2017/01/27

模型雑話:2017年1~3月

  模型関連の雑多なメモ。2017年1~3月分。(→2017年4月以降2016年


  03/23
  コンステレーションも作ってみたいが、品切れのままのようだ。1/700スケールでも46.7cmのビッグサイズになる。きれいなアングルドデッキに、愛嬌のあるボックス状艦橋と二段窓枠、そして星ネタなネーミング(constellation=星座)。 入手困難なようだし、参考になる制作記事等も乏しいが、いつか手掛けてみたい。


  やはり缶スプレーの手軽さは、大きなアドヴァンテージだ。もちろん万能というわけではないが、「少し振るだけですぐに使用できる」、「エアホースが無いので取り回しも楽」、「吹きつけの勢いが強いので、必要な範囲をすぐに塗りきれる」、「筆やハンドピースのような後始末も不要」といった点は非常に気楽だ。デメリットとして、「奥まったところを塗れない」、「調色塗装が出来ない」、「グラデーション塗装が出来ない」といった問題はあるが、艦船模型(特にIJN関連)では十分対処できるのであまり問題にならない。

  艦船は、キットパーツの小ささと組み立ての複雑さはトップクラスだし、考証面でも一隻一隻がユニークな存在であるため追究の余地が大きいし資料的困難もある。しかしその一方で、塗装に関してはグラデーションも磨き上げも要らないし、それどころか調色の必要すら無い場合も多々あるし、塗装の誤魔化しも効きやすい。組み立てについても、合わせ目などの処理が問題になる箇所も比較的少ない。全体としてはそれほど難しくはない部類だろう。 あまり高度な要求をつきつけない範囲では、比較的敷居が低いのはキャラクターモデル(ロボットなど)とカーモデルだろう。



  03/19
  私にとっての艦船模型の楽しみは、「多数の人が乗ってその上で往来しつつさまざまな活動をする巨大構造物(の立体模型)」を作って眺められるという側面が大きい。だから、舷側に通路が張り巡らされた空母は好きだし、そうした導線が視覚的に分かりやすくなる手摺表現も好きだ。あるいは、「ここに張り出しがあるならば、そこに人が出入りできるためには扉か梯子があるはずだ」と想像して、指定に無いエッチングもいろいろ貼り付けてしまったりする。人の動きを実際に表現(再現)するうえで、TAMIYAやFUJIMIの乗組員パーツは有効だと思うが、自分の作品に使ったことはまだ無い。いずれ試してみたい。


  【 1/350摩耶、使用パーツのメモ 】

Finemolds
「小型探照灯セット」
  探照灯のキットパーツはかなりユルい出来だったので奮発した。特に摩耶は目立つ場所に4基も設置しているので、探照灯の精密感も全体の見栄えにかなり影響する。せっかくなので同梱の航舷灯と信号灯も投入した。ただし、探照灯だけならば他社製品で代用することもできた。
  探照灯は、下記Hasegawaセットにも、手持ちの余りがあったが、パーツ分割が面倒だったので使用を差し控えた。
Finemolds
「25mm三連装機銃」
  摩耶には13基使用するのでこの製品は2セット必要になるが、以前の制作で7基分余っていたので、1セット(8基分)の追加購入で足りた。防弾板も付属している。
  1/700スケールであれば、よほど近寄って注視するか接写撮影するのでもないかぎりハイディテールパーツはあまり目立たないし、それどころかキット全体の精密感バランスでちっともリアリティ向上に寄与しないということも間々あるが、1/350スケールではこうした小物の出来もすぐに目に入ってくるので、お金を掛けてディテール水準を上げることには十分意味がある。
Fujimi
「対空兵器セット」
  キットパーツの高角砲はモールドが少々甘めだったので。このセットには機銃類も多数入っているし、別の機会に活用することも見込んで、購入しておく。Hasegawaにも同じような趣向の製品があるが、特に高角砲に関してはこのFujimiセットの方がモールドの彫りが深いので好みだし、数量も多い(高角砲は8基分入っている)ので使い勝手がよい。
  「摩耶:新考証&新パーツ」のキットには、高角砲上面カバーパーツが入っている。便宜的にそのパーツだけ移植する(ニコイチする)のもアリかと思う。
Hasegawa
「艦船装備セットA」
  別のキットに使用した余りものが大量にあったので、せっかくだから通風筒や測距儀などを置き換え。ただし、ディテールアップのための代用というよりは、ゲート跡処理などを楽にするのが主眼。キットパーツでも別に悪くはない。
Tamiya
「艦載艇セット」
  これも、キットパーツは幌などの造形が今一つと感じたので。Hasegawaの艦載艇セットからも一部パーツ流用(ミキシング)した。
Aoshimaエッチング
「摩耶 新考証用」
「高雄リテイク版」
  摩耶専用エッチングはほぼ全面的に使用。真鍮製だが、厚みもあってかなり丈夫。しかも繊細な折り線が入っているので、組み立ても容易だった。これだけで主立ったところはほとんど賄えるので非常にお得。ただし、手摺は完全ではなく、外周分などは含まれていない。主砲周りもカヴァーされていない。足りない箇所は、同社製「高雄リテイク版」エッチングから適宜流用して取り付けた。扉や梯子なども高雄用から流用してしかるべき場所に貼り付けた。
その他
(汎用素材等)
  バルジ部分がのっぺりして見えるので、0.5mmプラ板で汚水捨管っぽいディテールを適当に追加した。簡素な工作ながら、見栄えは多少ましになったと思う。余りもののメッシュ素材を適当な場所に貼り付けたり、余りものエッチングと汎用リギングでクレーンワイヤーを再現したりもした。艦尾先端が単なる平滑面で、滑り止め突起が無いのは、なんとかしたかったが、技術が及ばなかった。

  以上、キット本体と塗料代を併せると総費用は19000円ほど。それなりに支出は生じるが、制作中の楽しみや完成品のクオリティを考えると、十分リーズナブルだろう(――もちろん、そもそも趣味の楽しみにリーズナブルかどうかは問題ではないと言うべきだが)。もちろん、キット+純正エッチングの約11000円だけでも、ひととおり充実したものになる。

  ある程度の緻密化は図ったものの、全体としてはプレーンな作りにした。ウェザリングのようなリアリティ志向の表現はほとんど行わず、いつもどおりの「構造を想像して楽しむための形状再現見本」を目指した。ここがこうなっていて、ここにはこんなものがあるのだというのをただ眺めて面白がるには十分な出来だ。

  今回の挑戦は、航空機作業甲板面のエッチング工作。これまで未経験だったのだが、キットパーツのままだと軌条の配置が違っているようなので、これを機にエッチング貼り付け工作を試してみた。甲板面のディテールをヤスリで削り落としていくのが面倒だったが、その過程でヤスリの効果的な使い方を学ぶことができた。塗装はグレー単色で済ませられるので、いずれにしても工程を調整する必要が無く、気楽だった。
  艦橋内部の作りが簡素なのを誤魔化すためにも、クリアのプラ板を仕込んで窓ガラスを表現しようかと思ったが、曲面部分に自信が無かったので差し控えた。せっかくだから、挑戦しておいても良かったかもしれない。

  今回の省略要素:艦載機、舷外電路、単装機銃、上甲板周囲の手摺。どれも恒例の横着箇所。空中線も全面カット。「掛かる労力と費す時間」「細密工作の心理的負担」「失敗の確率」「完成後の破損リスク」と、「忠実性の追求」「全体のディテールバランス」「完成時の見栄え」「実践による経験の蓄積」の間で私なりの最適化を図ると、今回は省略するのが適当だと判断した。空中線工作は、まだまだ失敗しやすいし、かなり神経が削られるし、艦本体のシルエットをよく見られる状態にしたかった。別の機会に経験を積みたい。

  今回の失敗。
1)甲板の塗装落としを失敗(溶剤で表面がドロドロに)。初めてパーツ注文をする羽目に。
2)主砲基部のポリキャップを付け忘れ。致命的ではないが、派手なミス。おかげでユルユル。
3)一三電探の組み立てがうまくいかなかった。きれいな平行が出ていないのがかなり目立つ。
4)艦橋窓枠の折り曲げ箇所を間違えかけた。幸いにもリカバーできた。
  全体として「パーツ破損などの明白な失敗は少ないが、よく見ると全体のクオリティは低い」という感じ。かなり荒っぽい制作になってしまった。特に一三電探については、「自分のテクニックの限界以上のものに挑戦して中途半端に終わるよりも、程々のディテールでまとまっているキットパーツを使う方が、粗が目立たず適度な完成度になる」ということを学んだ。「一見精密だが、実際にはあり得ない状態になっている(平行が完全に崩れている)」のと、「精密度は高くないが、全体の形はちゃんと合っている」のとでは、後者の方が優れているということだ。



  【 1/350スケール艦載艇セット 】
  HASEGAWA「日本海軍 艦載艇セットA」(2008年発売)と、TAMIYA「1/350 日本艦 艦載艇セット」(2011年発売)を比較する。定価はどちらも1500円+税。

内容TAMIYAHASEGAWA
17m水雷艇2
煙突収納状態も選択できる
2
12m内火ランチ42
13m特型運貨船2
11m内火艇22
9mカッター4甲板設置用:4
ダビット設置用:4
8m通船2
8m内火ランチ2
7.5m内火艇4
7mカッター2
6m通船22
ラジアルダビット6セット+3セット2セット
各種ダビット6セット6セット
エッチング各艇の架台、11m内火艇の碇6本、17m内火艇の舵、運貨船の床敷等架台、ダビットのフック部分、カッターの舵、11m内火艇ディテール(スクリュー、手摺、マストなど)、等々
その他オール2種類×6束。甲板取付け用の穴開けガイドステッカー。各艇の要目及び解説あり。九四式主砲用方位盤照準装置、高角砲装填演習砲、装填演習砲、汽笛、主錨/副錨、キャプスタン、ケーブルホルダー(各2)。解説は比較的簡素。

  FUJIMIにも「1/350 艦船用 ボートセット」(2000円+税)があり、9mカッター8隻および12m内火ランチ2隻とともに大量の雑多なパーツが入っているが、購入したことが無いので分からない。手許にある同社製「1/350金剛」キットの艦載艇と同水準であるならば、上記H版およびT版にはやや劣る(――内火艇の窓がモールドされていなかったし、エッジも少々ぬるかった)。
  このほか、国内メーカーではFinemoldsが7.5m内火艇&7mカッターのハイディテールパーツを出しているし、海外メーカーも視野に入れると艦載艇用エッチングもあるようだ。

  TAMIYA版の長所は、「一製品に含まれる艦艇の種類および数量が多いこと」、「他で入手しにくい種類のものがいろいろ入っていること」、「架台部分がエッチングで完全に別パーツ化されていること」、「オールパーツが多数入っていること」、「解説が比較的詳しいこと」。オールは12束も入っているので、他にも流用が利く。難点としては、9mカッターは、内部にダビット取付け用の穴が開いているタイプだけなので、甲板に置くときはその点が気になる人がいるかもしれない。また、架台の仕様がやや特殊で、甲板差し込み用の突起(針)が出ている。ディテールは互角だが、T版の方がやや木目が狭くてH版の方がや狭いとか、H版の方が艦底部のモールドが細かいといった違いはある。

  HASEGAWA版のアドヴァンテージは、「カッターが二種類入っているので使い分けられること」、「舵や内火艇マストなどのエッチングがかなり細かいこと」、「演習砲やキャプスタンなど様々なパーツが入っていること」あたりだろうか。エッチングを使えば11m内火艇の操舵室裏側を塞げるのも有難い(プラパーツのみでは、H版もT版も中空のまま)。難点は、内火艇や水雷艇では架台部分も一体成形されていること。つまり、エッチングに置き換えようとするとその部分を削り取らなければいけないし、エッチングを使わないとしても、取り付け先の甲板にも架台部分が造形されているだろうから、いずれにしても手間になる。カッターオールが無いのも少々寂しい。架台はT版とは異なって、両面を貼り合わせる形式。主錨やキャプスタンを手っ取り早く補充したいという場合にも使えるが、そのために購入するのは割高だろう。

  組み立て中にキットの艦載艇パーツを紛失したとか、艦載艇パーツの出来に不満があるとかいった場合には、どちらでも十分用は足りるだろう。H版の架台部分を切除するのが面倒だと考える向きには、T版を購入する方が手間が省けそうだ。それに対して、作っているキット全体を高度にディテールアップするつもりである場合には、H版のエッチングを使う(あるいは流用する)と効果が上がると思われる。

  エッチングパーツは、どちらの製品も非常に硬い。おそらくステンレス製で、厚みもかなりある。架台エッチングは、T版は下面に小さな突起(針)が出ている仕様で、甲板面等に穴を開けて取り付ける形式。それと異なった使い方をしたい場合、針部分をきれいに切除するのはちょっと大変。H版の架台エッチングは、下面にのりしろ部分があり、それを折り曲げて使用する形式。なお、T版とH版とでは、船底部分の曲面が異なっているので、架台パーツの互換性は無い(流用困難)。私が試してみた範囲では、少なくとも11m内火艇の架台パーツは全然合わなかった。

  というわけで、今回はT版を使う予定。ほどほどのディテール水準で作っているし、時間的余裕があまり無いので、艦載艇はTAMIYAクオリティでストレスなく作りたい。ただし、気が向いたらH版のエッチングも流用するかも。



  03/12
  スケールによって、見え方はずいぶん変わるのだなあ。1/700だと、摩耶の艦橋は「どっしりしていて存在感がある」くらいの印象だったが、1/350を組んでみるとそのボリューム感に圧倒される。そして、現用艦に通じるデザインに見えたりもする。


  塗装失敗した箇所(埃が乗ってしまった)をやり直そうと、シンナーをさっと掛け流ししつつ筆先で塗料を落としていたら、表面がヌメヌメに荒れてしまった……。溶剤はプラを溶かさないと言われているが、さすがに筆で擦るとそうなるのね。迂闊すぎた。キットをもう一つ買うほどではないので、(初めての)パーツ注文をすることになりそう。
  というわけで、公式サイトから注文したら即日発送して下さった(二日後に届いた)。AOSHIMAさん、ありがとうございます。これなら月末までに完成させられそう。


  TAMIYAの「Surface Primer」は、金属下地プライマーとしても効果があるように書かれているが、実際にはプライマーとしての性能はあまり期待できないようだ。私が使ってみた時も、エッチングの上にSurface Primer+ラッカー塗装+マスキングをして剥がしたら、ラッカー塗膜がきれいに剥がれてしまった。web検索してみても、プライマーとしての作用はほとんど無いと判断されているようだ。金属下地には透明なメタルプライマーを使うのが安全だろう。艦船模型ではエッチングパーツの上にマスキングすることはそれほど多くないのだが、舷窓庇、煙突周り、航空機作業甲板など、マスキングテープで覆う必要のある場面はいくつかあるので、注意が必要だ。


  【 艦底色塗装 】
  艦底色は、スプレーで一気に塗ってしまう方が合理的だと思う。
  1)大面積なので、スプレーの噴射力が有効。短時間で塗りきれるのでとても楽。特に大スケールキットでは、ハンドピースで縦60cmを塗るのはかなり大変な作業になる。ハンドピースでは何度も吹き付けるので30分以上掛かるが、スプレーであればまくいけば数分で終わる。
  2)平たい面なので、塗りムラがあるとかなり目立ってしまう。ハンドピースだと、丁寧に塗っているつもりでも濃淡が出てしまう虞がある(経験上、3~4回ほど塗り重ねなければ斉一な発色にならない)。しかし、缶スプレーで大量に吹きつければムラは出にくい。ただし、ハンドピースでも、口径の大きいものを使えばかなり楽になるようだが(――0.3mmと0.5mmとでは、単純計算で2.78倍も違ってくる)。
  3)艦底パーツは巨大なので、塗装作業中にハンドピースのケーブルが引っかかったりする危険がある。特に大型艦船や大スケールのキットで、そのリスクが大きい。それに対して缶スプレーは、ツールの取り回しの容易性という点でアドヴァンテージがある。ケーブルも無いし、倒れても塗料が零れる心配が無い。
  4)ディテールが少ないので、繊細な吹きつけは必要ではない。多少厚塗りしてしまっても大丈夫だし、上記のように「塗装速度が上がる」「塗りムラを生じにくい」ということにもつながる。
  5)色設定に関しては、本来はあんな小豆色ではないというそうだが、私自身はさしあたりこの色合い(Mr. Color No.29: 艦底色)が気に入っているので、問題はない。

  ただし、考えられるデメリットとして、「調色ができない(色彩考証を突き詰める場合には致命的な問題になる)」、「スプレーだと塗料消費の無駄が多い(そしてコストがやや嵩む)」、「噴霧飛散が大きい(周囲への影響の問題)」、「噴射圧が強すぎるのでスクリュー周囲が塗りにくい」、「塗り直しがやりにくい(吹きつけが強すぎるので、重ね塗りをすると境界線が目立つ)」、「使用済み缶の廃棄が多少面倒」といった点はある。スクリューのブラケットや舵の裏側に関しては、私自身は個別に塗装してから最後に接着する手順で作っているので問題にならないが。
  さらに言えば、「完成させてしまえば、どうせ底側なんか見ない」、「WL仕様の制作であれば、瑣末な問題にすぎない」、「小スケールであれば、どちらでも大差ない」、「大口径のハンドピースがあれば解決できる」という話でもある。あくまで私個人の制作条件下での話だ。

  リノリウム部分の塗装も、缶スプレーに頼っていた。長所は「望んだ色があらかじめ提供されているので、そのまま使えるし、常に同じ色で塗れる」、「吹きつけ量が多いので、塗りムラが出にくい(甲板面は広くて目立つので、塗装の均質性は重要)」、「巡洋艦では塗装範囲が広いので、迅速に塗りきれるのはありがたい」といったあたり。
  短所は「繊細な凹凸も多いので、あまり厚吹きしてしまうとディテールが潰れる(実際上、問題になるレベルではないが)」、「マスキング部分に掛かることも多いので、べったり塗ってしまうと塗料がマスキングに隙間に回ってしまう危険がある(気をつければほぼ防止できる)」。
  諸事勘案して、現在では「スプレーから吹き出してハンドピースで塗装する」という方式になっている。あるいは、「リノリウムフィニッシュ」シートが有効そうな場合には、それで済ませてしまう。



  03/10

  【 艦載艇部分について 】
  艦載艇は、内部の塗り分けが面倒で面倒で……。吹きつけ塗装だけではとてもやってられないが、ホワイト部分などはエナメル塗料で筆塗りすれば、塗料の伸びも良いし、はみ出した部分も拭き取れるので、塗装の敷居が下がる。あるいは、いっそホワイトは塗らない(ウッドタンのみ)というのもありだろう。技術的な難しさや、時間的/心理的な負担の大きさ、あるいは配色具合や制作者の感性によってはホワイトでは目立ちすぎると感じるかもしれない。

  面倒さの原因は他にもあって、小ささの割に使う色数が多くて手間が掛かるとか、ちょっとずつ違ったサイズのものが何種類もあって混同しそうだ(ちゃんとパーツ管理するノウハウを身につけていなければ同時制作がしにくい)とか、ボートの作りが簡素すぎてディテールアップのし甲斐があまり無いとか、労力の割に見た目はそれほど面白くない(達成感を得にくい)とか、どのキットでも似たり寄ったりで作り飽きるとか、とかく気の進まない要素が多い。
  これが艦載機(飛行機)の方であれば、イエローやグリーンといった鮮やかな色彩が艦船部分に対する良いコントラストになるし、大きく翼を広げていて造形的にも華があるし、ちゃんとした「乗り物」(メカ)らしい存在感があるし、縮尺模型らしいリアリティとスケール感をもたらしてくれるし、キットによって(艦毎に、あるいは時期に応じて)いろいろなものが搭載されているので新鮮な気持ちを維持しやすいし。もちろん、見栄えのする小スケール艦載機を作るのは大変だが、それに十分見合うだけのすぐれた視覚的効果が得られる。そもそも数百メートル級の大型艦船の数百分の一の模型という極端な状況なので、小型艦艇を置くことによってスケール感を掴む手掛かりになるという大きな効用もある。


  船体を貼り合わせてひとまずグルグル巻きに固定したら、手に取って矯めつ眇めついろいろ楽しむよね。機関銃を構えるみたいにしてその迫力を楽しんだり、ビリヤードを打つ時のように水平に向けて奥行きを楽しんだり、日本刀を鑑賞するみたいに縦に立てて眺めたり。実際、巡洋艦くらいのキットだとだいたい脇差の刃渡りくらいの長さになる。さすがにブンブン振り回すことはしないが。でも、ブンブン振り回せるのはこの段階のうちだけだ!
  完成させてしまえばどうせ底面を注視することは無いので、船体貼り合わせはちゃんと接着できていれば細部はあまり気にしない。つまり、「しっかり接着されていて、ばらけないこと」、「しっかり固定されていて、位置がずれたりしないこと」、「艦首と艦尾の合わせ目だけは一応きれいにして、粗が目立たないようにすること」。


  【 模型制作のコンセプト選択 】
  縮尺モデルは、あくまでモデルであって実物再生と同じものではあり得ない。それゆえ、どのようなディテールでモデルを作るかは、方針選択の問題になる。例えば: 1)縮尺に挑戦しつつできるかぎり実物再現を目指す。2)ジオラマのように、歴史上あったorあり得た有様を再現する。3)理念的な形状再現を目指す。4)その他、名技披露や制作速度(販売用)を目指す、あるいはもっとシンプルに手作業工作を楽しむというアプローチもありそうだ。そして、どのようなコンセプトで何を目指しているかが、どのような工作をするかを規定し、そして作品の価値を規定する。

  たとえば、上記1)であれば、全体を極力ハイディテールに再現することが最大の目標になり、その実現度合いが作品の「出来」の評価基準になる。近年のメーカーおよび模型誌は、主にこの路線を念頭に置いているようだ。
  2)であれば、考証の正確性が最優先の目標になり、それが大きく誤っていればいかにハイディテールな工作でも当該作品の意義は弱いものになるだろう。実際には、中級以上の艦船モデラーの多くはこのような価値観に立っているのではないかと思う。
  3)は、当該対象にどのような性質や機能があったかを視覚的に理解できるようにすることが第一義的目的であり、「そういうものが存在することになっている」ということが分かるような出来であれば良く、リアルさはそれほど重要な価値ではない。前世紀のキットは基本的にこのようなアプローチに立っていたと考えてよいだろうか。
  作る側としては、複数の目的を同時に盛り込んでも構わないが、自分なりののコンセプト設計をできるかぎり意識化したうえで取捨選択すべきだろう。また、他人の作品を見る側としても、「Xの観点では見ると優れているが、Yの観点では見るべきところが乏しい」といったように、評価基準の多元性を考慮したうえで自分なりに見どころを探していけばよいのだと思う。

  例えば、高精細な機銃パーツが、壁のように分厚い防弾板パーツに囲まれているというような状況は、1)の価値観に立っている場合には、解決しなければいけない不整合だとされるだろうが、2)を目指しているモデラーにとっては、さして問題ではない。3)のスタンスでは、機銃の構造性が精密に再現されているのは良いことだし、防弾板の厚みのリアリティは場合によっては無視して構わないということになるかもしれない。
  ディテール再現派とリアリティ追求は、両立しない場合もある。例えばリノリウム押さえ金具は、実物では数cmの平たい板であったようで、1/700スケールに変換すると0.1mm以下になるが、これを0.3mmの真鍮線で表現するのは明らかにオーバースケールで、丸太を甲板上に並べるに等しいサイズになっている。しかるに、多くのモデラーは、1)の立場に立っているようであるにもかかわらず、それを無頓着に行っている。何故か。おそらく彼等は、実物の正しい再現であることよりも、「そこにそういうものがあったことを表現するための工作をすること」を選んでいるのだろう。金具工作は、「存在の再現」と「正確な再現」が同じではないということの例証になるだろう。
  色彩の管理についても同様で、たとえば軍艦色は実際にはもっと明るい色調だったらしいが、多くのモデラーは(おそらくイメージ重視で)暗めのグレーを使い、しかもしばしば規約的記号的な表現としての工廠毎の色分けを考慮している。艦底色も、実際には小豆色ではなくもっと明るい赤色であったらしいが、それではスケール感(巨大感)を損なうし、玩具的にも見えかねないし、下側部分が明るい色だと重量感に欠ける。こうした様々な考慮があると思われる。考証的正確性のみを徹底しているわけではなく、「あることになっている」という有無のレベルの再現性がクリアできていれば記号的な表現であることも受け入れており、また、模型単体としての「見栄え」という演出的観点もけっして無視されておらず、意識的なチューニングや無意識的な慣例形成をつうじて現在のようなバランスを実現している。


  【 最低限の速成制作 】
  敷居が比較的高い趣味としてしばしば初心者向けのアドバイスが話題になるが、私見では、とにかく最低限の塗り分けを実現して完成させるとしたら、スプレー+木甲板シートが一番簡単だと思う。1)ランナーのままスプレーで軍艦色を塗装。2)順次組み立て。ゲート跡は筆でリタッチ。3)木甲板部分は専用シートで簡単に済ませる。4)リノリウム部分、煙突(黒)、防水布などはスプレーor筆で別途塗装。……「労力(時間)を掛けない」「器用さを求めない」「道具類も安価に済ませる」でとりあえずキットそのままで全体を完成させるには、これが一番簡単だと思う。

  もちろん、合わせ目処理などは出来ないだろうし、細かな塗り分けも出来ないところがあるだろうし、艦載機はこれでは塗りきれないし、スプレー塗装のできるスペースは必要になる。しかし、キットそのままで最低限の体裁を整えて完成させる分にはとても楽だし、初心者は「高い成功確率で(つまり失敗しにくく)」、「組み立てを楽しみつつ」、「迅速に(飽きたりへこたれたりしないうちに)」、「満足のいく完成品を得られる」だろう。このやり方であれば、大型艦船でも対応できる(戦艦や空母でもあまり負担にならない)というのも強みだろう。

  この場合、必要なツールは、キットのほかに木甲板シート、スプレー(軍艦色)、瓶塗料(黒、白、軍艦色、赤茶)、筆、溶剤、ニッパー、接着剤があれば足りるので、総額でもキット代+5000円で済む。BDディスク1枚分、ミドルプライスゲーム1本分と考えれば、たいした支出ではない。この手法でなくとも、どうせこのくらいの初期費用は要るのだし。2隻目以降も、軍艦色スプレーと甲板シートを買い足すくらいで当分保つ。巡洋艦や駆逐艦であれば、木甲板シートとして計上した2000円分は丸々不要だから、さらに安上がりだし。

  全体を筆塗りするのは、多大な労力を要するし、塗りムラの可能性も高く、初心者にはつらいだろう。エアブラシの初期投資要求は論外。木甲板部分を一々マスキングするのも大変だろう。合わせ目処理は、どちらにしても素人には難しいので、問題にならない。そういう負担をショートカットし、挫折のデッドロックを迂回するための便法ということになる。

  初心者が満足できる、経済的/技術的/時間的な敷居の低い制作手法は、これがベストだと思う。さらに、この過程で、制作上の様々な知識も得られる。すなわち、塗料の性質、接着剤の使い方、組み立て手順、スケモパーツの精度理解、デカール使用の挑戦、完成状態のイメージ、等々を経験的に学べる。そうした経験を土台にして、2隻目以降は自分自身の財布/技術/目標に応じて試行錯誤しつついろいろな技法を取り入れていけば、出来ることも増えていくしクオリティも上がっていく。それはもはや当人の趣味上の方針選択の問題だが。

  というか、軍艦色塗装不要で甲板シールがあらかじめ用意されている「特easy」シリーズや、成形色でほぼ色再現されている(一部はシール)「艦NEXT」シリーズは、上記のメリットをほとんど全て備えているので、その中から好きなものを選べばいい。費用も、精密ニッパーと接着剤さえあれば、最低限用を足せるし。良い時代になったと思う。あるいは、F-toysの塗装済みランナー状態のプラモも、似たようなものだ。



  03/04
  吹きつけ塗装の最中は、シンナー(気体)+塗料(粉塵)の有害物質を二重に撒き散らしてその真只中にいるようなものだから、健康面の影響は怖い。あっぴゃらぷあーにはなりたくないし。シンナーを完全に防止するのは不可能だが、せめて塗料粉塵は吸い込まないように、ちゃんとした(専用の)マスクを使おう。


  これまでハンダ付けを失敗していた理由が分かってきた。金属線の過熱が足りないせいで、ハンダがくっつかずにダマになってしまっていたようだ。次にハンダを使った金属線組み立てを活用できそうな機会があったら、その点を配慮しながら試してみよう。


  【 精密ピンセット 】
  TAMIYAのピンセット型エッチングベンダー(No.117)を、ピンセットとして使っていることが多い。平らな面で摘むのでパーツをしっかり把持できる(鶴首型だと先端だけで摘む)し、先端部は十分に細いし、直線状なので目視での位置取りもしやすいし、鶴首よりも短いので安定感があるし、当然ながら精度も十分高くてしっかり摘める。同社の鶴首型ピンセットと比べて、閉じる際に掛ける力がやや重いおかげで、「握りすぎてパーツを飛ばしてしまう」ということが生じにくい。もちろん鶴首ピンセットも持っており、さらに薬局で買った毛抜きもピンセットとして使える場面があり(例えばデカールを摘む時は、面の広い毛抜きの方が安全)、必要に応じて適宜使い分けている。
  ただし、本来の用途としては、万能というわけではない。ピンセットよりも素材が柔らかいようで、硬めのエッチングパーツを折り曲げる時には微妙に捻れてしまうことがあった。指先に力を込めたら先端が折れ曲がりそう。
  鶴首ピンセットは、同じくTAMIYAのクラフトツールNo.108(だと思う)を使っている。Allexのピンセット4型も持っているが、そちらは残念ながら私の手に合わなかった。


  模型制作はどうしても精神力を消耗する(神経が疲労する)感覚があるので、気力と体力がそれなりに充実しているコンディションでないとなかなか着手できない。現在も制作途中のものが机上にあるのだが、ここ数日、体調不足なので作業が進んでいない。うぐぅ。


  フルハル派(あるいは1/350派)になったのは、以前にとある1/700WL戦艦を完成させた時に、船体があまり平べったく薄っぺらく見えてしまったのもおそらく影響している。巡洋艦や駆逐艦ではそんなふうに見えることは無かったのだが、その時はなんだかいかにも間が抜けて見えてしまい、完成の感興が冷めてしまった。それ以外にも、艦船でのジオラマ趣味を持ち合わせていないとか、艦全体の形状モデルを求めているとか、別の巡洋艦キットを作った時にディテールバランスがひどいことになって1/700での作り込みの限界を感じたとか、様々な要因や志向もあるが。


  【 筆塗り/マスキング 】
  「こんな奥まったところ、エアが届かなくて塗れないよ!」とか、「こんな細く入り組んだ部分、マスキングできないよ!」といった状況になったが、考えてみれば筆塗りすればあっさり解決する問題だった。吹きつけ塗装に慣れてきてそろそろ中級者になったという気分でいる素人が陥りがちな思考の陥穽だったりするのかも。
  ちなみに、上記の箇所も、複数回に分けて一部分ずつ塗れば簡単だった。一回だけで完全にマスキングしきる必要は無いのだ。ただし、「ハンドピースをいちいち洗浄するのが面倒」とか、「塗り重ねの境界線が歪になる可能性がある」、「塗料の具合(色味)が変化してしまう可能性が無くもない」といった事情もあるので、つい一度でやりきってしまいたくもなる。


  【 セールカラー 】
  帆布色部分については、「数百分の一くらいにしか見えない遠距離であれば、あるいは洋上で日光に照らされている状態であれば、ほとんど真っ白にしか見えないはずだ」と考えてホワイトで塗装してきた。中途半端に濁った色が好きではないというのもあり、純白のくっきりした色合いが良いアクセントになっているとも思う。
  しかし、文字通りのセールカラー(Mr. Color: No.45+ツヤ消し)で塗ってみたものは、これはこれでしっとりしたリアリティがあるし、周囲の色彩とのマッチングもなかなか悪くなかった。ただし、黄ばんだような感じになってしまうし、色味が落ち着きすぎてちょっと地味に見えるのは難点。結局、ツヤ消しホワイトを混ぜて、もうちょっと明るくして使っている。
  最近は、作る度にどちらにしようか迷う。どちらかに統一してしまった方が、完成した作品群を鑑賞する際に気持ちが煩わされなくてよいのだが。


  甲板の穴から絶妙な角度でフルハル船体内部に落ちてしまった探照灯台を取り出すために私が採った手段は、1)ピンセット→届かず、2)マスキングテープを棒で垂らして吊り上げる→角度が合わず、3)逆さにしてガラガラ→怖くなって中止、4)艦橋基部の穴を切り広げて取り出す→内部の桁があるせいでそこまで移動せず、5)真鍮線を「J」字に曲げて釣り上げる→知恵の輪並のぎりぎりの角度を狙ってようやく取り出せた。いずれにせよ、私のモデラー経験の中で最も怖ろしく、そして最もおバカな失敗だったと思う。取り出せてよかった……。


  【 複数キットの同時進行 】
  あまり細部に立ち入らずに(艦船)模型を効率よく制作するぶんには、複数キットの同時進行はわりと有効だと思う。工具や注意点が共通している箇所はまとめて作業していく方が楽だし、あるいは逆に、片方の作業で行き詰まったり飽きたり乾燥待ちだったりしたらもう一方の作業を進めておくという跛行進行もできる。特にエアブラシ塗装をまとめて行える(ハンドピースを洗浄する回数が少なくて済む)のが気楽でよい。各キットの個性や出来がよりよく感じ取れるという比較の見地は、とりわけ別メーカーの同型艦を同時制作する際に有益だ。
  難点は、1)混同の危険がある。2)スペースをより大きく占有される。3)そもそもそれで制作作業を楽しめるのか。4)一つのキットを完成させるまでに経過する時間(日数)は長くなる。たとえば、1個のキットを単位時間ずつで制作していくのと、2個のキットを1.8単位時間で制作していくのとでは、全体としては後者の方が時間効率が良いが、しかし一つのキットを完成させるまでに通常の1.8倍の時間が経過していることになる。
  まとまった大きな時間があり、なおかつ、積みキットを効率的に消化していきたい時や、あるいは同型艦を複数制作したいという場合には、同時進行にも一定のメリットがあるが、基本的には、わざわざそんなことをする必要は無い。私自身は、FUJIMI利根とAOSHIMA筑摩の作り比べ、おおなみ2隻同時制作、1/350キット同時進行などで何度かそういうアプローチをして慣れてき(てしまっ)ており、心理的にはこの方がむしろ楽だし風変わりな刺激もあってよいのだが、一般的なモデラーのスタイルとはずいぶん違っているだろう。

  一つのキットを作っている途中で飽きて途中放棄する(別のキットに移行してしまう)ということは、今まで一度も無い。飽きっぽい人や、制作途中の状態で放置できる人(心理的問題として、あるいは室内環境の条件として)は、一つのキットに短期専心する方がよいのだろう。その一方、数ヶ月単位でひたすら丹念にディテール工作や考証工作を延々積み重ねていくという制作スタイルは、私には到底真似できない。


  【 パーツの紛失/破損 】
  制作中のパーツ紛失/破損の頻度は、1キット(エッチング等を含む場合あり)あたり0.5個くらいだろうか。極小パーツを切断中/加工中に飛ばしてロストするというのは案外少なくて、一番多いのはランナー状態で折ってしまうミスだろう。パーツを飛ばしてしまった場合でも、9割以上はすぐに発見できている。イージーに作っているわりに、パーツの混同や取り付けミスはほとんど犯していないと思う。エッチングの致命的な組み立て失敗も、今のところほとんど無い。例のトラス組み立ても、ぎこちないながら、一応の体裁を整えることはできた。
  甲板塗装を盛大に失敗して、キットをもう一つ買う羽目になったことは、一度だけあった。パーツ注文する方が安くつくのだが、同じキットをもう一つ買う方が「迅速に調達できる」、「大量の予備パーツをストックできる」、「メーカーに金を落とせる」というメリットがある。さすがに高額キットの場合はそんなことは出来ないので、「なんとか自作する」、「パーツ注文する」、「アフターパーツを購入する」、「他のキットの余剰パーツがあれば使う」、「そんなパーツはそもそも無かったことにする」のいずれかの対処になる。
  鬼門は旗竿。完成後もクリアケースなどに収納せず、机の上などに剥き出しでディスプレイしているため、艦首旗竿などは幾度となく手先を引っかけて折りまくり、最近ではもはや旗竿ははなから取り付けないようになった。
  完成後に関しては、特にマストを折ったことが何度もある。なかでも空母キットのマストが多い。今まで5~6回はマスト破損/脱落を経験しており、1つは完全に紛失してしまった。


  【 瞬間接着剤 】
  100円ショップの瞬着を使ってみたけど、全然くっつかない! いや、一応接着するにはするのだけど、接着の速度も強度もまるで足りない。おそらく、固着成分が少ないのだと思われる。やっぱり価格相応にクオリティの違いはあるんだなあ……。デリケートなエッチングパーツを扱ううえで、作業効率に大きく影響するレベルの不利益だし、ひいては失敗のリスクを高めるし、精神衛生にも悪影響がある。キット一個あたりほんの数十円のコストカットになるとしても、全体としてはとても割に合わない。あくまで、まともな瞬着を使っていくべきだと再確認した。
  ただし、1mm×3本の使い切り仕様なのは好都合だと思った。模型制作だと文字通り「点」で付けるくらいしか使わないし、一度開封したものは密封管理してもじきに固まって使えなくなってしまいやすいので。また、多めに付けても周囲に白粉を吹かないのもメリットになる。おそらくは接着成分の少なさに由来する怪我の功名だろう。大雑把な接着作業くらいには使えるかもしれない。



  02/28

  【 流し込み(低粘度)タイプの接着剤 】
  ようやく流し込み接着剤(プラ用)の使い方に慣れてきた。あるいは、どこにどう使えばよいかの判断が出来るようになってきた。可動前提のロボット模型とは事情が異なり、スケールモデルは最低限の密着固定が出来ればよいし、パーツの合わせ目はパテで埋めて整えるし、構造が複雑だったりディテールが繊細だったりするため接着剤のはみ出しを処理することがしばしば困難だし、基本的には流し込みでさっと済ませるのが理に適っている。
  逆に高粘度タイプの使いどころは、1/700艦船だと、例えば船底部分や船体貼り合わせの内部桁をしっかり固定する際とか、煙突のように合わせ目が目立ちやすい場所(もちろんディテールは後から修正することになる)とか、低粘度接着剤が乗りにくい(あるいは、低粘度だと予期しない場所にまで接着剤が回ってしまいやすい)極小パーツに少しだけ付けるとか、位置取りが微妙だったりパーツ固定が緩かったりして接着剤の粘度を借りてうまく固定したい場合とか、そのくらいだろうか。ただし、接着剤の塗布量をコントロールしやすいという観点で、極小パーツにはむしろ流し込みタイプを使うという判断もあるようだ。プラを溶かして密着させる溶解力についても、TAMIYAの流し込みタイプ(緑蓋)の方が、高粘度タイプ(白蓋)よりも強いように感じる。


  【 同時制作 】
  艦船(特にIJN軍艦)の場合、制作手順や使用塗料はだいたい共通しているので、複数のキットを同時制作することが間々ある。どうせ一日待つのだからと複数の艦の船体接着を同時にしておいたり、塗装範囲の小さいリノリウム部分をまとめて塗装したり、艦載艇などを(混同しない範囲で)同じ手順で大量制作したり。これは、1)横着癖があり、2)考証面もほとんど踏み込まず、3)単純作業もあまり苦にしない、という私の性格ゆえだろう。他のモデラーさんは、一隻ずつ丁寧に作るという方がほとんどのようだが、たとえば1/700でAOSHIMA筑摩とFUJIMI利根を同時制作した時などは、同時並行ならではの面白さがあったし、これはこれでそう悪いものでもないと思う。片方に行き詰まったらもう一方を進めておくというやり方でモティベーションを維持するという副次効果もあった。


  【 模型制作と写真 】
  制作中の途中経過を細かく写真に撮って掲載するのは、私にはとても真似できないなあと思う。そんなに手間の掛かることを一々やる気分にはなれないし、背景(室内環境)の写り込みも嫌だし、撮影中の破損リスクも怖いし、そもそもべつに他人に見せて面白いものでもない(自分にとっても他人にとっても)し。
  カメラを使う機会は、一応あるにはある。マスキング範囲の確認のために甲板パーツを一時的に撮影しておくとか。あるいは、エッチングパーツに取り替える前(ナイフを入れて加工する前)のパーツ状態を見本として撮っておくとか。組み立て後に見えなくなってしまう箇所を、記録乃至資料(塗り分けなどの記録)として撮っておくとか。完成状態でどこが露出してどこが隠れるのか(つまりどこを塗装すべきか)を確認するために、艦橋を仮組み状態で撮影しておくとか。そしてもちろん、完成させてから、汚損してしまわないうちにできるだけきれいな状態で写真として記録しておくとか。


  【 制作ガイド記事について 】
  甲板マスキングの効率的な仕方とか、あるいは様々なパーツ群(エッチングなど)を取り付けた後からのマスキングのノウハウとか、艦橋を塗装&組立する順序のガイドとか、そういった現場技術的なテクニックこそが知りたいのだけど、雑誌記事などにはそういう点の懇切丁寧な紹介はなかなか載らない。
  塗装手順もそうだ。キットの組立説明書の手順は塗装作業を前提にしておらず、きれいな塗装をしつつ全体を組み立てようとすると、説明書どおりの順序で制作することはほぼ不可能(あるいはきわめて非効率)になるのが通例だ。それゆえ、どのようにしたら効率的で安全な塗装手順を構築できるかは、モデラーが各自自力で、しかも個々のキットの形状に合わせて考えていかねばならない。塗装手順のプランニングそのものについての基礎理論が体系化されたかたちで提供されたら嬉しいのだけど、雑誌記事や個人webサイトは総じて「人それぞれ」な姿勢のようで――いやまあ確かにそうなのだが――、参考になる情報がなかなか出てこない。そういう工程ガイドこそは、初級者にとって最もありがたいものなのだが。説明書から逸脱する制作工程の自力設計は、初心者が最も苦手とする(というか、そもそも手掛かりや知識が致命的に乏しい)ところであって、「塗装して格好良い模型を作ってみようと思ったが、箱を開封してみたら何をどうしたらいいのかが分からず、最初の一歩で立ち止まってしまって進めずに終わった」というスケモ入門者はわりと多いだろうし、そこをうまく掬い上げられるようにしたらもっと間口は広がり得ると思う。

  そもそも模型誌の個別記事は、一人のモデラーの一つの作品制作過程だけを実例として取り上げて紹介する体裁になってしまっているので、特定の主題に関するテクニックのレベルで抽出して複数のアプローチを詳しく比較して長所短所を論じるといったことが為されていない。また、一つのキットを作り上げる過程をすべて取り上げるので、全工程が浅い説明のままやり過ごされてしまっている。要するに、練達モデラーの名技披露ばかりが前面に出ていて、技術ガイドとしての役割はなおざりにされている。こういうのは、模型誌の良くない点だと思うのだけどなあ。
  そういう観点では、「製作術総ざらい」のムックシリーズは、錨鎖や甲板といった個別部分を取り上げつつ様々なテクニックを是々非々で紹介していて、私にはたいへん有益だった。



  02/24

  【 艦船模型と初心者 】
  艦船模型初心者に対して「まずは1/700駆逐艦を作ってみる」というアドバイスを見かけることがあるが、私としてはあまり賛同できない。
  1)初心者は習慣を身につけておらず、初発のモティベーションが頼りなので、あまり興味がないものを練習と称して作らせるのはかえってよくない影響を生じかねない。たいていは、興味を持つに至った最初のとっかかりは戦艦や空母であろうし、その中から個別に作りやすいものを案内する方が親切だろう。ただし、パーツ数が少ない分、モティベーションが切れないうちに完成させられる(そしてその満足感が次につながる)という側面はあるだろう。
  2)たしかに駆逐艦はパーツ数が少ないが、しかし個々のパーツが非常に小さいので、むしろ素人には作りにくい。例えば煙突にしても、駆逐艦サイズのものをきれいに接着するのは非常に難しく、それならむしろ巡洋艦以上の方がはるかに作りやすい。
  3)キットが玉石混淆であり、また制作の手引きとなる資料(実艦資料、雑誌記事、web上の個人制作記事)も比較的乏しい。個々の艦およびキットにぴったり合った制作記事を見つけるのはかなり難しい。制作補助環境の観点でも、マイナーな小型艦は相対的に不利な環境にある。

  私自身の乏しい経験に照らしていえば、IJN巡洋艦カテゴリーの中から作りやすいものをおすすめするのが良いと思う。素人目にも分かりやすく軍艦らしい佇まいを備えているし、艦橋段積み(戦艦)や艦載機量産(空母)のようなハードワークも少ない。木目塗装部分もほとんど無いし、塗り分けもそれほど難しくない(――ただし、2000円程度の追加支出のつもりがあるなら、最近では木甲板シートが使えることが多いので、その点では戦艦/空母の方が敷居が低いかもしれない。シートを使えばその部分の塗装作業が丸々不要になるし)。

  あるいは、どうせ駆逐艦を作るならば、1/350スケールのキットを勧めたい。価格も実売3000円台くらいで入手できるし、制作難易度は低い(パーツが大きいし説明書も親切だ)し、縮尺が大きいので個々のパーツやディテールが何であるのかを初心者でも理解しやすいし、出来上がりの満足度も高いのでモティベーションが次に繋がりやすい。キットについても、比較的近年の出来のよいキットばかりらしいし、説明書も行き届いているので、あまり心配は要らない。
  これが1/700駆逐艦だと、極小パーツに苦しみつつ、満足な甲板面塗り分けもできずに終わる可能性があるが、大スケールであればずいぶん作業が楽になる。例えば、1/700ではピンセット無しでマストを正確に組み立てるのは至難だが、1/350スケールならば素手でも十分出来る。1/700戦艦と比べても、費用および完成サイズの観点ではほぼ互角であり、作りやすさやハイディテールの観点でははるかに上回ると考えれば、そのアドヴァンテージは明らかだろう。


  【 軍艦色 】
  1) Mr. Colorの「軍艦色(2)」は、ラッカー系で最も入手容易な瓶ではあるけれど、グリーンが混じっているようなヌメッとした半ツヤが好みではない。実際の色調以上に暗く沈んだ印象で見えるし、どうも立体感を損なう。
  2) TAMIYA Colorの二色は、ブルー寄りで、くっきりした硬質な印象と、艦底レッドとのコントラストが、かなり好み。ただし、缶スプレーでしか販売されていないのが難点。スプレーは、そのまま吹くと厚吹きになってしまいがちだし、奥まったところが塗れない。瓶に塗料を吹き出しておいてエアブラシで塗装するという対処は可能だが、それはそれで手間になる。コスト面でも、噴射圧の高さゆえに無駄吹きが多くなるため、おそらく瓶塗料よりも割高だろう。なお、Mr. Colorの呉/佐世保スプレーもブルー系だが、それぞれ色の個性が出すぎているようにも感じる。
  3) 独自調色その一。ホワイトとブラック(プラスアルファ)を自前で混色して、それらしい色を作る。自分の好きなように、濁りのない色を作れるのが、大きなアドヴァンテージになる。しかし、問題点も多い。すなわち、「配合比率がデリケートで、望んだ色をつまく作れるとは限らない(ちなみに規則上は3:1とのこと)」、「同一の色を再現するのが難しい」、「大量に作ってストックするのも大変」、「混色時のロスがある」、「手間が掛かる」、等々。
  4) 独自調色その二。間に合わせの対処として、既製品のニュートラルグレーに少量のブラックを足す。調達容易で、色調整もそれほど難しくないので、現在はこの手法を使っている。大型キットを塗装する場合でも、エアブラシ用に薄めた状態で50ml瓶一本分くらい作っておけば十分足りる。なお、Mr. Colorの「ニュートラルグレー」は、色相はごくわずかにブルー寄りのようだ。
  5) 上記以外の製品を使う。価格、調達容易性、重ね塗りやスミ入れ、等々を考慮すると、なかなか使いにくい。

  なお、スプレー缶の塗料を紙コップなどに吹き出すと、70mlくらいになるらしい。私が試した時は、ロスが多くて50~60ml程度になったが。これはすでに噴霧に適した濃度に希釈された状態なので、瓶換算だとその半分程度の顔料濃度であろうと推測される。ということは、スプレー缶(一本600円)と瓶塗料(一個160円、10ml)を比較すると、ほぼ同等の顔料成分が含まれていることになる。手間を別とすれば、缶スプレーも案外悪くない。ただし、缶のまま噴霧すると、かなり強い勢いで周囲に飛散するので、実際の塗装効率ではかなり劣る。吹き出して溜めておいて、エアブラシで塗装するのであれば、吹きつけ効率は改善すると思う。
  ちなみに、吹き出したスプレー塗料は、まだ多量のガス分を含んでいるので、そのまま瓶などに密封すると破裂するらしい。実際、攪拌したり爪楊枝などを差し込んだりすると細かな気泡がどんどんジュワジュワ出てくる。一日ほど置いてガス抜きをする必要がある。
  また、瓶に吹き出した後の濃度調整に関しては、私は1割ほどシンナーを混ぜて使っている。そのままハンドピースに入れても良さそうな濃度だが、「濃すぎる塗料を吹くと表面が荒れて取り返しがつかなくなるが、薄すぎる分には重ね吹きすれば対処できる」と考えて、念のためやや薄めにしている。


  「リノリウムフィニッシュ」
  リノリウムフィニッシュは、なかなか扱いが難しい。マスキング+吹きつけ塗装と比べて、たしかにうまくやればそれなりに手間を省けるが、きれいに貼付するのがわりと難しく、ひとによって好き嫌いが分かれそうだ。

  甲板面の凹凸に合わせた切り出しについては、公式サイトがリノリウムフィニッシュの『施工例』で紹介しているように、透明のガイドを使ってあらかじめ形状を合わせてシートを切り出していけば、あまり不格好なことにはならないだろう。 そうでなくても、シートは柔軟に伸び縮みするので、おおまかに貼り付けてからデザインナイフで刃を入れていくだけでも、十分きれいな出来映えになる。その意味では、非常にクオリティが高く使い勝手は良い。
  また、超極薄のシートなので、シールとしての厚みを心配する必要が無いし、接着面はかなり頑丈なので、後から浮いてくる心配も無さそうだ。
  金具部分の極細金色ラインもあらかじめプリントされているので、自然な平面としての金具表現が容易に実現できる。金色も、過度にピカピカした感じではなく、小縮尺模型としては好ましい発色だと思う。また、両脇に金色ライン印刷のみを施した透明部分があり、この部分だけをリノリウム塗装の上に貼り付けるという使い方もできる。

  ただし、難点もいろいろある。
  1)貼り付け作業が案外難しい。静電気の影響を受けるようで、ピンセットなどで摘んだ時にかなりフラフラしてしまい、望んだところにきれいに置くのに難儀する。特に、シートを大きく切り出して使おうとする時には、非常に厄介なことになる。幸いにも、裏面の糊はかなり良い品質なので、何度か貼り直しをする余地はある。貼り付けがきれいに出来なくても、爪楊枝などで擦って皺を伸ばせば多少はなんとかなるが、失敗して新しいシートで張り直しをすることもあった。表面のクオリティを確保するという意味では、吹きつけ塗装の方がはるかに確実だ。
  2)極薄シートであるため、重ね貼りをすると段差が目立つ。大きな面積を複数枚のシートに分けて貼り付けたり、あるいは溝などの細かな部分を重ね貼りしたりすると、継ぎ目の凸凹がはっきり浮き上がってしまう。押さえ金具の部分でうまく切り分ければほとんど目立たなくなるが、そういう対処が出来ない箇所も多々発生する。
  3)極薄シートということは、プラの表面の状態にかなり影響を受ける。キットの押さえ金具部分のモールドを削って切除しておく必要があるが、切除跡は十分きれいな平滑状態にしておかなければ、貼り付けた時にかなり凸凹が浮き上がってしまう。何十本もの金具モールド跡をきれいに整形するのは、かなり手間が掛かるし、器用さによってはきれいに処理できない可能性もある。
  4)コスト面。ちょうど先日も書いたように、1/350駆逐艦一隻でも、シート一枚を7割方消費してしまうし、全面リノリウム貼りの1/350巡洋艦クラスだと3枚(約4000円)は必要になるだろう。1/700スケールならば半分以下で済むが、それでもけっして安い買い物ではないし、費用に対して労力及びクオリティが見合うかどうかは難しい。自前塗装ならば、その数十分の一の支出で済むので、コスト面ではまるで比較にならない。
  5)当然ながら、色は完全固定で、ユーザーが色合いを調整することができない。色調はかなり明るく、(光の当て方にもよるが)白みがかっているような感じで、好き嫌いのある色だろう。もちろんTAMIYAの「リノリウム甲板色」スプレーとも大きく異なっているので、併用はできない。ただし、きちんと調査したうえでの正確な色合いとのことだし、上からのコーティングで多少変化させられるが。いずれにせよ、リノリウムフィニッシュを使う場合は、軍艦色や艦底色の部分も明るめの色調にしなければ、リノリウム部分が浮いて見える可能性がある。
  6)金具部分もプリントされているので、ブラウン単色で広い面に貼り付けることはできない。シートをそのまま貼り付けようとすると、艦橋なども金具付きの状態になる。
  7)おそらくウェザリングにも向かない。金具部分も不自然に染まってしまう可能性があるし、また溶剤によってシートそれ自体のプリントが崩れてしまう可能性もある。色調や質感を変えるには、クリアコーティングや薄いグレーなどで吹き付け塗装をするしかないだろう。

  実際に試してみた感触から言うと、一長一短のツールだと思う。適した用途としては、
- 簡単に金具表現を行いたい場合、あるいは金具表現をできるだけ薄くしたい場合。
- 金具表現を入れなければ甲板面が空疎に見えるが、自前工作では難しいという場合。
- 両脇の金具部分のみの透明シールを使う(表面反射は、コーティングすれば落ち着く)。
- 局所的にのみ使う(戦艦の航空作業甲板など)。
- 軽巡洋艦や駆逐艦など、小面積で甲板上突起物の少ないもののみに使う。
- 細かな塗り分けが難しいor面倒な場合に、シールを後から貼る。例えば艦橋部分。
- 特easyキットの甲板シールよりもはるかに高品質なので、代用する。超省力制作。
- 塗装可能な環境にない場合。成形色がグレーならば、ブラックとホワイトはペン塗りで。

  逆に、不向きな対象としては、
- 大スケール巡洋艦などの大型キット。高コストなわりに、完成状態のクオリティは程々。
- 甲板上の突起物が多いキットは、きれいに貼り付けるのが大変。主に巡洋艦や戦艦。
- 色調が合わないもの。特に佐世保系の軍艦色を使う場合が該当するだろうか。
- 1/700では金具がかなり詰まっている(2.5mm間隔)ため、見た目がちょっと鬱陶しくなる。
- 当然ながら、IJN以外には使える余地がほぼ無い。

  ちなみに、台紙は製品毎に異なっているようだ。私が購入した「リノリウムフィニッシュ」では、台紙は黄色の紙製だったが、別の製品(「ジュラルミンフィニッシュ」だったか)は薄手プラ板の台紙だった。使い勝手は大差ないが、紙製の方はハサミで切りやすい(力が要らない)のでメリットで、プラ製の方は歪みにくい(小さく切り出してもシールが剥がれる危険が低い)のがメリットだろうか。

  私は、金具表現は基本的に施さない。理由は、「この縮尺では識別困難だろう」、「キットのモールドによる陰影程度で十分」、「実際にはそんな金ピカではないだろう」といったあたり。

  押さえ金具については、「極細メタルリギングをゴールドに塗装して貼り付けたら、真鍮線よりも細くて精密感が出るんじゃないか」と考えたことがあったが、いろいろ問題がありそうだ。きれいな直線にするのが難しいとか、細すぎて貼り付けるのが大変とか、コストが嵩むとか、細すぎて目立たないとか……。


  「丸」やそのあたりの軍事(軍事史)雑誌って、一見すると資料志向のテキストがたくさん掲載されているわりに、典拠が何も書かれていない記事ばかりで、まるで信用できないのだよなあ。要するに、読み手が個々の記事の信頼性を評価したり文献を辿って自分なりの知見を広めたりするための手掛かりがまるで提供されていないということだから。まっとうな専門知のライティングの基準からすると、最低限の基礎も出来ていない、異常な状態なのだ。もちろん、中にはちゃんと注を置いて依拠した文献や参考になる文献を示してくれている寄稿者もいるけど、そういう方々は肩書を見るとたいてい雑誌ライター以外の(現場での)本格的なキャリアを持っている人物だ。雑誌系軍事ライターの人々は、そのあたりがずいぶんいい加減なようで、なんともしょっぱい。



  02/20
  [tw: 833175800543219712 ]。
  ありがたやー。(HASEGAWA信濃もまだ作ってないけど……いっそ同時制作しようか。)


  【 艦底の工作:スケールによる違い 】
  フルハル好きではあるのだけど、艦底部分の扱いには毎回苦慮しているというのも事実だ。どのような工程で制作するか(貼り付けるタイミング、塗装のタイミング)か、どのような順序で塗装するかは、パーツ分割の仕方やキットのクオリティ(パーツ合わせの精度)、キットのサイズ(取り回しのしやすさ)によって、最善手はその都度様々にな変化する。

  1) 最もイージーなのは、上下分割された船体上部と艦底部を個別に塗装して最後に接着するという手順だ。制作中も船体部分を完全に安定した状態で置いておける。ネウロイ赤城のように艦底部分も凝った塗装をする場合は、先に接着してしまうと上部構造を破損してしまいかねないという問題もあった(――私のスキルと空間把握と器用さでは、艦底接着した状態から六角模様塗装したり船体ディテール追加したりすることは無理だった)。それどころか、接着せずにおくことで、いつでもWL/フルハルを変えて展示できるという暴挙処方もあり得る。
  しかし、当然ながらきれいに密着接合させたり接着箇所の表面塗装を平滑にしたりすることが難しくなるので、ちゃんとしたモデラーは通常はこのアプローチは採らない。キットの構造上、しっかり左右貼り合わせさせるために、船底部分まで一体で組み立てる必要があるという場合もある。また、厳密にいえば、キットの艦底パーツ分割ラインと本来塗り分けるべきラインとが一致しない場合もある(――塗り分けは完全な水平ではなく、ごく微妙ながら凹状に湾曲したラインになる筈)。

  2) 船底部分まで上下一体型のパーツ構成である場合や、先に船体と接着しておくという場合は、側面はきれいに処理できる。ただし、全体の取り回しが難しくなる。
  塗装の順序については、境界線のはみ出しを処理することを考えると、基本的には「グレーを先に塗装してから、艦底の赤を塗る」という方が良いと思う。しかし、制作工程上の取り回しを考えると、最後にキットをひっくり返して底面を塗装するというのはいかにも危なっかしいし、マスキング範囲にも気を使わねばならない。艦底部分を先に塗ってしまう方が、制作中の破損リスクは低くなるだろう。私の場合、艦底部分は缶スプレーで一気に塗ってしまうので大きな問題にはならないが、それでも扱いにくいのは確かだ。また、艦底部の赤系塗料の発色をきれいにするためにも、艦底部を先に塗ってマスキングしておく方が良さそうだ。したがって、可能なかぎり、艦底→船体の順で塗装するようにしているが、難しい(破損の虞が高い)場合にはグレーを先にする。
  雑誌やwebの制作記事を見ていると、フルハルでは艦底部分を先に塗るのが多く、WL(1/700)では艦底部分を最後に塗るのが多いようだ。雑誌記事でもフルハルキットの制作記事は少ないし、総じてディテール工作のことばかりで工程制御の視点はあまり書かれていない(艦底塗装のプロセスがろくに言及されていないことも間々ある)ので、実際のところはよく分からない。大スケールキットやフルハルだと、艦底側全体を後から塗るのが大変だし、しかも乾燥するまで浮かせておくことになる(?)ので、先に艦底を塗装するのが合理的なのだろう。その一方、小スケールキットのWLでは下端の赤い線だけを塗ればよく、その細いラインだけをマスキングして保護しておくのも不安定だし、見える範囲もごく狭いため色の濁りもあまり考慮しなくてよいから、後回しにする方が好都合なのだろう。

  ちなみに、TAMIYAやFINEMOLDSの1/350キットはハル部分が別パーツになっている上下分割形式(いわゆるバスタブ型。WL仕様と選択制作できる)が多いようだ。それに対して、HASEGAWA、AOSHIMA、FUJIMIの1/350キットは基本的に船底までの一体型(左右貼り合わせ形式)のようだ。少なくとも私が持っているキットは全てそうなっている。ただし、FUJIMIの艦NEXT島風は、艦底部別パーツの仕様とのことだが、これは成形色による色分けのことを考慮したためだろう。また、潜水艦キットなどの場合は、もしかしたら事情が違っているかもしれない(※未制作)。
  それに対して1/700スケールだと、周知のとおりWLからの派生商品であることが多く、たいていはハル部分が別パーツになっている。海外メーカーのスタイルはよく知らないが、先日言及したケーニヒも、艦底が別パーツのFH/WL選択式だった。

  同様に、軍艦色とリノリウム色を塗る先後や、煙突のブラックを塗るタイミング(順序)も、人次第、キット次第で異なるようだ。絶対の正解というものがあるわけではないので、各自のスキル次第で、あるいは効率性/精密性/安全性のバランスを考えて、それぞれ良いようにやればよいだろう。工程を自分で考えて計画するのも模型制作のうちだ。

  私見では、1/350艦船にFH/WL選択仕様は必要無い。1/700であれば、机上に置いて眺めたり、いくつも制作して並べて遠景で(あたかも航空機から)臨むように鑑賞したりすることができるが、1/350ではそうはいかないからだ。たとえば全長60cmの模型を机の上にポンと置くのは難しいし、WL風のジオラマにしようとしたらベースが大きくなりすぎる(必要な面積が4倍になる)。それに、この大きさで洋上のみのかたちにすると、存在感が強すぎて、見た目が鈍重になりすぎる。サイズも重量も1/700とは比較にならないので、艦首あたりを片手でつまんで持ち上げるわけにもいかないから、取り回しのためには艦底部と台座がついている方がよい(WL仕様で底部に台座を取り付けるのは、強度に不安があるし、そもそも不格好だろう)。ディスプレイする際にも、大型&高級模型なのでちゃんとした場所に飾ることになるだろうが、そうするとフルハルの方が全体をより良く鑑賞することができるだろう。工作の観点でも、艦底部分と船体部分を隙間なく貼り合わせるのは、1/350スケールだとかなり大変な作業になるので、WL選択式よりもいっそ上下一体で左右貼り合わせの方がはるかにマシだと思う。実際には、TAMIYA筑摩もFINEMOLDS綾波も、艦底パーツの合いはほぼ完璧で、ほとんどストレスなく接着できたが、気を遣う作業要素が増えたのは確かだ。


  ともあれ、やはり1/350艦船は楽しい。一般的な市販プラモキットとしては事実上ハイエンドクラスの商品であり、ディテール密度やパーツ精度や作りやすさのクオリティは一級品であって、得られる満足もトップクラスだが、そのわりに価格は極端に高いわけでもない(巡洋艦ならば6000円台から、つまりフルプライスゲーム1本分以下、アニメBD一本[2話]分程度で入手できる。最高ランクの赤城でもせいぜい実売17000円程度)。ラインアップもここ十年ほどのうちにかなり充実してきた。一つ完成させるのに掛かる時間も1/700スケールの数倍になるが、価格やディテールに照らしていえば十分割に合うだろう。キット自体の完成度が高いので、部分塗装程度でストレートに組んでも十分見応えのある模型として完成させられる(――FUJIMI島風はさらにその先にまで行った)。大サイズキットを扱える器用さがあって、なおかつディスプレイスペースが確保できるならば、定期的に取り組んで楽しみたいカテゴリーだ。是非おすすめしたいが、おすすめできそうなオタク知人が私にはいなかった(オチ)

  ただし、ガレージキットや完成品モデル(高級カーモデルなど)、高額フィギュア、ドール、帆船模型、鉄道模型など、視野をほんの少し広げればもちろん上には上がいる。その一方で艦船も、エッチングパーツなどを一揃え購入すると、すぐにプラス15000円くらいになってしまうので、一概にリーズナブルとは言い切れない。プラモとして組んで飾って動かして楽しむ分には、ガンプラ(MGクラス)の方がはるかに敷居が低いだろう。


  リノリウムフィニッシュは、うまく使えれば便利なのでなんとか活用したいのだけど、効率の良い切り出し方を考えなければ、相当の無駄が出てしまう。きれいに貼れるとしても、1/350スケールだと巡洋艦一隻に3枚(4000円弱)は必要になるので、コスト面では致命的なほど割に合わない(塗装ならば、せいぜい100円程度の費用で済む)。さしあたりは「小型艦や1/700キットに使う」、「とにかく手間を省きたい」、「吹きつけ塗装ができない」、「押さえ金具表現をしたい」といった場面に限定されるだろう。シート表面は、爪で多少擦っても剥がれないくらいには頑丈だが、ラッカー塗料に侵されるので、「上からおおまかに塗装して、不要な箇所を拭き取ってリノリウム地を露出させる」といったような使い方はできない。


  【 全体の工程計画 】
  効率的に制作するには、だいたい以下のような順序がよいだろうか。こういった全体の工程プランニングは、雑誌等でも主題として抽出して論じられることがほとんど無いので、どのようなノウハウがあるかはよく分からない。キットの説明書には組み立て手順のことしか書いてないし、塗装制作をしようとする初心者がまごつくところだと思うのだけど……。一律に同じ手順が正しいとは言えない問題だから、記事にしにくいのだろうか。
  1a) 船体構成(貼り合わせ)。密着固定に一日置くことになる。
  1b) 各部を、可能な範囲で組み立てていく。船体にはまだ取り付けない。
  1c) リノリウム部分、木甲板部分、艦底部を塗装。十分乾燥させて、マスキングする。
  2) 全体を軍艦色で塗装。エッチングも、プライマーを吹いてから板付きのまま塗装しておく。
  3) 小さな部分(煙突や艦載艇など)を個別に塗装する(※必要に応じて、軍艦色よりも先に)。
  4) 各部取り付け。エッチングも後から取り付けていく(※切断跡は適宜リタッチ)。
  5) スミ入れを施す。必要ならば最後に全体をコーティング。
エッチングを取り付けた状態でマスキングするのは大雑把で不器用な私には難しいと判断して、このような手順にしている。不器用ということは無いが、それほど器用でもないので。

  もっとイージーに制作するなら、ランナー状態で一気に軍艦色を塗布してから組み立てて、ゲート跡や合わせ目部分の塗装は後から適宜補修すると、多少楽になる。特に、個々のパーツに一々持ち手を付けながら塗装していく手間が省けるのが大きい。缶スプレーを使えば、吹きつけもかなり早いし。
  ただし、これについては、「合わせ目処理をすることを考えると、むしろ二度手間になる」、「塗装の品質管理がうまく出来ない(貼り合わせてみたら色味が違っていたなどの事後的なミス発覚の可能性がある)」、「エアブラシの場合はメリットにならない」、「グラデーションなどの繊細な塗装をしない場合のみに限定される」などの異論もあるだろう。一応色分けを再現しつつパチパチ組み立てるだけのイージーな制作にすぎない。


  百円ショップで、塗料瓶がぴったり収納できるボックスが見つかった。3×8=24個収納できる。間仕切りは2枚で、3列/3列/2列に分けてちょうど入れられる(最後の2列のところだけはちょっと緩む)。間仕切りの少なさは少々不満だが、実用上はたいして問題にならないし、どうせ100円なのだから仕切りの分だけ買い足してもいい。以前から使っていたものは3×8=24個収納で、間仕切りは3枚(つまり2列ずつ4組でぴったり収納できる)。大瓶はきれいに入らないが仕方ない。
  そして、整理できたところで個数を数えるのも容易になったわけだが、ボックス6個になるとはいったいどういうことだ。ホワイトなどの多量の使う分のストックもあるとはいえ、塗料だけでざっと2万円分もあるということになる(――この他に使用済みで廃棄したものも数十個あるので、実際の支出総額は2倍近くになる)。


  そういえば最近はパーツを飛ばしたり指先を傷つけたりすることが無くなっているので、手先技術の点でも習熟してきているのかもしれない。もちろん、だからといって気を抜いてはいけないが。



  02/16
  室温18度。そろそろ模型制作にも適した気候になってきた。もちろん年中いつでも出来るのだけど、手作業の精密さが要求されるので冬季はやりにくいし、湿度の高い時期には吹きつけ塗装がやりづらいので、春と秋の趣味になりやすい。
  アウトドア趣味(スポーツや旅行、バードウォッチングなど)を除くと、季節性のある趣味や環境条件に大きく左右される趣味はわりと珍しいかもしれない。ガーデニングとか、あるいは旬のある食材での料理趣味とか、天体観測(空気の状態によって見え方が変わる)とか……。


  【 メモ:アニメ/ゲームと模型 】
  アニメやゲームに登場した物を模型として手に取れるのは、とても楽しく面白い。人物のフィギュアやごく一部のロボットもの以外は、市販品がリリースされることはなかなか無いけれど(だから、意欲と技術のあるモデラーは自作する)。組み立てキットであれ完成品であれ、立体物をじかに手にして眺めることによって、その対象のリアリティを感じることができるし、全体の造形やディテールをより良く知ることもできる。以前制作したMG版Ex-Sくらいになると、展示台を含めて高さ30cm以上にもなるので、「ある」というよりも「いる」に近いほどの存在感があり、廊下に置いて日々傍らを通る度に撫でてやりたくなる。

  ガンプラと特撮ロボット以外だと、有名どころでは『宇宙戦艦ヤマト』『サンダーバード』『スタートレック』『ラピュタ』『マクロス』『攻殻機動隊』『パトレイバー』『STAR WARS』『The Five Star Stories』『エヴァ』『サイバーフォーミュラ』には関連商品が多数存在する。『ゴジラ』『ガメラ』などの怪獣ものにも、プラモがあった。また、既存製品からの派生品のかたちで、『頭文字D』(自動車模型)や『アルペジオ』(艦船模型)などもある。イ401はどう見ても派生商品どころではなかったが。人物とメカがほとんどだが、情景模型カテゴリーの「呉軍港 『この世界の片隅に』Ver.」のような実例もある。『王立宇宙軍』『リヴァイアス』『ラストエグザイル』『モーレツ宇宙海賊』『シドニアの騎士』なども、作中に登場する飛行機や宇宙船のプラモを発売した。その他、ガレージキットなどの私家版キットも多数(少量)存在する。
  キャラクターフィギュアを別とすれば、アニメ/ゲームと模型制作は、元々それほど近い分野ではないだろう。それゆえ、おそらくは知名度(売上の見込み)の見地から、コラボ元の作品はほとんどが映像作品(アニメや特撮作品、あるいは少なくともそうしたメディア展開を含むシリーズもの)である。既存キットの派生品ではないオリジナルキットをリリースした『バーチャロン』(ゲーム)や上記『The Five Star Stories』(メインは漫画)、『斑鳩』(ゲーム)は、稀少な例外だろう。派生キットならば、『エースコンバット』(ゲーム)や『紫電改のマキ』(漫画)などもある。『ホイホイさん』(漫画)がシリーズ製品化されたのは驚きだった。逆に、プラモ発でアニメや漫画にメディア展開した例として『ZOIDS』がある。

  アダルトゲーム関連では、代表的なのは『マブラヴ』のロボット(「戦術機」)だろう。『JINKI』シリーズも、一応ここで挙げてよいだろう。『BALDR FORCE』はたしかコンシューマ版にロボット(「シュミクラム」と称されるヴァーチャル世界での自機)の完成品が付属していた。プラモは金型製作が非常に高くつくらしいので、市場の比較的小さいアダルト系ジャンルはなかなか難しいだろう。メカよりも美少女フィギュアや抱き枕カバーの方が主戦場になるが、近年ではアニメキャラにずいぶん押されている。

  言うまでもないが、実写作品には実在の乗り物や兵器が多数登場するし、実物ベースの模型もさまざまなものが販売されている。有名なのはAOSHIMAの『西部警察』シリーズだろうか。『地獄の黙示録』のPBR(ボート)とかも作ってみたい。

  というわけで、また何か作りたいな。模型欲がうずうずする。


  そういえば、昔々、親戚の家からよく分からないメカプラモ(の壊れかけ)をいくつかもらってきたことがあった。よく分からないままにセメダインか何かで補修しようとしたが結局直せず、ちゃんとした自立状態には戻せなかった。たぶんあれが私の模型原体験。『STAR WARS』のAT-STだったか、それとも『MACROSS』のリガードだったのかなあ……。今検索してみても、ヒョロ長二足歩行メカなのは合っているけれど、もっとディテールがゴチャゴチャしていたような憶えが……。それ以外にも、たしか3種類ほどあったし。なにかしらの海外キットだったのかもしれない。


  【 成形色雑感 】
  無塗装パチ組みには堪え得ない程度の、ランナー単位での大雑把な成形色分割には、どのような意味があるのだろうか。設定上の色分けとは異なるパターンで成形色が複雑に異なってしまっているので、下手に色透けが生じると色調の統一感が損なわれかねないだろうし、なまじ設定色に近い成形色だと未塗装か塗装済みかが識別しづらくなると思うのだが、それでも単一色プラにしない理由は何だろうか。さしあたり考えられる考慮要因は:
  1)無いよりはましという消極的な判断。製造コストにもほとんど影響していないだろう。
  2)色透けは問題にはならないので、せめてもの配色のおおまかな指標として。
  3)ユーザーの組み立てミスを少しでも防ぐため。実際にはほとんど意味は無い。
  4)キット自体の見栄え。ただし、店頭開封できないことも多いし、意味は薄いと思われるが。
  5)場合によっては部分塗装のみで済ませられる余地がある。マイナーな論点だが。
  6)そのキットの、あるいは模型の元になった実物の、イメージを反映させている。
  7)ユーザー配慮ではなく、工程上の都合(手作業でパーツを詰める際の都合)かも。
  8)成形色コントロールは、メーカー自身のノウハウ蓄積にも一役買っている……かも。
だいたいこのあたりだろうか。
  個人的には、パーツが見やすく、塗装済みか未塗装かが識別しやすく、塗料の食いつきが悪くないような適当な色で単色成形してくれてもよいのだけど……。どうせ全体塗装してしまうのだし、あるいは無塗装で組み立て工作だけを楽しむ場合でも、中途半端な色分けよりはきれいな単色で成立している方がありがたい(例えばTAMIYAのAFVなどは、色合いも十分美しいし)。
  スケールモデルでは、基本的にすべてのパーツが単色成形で、全体の基調となる色か、あるいは無難にライトグレーあたりで作られている。AFVは実車に近い色で成形されていることも多いが、カーモデルは派生キットでもボディーパーツは白一色のままということが多いようだ。ただし、履帯(ゴム)のように素材が異なるものは当然別色になるし、ウィンドウは航空機キットでもクリアパーツになる。カーモデルでもボディー(白)/シャシー(黒)/ガラス(クリア)くらいの色分けは一般的に行われている。艦船でも、飾り台や艦底パーツ(が付属する場合)は別色になっていることが多い。他方、TAMIYAやPITROADは単色志向が強いようだ。
  もう一つの要因として、例えば「クリアパーツは硬くて割れやすい」といったような影響がある。成形色によって切削工作のしやすさにどのような変化があるのかよく分からない。むしろメーカーによってプラの感触に多少の違いがある。

  というわけで、明日はまた塗料を買い込んでこよう。安いとはいっても、一瓶160円+税で、10個や20個はすぐに必要になってくるし、調色した塗料を保管する専用瓶もそれなりの価格なので、大型キットを全塗装しようと思ったら塗料だけですぐに2000~3000円のコストが掛かる。キット一つ制作する度にこれだから、継続的に模型制作をしていると塗料代だけで意外なほどの支出になっていたりする。艦底色などは缶スプレーで一気に塗ることがあるし、これも一本あたり600円or540円+税で、中味はすぐに無くなっていく。

  というわけで、塗料だけで6000円になってしまった。1/350艦船ならばこれで4隻くらいは作れる筈だが、言い換えれば一隻あたり1500円程度は掛かるということだ。さらにICMの1/700ケーニヒが入荷していたので大喜びで一緒に購入して、めでたく大台支出に。うぐぅ。

  WWI期の艦船も好きなんすよー。錨の柄(シャンク)部分などがやたらほっそりと繊細に作られていたりして大変そうだけど、手間を掛けて丁寧に工作して、なんとかして良いかたちに完成させてやりたい。

  帰宅してから数えてみたら、Mr. Colorの小瓶のものだけで100本以上ストックがあった。大瓶に調色したものもいろいろ。予備の空瓶も十分。これなら当分保ちそうだ。



  02/07

  【 何を作るか:個人的な最適化の問題 】
  模型趣味をどのように展開するかは、部分的には、制作時間と制作コストとディスプレイスペースの間の最適化の問題になる。あまり急いで量産しても、ディスプレイできる場所が確保されていなければ意味が無い。コスト(≒アフターパーツ類)と制作時間(≒作業量)はおおむね比例して増加するが、ものによってはコストを掛けることによって作業をショートカットできる場合もある(例えば木甲板シートや専用マスキングシート)し、逆にお金を掛けずにスクラッチ工作等で自分なりの考証に沿ったディテールを追求する場合もある。ディスプレイスペースの確保は、陳列棚の費用のほかに、賃貸住まいの場合には影響してくる。
  制作時間がとれない場合は、手の掛からない小型キットで数を稼いだり、逆にアフターパーツの潤沢な大スケールキットをゆっくり作り込んでいったりするという選択肢がある。時間が無くて、「制作」に重きを置かないならば、完成品を購入してもっぱら鑑賞の次元でのみ楽しむということもできる。苦学生などであまりお金を掛けられない場合は、初期投資とランニングコストが問題になってくるだろう。部屋が狭い場合はどうなるだろうか。小さいキットを大量に作るよりも大スケールキットを丹念に作り込んでいく方が、結果的に完成品の占有容積が小さくて済むこともあるかもしれないし、あるいは逆に、作業スペースの確保が難しい場合には、小型キットを丹念に作っていくことになるかもしれない。

  いろいろ考えて、私の技術/嗜好/環境では、1/350の小型~中型艦船を作るのが最も効用最大化できるという結論になる。つまり、「極小スケールの作業はしたくない(神経によろしくない)ので、大きいスケールでゆったり作れる方が楽(嗜好と技術)」、「あまり手を加えなくても各部のディテールを楽しめるので、大スケールキットにアドヴァンテージがある(嗜好と労力)」、「ディテールを塗装で潰してしまいたくないので、大スケールの方が安心(技術)」、「形状見本としてフルハル状態で鑑賞したいので、大スケールかつフルハルキットの1/350シリーズの方が楽しめる(嗜好)」、「特に好きな艦船が多いわけではないので、製品ラインアップの少なさは問題にならない(嗜好)」、「模型のサイズや価格は、1/350でもさしあたり耐えられる(環境)」、「数ヶ月規模の長期間制作は難しいので、小スケールキットで自前工作の労力を掛けるよりもむしろ、1/350スケールでキットのハイクオリティに頼れるのはありがたい(環境)」、「ただし、大型艦だと、結局長期間制作になってしまいやすいので手を出しにくい(環境)」、こうした条件を満たすのは、「縮尺はできるだけ大きく、しかし実サイズはそれほど大きくない(≒工作手順がそれほど複雑ではない)キット」ということになる。

  とはいえ、小型艦船(駆逐艦や潜水艦)はそれほど好みではないので、実際には巡洋艦くらいのクラスを可能な範囲でお気楽に作るという路線になっている。工作それ自体やディテールや考証にはあまり執着が無いので、程々に完成させて各部を眺められれば十分楽しい。戦艦は制作が非常に大変なのでなかなか手掛けにくいし、空母も艦載機を一々作るのが面倒だ(作らなければ作らないで、飛行甲板上の見栄えがのっぺりしたものになってしまう)。もっとも、巡洋艦でも、通風筒を一つ一つ植えていくくらいの作業はあったりする(例:AOSHIMA摩耶最新版)し、マストの構築はむしろ戦艦よりも複雑&デリケートになっている場合があったりする(ただしTAMIYA筑摩やFINEMOLDS綾波などは、マストパーツをABS素材にするという配慮を凝らしていた)。
  あるいは、大きめの航空機やAFVをストレートに組むくらいでもおおむね条件に合致するのだけど、細かなグラデーション塗装があまり得意ではないし、汚し演出もあまり好きではないし、組み立てそれ自体はわりと簡単に済んでしまうので、私の趣味嗜好にはあまりうまくマッチしないことが分かってきた。カーモデルについては、そもそもべつに自動車一般が好きではない。鉄道模型は、今のところ手を出せる余裕が無い。

  もちろん、小スケールにもメリットがあって、「安価である」、「早く完成させられる(だいたい1/350の数分の一の時間で済む)」、「商品のラインアップや在庫量が充実しているので、欲しいものが入手しやすい」、「アフターパーツ等も充実しており、なんのかんので作りやすい」、「多少失敗しても誤魔化しが利きやすい」、「世間的にもノウハウの蓄積と共有が進んでおり、参考になる情報(制作工程紹介記事等)も入手しやすい」といった点は長所になる。
  特に空中線工作に関しては、小スケールの方が圧倒的にやりやすい。大スケール制作だと、リギングの撓りや震えが大きくなるので取り付けしにくいし、きれいな直線でピンと張るのが難しいし、長さの調整も面倒になる。これが小スケールであれば、リギングもまっすぐのままきれいに接着できるし、線のたわみも生じにくい(生じても目立ちにくい)し、接着したい両端を視界に入れつつ作業することができる。



  02/02

  【 福袋雑感 】(※話題が一ヶ月古いとか言わない)
  福袋やトレーディング○○のような商品やプライズゲームの類には、基本的に手を出さない。お金を出して買うものに、不確実性が入ってくること、つまり特定のものを買いたくてお金を出しているのにそれが入手できる保障が無いという状況が、とても嫌なのだ。また、場合によってはダブりが生じる虞があり、そういう無駄が大嫌いだというのもある。
  もちろん、書籍やゲームや映画でも、代金を支払った時点では自分がどのようなものを体験できるかという内容はたしかに未知の状態であるが、「何を」入手するのかという個体の枠そのものが確率的に変化するわけではないから、それはべつに問題ではない。
  そんな私としてはきわめて珍しいことに、先日F-toysのとあるシリーズを模型店で買ったのだけど、その時も欲しいものが出るまで一つずつレジ前で開封させてもらって、目当てのものが全部出たらそこで切り上げるというやり方をさせてもらった。レジのお兄さんの反応を見るに、こういう買い方をする客はいないようだ……きわめて合理的なやり方だと思うのだけど。私自身が入手確実性とコスト最小化を追求するうえでも、そしてレジの負担軽減のためにも(※当然ながら、他のお客さんに見られると恥ずかしいのでレジ前を長時間占拠してしまわないように、私以外の客が全然いない時を見計らった。開封に掛かった時間はほんの2分程度だったし、店員さんにも迷惑は掛からなかった筈だ)。
  ちなみに、その時は「8種+シークレット+ダブり1つ」のアソートの中で、欲しいものが4種があって、一個ずつ開封していったら4つ目までできれいに揃った。わたし、すごく、らっきー。F-toysのアソートはノーマルが各種1個ずつ入っている仕様であり、さらにダブり分がノーマル8種の中から均等に入っていると仮定し、かつシークレットは欲しくないという場合に、10個入りのアソートから4個引いて欲しいもの4種4個がきれいに揃う確率は、えーと、約0.71%……あらら、私はそんなに運が良かったの?

  ちなみに、最も運が悪い場合には、「10個中6個まで引いても、欲しいもの4種が一つも手に入らない」ということもあり得る。そんなことになる確率はわずか0.48%だが。さすがにそこまでひどいことにはならないだろうと踏んでの行動だったが、最低限の自制として「引きがまずくても4個まで、あるいは(どんなに引きがひどすぎたり中途半端だったりしても)5個までで止める」という基準はあらかじめ心の中で設定していた。もちろん、アソート全体を箱買いすれば欲しいものは必ず揃う仕様だし、箱買いしてもせいぜい6000円未満の出費で済むのだが。F-toysのクオリティとレアリティならば、仮に「欲しいもの4個(プラスおまけ6個)を6000円で買った、つまり一個あたり1500円で買った」と考えても惜しくないくらいだし。

  これ以前に、そういう確率的な購入行動をしたことはあったかなあ……そうだ、2010年か2011年頃に、京都SfMpで気まぐれに200円くらいの艦船ガチャポン(おそらくタカラトミーアーツの「連合艦隊コレクション 第弐艦隊」)を回して、赤城が出てきたのだった。出来は程々ながらなんとなく気に入って机の上に置いていたが、残念ながら引越の際に捨ててしまった。うーん、なんのかんので私の人生は赤城づいているなあ。特に好きというわけでもないのだけど。

  ただし、1)何でもいいからたくさん欲しいとか、2)いろいろなものが欲しいとか、3)予想外のものを手に入れて視野を広げるきっかけにしたいとか、4)経済的に十分な余裕があるとか、5)メーカーに対するいわゆる「お布施」のつもりがあるとかいった場合には、そういう福袋を買うのもありかもしれない。PCゲームだと、旧作詰め合わせBOXセットはそれに近い性質のものだし、モデラーも多種多様なキットを大量に買う(そして積む)人が多いし、卑近な例だとお菓子の詰め合わせも同じようなものだし、ハンカチなどの日用品も、特定のものでなければいけないということは無いから多少割安にたくさん購入できるのは嬉しいということはあるだろう。そういう場合には、中味の分からない福袋を買うのは、経済合理性と楽しみを両立させる行動になりうる。



  01/27

(2017年1月27日、自宅にて撮影)
隼鷹。店頭陳列の箱をレジに持っていったら、代わりに倉庫からこんな外箱入りの分を取り出してきて下さった。親切な店員さん、ありがとう。おかげで、持ち手をつけるだけの簡易包装で持ち帰れた。印刷はこんな感じにシンプルで、人前でも大丈夫。外箱はW:78cm/D:27cm/H:19cm。赤城などはさらに大きいが。

  これは要するに「輸送用のカートン(ロット)パッケージ」の一種であろうかと思われる。通常の商品であれば、カートン一つの中に10個なり12個なりの個別パッケージを収納するのだが、このような(物理的にも価格面でも)大型の製品の場合は「1カートンに1個」になっていて、それゆえたまたまこうしてそのまま引き渡せたということだろう。

  価格面はともかく(※定価20000円+税だが20%くらいの値引きがあるし、専門書の複数巻セットやCD/BDボックスなどのさらに高額な商品も存在する)、物理的なサイズに関しては、こんな家電品並の大きさの商品はオタク界には滅多に存在しない。
  大型模型のほかには、類似カテゴリーのドール(ただし軽く一桁上がる)や大型フィギュアやモデルガン周りとか、自転車のホイール(数千円くらいのものも存在する)とか、アーケードゲームの筐体(ただし基本的には中古売買)とか、まあ、そのくらいだろうか。ゲームだと『鉄騎』が相当なものだったらしい。音楽趣味(楽器)もホルンやコントラバスやドラムセットあたりになるとたいがいな大きさだが、定期的にいくつも購入するようなものではないし、家電並の「設備」カテゴリーに近づくので、別枠扱いでノーカウントだろう。アクアリウム趣味も、大型水槽をいくつも購入する場合があるが、水槽それ自体が趣味の目的物ではないし。また、面積だけでいえば、ポスターや布ものグッズはかなりのサイズになる。
  アダルトゲームだと、たまに結構な大型パッケージが出てくる(『家族計画』とか、lightやBLACK CYCのボックスセットとか、忌むべきSfMp版とか)が、サイズとしてはそれほどでもない。
  こう考えると、比較的割安で――もちろんけっして安価ではないが――こんな珍しい体験ができるという意味でも、模型趣味は面白い。

  「それらしく仕上げるためには、1/350潜水艦用の(汎用の)手摺エッチングもいずれ調達しておかねば」などと考えていたが、箱を開封してみたらちゃんと手摺エッチングが同梱されていた。ありがとう、ありがとう、AOSHIMAさん! パッケージ側面の完成見本には手摺がついていなかったので誤認したが、よく見たらテキストで「エッチングパーツ(手摺)」と明記されていた。

  大スケールでの戦艦(FUJIMI金剛など)、巡洋艦(TAMIYA筑摩など)、駆逐艦(FINEMOLDS綾波)のキット構造はとりあえず理解できたので、今回のHASEGAWA隼鷹は大スケールの空母キットがどのような作りになっているかを把握するという目的もある。ただしイ401は、さすがに1/350潜水艦キットの標準的な見本にはならないだろうけど。あとは外国艦やWWII以前の時代や現用艦も視野に入れつつ、1/350スケールでもいろいろ経験を積んでいきたい。



  01/20

  【 大型キット購入について 】
  精密キットは、通販だと輸送中の破損がリスキーなので、店頭購入して持ち帰る方が安心。特に大スケールの艦船模型だと、マストや機銃などのデリケートなパーツが多いわりに箱の中はあんまり詰まっていない(ガサガサ動いてしまう)ので、中味をよく知らない一般宅配の運送スタッフに扱われるのはちょっと怖い(TAMIYAの1/350キットとかは箱の中に間仕切りを入れていたりしてパッケージングがちゃんとしているけど。ロボット模型のBANDAIも同様)。関西だと電車もそれほど混まないし、最寄駅から自宅まではタクシーを使ってもいい。というわけで、明日はストレス発散も兼ねて隼にゃん(およびその他諸々)を買ってこよう。空母も一つくらいは1/350の制作経験を積んでおきたい……どうせ積むのは経験じゃなくて箱だけだとか言わない。


  【 大和型 】
  残念ながら大和型のフォルムはちっとも好みではない。艦首方面は妙な曲線を描いていて落ち着きがないし、バウ形状や三連装主砲も個性が強すぎるし、艦橋は「顔」が見えない感じだし大きさのわりにほっそりしていて弱々しいし、甲板面も総じてのっぺりしているし、それでいて銃砲類が大量にブツブツ付いているし、横幅が妙に広くて間延びして見えるし、逆三角形のマストも不安定感があるし、艦尾の航空機甲板も中途半端なアマルガムに見えるし、艦首側の細っこさと艦尾側の丸まりぶりのアンバランスさで全体のシルエットは間が抜けて見える。それぞれ機能上の進化洗練によってこうなったのだという合理性はそれはそれで理解できるのだが、見た目の面白さはまるで感じられないのだよなあ。模型として見ても、この艦の外見上の諸特徴を活かしつつ迫力のある写真にするのはかなり難しいだろう。
  好きな人は、どういう点を気に入っているのだろうか。戦史上の存在感とかシンボリックな思い入れとか(造形とは無関係な要素)を別にしてみると、巨大な主砲を格好良いと思う人もいるのだろうし、艦橋も見慣れれば好きになれるのかもしれないし、幅広の船体を「でっぷりしている」とは捉えず「悠然としている」と捉えることもできるかもしれないし、機銃の六角形配置や煙突周辺の段々構造に面白味を見出したり、艦橋外壁の金属感が良いというセンスもありかもしれない。そもそも軍艦(兵器)のシルエットに「美」や「見応え」を求めること自体が筋違いだといえば、まあ確かにそうなのだけど。
  ちなみに私は、「(兵器の)機能美」を語る言葉は基本的に信じていない。そうした言葉は、本当に「美」に向かっているのだろうか。機能性に関する認識を賞賛の言葉にしようとして「美」という別種の概念に仮託しようとしているに過ぎないのではないか。機能美を語る人々の「美」意識は、多くの場合、まるで信用ならないものだと思っている。


  AFVのキットも、開封してランナー状態で眺めているだけで楽しくなってくる。きれいな平面と精度の高いエッジ、程良いパーツサイズとくっきりしたディテール。そして、個々のキットパーツが「(艦船模型のような)実物再現のために必要上バラバラに分割されたピース群」ではなく、「それぞれが意味のまとまりのあるユニット毎のパーツ群」として見ることができるというのも大きい。車輪は車輪、シャフトはシャフト、スコップはスコップ、人物は人物としてパーツになっているので、ランナーを見ているだけで「これがこうなってこうなるのか」という想像がしやすい。個人的には埃っぽい汚し塗装が好きではないので滅多に作らないのだけど、キットのクオリティの高さとラインナップの多様性、モデラー人口の多さ(※艦船系の二倍はいるようだ)、そして制作のヴァリエーションの豊かさ(ディスプレイ方法から塗装手法まで様々)と、自分の知識と技術と趣味がマッチするならば奥深く楽しめるジャンルだと思う。


  【 初心者と雪風 】
  雪風を作るのだったら、1/700は細かすぎて神経に障るので、いっそ1/350で制作する方がよいかもしれない。極小パーツの処理に慣れていない初心者ならば尚更、大縮尺のキットの方が作るのも楽だろうし、大型キットの方が完成時の満足感も大きいだろう。1/350艦船は基本的にハイエンドキットなので、パーツの精度(合い)も精密度(ディテール)も高く、作りやすさとハイディテールの双方が満たされる。HASEGAWA版とTAMIYA版の、どちらも出来は十分良いらしい。
  駆逐艦ならば1/350スケールでもたかだか33cm程度なので、大きすぎて持てあますということは無いし、キットの価格も実売3000円台で収まる。あとは軍艦色(佐世保カラー)の缶スプレー2本と、艦底色1本、リノリウム色1本の計4本に、接着剤とニッパーとデザインナイフとマスキングテープを買えば済む(――初心者の場合は、筆塗りは大変だし、エアブラシへの万単位の初期投資も気が進まないだろう。缶スプレーならば、比較的安価だし、取り回しも楽なのでベランダ塗装などでもいける)。値引きも考慮すれば、7000円台で全部揃うはず。模型ツールを一切持っていない人でも、これだけの支出と最低限の器用さがあれば、精密で迫力のある駆逐艦模型を完成させられる。駆逐艦ならば、戦艦のような複雑な多段艦橋も無いし、空母のように大量の艦載機を作る必要も無いので、構造上も比較的容易だろう。
  ……などと思考実験していると、さっさと作ってしまいたくなるが、まだいろいろ仕事があって忙しいし、冬季は塗装に向かないし……。

  ユキカゼといっても対魔忍の話ではない。いや、私としてはそちらでもいいんだけど。

  ……てなことを書いていたら、なんとFUJIMIからも1/350(艦NEXT版)で新作雪風がリリースされるのだとか。さきに1/700スケールでも製品化されていたが、まさに初心者向けの作りやすいキットになるだろう。1/700だと(おそらくはスナップフィットの強度確保の見地から)支柱やマストのパーツがかなり太めになっていたが、1/350スケールならば適正な太さにしてくれそう。

  それにしても、艦NEXTシリーズで1/700→1/350の展開があったということは、比叡も1/700に続いて1/350でもキット化されるのを期待してよいかもしれない。さすがに1/350スケールの戦艦キットをスナップフィット仕様にするとは考えにくいから、あるとしても通常キットだろうけど。

  スナップフィット仕様にするメリットは、「位置決めの確実性(嵌め込み穴がガイドになるし、取り付け間違いも減らせる)」、「プラ嵌め込みによる強度確保(特にハル部分のぴったりした嵌め合わせ)」、「接着剤不要による(初心者向けの)作りやすさ」といった点が考えられる。
  デメリットとしては、「嵌め込みのダボ穴を用意しなければいけないので、造形上の制約が生じる可能性がある」、「同様の事情から、ディテールの細かさに限界が生じる可能性がある(例えば上記のマストの太さもこれ)」、「キット内側に嵌め込み穴を設けるので、表側にパーツのヒケが生じる危険が高まる」、「ダボ穴が生じてしまうので、ユーザー独自の改修改造を試みる際に邪魔になる可能性がある」、「嵌め合わせ構造をデザインしなければならないので、通常キットよりも設計/製造のコストが嵩む」といったあたりだろうか。
  また、艦NEXTシリーズ特有の追加的要素として、パーツ成形色による実物再現志向の色分けが為されているというものがある。無塗装でも比較的忠実な色再現が出来るのは強みだが、それは同時に追加的なパーツ分割が強いられるということでもあって、パーツ間の合わせ目部分は増えるし、組み立て作業もより複雑になる。
  これらの点から考えると、一般的には、1/350戦艦のような大型キットには、艦NEXT仕様は不向きであるように思われる。というのは:1)通常の1/350キットでさえ高額(15000~20000円程度)になるので、スナップフィット構造を組み込むとさらに価格が上がり、売りにくくなる。また、2)高額なハイエンドキットということは、中級/上級者モデラーをターゲットにしているということなので、「初心者向けの作りやすさ」はアドヴァンテージになりにくい。さらに、3)大型キットだとディテールの粗が見えやすく、質感表現のためにも塗装がほぼ必須となるものなので、「無塗装で気軽に制作できる」というコンセプトにはマッチしない。3-2)しかも、スナップフィットはプラ材同士の物理的な噛み合わせによる結合なので、エナメル塗料によるスミ入れ(によるプラの脆化)との相性が悪いのも、塗装上の問題になる可能性がある。
  ただし、大型キットなので、スナップフィットが強度確保に寄与するのであれば、意味はあるかもしれない。スナップフィット構造がどこまで信頼できるものなのかは、私には判断できないが。また、1/350スケールでも、島風のように艦NEXTスタイルでキット化する――そしておそらく成功している――実績があることだし、FUJIMIであれば「戦艦でもチャレンジしてみる」という可能性は考えられなくはない。

  うぐー、駄目だ……手を動かさずに口ばかり動かす自称モデラーになってはいけない……。
  (でも寒いんだから仕方ないという事情もありはする。)