ドットキャラアニメーションでは、SHCのTOM氏の一連の仕事が、アダルトゲーム分野での最も洗練された見本だろう。



  SD表現の概略は、演出技術論Ⅳ-4-1-δを参照。
  また、別項「美少女ゲームにおけるSD使用の特徴的な傾向?」でも言及したことがある。