SLG系ブランドそれぞれのイメージ。
いわゆる「ゲーム性のある」作品をリリースしているブランドの話題で、AlicesoftからninetailからLiar-softまで挙げられているのにEscu:deとでぼの巣が無視されているのを見るのはもういったい何度目なんだ……。非AVG系専業ではない戯画、SLG以外の個性(原画家/FFD)の方が目立つLW/天狐、Flashゲームのseal、一つ覚えなげ18あたりが省略されるのはまだ理解できるとしても。でぼはリリースペースも早いし、Escu:deもわりと積極的に広告を出している(雑誌裏表紙とか)しSLGとしてのクオリティも高いし、どちらも90年代から十年以上のキャリアのあるブランドだというのに。一般論としては、考えうる可能性の一つとして、例えば、もしも「これらのブランドは固定客の割合が非常に高く、言い換えればカジュアルな購入者が少なく、つまり当該ブランドのユーザー層の分布がいわば"離れ島"のような形になっており、そしてそれゆえその特定のユーザー層以外の場では注目されにくい」というのであれば、このような状況になりやすいと想定することができるが、実際にはどうだろうか?
でぼ/e.go!については、たしかにそういう傾向があるのかもしれない。すなわち、完全な原画家固定とシリーズもの/追加キット連発は、固定ファン以外のゲーマーにとっては非常にとっつきにくい印象を与えている可能性がある。そして、熱心なファンたちがずっと支えてきたブランドだという印象も確かにある。
Escu:deは、興味深いことにその正反対のスタイルをとっている。原画家は、最近では一作毎にころころ変わっているし、作品傾向も、よく売れたタイトルのFDはたまに出しているものの、全体としてみるとファンタジーSLGから現代学園ものAVGまで多岐に亘るタイトルをリリースしている。要するに、ブランドイメージが固定していない、あるいは「Escu:deといえば○○だ」というような、ブランドを代表する分かりやすい看板的イメージ――つまりそのブランドのことを記憶しやすいイメージ、想起しやすいイメージ――が形成されていないということなのかもしれない。『ふぃぎゅ@メイト』は比較的幅広く知られたタイトルになったようだし、十周年記念タイトルとして大々的に宣伝されていた『プリスター』も知名度は低くない筈だし、脱衣バトルの『あかときっ!』もわりと話題になっていたようだし、姫鱒もとい『ヒメゴト・マスカレイド』もみけおう氏を原画起用してキャッチーな視覚的アピールをしていたのだが……。そうだ、ブランドイメージを定着させるために、マスコットキャラクターを作ってはどうだろうか……って、すでにハタヤマ君がいるじゃないか。
それではSHCはどうなんだろうか? 「ソフトハウスキャラといえば?」と尋ねられて「大波こなみと青山ゆかりと羽高なる」と答える人はすでに同社作品に十分親しんでいるゲーマーだけだろう――ただし「連続起用される声優が多いブランドだ」という一般的認識はあるかもしれない――し、「描写が淡泊なわりに大量のアダルトシーンがある」というのはポジティヴなイメージではないだろうし、「無数の幕間コメディが楽しい」というのも(実際にプレイした者にとっては大きな魅力の一つになるが)大きく打ち出されるものではないだろう。「ゲーム進行のあらゆる箇所に、ランダム要素が広汎かつ強力に影響してくる(例えば、序盤で最強クラスの武器を拾うこともある)」というのもしばしば指摘される特徴だが、これはブランドイメージというよりは、ゲームシステム設計に関わる、それなりに踏み込んだレベルの実質的理解だろう。おおまかにいえば、「わりとお気楽なハーレム状況のSLGを作っているブランド」といったあたりの印象を持たれているのだろうか?
引き比べてみると、たしかにninetailやEushullyは、「このブランドはあんな感じ」というイメージがなんとなく共有されていそうに思える。