2025年8月の雑記。
08/12(Tue)
中国メーカーの模型について。破格の安さ+大ボリュームが特徴的だけど、何故だろうか。適当に想像してみる。(※あくまで適当です)
1) 人件費。一つには、「人件費が桁違いに低い」という要素が世上で語られている。しかし模型キットは、労働集約型産業ではない。金型製造には少数のプロフェッショナルが必要だし、キット(ランナー)の射出成形もオートメーションの極致だ。もちろん工場稼動にも人員が必要だが、それほど大きな費用負担にはならないだろう。後は、「検品」「箱詰め」「輸送」などの作業で人手を要するが、それほど大きな割合を占めるものではないだろう。
ただし、エラー品や欠品の多さを考えると、検品やクオリティコントロールの手間を削減して、コストを下げているという可能性はある。プラモデル以外の工業製品でも、中国製(つまり、日本から中国国内への委託製造)には同様の問題がしばしば生じている。
また、エラー率の問題を別にしても、日本国内のキットとは品質面での格差はある。例えば関節部の安定感、組み立てやすさ、エッジの鋭さ、両目プリントの色数、等々。そうした点は、日本企業の製品にも独自の付加価値があると認めるべきだろう。
……とはいえ、中国キットの側でも、偏光メッキや金属製フレーム、色変えランナー、布製パーツ、LEDパーツ、さらには箱の豪華印刷など、内容を充実させるための技巧や作業がふんだんに投入されていて、一商品として驚嘆すべきクオリティがある。ほんとに、あれだけの内容物をいったいどうやって調達しているのだか……。
2) 材料費。プラモデルのコストを上げている要因として、近年大きなのは材料費だ。資料や時期によって変動するが、中国は全世界のプラスチック生産の2割~3割程度を占めているようだ。中国は産油国でもあり、石油もかなりの程度まで国内調達できている筈だ。材料を輸入せずに自国調達できる(≒安価に入手できる)のは、プラモデル産業にとっても非常に大きなアドヴァンテージになる。
3) 環境配慮。ここからは想像の度合いが強まるが、環境配慮のためのコストを負担していないのではないかという疑念もある。中国は、例えばCO2削減がいまだ立ち遅れており(※近年かなり改善されつつあるという話もあるが)、そういった工業生産に対する制約が乏しいことが、製品のローコスト化をもたらしている可能性がある。皮肉な話だが。
例えば艦船模型用の金属製エッチングパーツも、国によって溶剤規制の問題があり、それが値上がりを引き起こしたり、製造困難になったりという噂を見たことがある(※明確なソースは辿れなかったが、十分あり得る話ではある)。
4) 市場規模と販売戦略。日本メーカーのキャラクター系プラモデルは、基本的には日本の人口に対してしか売れない(プラス、欧米などの一部の市場にもリーチしているが)。それに対して中国メーカーは、14億人の市場をじかに利用できる。もちろん、一般消費者の経済力の問題などはあるが、薄利多売戦略を採用しやすいのは確かだろう。
というわけで、近年のトイやガールプラモで、驚くほどの低価格とボリュームを両立させた製品が出てきているのは、一応理解できなくはない。ただし、各論レベルで依然としてさまざまな疑問はある。
A) 日本メーカーが中国で製造させたのに高価格なのは?
市場規模、検品コスト、取引費用、輸送費などで、ある程度は説明できる。童友社価格は納得できないけど。
B) ただし、艦船やAFVでは、高額キットも多数存在する。
これについては、品質や歴史的経緯が関わっていると推測される。例えばDragnon社(上海)やMeng Model社(広東省深圳)の大ボリューム&高品質なAFVキットは、日本円にして1万円以上になっている。TAMIYAのシンプルにまとまったキット(3000円台くらい)と比べれば、さすがに価格が上がるのは当然だろう。
艦船模型分野でも、Trumpeter(広東省中山市)も高価格の大型キット路線に進んだし、その一方で3Dプリントパーツなども含めた超々精密キットも市場進出してきた(浙江省杭州市のFlyhawkなど)。これらもクオリティ確保のためのコストがかなり掛かっているものと思われる。なにしろ繊細なパーツは、射出成形の歩留まりも低くなるので。品質管理の必要から、大量生産にも限界があるだろう。
それに対して日本国内のキットは、数十年にわたって国内市場でかなり低い価格帯を維持してきたので、値段を上げにくい(※それでも、どんどん上がってきたけど)。また、HASEGAWAなどは減価償却の済んだであろう金型を使い続けているので、その点でも製造費を抑えられる。
スケールモデルの分野的特質もある。例えばガールプラモやロボットプラモであれば、土日のパチ組みだけで完成させることも多い。言い換えれば、どんどん新作キットを買って消化していける。それに対してスケールモデルは、大量の細密パーツを全塗装で組み上げていくため、一作につき1ヵ月~数ヶ月を掛けることも多い。デリケートなキットなので、保管のスペースも確保しなければいけない。そうすると、購入ペースはかなり鈍くならざるを得ない(※もちろん、サクサク制作していくモデラーもいるし、ひたすら買って積みまくるユーザーもいるが)。つまり、セールスが伸びにくく、市場規模も小さくなりがちで、それゆえ薄利多売戦略が取りにくい(※ロングテール型販売でなんとかやってきているが)。
ちょっと不思議なことに、韓国のスケモメーカー(Academy社)が、非常に安価なキットを製造できている。材料費も人件費も掛かるだろうし、市場的な有利も無さそうなのに、頑張っているなあ。
C) ガールプラモについて。
実のところ、割引販売まで考慮すると、価格差はかなり縮まっていると言えるかもしれない。例えばKOTOBUKIYAの大物キットでも、予約購入すれば2-3割引で買えることが多い(例えば8000円かそこら)。中国ガールキットを6000~7000円で通販購入するのと比べて、極端に差があるというわけではない。BANDAIのFigure-rise LABOの大型キットも、クオリティとボリュームを考えれば遜色ない水準だ。AOSHIMAのVFGシリーズも、定価は高いが、あれは割引前提の価格設定のように思える。
ただし、日本のキットが、プレーンなガール一体とわずかな武器だけで5000円も6000円もするのは、価格差を痛感させられる。まあ、仕方ないので応援のつもりで、できるだけ買うようにしているが。
ボリューム面で国内メーカーが劣るように感じるのは、実のところ、ボリュームそのものの問題ではなく、「気の利かなさ」に起因するところもあるかもしれない。例えばKOTOBUKIYAキットでも、「このランナーをもう1枚同梱していてくれれば2体目も作れそうなのに」といったような、なんとも惜しい製品構成に遭遇することがある。気の利かなさで損をしているのは、実にもったいない。そして、このようなユーザビリティ配慮の次元で後塵を拝することこそは、模型メーカーのポテンシャルと将来性にとっては、きわめて危険な兆候だと思う。
大雑把に想像するとこんな感じ。国によって物価(≒労働の価値)が大きく異なるのは、まあ、仕方ないというか、どうしようもないことだが、せめて搾取ではない形であってほしいとは思う。
私がプラモ/ドールのスカートを自作するとしたら、どうするかなあ。
適当なハンカチやユザワヤ布地あたりを、アイロンと洋服ノリで固めてプリーツの折り目を作っていくだろうか。なまじの既製品ドール服よりも、薄手で素材感の良いものを作れる筈……たぶん。
既製品のプリーツ布地もいろいろある筈なので、そこから良さそうなものを見繕ってこられれば重畳。あるいは、自作でヒダをきれいに揃えたい場合は、金属定規などを治具にして幅を合わせていくことになる。ただし、素材によっては透けてしまうので、裏地かインナーを付けた方がよい。
いずれにしても、1/10の小スケールだと、質感表現と扱いやすさの間のトレードオフが強烈なのがつらい。つまり、「生地を薄くて柔らかくて細やかにすると、加工しにくいし透けたり崩壊したりする。逆に、耐久性があって加工しやすい素材にすると、生地が分厚くて着膨れした感じになってしまう(1/12ドール服が典型)」。スカートだけなら、着膨れの問題は起きにくいので、わりとなんとでもなりそうだけど……。
あるいは、既存の適当なフィギュアからスカートを奪って(ひどい)こられれば簡単なのだけど、ちょうど良いフィギュアは思い浮かばない。また、難点もあ.る。固定スカートなので可動には適さないのと、PVCなので塗装しにくいという点(※一応、塗料が乗りはするけれど)。