2026年2月に読んだ漫画の雑感。主に単行本新刊について。
●新規作品。
二宮ひかる『うさぎも夢見るクリームソーダ』第1巻(少年画報社、1-7話)。人類の繁殖のために作られた兎型デミヒューマンの主人公が、友の喪失や、新たな隣人との出会いなどを通じて、その実存的な苦しみを強く意識していく。00年代前半にこの漫画家が手がけた『犬姫様』のモティーフを拡大して尊厳破壊的な社会構造と直面する個人のドラマとして鋳直したもののように見受けられる。この作者らしく、内圧の高さを窺わせる感情の不穏さ、精神の危機に陥った瞬間の怖ろしさ、そして爆発的な激怒の表情などが、主人公一人の心の推移としてまっすぐに描かれていく。
たかはしツツジ『声の降るへや』第1巻(小学館、1-9話)。イラストレーター主人公と、その部屋に転がり込んできた旧友(癒やしヴォイス配信者)、そしてその隣人や会社の同僚たちの関係を次第に構築していく。作画に関しては、基本的には上品に整った男女美形キャラたちだが、困惑や怒りなどの表情では適度に崩してとっつきやすくしている。テーマ性は今のところあまり感じず、基本的には温和な恋愛コメディとして展開していくようだ。
●カジュアル買いなど。
窓口基『東京入星管理局』第5巻(28-33話、完結)。溢れんばかりのアイデアと掘り下げのある窓口氏による、SFベースの組織ドラマ。存在は知っていたが、既刊を買えずにいた。今巻では、地球に入星していた(様々な認識阻害で見えなくされていたらしい)異星人たちの存在が暴かれて、超現実的な風景が一気に噴出し、ほとんどサイケデリックなまでの情景がふんだんに展開される。ただし、漫画進行としては、少々錯綜していて状況が把握しづらい。
●続刊等。
1) 現代ものやシリアス系。
みいみつき『楠木さんは高校デビューに失敗している』第7巻(43-48話)。絵柄こそキャッチーだが、ストーリー面では、過去のトラウマ体験から自らの社会性を取り戻そうとする苦しみや、相手に受け入れられない関係の苦みなどを率直に描いており、基本的にはシリアスな思春期ものと言える。登下校時の路上など、背景作画もしっかり描かれているので、その世界の中をキャラクターたちが動いて、生きているという臨場感がある。
こだまはつみ『この世は戦う価値がある』第5巻(42-53話)。友人一家の交通事故問題と関わっていく中で、主人公は改めて自分の両親から抑圧されてきた過去を自力で振り払い、そして自分が自分であることの価値を取り戻す。東京の港湾風景――どうやら江戸川あたりらしい――の、物寂しくも開放的で、厳しくも突き放した情緒のある情景が、本作の荒々しくも痛切な物語によく似合っている。
あきま『人喰いダンジョンと大家のメゾン』第3巻(15-22話)。巨大構造物のエネルギー循環システムに目を向けつつ、襲撃者「マンションマン」たちの謎にも接近していく。弐瓶勉フォロワーのような位置づけになりそうだが、本作はSFめいたメカニカルなくすぐりはあるものの、本格的な(システマティックな整合的説明を前提とした)SFという感じではない。グロテスクなクリーチャーとの戦いも、今一つ解決感のないまま進んでいく。
恵広史『ゴールデンマン』第8巻(57-66話)。謎のヒーローの物語は、一種の平行世界設定から主人公の悲惨な生育背景を辿り返して、そしてアイデンティティを取り戻すところまで到達した。超能力開発のための少年人体実験というのはベタではあるが、作劇の巧さと作画の迫力が相俟って、スピード感と重量感のあるドラマになっている。
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