アニメーション作品『ストライクウィッチーズ(Strike Witches)』に登場する、いわゆる「ネウロイ化赤城」(ネウロイ赤城、ウォーロック融合赤城)の1/700模型化。
(1) 制作メモのページ(別ページ)
(2) ディテール解説(このページ)
(3) 映像との比較(別ページ)
(4) 完成写真(別ページ)
第12話でネウロイ化した状態の「(扶桑皇国の)赤城」の1/700立体化を試みたもの。史実の赤城(≒キットの赤城)との相違点や、制作時の改修箇所について、私の理解を図示しておく。
以下の画像は、クリックすると拡大表示される。
【 制作時の資料 】
制作資料としては、アニメ版『ストライクウィッチーズ』(第1期)DVDの本編映像を参照した。
また、初回版各巻の特典資料は、冊子集『第五〇一統合戦闘航空団全記録』BOXセットのかたちで参照した。第1分冊(p.18)には、通常時赤城の全体図(左右上の三面のカラー設定画)が載っているが、小さすぎてほとんど参考にならない。同68ページには、赤城内部の設定画(モノクロ)もある。肝心のネウロイ化赤城については、アニメ本編映像を取り込んだものしか収録されていないため、ヘックスパターンなどのデザイン上の詳細は分からなかった。なお、劇場版に登場する天城も、赤城に準ずる造形で描かれているが、そちらは特に細かくは参照していない。
ウォーロックについては、同第5分冊(p.24)に迷彩柄での設定画があり、また同第6分冊ではアニメ本編に登場したカラーリングでの設定画(p.18)と、モノクロの詳細な設定画(p.68f.)が掲載されている。ただし、実際の制作に際しては、あまり忠実な作りには出来なかった。
赤城が映っているのは、
- 第1話(6:14~22、13:52~19:54、21:03~[※DVD版での計測。以下同様])、
- 第2話(全般[アバン、26:22~37:51、42:10~42:25])、
- 第8話(27:25~27:40、42:26~44:01)、第11話(8:17~9:36、13:36~)、
- 第12話(アバン[24:12~25:14]、26:44~44:02)。
そのうち、ウォーロックと融合してネウロイに変容した状態は、第12話の38分29秒以降。
ウォーロックは第10~12話に登場する。
- 第10話(43:35~38、44:00~45:28、46:14~)、
- 第11話(00:00~02:42、7:43~45、11:20~)、
- 12話(24:28~30、28:02~42:00)。
ネウロイ化したのは第11話の18分00秒以降、赤城に墜落していったのは第12話の37分49秒。
赤城本体については、模型制作系のムック本などを参照している。専門性の高い資料/史料は使っていない。「艦船模型制作の教科書~航空母艦編~」(ホビージャパン、2013)は、FUJIMIキットについて、基本制作の丁寧な紹介がある(12-27頁)。ただし、初心者向けの見本であって、特殊な追加加工は行っていない。また、「艦船模型制作の教科書~大日本帝国海軍航空母艦 赤城編~」(ホビージャパン、2014)には、HASEGAWA新キットに関する詳細な追加工作の実例紹介や、FUJIMIエッチングのHASEGAWAキットへの適用などが載っている。技術面で参考になる点が多かったが、実際にはこの記事に沿った工作はほとんど行わなかった。また、艦載機に関する部分は、今回は無関係。「帝国海軍航空母艦総ざらい」(モデルアート、2014)では、FUJIMIキットへのディテールアップ工作の実例が提供されている(64-71頁)。細部の確認などに際して、参考になるところが多々あった。また、「艦船模型の製作術総ざらい EXPERT1」(モデルアート、2015)には、HASEGAWAキットに純正エッチングを使用した作例記事がある(118-137頁)。ただし、補強材エッチングのベタな組み立て写真やマスキング塗装の解説が多く、今回の制作にはそれほど参考にならなかった。
【 使用したキット/パーツ 】
FUJIMIの1/700フルハルキットをベースにしつつ、同社製の専用エッチングと、HASEGAWA版のエッチングセット(飛行甲板のプラパーツを含む)を使用し、さらに各種のエッチングやハイディテールパーツを適宜組み込んでいる。制作工程やカラーレシピ等は、別ページ「1/700『ネウロイ化赤城』制作プラン」に書いたので、詳しくはそちらを参照されたし。
FUJIMI版キットを使用した理由は、1)制作時点でHASEGAWA版のフルハルキットが入手できなかった(2016年4月当時、品切れ。6月中には再販されるようだが)。2)当初はFUJIMIのクリア版キット(スケルトンモデル)を使って赤光を電飾再現する構想だった。3)FUJIMI版キットを組んだ経験があるので、手許に見本があって作りやすかった。4)ミキシングの実験のため。
もちろん、HASEGAWA版オンリーでネウロイ赤城を制作することも可能だし、トラスエッチングを使わないならばFUJIMI版オンリーで制作することもできる。そうした方が、調整の手間もとらずに済んだであろう。今回私が両社のキットをミキシングしたのは、個人的、偶然的な事情にすぎない。
(画像1:)ネウロイ化赤城最大の特徴たる、飛行甲板および船底部分のヘキサゴンパターン。飛行甲板の亀甲模様の配置は、原作の描写にほぼ忠実になっているはず。形状は、一辺約6mmの正六角形でよい。工程は、フラットブラックを全体に塗装し、0.4mmマスキングテープでヘックス状網目を作ってから、全体にグレー塗装、さらにマスキングして(シルバー下地ののち)蛍光レッドを塗装した。
(画像2:)一方、船底部分は、映像では見えない部分も多いため、推測を交えつつ適当にハニカムパターンを塗装している。中央あたりで、赤い六角形が船底に回り込む形で2個ずつ並んでいることは間違いない。この赤い六角形は、映像では一個置きに全部で21列並んでいるが、間違えて22列で塗装してしまった。いずれにせよ、六角形のサイズは、飛行甲板とは異なる(ハル側の方がやや小さい)。
(画像3:)艦底パーツを別角度から。スクリュー基部は、原作でもグレー単色で塗られている(六角形模様に合わせていない)。左記写真では、スクリュー基部および舵の色が違ってしまっているが、本来は周囲と同じグレー(ネウロイ色)。原作では、舵板にも小さな六角形パターンが入っていたが、あまりに細かすぎるので、今回の制作では省略した。ただし、きちんと塗り分けていれば良い効果が出ただろう。
(画像4:)飛行甲板塗装の各工程写真。このような手法および手順で、ネウロイ模様の塗り分けを行なった。六角形模様を印刷した紙を、マス目の数が合うように倍率コピーで微調整して下敷きにし、これをガイドにして0.4mmマスキングテープを張り巡らし、しかるべきパターンになるように整えた。艦底側はさらに複雑な形状になった。飛行甲板とハルパーツ、あわせて10時間近く掛かったと思われる。
塗装前に甲板面をヤスリで平滑にする作業も、それなりに大変。エレベータの輪郭だけを残すならばさらに難しくなっただろう。
(画像5:)飛行甲板のプラパーツとトラスエッチングは、HASEGAWAの「赤城 ディテールアップパーツセット」を使用した。FUJIMI版の船体パーツと干渉してしまう箇所があるため、どちらかを削る必要がある。エッチング「D」の410L、411L、そして167L~170Lおよび174L~178Lの奥側の部分。エッチング「H」も、その下のトラス支柱と5箇所で干渉する可能性がある。左記画像中、水色で囲った箇所。
(画像6:)艦首側のエッチング「A」部分、134L~136Lあたりも微妙に引っかかるので、エッチング側を適当に切除して合わせた。左記画像中、水色で囲った箇所。その他、後部トラス「E」も微妙に干渉するが、適当に削ればフィットする。飛行甲板は全体に、HASEGAWA版の方がわずかに大きめなので、すり合わせには余裕はある。もちろん、HASEGAWAキットだけで組むならばすり合わせの問題は生じない。
(画像7:)艦首部分。史実の赤城では舷外通路等はリノリウム処理だが、作中では木甲板。木板の継ぎ目まで明確に描写されているので、塗装に凝るつもりならば木甲板らしく多色多重塗装をしてもよいところ。艦首甲板の先端はネウロイ色で、上甲板は「濃いグレー/淡いグレー/カーキ色」の3色で塗り分けている。ウォーロックについては後述。
(画像8:)史実の赤城(キットの赤城)との、造形上の相違点。作中の扶桑皇国版の赤城では、左舷資材置き場周辺の舷外通路が、壁で一部覆われている(――要するに右舷と同じような形状になっている)。プラ板工作で簡単に改修した。開口部は適当だが、正確を期すならば右舷側の開口位置に合わせるべきだったろう。
(画像9:)同じく左舷から。後部も、右舷と同じようなかたちで壁面が閉塞されており、外からは艦載艇格納庫が見えないようになっている。キットの開口部をプラ板で埋めて、エッチングの水密扉を一つ貼り付けておいた。さらに、その上の連装機銃スポンソン(FUJIMIキットのE33パーツ)の支柱群が下に引き延ばされているので、映像を参照して改修した。HASEGAWAキットはその形状になっている。
(画像10:)左舷。長い支柱は、伸ばしランナーを用いた。具体的には、FUJIMIキットのD46、D39、D38パーツを置き換えている。さらに、真横に補強材が出ているので、適当なエッチングパーツを流用して再現した(HASEGAWAキットはこの補強材まで再現している)。4本の補強材の高さを合わせられないのは私のスキルの限界。右舷側は、キットのままで映像の状態になるので、改修の必要は無い。
(画像11:)艦尾側。乗員が退艦に使ったため、甲板上には何も無く、少々寂しい状態になっている。こちらも木甲板のように見えるので、映像の色調に合わせてカーキ色に塗装した。また、映像では、左記写真のように赤い発光ラインが見えている。何を意味しているのかは不明だが、一応再現しておいた。これも制作途中の写真なので、最終的には手摺やトラスを取り付けるし、各所のリタッチも行う。
(画像12:)飛行甲板を接着する直前の状態。映像では、クレーンは左右両舷に装備されている。斜交いの支柱も、左記写真のように描写されている。また、ここからいくつかの追加的工作も行った。1)クレーンの鈎をエッチングで追加。2)支柱に見張り台のようなものが設置されていたので、適当な錨見台エッチングを流用して設置。3)艦尾先端の信号灯(キットパーツのまま)を設置。
(画像13:)後部マストのアンテナ線。各マストの頂点から、前方と後方に一本ずつ(マスト4本で計8本。左記写真は間違い)。マスト横桁(左記写真では上下に出ている短い桁)の端から、それぞれ前方または後方に一本ずつ(計8本)。前後のマスト間は、マストの十字交点および横桁端から出ている(左右それぞれ3本ずつ)。先端の方は、それぞれ三角形を作るように短い線が張られている(計8本)。
(画像14:)艦橋の横からもアンテナ線が出ている。1/700キットでは省略されているが、1/350スケールの制作では再現されることが多い。映像でも、この位置に張られているので、適当なエッチングパーツを流用しつつなんとか工作してみた。艦橋に近くて目立つディテールなので、表現しておく価値はあるだろう。取り付け角度がずれてしまったが。アンテナ線は、右舷前方にも一本張られている。
(画像15:)ウォーロックは、小さいながらフルスクラッチで自作。おおむねこのような形状でよい筈。全高は1.6cm。両肩や腕の赤色部分は、HASEGAWAの「ジュラルミンフィニッシュ」シートに蛍光レッドを吹き付けておいて、形を合わせて切り出して貼った。腕の内側の三本ラインは、本来はレッドではない(ブラックが正しい)が、横着してここも赤い細切りシールで済ませてしまった。
(画像16:)側面の様子。プラ板と、適当な航空機キットのミサイルパーツなどから流用して作っている。尾翼部分は0.1mmプラ板のままのペラペラだが、極小スケールなので、実際に見るとそれほど粗は目立たない……と思う。映像では、外装の継ぎ目なども描かれているが、私の技術ではそこまでは作り込めなかった。頭部と膝(?)の鋲は、伸ばしランナーを短く切ったもの。
(画像17:)背面。翼端灯も、映像上できちんと表現されていたので、一応塗り分けてある。ほとんど目立たないが。両肩の装甲板は、本来は(映像では)前後が「Λ」型につながっている。
「ウィッチたちの再現はどうした」とか言わない。1/700だと、身長150cm(宮藤芳佳)の人体はほんの2.14mm。165cm(坂本、ミーナ)でも、2.35mmにしかならないのだから。