美少女ゲーム分野の2Dチップアニメ概観メモ。
美少女ゲーム業界でチップアニメに最も力を入れているのはソフトハウスキャラだということを、『アウトベジタブルズ』デモムービーで再確認した。
そもそも大半のメーカーは3Dモデリングに移行しており、2Dチップアニメをキャラクター表現のために使用するものはかなり少ない。2008年のLeaf(『メギド』)とalicesoft(『闘神III』)はともに3D-RPGだったし、近年のxuse(『精霊天翔』、2010)やAstronauts(『デモニオン』、2012)もSLGパートはマップもキャラも3Dベースになっている。でぼの巣やninetailは、(3Dマップと組み合わせつつ)大ぶりなイラストの擬似アニメーションの路線を採った。これはこれで、キャラクター性を重視する美少女ゲームとしては正解の一つだと思うが、少々安っぽく見えてしまう危険もある。例外的にEushullyはドットキャラアニメーションを多用しているが、マップ上のユニットを表示するための単純かつ機械的な動きばかりで、あまり面白くない。Escu:deのSLG作品は、計算と演出が中心なので、チップキャラを動かす場面は非常に少ない(――水鼠氏のいるこのブランドでは、画面の動きは、画像[動画]ベースではなくほとんどプログラムベースでもたらされている)。pajamas softも、エフェクト基軸のバトル表現(『プリっち』)だったり3Dキャラクターだったり(『PA』)。『よつのは』のマップ移動キャラも3Dモデリング。かぐやの『DC』シリーズも3Dマップと2D(静止画)キャラの組み合わせ。戯画の『BALDR』シリーズも戦闘パートは3D。緑茶のACTは、『涼子ちゃん』では2Dチップキャラを使っていたが、『マジカライド』では完全に3D化されていた。MONOCHROMAも、『少女魔法学』のダイスロールは3Dで、『英雄*戦姫』では2D静止画+3Dエフェクト。ちなみに、3Dキャラの初期の例としてはabogadopowersの『とびでばいん』(2001)がある。『SinsAbell』(2002)も、野心的な3D-RPGだったと記憶する。
00年代前半までは、2Dドットワークによるチップアニメもごく一般的に使われていたのだが。例えばLeafは『誰彼』(2001)や『うたわれるもの』(2002)で、TOPCATも『WoRKs DoLL』(1999)で、xuseも『ページェント』(2001)や『アセリア』(2003)で、そしてe.go!は『神楽』シリーズ(2003-)、『Vagrants』(2003)、そして『ひとがたルイン』(2004)と本当にたくさん。F&Cの『Piaキャロ』シリーズも、毎週の行動をチップアニメで表現していた。
そうした中で、それでもなお小さな2Dアニメーションを使い続けることに、意味はある。それは、キャラクターたちが実際に何をしているのかをゲーム画面の中での個々のアクションとして見せることであり、しかも制作者がその動きのヴァリエーションやディテールやニュアンスまでも正確に作り込むことのできる手段であり(この点ではいまだに3Dよりもアドヴァンテージがある)、通常の立ち絵や一枚絵とは表現の層を異にしつつ独自のキャラクターの可愛らしさを表出する機会であり、そしてそれは、アクションのパターンがある程度規格化されつつもその幅が大きい、本格的なSLGにおいて継続的に行われていく時に、最大限の効果を発揮する。