2025年4月のアニメ感想。作品ごとの話数順(昇順)。
オリジナルアニメ『アポカリプスホテル』(第1話)は、あの竹本泉氏がキャラデザを務めているのが驚き。ありがたい。春藤佳奈氏は、これが初監督だが、GAINAX系統の作品でキャリアを積んでおられるので、SFへの理解も映像演出のノウハウも大丈夫だろう。3D作画と思われるロボたちも、きれいに映像に馴染ませてある。
ストーリーは、パンデミックにより人類が地球脱出した後の、関東の廃墟ホテルでロボットたちが従来のルーティンを続けているという2150年代の話。第1話の時点では状況紹介とイントロダクションまでだったが、冒頭のホテルCMとカタストロフ報道の二重写しなど、見応えのあるシーン作りが為されている。人類のいなくなった世界で、ロボットだけが施設を運用しているというシチュエーションに、『planetarian』を連想する人も多いだろう。
キャスト面では、今後の展開で、どうやら田村睦心氏もいずれ出演されるようだ。主演の白砂沙帆氏は、これまでほとんど聴いたことが無かったが、上手くやってくれそう。
菜園ロボの造形は、古典SF映画『サイレント・ランニング』のパロディっぽい。
第2話も、ユーモアと不気味さ、呑気さと陰鬱をミックスしたユニークな映像。SFとしても深みがあって、世界設定の緊張感、ロボットたちの振り付けのリアリティ、宇宙人のディテールなどが濃密に詰まっている。異星人の客が来ることによって、いったんは賑わいと目的意識が喚起されるが、しかしそれが同時に、人間の不在を再確認させることになるという逆説的進行は巧みだし、そしてそれを再び、人類文化(茶道)への参照とともに希望へと転換していくプロセスも美しい。脚本は、第1話と同じく村越繁氏。全話脚本になるのかも。
OP映像は、軽やかなダンス。3Dかと疑うほどなめらかで躍動感のあるモーションが絶品。中割の崩し方を見るに、基本は2D作画だと思うけれど、ロングショットでくるくる回転するところなどは3Dかもしれない。優美で活発な踊りにもかかわらず、光源表現もかなり正確に付けられている。
第3話は、しれっと50年も経過している。こういう非日常的な巨視的展開がミニマルな日常描写の中に取り込まれているコントラストは、SFが持ちうる大きなインパクトと魅力だ。もちろん、「いきなり50年後になっていた」というのは、一発ネタのようなものではあるのだが、そういうネタを堂々と敢行できる懐の深さこそが素晴らしい。
タヌキ星人の文化に対する扱いも同じで、ごく卑近なタヌキの生態を異星人文化として読み替え、それをホテルの管理および衛生の問題に結びつけるというアイデアは、ユーモラスにして大胆な面白味がある。シンプルにタヌキキャラとのトラブルとして楽しんでもいいし、異種族との交流に際して生じる生活習慣や価値観の断絶をやんわりと示唆していると読むこともできる。
オリジナルアニメ『LAZARUS(ラザロ)』第1話だが、刑務所からの脱出ランニングを延々描いていてダレる。アクションのアニメーションそれ自体は入念に表現されているのだが、抑揚が乏しいし、音響的な手応えにも欠ける。本作の映像は全般に、海外映画風の意匠をリアリスティックに作画しているのだが、ステレオタイプなイメージの記号的反復に留まっていて新鮮味が無い。「『ビバップ』『サムライチャンプルー』の渡辺信一郎氏の新作なんだから、もっと独創的なイメージの映像を作れた筈では?」という不満がある。絵をどれだけ動かしても、そこで描かれているイメージそのものが通俗的だと、どうしてもびみょーな印象になってしまう(※2052年設定のSFなのに、出てくるガジェットは顔認識やドローン追跡くらいで、近未来感もオリジナリティも感じられない)。
ドローンは、日本の法規制の下では、いわば「失われた未来」の象徴」の象徴のようになってくるのかもなあ……とも感じた。つまり、あり得たかもしれない豊かで楽しい未来だが、現実ではもはやほぼ不可能になったガジェットという意味で。
第2話。アクション過剰の第1回と比べて、抑揚のある進行になった。映像も引き締まっているし、背景美術の質感が素晴らしい。ストーリー面では、今回は2チームに分かれての同時並行進行で、あまり成功しているとは言いがたいが、顔見せとしては十分か。カーチェイスシーンも、洋画実写とは大きく異なった、アニメならではのデフォルメされた力感とスピード感で上手く描いている。
ただし、事件に対する人々の反応をTV番組の形で(しかも、かなりステレオタイプな描写で)やり過ごしたり、人物情報をwikipedia風の検索画面にしたりする見せ方は、ちょっと安っぽいかも。空間ホログラムインターフェイスも、近未来カーも、生体認証システムも、SFとしてはいずれも手垢が付いているのが辛い。もっとも、本作に限らず、2020年代の現在で「未来のまったく新しいテクノロジー」をイメージして作り出すのは、きわめて困難になっているということでもあるのだろうけど。
長身強面のダグ役の古川慎氏は、『小市民シリーズ』の彼と同じ路線なので(キャラの位置づけもやや近い)、ちょっとモヤモヤする。今期タイトルでは『未ル』第2話のMIRU役でもある。
モブ警察官は、今後もレギュラー出演していくのかな?
第3話。キャラクターに関しては、明確かつ典型的なトランスジェンダーキャラを登場させた。ただし、暑苦しい喋り方にブリっ子ポーズにスキンシップ過剰と、「日本人の考える(前世紀風の)ステレオタイプ的ゲイ」を引き摺っているように見える。そうしたイメージの通俗性は、残念ながらトルコに対するエキゾティシズムにも見て取れる。ちなみに、スキナー本人らしき視覚障害のホームレスがいたのは、どういう布石だろうか。
近未来SFとしては、米国とトルコ(イスタンブール)を6時間でつなぐ陸上超高速輸送「ハイパーキューブ」が描かれた。
作画については、背景の構造物に3Dを多用しているが、距離設定がおかしいのか、カメラ移動と上手く調和していないので角度変化がズレて見える。
ダグの眼鏡レンズに周囲の像が反射している描写は、なかなかの芸細。
第4話。面白そうに見えて、その実さまざまな描写がものすごくチープでもあるという二重性は、今後も続きそう。荒唐無稽でスカッとするアクション映画のような作品だと思って付き合っていくのが最も無難かもしれない。そもそも、期限の30日以内にスキナー博士を見つけたとしても、そこから解毒薬を製造して全世界に行き渡らせるのは不可能なので、初めからナンセンスストーリーになっているし。
そういえば、『ジェネリックロマンス』は原作漫画を途中まで読んでいたが、アニメ版は(声優陣に興味が無いので)視野の外だった。背景美術の出来が良いならば視聴してみるかも。
アニメ版『九龍ジェネリックロマンス』第1話(※原作漫画は、途中までは読んでいた)。アニメ版は、漫画版の印象的なシーンや雰囲気、テンポ、ディテールをかなりスポイルしているように見える。
アニメ版も、原作からイベント順序を組み替えたりしているのは見て取れるし、大きな謎をクローズアップして視聴者の関心を惹こうとしているのも分かる。冒頭の、隙間から小さな光がポツポツと差し込んでいるところも、やりたかったことは理解出来る。しかし、作画と演出が明らかに力不足で、例えば雑踏の喧噪SEも貧弱だし、90年代アニメのようなノリは今時きついし、わざわざ視聴するほどの独自性は無さそうなので、漫画版だけで十分かな。背景作画も、使い回しが目立つのが残念。
アニメ版も、原作からイベント順序を組み替えたりしているのは見て取れるし、大きな謎をクローズアップして視聴者の関心を惹こうとしているのも分かる。冒頭の、隙間から小さな光がポツポツと差し込んでいるところも、やりたかったことは理解出来る。しかし、作画と演出が明らかに力不足で、例えば雑踏の喧噪SEも貧弱だし、90年代アニメのようなノリは今時きついし、わざわざ視聴するほどの独自性は無さそうなので、漫画版だけで十分かな。背景作画も、使い回しが目立つのが残念。
第2話。画面のレイアウトが平板で、美しさも無いし面白味にも欠ける(※特に真横からベタに撮った構図が頻出するのは、コンテが凡庸だと言わざるを得ない)。しかし物語の焦点ははっきりしているのでスムーズに進行し、印象は多少好転した。エキゾチックで落ち着きのある自分探しのサスペンスとして展開していく形かな。キャストは無難で、「鯨井B」は別の役者が演じている。
第3話。物語の謎が本格的に前景化してきたこともあり、調子が乗ってきたように見える。役者たちの芝居もピントが合っているし、コンテもプロットと絡めて効果的に構築されているし、二重写し演出も適切に使われている。ただし、相変わらず画面の止まった会話シーンが頻出するのだが。
「鯨井B」役の山口由里子氏は、悲しみを滲ませた詠嘆の芝居が強烈な印象を残すが、しかしそれだけに強すぎ、ハマりすぎでメインを食ってしまいかねない怖ろしさもある。
第4話。シチュエーションがじめじめどんよりしてきて嬉しい。九龍(クーロン)でクローンという駄洒落がいよいよ前景化してきて、主人公がなんだか綾波レイに見えてきた。シーンが切り替わって主人公の姿が現れたときに、それが現・鯨井なのか鯨井Bなのかがすぐには分からない――口紅やCVといった標識があって初めて判別できる――というのが、幻想的なサスペンスとして刺激的。
アニメ版『小市民シリーズ』2期、通し番号の第11話は新展開。相変わらずワイドレイアウトで、音響的にも周囲の雑踏を丁寧に入れている。教室内でも、初詣のシーンでも、そういったサウンド表現が、映像に臨場感をもたらしている。ヘッドフォンで聴かなければ気づかないかもしれないくらいの音量だが、無意識にでもその場の雰囲気は感じられているだろう。OPもポップアートめいたカラフルな作りで新鮮味があるし、その一方で実写取り込みやペーパーズアート(ペープサート)も投入して素材感を強調したりしている。ただし、ストーリーは、1期同様に歯切れが悪いまま。これは原作由来なので仕方ない。
ところで、OPの「ありがとう ごめんなさい ゆるさないから 小佐内」とは……?(わくわく)
第12話。映像や音響演出は上手いのだが、肝心の脚本が致命的に不味い。二人の付き合いがいきなり半年経過しているし、それでいてろくに仲が進展していない(※普通のカップルなら、飽きて別れるのでは? というか、たまにカフェで喋るくらいで手をつないだことも無いというのは、そもそも付き合っていると言えないレベルなのでは?)。また、放火追跡を警察に相談もしないで何ヶ月も学校新聞だけでネタを引っ張っているし(※名誉欲のためという理屈はかなり苦しい)、そもそも放火事件は本命の犯人による連続放火の他にも起きている筈だし(※識別できない筈。曜日の特徴を見つけたのも恣意的に見える)、個々のシチュエーションも説得力が無い(※放火炎上を見つけた現場で呑気に電話していたり、いきなり同級生から記事を持ち上げられたり)。粗がありすぎて映像への集中が妨げられるのは、原作が悪いし、アニメ版の脚本家もアレンジの仕事を怠っていると言うべきだろう。もったいない……。
コンテ担当は松原聡氏。『ネガポジアングラー』や『ノー・ガンズ・ライフ』にも参加しておられたアニメーターだが、今回はキャラの表情を隠すカットがやや不自然だったかな。後で演出意図が見えてくるかもしれないが。新聞記事を連打して説明するのは、いささかイージーだが仕方ないか。
第13話。ストーリー構成とアニメ枠組の間のズレが気になる。つまり、この第2期は明らかに「小佐内さんが何か暗躍している」という状況で、いわば一種の倒叙ものなのだが、それでいて具体的な行動はなかなか示されないため、非常にもどかしいシーン(瓜野君の空回り)がひたすら続くことになる。通常のミステリのように具体的な情報がどんどん出てくるストーリー進行か、あるいはもっと引き締まったテンポでのサスペンス路線か、どちらかであればアニメの尺にもフィットしたと思うのだが。
それにしても、小佐内さんに対する負の信頼の強さよ……「小佐内さんなら、[連続放火を]やるかもしれないと思うよね」、「小佐内さんが火をつけて回っている可能性があるのに」。まあ、その当人が「堂島君は頼りになる、便利なの」などと公言するふてぶてしいキャラなのだから仕方ない。
映像面では、背景の空がじわりと微速移動している芸の細かさが、空間的な広がりとゆったりした時間感覚を上手く表現している。ADVなどでも使われてきた手法だが、現代アニメでは案外珍しい。丁寧に付けられた光源表現(ライティング)も情趣がある。
第14話は、2組のカップルがそれぞれ軋みを見せはじめている。映像面では、新聞記事で状況説明するのはイージーだが、夜の岐阜市内を自転車で駆け回るシーンで、ライティング(光源表現)が今回も面白い。街灯で局所的に照らされたり、炎が逆光になったり、そして公園の鈍い灯火もミステリアスな情緒を湛えている。
アニメ版『鬼人幻燈抄』第1話は54分の長尺。1830年代の話で、これは本編(現代?)に対するプレストーリーに当たるようだ。鬼の一族との間の伝奇因縁物語になると思われる。
映像演出は、無難な出来。実写の時代劇などと比べると、その都度の時代特有の雰囲気を表現するのが、アニメにはまだ難しいようだ。これは知見とノウハウの蓄積の問題なので、じきに優れた時代アニメも作れると思うが……。例えば、実写映画ではモブを大量に登場させやすいのに対して(※もちろんそれはそれでコストが掛かるけれど)、一般的なクール制アニメの企画規模ではモブキャラを動かしまくって市井の賑わいを描くのが難しい。
ともあれ、これも早見氏レギュラー出演になりそうなので、期待しておく。まさかとは思うけど、江戸明治大正昭和と各時代で早見ヒロインが毎回ちょんぱされて終わるというオモシロ展開じゃないでしょうね……(※最後に登場した平成ヒロインが羊宮氏だったので、早見氏は今回だけという可能性もある)。まあ、『久遠の絆』みたいなものだと思って視聴しよう。
映像演出は、無難な出来。実写の時代劇などと比べると、その都度の時代特有の雰囲気を表現するのが、アニメにはまだ難しいようだ。これは知見とノウハウの蓄積の問題なので、じきに優れた時代アニメも作れると思うが……。例えば、実写映画ではモブを大量に登場させやすいのに対して(※もちろんそれはそれでコストが掛かるけれど)、一般的なクール制アニメの企画規模ではモブキャラを動かしまくって市井の賑わいを描くのが難しい。
ともあれ、これも早見氏レギュラー出演になりそうなので、期待しておく。まさかとは思うけど、江戸明治大正昭和と各時代で早見ヒロインが毎回ちょんぱされて終わるというオモシロ展開じゃないでしょうね……(※最後に登場した平成ヒロインが羊宮氏だったので、早見氏は今回だけという可能性もある)。まあ、『久遠の絆』みたいなものだと思って視聴しよう。
第2話は、江戸時代末期(嘉永3年)。画面のレイアウトが立体的でたいへん美しいし、大通りを行き来する通行人たちもしっかり作画されているし、音響演出も効果的に付けられている。これは良い出来。第1話時点では75点としたが、この調子で行くなら80点以上の評価をすべきだと思う。神経の通った力作。ただし、脚本面では、かい摘まんで圧縮しすぎではないかとも思える。
しかし、今後はOPムービーで毎回ちょんぱシーンが繰り返されるのか……なんという晒し者。
第3話は嘉永6年。人々の所作の丁寧なアニメーションが美しいし、レイアウトも空間的な広がりがきれいに描かれている。カット数はおそらく少なめだが、その分、長回し映像のように腰を据えて一つ一つのシーンをじっくり描き、キャラクターたちの動きも細やかに振り付けしている。これまでの2回から一転して、主人公が頻繁に微笑むようになり、雰囲気がしっとりと和らいでいる。こういう路線のエピソードもあるのか(※後編はまた悲劇で終わるかもしれないけど)。
蕎麦屋の店主役は上田燿司氏。こういう落ち着きのある中年男性を演じても、脇役(準メイン)として物語をスッと引き締めてくれるし、ユーモラスな雰囲気を感じさせてくれることが多いが、その一方で悪役を演じても奇怪なオーラで視聴者を引き込むことができる。キャリアの長い声優さんなのだが(※1971年生まれでデビューは2001年)、最近でも出演数が非常に多く、安心して聴けるのがありがたい。今期も『ボールパーク』『悪徳領主』『LAZARUS』とともに4作出演されているようだ。
第4話。良いところと悪いところがはっきりしてきた。音響表現は繊細で素晴らしい。画面レイアウトも美しく情緒豊かで、背景美術も力が入っていて、歴史ものの雰囲気を味わわせてくれるし。しかし、バトルシーンのアニメーション表現は弱い(動きがぎこちなくて説得力に欠ける)し、脚本もおそらく省略のしすぎで意味不明寸前になっている。
オリジナルアニメ『未ル』第1話は宇宙デブリ回収業者の話。
LinQ社によるフル3Dアニメで、映像としてはあまり洗練されない。ディテール面では、様々な宇宙施設や機械類をモデリングしているのは見て取れるが、効果的に見せられているとは言いがたいし、洋画大作には見劣りするクオリティだし、ストーリーもありがちだし、劇伴演出も平板。うーん。
今後は、「OPは共有」+「各話はオムニバス風に自由なつながりで」+「早見沙織ヴォイスのロボット『未ル』が毎回登場」+「バタフライエフェクトが取り入れられる」といった形で行くのだろうか? ナレーション少女との関連は、今のところ不明。ちなみに、産業機械メーカーYANMARが主導している企画なので、マスコットキャラがこっそり登場している。
第2話は、南米熱帯雨林での環境保護をテーマにしている。アニメーション制作はTriFスタジオで、躍動感のあるアニメーションがたいへん魅力的(※冒頭の急いで出掛けようとする大慌てのシーンや、揺れて落ちそうな段ボール箱が典型的)。
公式サイトによれば、第3話はSCOOTER FILMS×白組の制作で小清水氏が出演。第4話はレイルズ制作。第5話はLARX×スタジオ雲雀。
ロボットの「未ル」君を、プラモデル化してくれないかな……FUJIMIかWAVEかAOSHIMAあたりなら、やってくれそうだけど。
公式サイトによれば、第3話はSCOOTER FILMS×白組の制作で小清水氏が出演。第4話はレイルズ制作。第5話はLARX×スタジオ雲雀。
ロボットの「未ル」君を、プラモデル化してくれないかな……FUJIMIかWAVEかAOSHIMAあたりなら、やってくれそうだけど。
第3話は、AIを組み込んだ義手で演奏をするピアニストの話。SFとしてはベタで中途半端だし、ストーリーも交通事故を使ったイージーなもので、あまり誉められたものではない。作画はこれも3Dモデリングそのまま。ちなみに脚本担当は、OPには平野靖士氏がクレジットされている(※エンドロールでクレジットされていないのは不思議)。
第4話も低クオリティ。ストーリーは凡庸どころかイージー極まりないし、ステレオタイプな描写が頻出するし、映像も使い回しや固定画面が多すぎる。現地の最前線で交渉していた外交官が、ニュース映像で最新事情を把握してびっくりするってどうなの……。これまでの各話評価は50点→70→55点→50点といったところで、とてもきつい。あと1話だから、最後まで付き合うけれど。
第5話は遠未来の荒廃した地球で、花畑を再生しようとする少女の物語。時間移動とやり直しのギミックを使っているが、SFとして掘り下げたものではない。映像としては、ほどほど程度。監督は仲敷沙織氏(※総作監レベルの実績も多い)、脚本は隈沢克之氏。
結局、全話を通してのつながりなどは無いし、プロローグのミステリアスな少女も説明無しに終わってしまった。
アニメ版『ある魔女が死ぬまで』第1話を配信視聴。劇伴も序盤映像も主演(青山吉能氏)も、跳ねるようにリズミカルな躍動感があり、なかなか好印象。ストーリーは、死の呪いを解くために人々の喜びの感情の魔力結晶を集めるというもので、どことなく名作劇場めいた雰囲気もありつつ、デフォルメ表情を多用する軽みもある。作画は穏健だが、これなら見続けていって良さそう。
監督の濁川敦氏は、キャリアの長いクリエイターで、『恋愛暴君』(2017)では青山氏を主演級で起用されているというご縁もある。さらに大久保氏@『ビーストテイマー』、花井氏@『異世界ゆるり』にも、監督作の出演経験者がいる。
監督の濁川敦氏は、キャリアの長いクリエイターで、『恋愛暴君』(2017)では青山氏を主演級で起用されているというご縁もある。さらに大久保氏@『ビーストテイマー』、花井氏@『異世界ゆるり』にも、監督作の出演経験者がいる。
第2話は、2つのエピソードを扱っている。本筋だけに刈り込んだ手短進行だし、文化ステレオタイプな傾向もあるし(※今回は「ドイツ=職人文化」)、内容面では死や喪失を感動的に扱う美談ポルノの気配も否めないが、主演の青山氏のキャラクター性が、作品全体を清新で率直な雰囲気に仕上げてくれている。映像演出としても、魔法陣を描いた木の枝をポイッと投げ捨てる描写など、洒落っ気のあるコンテ作りをされている(※能天気でやんちゃな彼女のキャラクター個性を、この一瞬の描写で見事に表現してみせた)。一見するとイージーでお気軽な作品のようでいて、技術的にはとても堅実で折り目正しい作りになっているという不思議なスタンス。キャラクターの動きなども、凝ったポーズをさらりと正確に描いていて、かなりの実力者がコンテ/原画にいらっしゃるのではないかと感じた。
今回お披露目のED曲は、梶浦由記氏の作詞作曲によるしっとりした音楽。やんちゃなメインキャラとは対照的な曲調だが、これはこれで情趣がある。
今回お披露目のED曲は、梶浦由記氏の作詞作曲によるしっとりした音楽。やんちゃなメインキャラとは対照的な曲調だが、これはこれで情趣がある。
第3話。うーん。脚本は説明過多で落ち着かないし、下品なコンプレックスいじりを連発するし、作画も今一つで、レイアウトの洗練度合いも落ちて、ただの月並アニメになってきた。とはいえ、キャラクターの全身運動を生き生きとアニメーションさせる努力はまだぎりぎり維持されているし、主演青山氏のふてぶてしい芝居も楽しいのだが。
今回の描写は、主人公がひたすら口が悪くて、とにかくやんちゃで、基本的に不真面目で、しばしば暴走気味で、時には嫉妬心すら持って、しかし殊勝にも畑仕事を誠実に続けていたり、自分では制御しきれない心の悩みを抱えていたり、将来への希望を健気に持っていたりする側面もあるという、そういうキャラの掘り下げのための回だと考えれば、納得できる。
デフォルメにやけ顔が、ことみようじ絵のようだ……。
第4話も、出来が中途半端。脚本は説明台詞過多で駆け足だし、コンテも場面切り替えを無視して強引につないでいるし。顔アップの無策なレイアウトも頻出するし、主演の芝居もパワーが無くて上滑りしかけている。コミカルなデフォルメ絵も、あまり乱用されると軽薄になってしまいかねない。うーん……。
「賑やかな主人公の筈なのに、お騒がせサポートキャラの役回りになってしまっている」、「喜びの感情を目指すしっとりした物語の筈なのに、急ぎ足で情緒が無い(当初の目的をほとんど放棄している)」という二重の問題で、作品コンセプトそのものが裏切られつつある。中盤(第6話)までに本筋を確立できるのだろうか?
ちなみに、「ですしおすし」や「○○たそ」など、ネットスラング的な表現を多用しているのは珍しい、というか、アニメの音声としては初めて耳にした。
小松氏主演に未練を持って、アニメ版『勘違い』第1話を視聴してみたが……これは今期最高の声優アニメかもしれない。ストーリー面では、チープな「主人公は気づいていないが実は凄い」路線だが、キャスト陣の的確な芝居の手応えはそれを差し引いても余りある。継続視聴しよう。
映像面では、ひとまず無難に視聴に堪える水準。掘り下げは乏しいが、無垢ショタ主人公がきちんと描けていればOKくらいのつもりで。ハイレベルな声優陣の一点突破という意味では、やはり『通販』枠になりそう。漫画版をざっと読んでみたが(※オンラインの無料公開分)、第1話のコメディ路線を続けていくようだ。
映像面では、ひとまず無難に視聴に堪える水準。掘り下げは乏しいが、無垢ショタ主人公がきちんと描けていればOKくらいのつもりで。ハイレベルな声優陣の一点突破という意味では、やはり『通販』枠になりそう。漫画版をざっと読んでみたが(※オンラインの無料公開分)、第1話のコメディ路線を続けていくようだ。
第2話は田中美海氏(王女)、田中理恵氏(長身のマイスター)、長縄まりあ氏(幼エルフ)も新たに出演。小松氏(ショタ主演)と金元氏(怪しい魔術師)も含めて、キャスト陣の厚みは絶品。
しかし、「声優最高、無垢ショタ可愛い」くらいしか感想が出てこないというのも確かで、映像演出やサウンド表現はひたすら凡庸。動画についても、キャラが身体の向きを変える動きくらいで面白味は無い。初登場のEDムービーは、何故か主要キャラたちを3Dモデルでのっぺり動かしている。
第3話。環境音SEはなかなか凝っている。硬質な靴音の響きや、洞窟内の微風など、SEのおかげで臨場感が最低限確保されている。しかしそれ以外は誉めるところが無くなってきた。
とにかく脚本がびっくりするほど味気ない。テキスト(台本)があまりにだらしなく陳腐なせいで、せっかくの声優陣の実力が発揮されていない。緩急をつけずにべったり物語進行するだけで、これは辛い。映像もチープなうえ、コンテもおかしなところで静止したままになるし、どこかに面白味を出そうという意欲もまるで見て取れない。バイバイかな。
※視聴しないことにした作品たち。
『神統記』は、田村(睦)氏目当てで視聴してみたが、映像も脚本もかなりチープ。しかも最後のEDで、秋元某の名前が出てきたので、完全に嫌気が差した。
『ゴリラの神』は、総じて安めの作りで、脚本も状況説明の台詞をひたすら垂れ流すタイプだが、見せ場のアニメーションはなんとか頑張って動かしているのが見て取れる。雰囲気も良い。一発ネタのギャグハーレムものと思われるので視聴はしないが、好みに合えば楽しめただろう。
『ウィッチ』は冒頭から野蛮なモブ男性キャラたちがしつこく絡んでくるというもので、いや、もうちょっと見せ方を考えようよ……(即座に切った)。せっかくの大作アニメなのに。
『ユア・フォルマ』第1話は、無難な出来。ロンドンを舞台にした電脳サスペンスのようだが、近未来テクノロジーの描写が古いのが致命的(※ほぼ20年前のイメージから全然進歩していない。せいぜいドローンが飛んでいるくらい)。ストーリーに深みをもたらすようなガジェットも、まるで見えてこない。作画も、バストアップ会話が延々続いているという印象で、動きに乏しいし、レイアウトの技巧もあまり感じられない。電脳ダイヴ(うへぇ)のシーンだけは、さすがにいろいろ動かしていたが。台本も、休むことなく24分間ひたすら誰かがべらべら喋り続けていて、緩急も無いし情緒も無い。
止め絵のキャラの顔立ちだけは整っているし、キャストもかなり良いのだが、視聴を続けるかどうかは微妙なところ。流し見だけにするかも。あるいは、今からでも『LAZARUS』に乗り換えようかな。
止め絵のキャラの顔立ちだけは整っているし、キャストもかなり良いのだが、視聴を続けるかどうかは微妙なところ。流し見だけにするかも。あるいは、今からでも『LAZARUS』に乗り換えようかな。
『星間国家の悪徳領主』は第1話からいきなり主人公の現世不幸話を延々展開し、しかも相手に対する直接の復讐ではなく、まるで八つ当たりのように転生後世界で暴れまくるというもの。うーん、下品だ。さすがにこれは、子安ヴォイスだけでは救えない。
例えば、最初の数話は主人公の痛快な暴れっぷりを描写して、それから第4~5話あたりで主人公の悲劇的なバックグラウンドとして前世話をするのであれば、視聴者の共感も得られただろうに……第1話からパワハラ被害描写や不倫される描写をだらだら流すのは、端的に下策としか言いようが無い。監督(柳沢テツヤ)とシリーズ構成(高山カツヒコ)がなんとかして修正しておくべきだった。彼等は『ジェイデッカー』や『ストラトス・フォー』などの多大な実績があるクリエイターだが、今作ではそういう作品進行の勘所を外してしまっているように見受けられる。第2話以降が実質的な本編だと思うが、この1話で切った視聴者は多いだろう。
春アニメの第1話がだいたい出揃ったところで、私なりの評価を整理する。
『アポカリプスホテル』:85点。SFと背景美術とユーモアの取り合わせが抜群の出来。
『ある魔女』:80点。予想外に良い。作画も、様々なポーズがきれいに描けていて上手い。
『小市民(2期)』:80点。大丈夫だろう。OP/EDも楽しい。ただし、ミステリとしては今一つ。
『鬼人』:75点。粗はあるものの、十分な見応えが期待できる。
『LAZARUS』:70点。力作ではあるが、イメージの通俗性に付き合っていけるかどうか。
『ジェネリック』:65点。映像は程々だが、原作からの組み替えなど、努力は見て取れる。
『勘違い』:65点。イージーな作りだが、止め絵のヒロインはきれいだし、良キャストで加点。
『ゴリラの神』:65点。低コスト企画だが、要所を動かして頑張っている。
『未ル』:60点。出来は凡庸だが、全5話だし、オリジナルSFに期待して最後まで観よう。
『フォルマ』:55点。コンテも脚本も、だるい作り。期待をかなり下回った。
『神統記』:50点。演出も台本も、まるで子供向けのように掘り下げが浅い。
『悪徳領主』:50点。ザ・軽薄。スペオペ描写だけは良かった。
『アポカリプスホテル』:85点。SFと背景美術とユーモアの取り合わせが抜群の出来。
『ある魔女』:80点。予想外に良い。作画も、様々なポーズがきれいに描けていて上手い。
『小市民(2期)』:80点。大丈夫だろう。OP/EDも楽しい。ただし、ミステリとしては今一つ。
『鬼人』:75点。粗はあるものの、十分な見応えが期待できる。
『LAZARUS』:70点。力作ではあるが、イメージの通俗性に付き合っていけるかどうか。
『ジェネリック』:65点。映像は程々だが、原作からの組み替えなど、努力は見て取れる。
『勘違い』:65点。イージーな作りだが、止め絵のヒロインはきれいだし、良キャストで加点。
『未ル』:60点。出来は凡庸だが、全5話だし、オリジナルSFに期待して最後まで観よう。
『ホテル』『魔女』『小市民』は、最後まで視聴するつもり。スクショを撮りつつ複数視聴する精読アプローチも、この3本だけになると思う(+オリジナルSFの『未ル』も)。
『ジェネリック』は、視聴をやめるかどうかギリギリ。『勘違い』『LAZARUS』も、飽きたらやめる。
ファイルーズあい氏のために『ボールパーク』も視聴したかったのだが、野球ネタは個人的に苦手なので、残念ながら選択肢から外した。
追記:『鬼人』は第2話以降のコンテが非常に良いので80点に上げる。
『未ル』は、回によってクオリティにばらつきがあるが、最終的には65点くらいになりそう。第1話は55点、第2話は75点、第3話は65点……といったところ。
『LAZARUS』は、作画の頑張りも含めて75点かな。
『ある魔女』もかなり落ちてきた。最初は良かったのだが、このままだと65~70点に収まりそう。
03/31
改めて視聴検討メモ(※PVも一通りチェックしている)。太字は、第1話チェック確定。それ以外はまだ検討中。
オリジナル『プリンセッション・オーケストラ』は、少女アニメなので見なくていいかな。
『ウィッチウォッチ』は、キャスト陣が豪華だし、原作も優れているので、堅実に秀作になりそうだが、PVを見るかぎりでは演出が騒々しすぎて苦手かも。登場人物が多すぎるタイトルは、芝居の掘り下げも浅くなりがちだし。漫画版からの引き写しコンテになりそうな懸念も見える。
『勘違いの工房主』もキャストが素晴らしいが、映像面にも脚本面にもかなり不安が……。『通販』並を覚悟の上で、試しに見てみるか?
オリジナル『LAZARUS』は、実写テイストの画風。興味はあるが、画作りに食傷しそう。こういうのは洋画でやれば良いのであって、アニメ分野で見る意味がどれだけあるのかという疑問がある。監督は『カウボーイビバップ』『サムライ・チャンプルー』等の渡辺信一郎氏なので、こういう路線は彼にとっては当然なのだろうし、こういったアプローチも制作されうる幅広さがアニメにあるのは良いことではあるが、見たいかというと……。
『ゴリラの神』は女性向け。主演がちょっときついが、上手いバランスで作ってくれれば……。
『かくして! マキナさん!!』は、大地葉氏の力演に期待できるが、白光隠しだらけで興醒めしそう。やめておこうかな。
『鬼人幻燈抄』は、和風歴史ファンタジー(バトル?)。早見氏の巫女キャラに期待。連続2クールとのこと。
『ボールパーク』は、ファイルーズ氏目当てだけで視聴するにはきつい。
『ある魔女』は、今一つかなあ……榊原氏の語り口は、ちょっと苦手になってきた。
『GQ』は、黒沢氏主演に惹かれるが、「私が見なくてもいいだろう」という気分。
オリジナル『アポカリプスホテル』は、美術設定も凝っていて、これなら期待できる。
『鷹峰さん』……主演が下手だった。コンテも面白くないし、視聴はやめておこう。
『ユア・フォルマ』は、医療技術SF。PVにやたら鮮やかな切れ味の芝居があって、誰かと調べたら斎藤千和氏だった。斎藤氏だったら、凄いのが当然なのが凄い。
『鼻血を止めて』は中国のSFアニメからの吹き替え。PVのBGMが、何故かバッハ『平均律』だった。
『未ル わたしのみらい』は、5つのスタジオによる5本の競作アニメのようだ。とりあえず観てみよう。
『リコリス・リコイル』は、ショートムービー集とのことだし、キャストも良いのでとりあえず視聴。ただし、内容面ではあまり期待していない。
『闇ヒーラー』は、ファンタジー世界の無免許医なのか。ハーレムものとしては楽しそう。
『ムーンライズ』はNF配信なので、残念ながらご縁が無い。
『ばいばい、アース』(2期)。キャストも作画も良さそうだが、まだ1期を視聴していなかった。
『神統記』は、田村睦心氏主演の古代日本風異世界ファンタジー。とりあえず試しに視聴。
『GUILTY GEAR STRIVE』は、サンジゲン制作なのでおそらくフル3Dモデリング。バトルものとの相性も良さそうに見える。
『剣聖になる』、ここでも強キャラ役の斎藤氏が。映像はそこそこ良さそうだが、配信はAPV独占なのでバイバイ(※地上波放映もあるけど)。
『GAMERA -Rebirth-』は、金元寿子氏の少年役主演。しかし3D感が強いし、配信はNF独占なので視聴除外(※NHKでも放送されるが)。
『小市民シリーズ』2期。脚本に不安はあるが、神戸守監督頼みで今回も視聴予定。
『俺は星間国家の悪徳領主!』。転生スペオペ。軽薄志向は好みではないし、主演はちょっと苦手だが、キャスト陣は高水準だし、たまにはベタなロボットSFというのも……。
というわけで、ひとまず8本(事実上7本弱)にまで絞り込んだ。ここから多少増減があると思うけれど、毎日1本(24分)ならば漫画1~2冊分の時間だし、なんとか継続できそう。
私なりの選別ポリシー。
1) 最初の足切り。キャストで、「苦手な声優が多い」「期待できる役者がいない」ものはどんどん落としていく。12話で約5時間を付き合うことになるわけだから、芝居が合わないものは本当に苦痛になるので。逆に、キャストの座組に大きな魅力がある場合は、他の要素が駄目でも候補としてキープしておく。
2) そのうえで、ジャンル&ストーリーを見る。SFやオリジナルアニメは重視するが、スポーツ/恋愛/グルメ/動物/アイドルものは避けがち。ミステリ/エロコメ/洋風ファンタジーあたりは、箸休めのようにたまに視聴すると楽しい。ただし、この要素はさほど決定的なものではなく、重み付けを与える程度。
3) 制作スタッフについては、特に重要なクリエイターが関わっているものは最優先にする。ここで拾い上げるタイトルもある。その一方で、個人的なNGクリエイターもいくらか存在する。
4) さらに、PVなどで視聴覚演出を見ておく。間延びしていたり、色彩設計が好みでなかったりするものは避ける。主題歌が騒々しいものも敬遠傾向。逆に、背景美術などがきちんとしているものは期待を掛けておく。
5) 最終的には、第1話を視聴してみて、合うものと合わないもので選別する。最初の1話が駄目だったら、すぐに離れる。
とにかく数が多すぎるので、こうして消極的な基準で漉し取っていくだけでも大変だし、それでも残るタイトルは本当に良い作品だし、そして実際にいくつもの良作をじっくり視聴できる。もっとも、『通販』のように、キャスト一点突破で抜けてくる怪作もあるけど。