2020/06/23

ガールプラモの可動構造(素材ちゃん、ムーバブルボディほか)

  近年のガールプラモ(美少女プラモデル)と、各社の女性型素体を紹介する。

  まずは、女性型の汎用素体「素材ちゃん」と「ムーバブルボディ(MB)」を比較する。
  そのうえで、各社の13~15cm級のガールプラモや女性型素体の可動を比較する。


●WAVE:「1/12 ムーバブルボディ(Movable Body)」(2019年3月発売)
  組み立てプラモデル。肌の色はすべてベージュ。税抜2100円。
  シンプルな素体版のほかに、リアル頭部を含むバージョンも3種類発売された(2400円)。それぞれ、頭部のヘアスタイルと、バストサイズ(大中小)が異なる。

●HOBBY BASE(イエローサブマリン):「1/12 素材ちゃん」(2018年9月発売)
  全身が組み立て済みで、各部にジョイントが組み込まれている。「Sサイズ」(2020年9月)と「Lサイズ」(2022年1月)も発売された。
  男性ボディの「素材くん」も発売されている。


項目ムーバブルボディ素材ちゃん
発売2019年3月~2018年9月~
税抜価格2100円
(A/B/Cタイプは2400円)
2100円
高さ約13cm(1/12スケール)約13cm(1/12スケール)
Sサイズは12cm強
Lサイズは14.5cm
12cm強さ素材PS(関節や手先はABS)PVC(関節はPC)
組み立てランナー状態
(制作時間は40分程度)
組み立て済み
ベージュ
(小麦色も発売予定)
ベージュ、白めの肌(ライトフレッシュ)、褐色、黒の4種類
頭部シンプルのみ(A/B/Cはリアルタイプも)シンプルのみ
スタンダード版は2種(平手とグー)。A/B/Cバージョンは4種(平手、グー、ピース、サムズアップ)4種(平手、自然、チョキ、持ち手)
太腿上下2分割されており、ロール可能。一パーツ成形。
手首と足首ボールジョイントを差し込む形で、可動範囲は狭い。球体ジョイントを差し込む形で、可動範囲は大きい。
プロポーションスリム。首がやや短い。肉付きが良い。首はやや長め。
オプションA/B/Cバージョンは、リアルタイプの頭部も。平らなスタンドベースもある(足の裏の穴に差し込む)。胸部と腰部は、下着モールドのパーツもある。
各部ジョイントの径首は5mm球。股関節は3mm。肩は3mm(胸側)と2.5mm(腕側)、手首は2mm球。肘は2.5mmと3mm。膝は上下とも3.5mm。足首は2.5mm棒と3mm球。 大半のジョイントは2.9mm。首元と手首は2mm。股関節は2.9mm棒に5mm球が付いている。股関節ジョイントから太腿へは4mm棒。球体ジョイントは、別売りもしている。


※以下の写真では、「ムーバブルボディ:女性型(Cバージョン)」と、「素材ちゃん(褐色)」を使っている。「ムーバブルボディ」は組み立てただけで、特別な工作は施していない状態。

サイズはほぼ同一(13cm)。他社の15cm級ガールプラモと比べると、「メガミデバイス」よりも小さく、「レイキャシール」や「HRP-4C未夢」と同じくらい。プロポーションは、MBは非常にスリムだが、素材ちゃんは腹部にも肉付きのディテールがしっかり入っている。
腕の可動は、MBは水平までしか上げられない(※肩関節を回転すれば真上にも可能)。素材ちゃんは、上方45度くらいまで上げられる。は、どちらも約90度。胸部と腹部がパーツ分割されているが、素材ちゃんはほとんど可動しない。MBは多少前後可動する。MBは、脚部を横に45度ほど上げられるが、素材ちゃんはほとんど上がらない。
胴体反らしに関しては、MBは多少動くが、素材ちゃんはほとんど動かせない。脚部(股関節)は、MBは60度ほど上げられるが、素材ちゃんは30度ほどしか上がらない。後ろ側へは、MBのは二重関節で、かなり柔軟に曲げられる。素材ちゃんの脚部は、後方へはあまり動かせない。
オプションパーツ。MBのA/B/Cバージョンは、リアル頭部と平らなスタンドも付属する。MBのハンドパーツは、武器持ち手が無いのがもったいない。素材ちゃんは、胸部と股間に下着パーツも同梱されている。首のパーツも、接続穴の径が異なる3種のパーツが用意されている。
MBの手首と足首の接続は、ボールジョイントを差し込むシンプルな構造。素材ちゃんの手首と足首は、差し込み型の球体ジョイントで、上下の回転軸を含めると3軸の回転ができる。首から頭部への接続方式も異なる。
1/12ドール用の靴(AZONE International)を履かせてみる。左のムーバブルボディは、足がかなり小さいので、余裕を持って履ける。靴下+靴でも大丈夫だろう。右の素材ちゃんは、ちょうど良いサイズ。薄手の布製タイツやニーソックスならば、重ねて履けそうだ。
「素材ちゃん」MサイズとSサイズ。ただ縮小しただけでなく、造形面でも多少違いがある。とりわけ下着パーツは、Mサイズは一般的なブラ下着、Sサイズはスポーティなシャツ型になっている(※左記画像では下着を塗装してある)。
背面から。一般的な1/12サイズ(15cm級)のフィギュア、ドール、ガールプラモと組み替えても、ひとまずフィットする大きさになっている。


  個人的な感想など。

  可動に関しては一長一短だが、総合的には「素材ちゃん」の方が優れている。とりわけ手首と足首にも球体ジョイントが仕込まれているので、可動範囲が大きいし、保持力も高い。全身の関節強度はどちらもそれなりに丈夫で、ひとまず必要を満たしているが、「素材ちゃん」の方が頑丈に出来ている。重い物体を持たせたい場合は、「素材ちゃん」の方が良い。
  ただし、脚部可動に関しては、「ムーバブルボディ」が圧倒的に勝っている。胸部の回転や前後傾斜も多少は出来る。ダイナミックなポージングをさせたい場合は、「ムーバブルボディ」も良い。

  加工性。あくまで改造用の素材であることを考えると、PS製の「ムーバブルボディ」の方が加工しやすいというアドヴァンテージがある(塗装、接着、切断を行いやすい)。「素材ちゃん」のPVCも塗料を乗せることは一応可能だが、動かすと塗膜が割れる可能性がある。ただし、「ムーバブルボディ」には武器持ちハンドが無いので、何かを手に持たせたい場合は他社製品などからハンドを持ってくる必要がある。
  他のガールプラモなどと組み合わせる場合は、どちらも頸部はそのままでは接続できない。首のパーツを差し替えるなり、お互いのパーツを接合するなり、あるいはボール部分を太らせてサイズを合わせるなり、なんらかの対処が必要になる。しかも、どちらも首が短いので、他のキットの頭部に接続するには、延長工作も必要になるだろう。
 改修や補修に関しては、「素材ちゃん」にアドヴァンテージがある。同社の「関節技」シリーズと規格統一されているので、改修の選択肢が広いし、破損したパーツも比較的安価に調達できる。

  布服を着せる場合は、スリムな「ムーバブルボディ」の方が使いやすいだろう。バストサイズも、3種類発売されている。「素材ちゃん(Mサイズ)」は、腰周りがガッシリしているので、Sサイズの1/12布服は着せにくい場合がある。
  ただし、1/12スケール(15cm級)のドール服は、やや大きめに作られている。それに対して「ムーバブルボディ」と「素材ちゃん」は約13cmで、かなり小柄な寸法になる。つまり、服がダブつく。とりわけ腕はかなり短めなので、袖が余りがちになる。半袖の方が無難だろう。
  また、首が襟元に埋まってしまいやすいという問題もある。布服を予定している場合は、素体の首をかなり長めに改造しておく方が、着衣状態がきれいになる。上の写真では、首をかなり長めに延長してある。
  バストは、ものによっては着せづらい。特に「ムーバブルボディ」のCバージョンや「素材ちゃん」は胸が大きいので、伸縮性のある布服や、胸周りに余裕のある服を選ぶ必要がある。下の写真では、素材ちゃん(褐色)のバストはばっさり削っている。そうでないと、バストが突き出てしまい、きれいに着せられない。さらに、ドール服は一定程度の肩幅を想定してデザインされている。ムーバブルボディも素材ちゃんも肩幅は狭めなので、1/12ドール服を着せると上半身がダブつく(=袖が長すぎるようになる)場合がある。
  どちらも靴のサイズはかなり小さめ。特に「ムーバブルボディ」は小さいので、ドール靴を履かせるのは容易。というか、靴を履かせておく方が安定する。


左は、「ムーバブルボディ」に「メガミデバイス:ランサー(Hell Blaze)」の頭部を乗せたもの。右は、「素材ちゃん(ライトフレッシュ)」のボディに、同じく「メガミデバイス:ウィッチ(Darkness)」の頭部。衣服は1/12ドール用の布服を着せてあるが、肩幅が狭いのでダブつく。
サイズ比較。左からフレームアームズ・ガール(イノセンティア)、ムーバブルボディ、素材ちゃん、FIORE(プリムラ・シネンシス)。ハイヒールや首の長さの違いを考慮しても、15cm級ガールプラモと13cm級素体では一回りサイズが異なる。とはいえ、流用は十分可能。
各社の1/12ドールや15cm級ガールプラモと並べて。「素材ちゃん」Mサイズは、figmaや1/12ドールと同等のサイズで、ガールプラモよりは小さめ。Sサイズはさらに小さい。
「素材ちゃん(Sサイズ)」と、大きめのガールプラモ(Guilty Princess: ミャオ)を並べるとこんな感じになる。12cmと16cmでは、頭一つ分の違いがある。



  肌の色
  「ムーバブルボディ」の肌色は、一般的なガールプラモの肌に近い。例えば「プリムラ:ビクトリア」「FAG:フレズヴェルク」「ルーデンス」あたりと交換してもおそらく違和感は無い。場合によっては、素肌手足を調達するのに使えるだろう。
  「素材ちゃん」(フレッシュ)も、同じくらいの色合いで、汎用性が高い。PVCパーツゆえか、全身がツヤ消しになっている。
  「素材ちゃん(ライトフレッシュ)」は、かなり薄めのベージュ。既存のガールプラモでは、BANDAIの「人造人間18号」「ダイバーナミ」あたりが比較的近い。あるいは、AZONE Internationalの1/12ドール素体の「白肌」にも似ている。真っ白な「ランサー(Hell Blaze)」と比べると、「素材ちゃん(LF)」の方がわずかに濃いくらい。
  「素材ちゃん(褐色)」はかなり濃い。褐色肌のガールプラモは「FAG:イノセンティア(青)」「メガミデバイス:ロードランナー」「FIORE:ローレル・フォリア」などがあるが、それらと比べても明らかに色が濃い。「兼志谷シタラ」(※未購入)は、店頭で見たかぎりでは比較的近いように見える。
  「素材ちゃん(ダークグレー)」は、店頭で見るかぎりではほぼ真っ黒。影人間のようにしか見えないので、使いどころが想像できない。

素材ちゃん(褐色肌)にKOTOBUKIYA「ランチャー(Hell Blaze)」の頭部を乗せたもの。ボディの方が褐色がかなり濃いが、布服を着せるくらいであれば、顔と四肢の色合いの違いはほとんど気にならない。
左は素材ちゃん(Sサイズ)。素足状態で約13cm。中央はFAG(フレズヴェルク)、ハイヒール込みで15.5cm。右は素材ちゃん(Mサイズ)。こちらも素足で約14cm。素材ちゃんボディの方が、やや色が濃い。


  他の選択肢。これらの他にも、14~15cm級のガールプラモに使える女性型ボディを調達する手段はある。
  例えば1/12用のドール素体や市販のデッサン人形は、様々なものが販売されている。プロポーションのヴァリエーション(身長やボリューム)も豊富だし、可動範囲も比較的大きく、価格も2000円台から4000円以上まで幅広い。
  既存のガールプラモから流用することもできる。「人造人間18号」(BANDAI)やWAVE(橘猫工業)の「C.A.T.-00」は定価2000円台で購入できる。また、KOTOBUKIYAの「レイキャシール」「マテリア」、HASEGAWAの「フェイ・イェン」、VOLKSの「プリムラ」などは3000円台で購入できる。いずれもPS/ABS製の組み立てプラモデルなので、多少のスキルと工具があれば容易に接続加工できるだろう(※後日追記:2021年に開始したBANDAIの「30 Minutes Sisters」シリーズは、税込定価2500~3300円程度とかなり安価に入手できる)。
  15cm級可動完成品フィギュア(アクションフィギュア)から流用するという手段もある。とりわけ中古品は2000円台で入手できる場合がある。完成品を解体するのは気が引けるが、選択肢の一つではある。figmaの「archetype next:she」(約3000円)は、スキンヘッドの純然たる素体。同じくfigmaの「水着女性ボディ(エミリ)」(約3000円)は水着姿だが、シンプルな着せ替え用素体としても使えるだろう(※上記写真を参照)。頭部も作り込まれていて一応キャラクター性があるが、自由な組み替えを想定されている。S.H.Figuartsにも、「ボディちゃん」(約4500円)という汎用素体シリーズがある。こちらはスキンヘッドのみのデッサン用素体。



 【 各社の可動完成品フィギュアや人間型プラモデルの比較 】

KOTOBUKIYAの「メガミデバイス:ランチャー」に同じ動きをさせてみた。
特に下半身の可動。

  「ランチャー」はハイヒール込みで約15cm。ボディそのものは、14cm級のサイズ。腕部はかなり柔軟に上げられる。肘も150度ほど曲げられる。肩の基部が回転するため、腕を前に交差することもできる。胴体の前後可動は、そこそこ動かせるが、あまり曲げると内部構造が露出する。美観よりも可動を重視した設計と思われる。
  脚部を真横に上げるのは、腰部のオムツパーツが干渉するため、あまり上がらない。前方には、ほぼ水平まで大きく振り上げられる。膝は二重関節で、後方にも大きく曲がる。太腿の後ろ側が削り込まれていることもあり、膝を完全に折り曲げることもできる。足首は二重関節で、自由な角度に曲げられる。

  この「メガミデバイス」シリーズのキットは、基本的に同じような構造で作られており、他の「ロードランナー」「忍者」なども同等の可動範囲がある。写真では明示していないが、首も多重関節で、かなり自由に曲げられる。さらに「ウィッチ」などの素体脚部は、爪先を曲げられる可動機構も仕込まれている。全身のプロポーションは、総じて細身のすっきりしたシルエットに作られている。


写真左は、Good Smile Companyの可動完成品フィギュア「figma:水着女性ボディ:TYPE2」。中央はKOTOBUKIYAの組み立てプラモデル「フレームアームズ・ガール:フレズヴェルク(Bikini Armor)」。右はBANDAIの組み立てプラモデル「人造人間18号」。
それぞれ可動範囲はこんな感じ。

  figma「水着女性ボディ」(約13cm)は、脚部が左右に多少開けるが、全体としては「素材ちゃん」と同等水準。ほとんどが球体ジョイントで、各部の関節構造は「素材ちゃん」と似ている。肩関節の背中側が平たく出っ張っていて、背面から見て関節構造が露出しないように配慮されている。首元は胸部と一体パーツで、そのぶん可動範囲は狭い(※特に、顔を俯かせることができない)。各部の関節は、素材ちゃんと同様、かなり硬い。figmaシリーズには、スカートを履いているキャラクターもあるが、軟質素材を使って脚部可動を確保していることが多いようだ。

  「FAG:フレズヴェルク」はヒール込みで約16cmと大柄で、そのぶん可動構造にも余裕がある。特に股関節は引き出し式で、左右で135度、前後はほぼ180度開脚できる。腕は真上まで振り上げることができる。上腕と太腿には回転軸があり、ポージングの余裕もある。各部の関節はかなりきつめ。
  「フレームアームズ・ガール」シリーズは多数の製品があり、可動構造もその都度さまざまな機構が試みられている。また、近年のKOTOBUKIYAの「ガオガイガー(ガール)」や「ルーデンス(ガール)」なども、FAG相当のサイズおよび構造で作られている(約15cm=6インチ級)。

  「人造人間18号」(約15cm)は、着衣ボディのため可動に多少制約があるが、スカートは軟質素材で柔軟に曲げられるし、股関節も回転軸を仕込んであって多少引き出せる。膝も二重関節。ただし、手首足首はほとんど曲げられない。各部の関節は硬すぎず弱すぎず、ちょうど良い。


左はVOLKSのプラモデル「FIORE:プリムラ(シネンシス)」。中央はAOSHIMAのプラモデル「VFG:カイロス」。右BANDAIの可動完成品フィギュア「S.H.Figuarts:魂ガールAOI」。
それぞれ、脚部の可動範囲はこのくらい。

  「プリムラ」は、ハイヒール込みで約16cm弱。肘は二重関節で、ほぼ180度曲がる。股関節も、スカートを履かせてあるおかげでパンツの干渉部を大きく開けてあり、脚部を前に大きく振り上げられる。太腿の裏側が抉り込まれているため、膝も大きく曲げられる。ただし、各部の関節が弱く、特に胴体部分はかなりグラつく。
  後発の「ローレル」では、関節の硬さや可動構造が多少改善されている。

  「カイロス」は、ヒール込みで15cm強。各部の関節はやや軟らかめでスムーズに動かせるが、保持力はしっかりしている。腕部の可動は十分。腕の上端が大きく膨らんでおり、肩の丸み全体をそこで表現している。そのおかげで、両肩を大きく動かしても肩周りのシルエットが崩れないようになっている。
  股関節は多少引き出すことができ、前方にほぼ水平まで振り上げることができる。さらに、胴体が3段構造になっており、上体をきれいに反らすことができる。これは、ロボット部分に騎乗するポーズを取らせるうえで、非常に効果的に作用する。ただし、手首と足首はボールジョイントを差し込む方式で、可動も強度も控えめ。

  「AOI」(約13.5cm)は、可動完成品フィギュアの中では抜群の柔軟性と堅牢性を誇る。各部の関節も、ほどよく軟らかい。腰部はオムツを被せるタイプで、左右は約135度、前後もほぼ180度開ける。膝は二重関節で、こちらもほぼ180度曲げられる。胴体の仰け反りも、大きく曲がる。

  BANDAIには、同サイズの可動完成品フィギュアシリーズとして「アーマー・ガールズ・プロジェクト(AGP)」もある。そちらは「愛宕」を持っているだけだが、やや小顔傾向があり、可動はS.H. Figuartsよりも多少控えめのようだ。しかし、ひととおりのポーズを取れるくらいには柔軟性があり、関節の硬さもちょうど良い。スカートは軟質素材で、多少曲げられる。

  可動完成品フィギュアとしては、「武装神姫」シリーズも存在した(2006年~)。ただし、筆者はそれらを買っていないので、コメントすることができない。


BANDAIのプラモデル「HGBD:モビルドール・サラ」と、AZONE Internationalのドール素体。
脚部の可動。「モビルドール・サラ」は、大きなメカ型スカートを履いているが、この写真では可動チェックのためにスカートパーツをすべて外している。

  「モビルドール・サラ」は、ヒール込みで約15cm。BANDAI製品らしく、各部の関節は絶妙の硬さで、スムーズに動かせる。肘は二重関節でよく曲がり、上腕と太腿には回転軸があって向きを変えられる。腹部の内部構造も、可動を確保する切れ込みが大きく入っており、ほとんど90度まで上体を仰け反らせることができる。股関節の接続パーツは、左右で独立に動かせるため、下に引き出して脚部を大きく振り出すことができる。組み立てプラモデルの中では、抜群の可動範囲を持つキットの一つだと言える。同社の「ダイバーナミ」(Figure-rise Standard)も、各部関節の構造はよく似ている。

  BANDAIのHGBFシリーズ(2015年-)は、近時のガールプラモよりも一回り大きい。例えば「ミセス・ローエングリン子」は、約18cmという大型キットである。肩関節の引き出し機構や、肘の二重関節などが目を引く。

  AZONEのドール素体は、あくまで布服の着せ替えを前提としているので、素体そのものはかなり思いきった構造を取っている。素体は何種類か発売されているが、基本的には14cm~15cm程度のサイズ。
  両肩はボールジョイントではなく、二重に回転軸を設けており、きれいに動かせる。また、水着などで両肩を露出してもシルエットが崩れないように配慮が施されている。布服が前提のため、肩幅の広いモデル体型なのも、大きな特徴になっている。ただし、首筋は胸部と一体化しており、曲げられない。
  胴体は柔軟な多重関節で、のけぞりは45度、前にかがむのは90度まで曲げられる。股間部分は、布服で覆うのが前提であるため、可動性配慮で大きく切れ込みを入れてあり、足を前方に90度以上振り上げられる。膝は一重関節であまり曲がらないが、素肌での美観が優先されているのだろう。手首と足首にも球体ジョイントが仕込まれており、よく曲がる。ただし、あくまで鑑賞用のドール素体であるため、各部の関節はそれほど頑丈ではない。


左からBANDAIの「ノーベルガンダム」、Good Smile Companyの「エリアル」、WAVE(橘猫工業)の「C.A.T.-00」。
可動範囲その2。

  「ノーベルガンダム」は、純然たるロボットではあるが、他のガールプラモとの比較のために紹介する。発売は2011年。サイズはヒール込みで約12cmと、かなり小さい。しかし、人間らしいシルエットから解放されているため、各部の可動範囲は非常に大きい。特に股関節は二重回転軸で、左右180度を超えて広げられるという驚異的な可動を誇る。ブルーの袴パーツは上へ跳ね上げられるので、脚部の前後可動を妨げず、柔軟に曲げられる。足首も、ボールジョイントと回転軸で、自由なポーズを取れる。ただし、胴体の可動はほぼ皆無。

  「エリアル」は、2019年発売。ヒール込みで約17cmと大きめのサイズ。小説由来のキャラクターであり、元々が立体化を想定していないと思われ、また、精密なSFロボットとしてデザインされているため、可動構造もかなり個性が強い。膝は二重関節で180度曲げられるし、手首も回転軸が設けられていて表情づけがしやすい。その一方で、足首はほとんど動かないし、肩関節も装甲につっかえて動かしにくい。ともあれ、メカ要素の強いボディとしては面白い。

  「C.A.T.-00」(2020年発売)は、ハイヒール込みで約16cm。すらりとした脚部を初めとして、全身のプロポーションはたいへん美しい。可動構造は上記「メガミデバイス」によく似ており、肩の基部に回転軸を設けることによって、腕を前に交差することもできる。上腕と太腿の回転軸、股関節の引き出し構造、足首の二重可動など、さまざまな技巧が活用されている。パーツ精度や関節強度も適切。中国の橘猫工業の製品だが、日本での販売価格は2000円台とかなり安価なので、プレーンな素体としても使いやすいだろう。ただし、胴体部分の可動は乏しい。


メカ純度の高いガールプラモ。左はHASEGAWAの「フェイ・イェン」、右はVOLKSの「フェイ・イェン」。
左右。

  HASEGAWA版の「フェイ・イェン」は、2007年初出の比較的古いキット。今世紀のガールプラモとしては最も早い実例に属する。サイズは15cm弱。ノウハウの開拓がいまだ乏しい時期でもあり、またHASEGAWAは基本的にスケールモデル系のメーカーであるため、可動構造はあまり洗練されていない。具体的には、嵌め込みが緩かったり、ポリキャップ頼みの関節だったり、動かして遊ぶプラモデルとしての強度確保が考慮されていなかったりする。
  とはいえ、2020年現在の目で見ても、興味深い点はいくつも存在する。例えば、両肩は前後スイング機構が設けられている(※かなり珍しい)し、膝関節も180度曲げられる。上腕の回転軸は、肘関節の回転という形になっているし、太腿の回転軸はかなり上の方に設けられている。一部の関節には、頑丈なPOM素材を導入している。
  HASEGAWAは、2010年には同シリーズの「ガラヤカ」もキット化している。構造上の特徴は上記「フェイ・イェン」と共通だが、身長11cm相当の小柄ボディという大きな個性がある。

  VOLKS版の「フェイ・イェン」は2014年発売。こちらも、ガールプラモとしては比較的古い時期の製品だと言える。各部の関節はひととおり動くが、ポリキャップ頼みの関節が多いし、股関節などは可動範囲が非常に狭い。しかし、色分けは頑張っているし、VOLKSらしいシルエットの美しさは際立っている。ちなみに、腹部と腰部の接続は、前後左右にやたら柔軟に動く。


10年代前半までに現れた、やや古いキットたち。左から、KOTOBUKIYAの「KOS-MOS ver.4」、WAVEの「HRP-4C 未夢」、KOTOBUKIYAの「レイキャシール(イエローブーズ)」。
側面から。

  「KOS-MOS ver.4」は、2012年発売と、やや古い。ヒール込みで16cm弱だが、近年のガールプラモと比べるとかなりの小顔に作られている。股関節の可動は、左右独立の3軸型なのだが、チャイナドレス風のスカートに妨げられてあまり動かせない(※上の写真では、スカートを避けて斜めに足を上げている)。それ以外も、各部の関節強度は、うまくコントロールされているとは言いがたい。元のキャラデザからしてやむを得ないところもあるが。ともあれ、造形面ではたいへん凝っているし、可動構造もひとまずは現代的な作りになっているので、技術のあるモデラーがきちんと作り込めば十分魅力的な作品になると思われる。

  「HRP-4C 未夢」(2013年発売)は、実在のロボットをプラモデル化したもの。高さ約13cmは、おそらく実物に対する厳密な1/12スケールと思われる。手首は、一部のfigmaを思わせる特徴的な構造。洗練されない構造のように見えるが、上腕の回転軸を初めとして、腕部の可動範囲や関節強度はかなり良好。股関節は、脚側の棒をまっすぐ差し込むかたちで、脚部をぐるりと一回転させることもできる。
  異様に細やかな髪筋モールドが掘られていたり、フェイスと手先パーツが塗装済みだったりと、面白い個性もある。また、本当の意味でモデル元が実在するガールプラモとして、今のところおそらく唯一のキットでもある。

  「レイキャシール」シリーズは、元々は2003年のレジン製ガレージキットに発する立体物だが、市販プラモデルとしては2011年に発売された。約14cm。こちらも、上記KOS-MOSと同じく、かなりの小顔。関節は、KOTOBUKIYAらしくかなりきつめ。構造は比較的プリミティヴで、腹部は無可動だったり、股関節はボールジョイントに差し込むだけだったりする。肩への差し込みもボールジョイントなのだが、パーツが干渉してほとんどスイングできない。現在の目で見ると、史料的価値以上のものを見出すのは難しいかもしれないが、改造やミキシングの素材として使えるポテンシャルはある。


2020年の最新作から。左はGood Smile Companyの「chitocerium: carbonia adamas」。右MOMOLINGの「神道物語:豊臣秀羽」。
側面から。
carbonia adamasの足首(写真は背中側から)。非常に変わった接続の仕方になっている。

  「chitocerium」シリーズは、構造としては上記「メガミデバイス」に近い。2019年からの最新シリーズであり、全身を折り畳んで箱詰めできるギミックを売りにしている。そのため、胴体部分の前後スイングは、非常に大きく動かせる(※具体的には、上半身を水平にまで屈めることができる)。また、両肩は基部の回転軸によって前に大きく曲げられるし、股関節の逆T字構造も左右独立に傾けられる(引き出せる)ので柔軟に動かせる。足首の接続方法はかなり特殊で、脛の後ろ側へ接続棒を出して、そこに足首パーツをつないでいる。
  サイズは、「carbonia adamas」はヒール込みで約15cm。シリーズ第1作「platinum」は超ハイヒールで、頭頂高が16cm強に及ぶ。

  「豊臣秀羽」は、中国のメーカーとのことだが、日本国内でも模型店などで市販されている。スカートは完全な作り付けで、基本的に着脱不可能。サイズは、ヒール込みで約15.5cm。可動構造はおおむねオーソドックス。両肩は多少引き出すことができ、上腕には回転軸がある。手首は、軟質素材のボールを差し込む形。胸部と腹部の接続はかなり柔軟に動かせる。先述のようにスカートを外せないので脚部の可動はあまり活かせないが、非常にスムーズに動かせる。各部の関節は、BANDAI製品のようにしっとりと馴染む。
  ちなみに、大きく広がったロングヘア部分は、軟質素材で成形されている。


男性モティーフの人間型プラモデル、BANDAIの「ハン・ソロ」(左)と「仮面ライダーカブト」(右)。
各部の可動。

  「ハン・ソロ」「仮面ライダーカブト」の可動構造は似ている。特徴的な点として、肩関節を前側に引き出すことができ、そのため腕組みに近いポーズを取れる。肘は二重関節で、柔軟に曲げられる。股関節は、基部が左右独立に傾けられ、さらに縦横の二重回転が仕込まれているので、様々なポージングを楽しめる。足首にも三重回転が仕込まれており、しっかり接地させることができる。胴体部分も、前後左右に多少揺らせる。ただし、手首だけは、ポリキャップに棒を差し込むだけで、ほとんど動かない。
  「ハン・ソロ」は16cm弱。「カブト」もほぼ同じサイズ。縮尺は、1/11~1/12程度だろうか?


ガールプラモの発売年表は、別ページでまとめてある。