思考の整理として。
【 アダルトゲームの時代 】
国内アダルトゲームが最も華やかだった時代は、つまりクオリティと知名度が最も高い水準でバランスが取れていたのは、 00年代半ばだろうか。『処女はお姉さまに恋してる』(2005/01)と『はぴねす!』(2005/10)は、男の娘ものブームを牽引してオタク世全体に広く影響を与えたと言えるだろうし、『Fate/sn』(2004/01)、『ToHeart2』(X-RATED版:2005/12)、『マブラヴ』シリーズ(「オルタ」:2006/02)も、貪欲なマルチメディア展開は現在まで様々に続いている。
00年代後半以降のアダルトゲーム分野にそういうタイトルがなかなか現れなくなっているというのは、残念ながら確かだ。それに前後して、業界内では、現在に至る白箱系ブランド群の出現乃至再編成、旧F&C人材の独立(CUFFS、SkyFishなど)、CROSSNET人材の独立(FAVORITE、ApRicoTなど)、そして『恋姫†無双』(2007)のような大作志向、逆に低価格ブランドの拡充、そして(社会事情のせいもあろうが)黒箱系の退潮とピンク系の躍進、全年齢化への志向、大手ブランドのサブブランド戦略といった諸潮流が現れてきたが、分野外にまで波及するようなものではなかった。
【 学園恋愛系(白箱系)ブランドの展望 】
白箱系の再編成。現在の学園恋愛系に直結する流れは、00年代半ば以降のものだろう。すなわち、新規ブランドとしては、Navel(2004)、ハイクオソフト(2004)、Chuablesoft(2005)、Lump of Sugar(2005)、ゆずソフト(2006)、Axl(2006)、Whirlpool(2006)、Clochette(2008)、それからensemble(2009)がデビューしてきた。上記の分離独立ブランドとしては、CUFFS系列(2005年『さくらむすび』以降。CUBE、sphereなど)、FAVORITE(2009年『星空のメモリア』。チームとしては2004年の『Angel Wish』以降)がある。ASaProject(2004-)も白箱系に分類してよいだろうか。サブブランドではSMEE(2007-)やAries(2009-)が挙げられる。これらのブランドは、2016年現在も活動中であり、この時期の白箱系の業界内再編成が、現在の白箱系シーンの基礎になっているように思われる。もちろん、内部的には、それ以前からのキャリアのあったスタッフが多数存在するが。
既存ブランドの中にも、この時期に白箱系へと大きく舵を切ったものがいくつかある。すなわち、feng(2007年の『青空の見える丘』が転機か)、すたじお緑茶(2007年『片恋いの月』以降) SAGA PLANETS(2008年の『Coming×Humming!!』)、ALcot(2009年『大統領』)など。ま~まれぇどは2004年デビューで、どちらかといえばピンク系寄りだが。ぱれっとも、和泉原画タイトルは2009年の『ましろ色』以来だが、lightから移籍した(?)NYAONチームは2006年の『もしも明日が晴れならば』から続いている。MOONSTONEは一筋縄では行かないが、『Gift』(2005)は最初期のアプローチからの大きな変化だったと言えるだろう。PULLTOPのスタッフ再編成は『恋神』(2010)に顕在化したが、方向性としては『遥かに仰ぎ、麗しの』(2006)の時点で学園ものに転轍していたと言えるだろう。これらの動きも、00年代半ば以降の、白箱系優勢の流れに沿ったものと言えるだろう。
その一方で、circus(2000-)、HOOKSOFT(旧HOOK、2001年-)、Purple software(2002-)、ういんどみる(2002-)は、デビュー当初からほぼ一貫して学園ものに軸足を置いてきた。00年代初頭から現在まで白箱系で活動し続けている古参ブランドである。十数年もの間、学園恋愛系の第一線で活動し続けてきたという意味で、驚くべき稀少な(そして貴重な)ブランドである。また、戯画やAUGUST、Frontwingは、これまた歴史の長いブランドであるが、学園ものに限らず様々な方向性を模索している。珍しい例として、lightは、上記のとおり00年代半ばに白箱系から距離を置いて、SF、伝奇もの、バトルものに重心移動した(――白箱系は、2013年以降、サブブランドのSweet lightが担った)。
残念ながらその過程で消滅したブランドも多いし、逆に10年代以降にも新規ブランドが多数現れている。例えばLose(2010-)、sprite(2010-)、Hulotte(2011-)、SORAHANE(2011-)、Princess Sugar(2011-)、まどそふと(2013-)、GLace(2013-)、スミレ(2013-)、HARUKAZE(2013-)がある。ただし、アダルト要素を高度に発達させた近年の白箱系は、ピンク系と識別できないことも間々あるが。
そういえば、みなとそふとやRosebleuはどう位置づけたらいいのだろうか。ろくにプレイしていないので分からない。Peassoftについても同様。