2013/09/24

イヤリング/ピアスをするキャラクターたち

  イヤリング/ピアスをするキャラクターたち。『カルマルカ*サークル』をきっかけに。


   『カルマルカ』の朝比奈さんはピアスをつけているのか! この種のタイトルでヒロインが身につける小物類としては、かなり珍しいんじゃなかろうか。というか、学園恋愛系のヒロインでピアスをしているキャラクターなんてのは、他にちょっと実例を思い出せない(――ちなみに、作中でもピアスは校則で禁止されているらしい)。いや、白箱系に限らず、例えばファンタジー世界舞台の「姫」キャラクターですら、装身具としてピアスを着けているものはおそらく稀な筈だ。

  これについては、装身具(とりわけ身体の毀傷を不可避的に伴うピアス)に対する好悪という分野文化的理由(直接的理由)だけでなく、技術的乃至副次的な理由もあるように思う。すなわち、正面立ち絵を基本とするAVGにあっては、もっぱら目や口元といった顔面(正面)に対してその表情づけやキャラクター性表現の努力が傾注され、側頭部に対する注目はおそらくそのような構造的事情からして閑却されてきた。
  また、ヘアスタイルデザインの方向性を見ても、現在発売されているPCゲームに登場する女性キャラクターたちの耳殻部分は、その多くが長髪によって完全に覆われているか、あるいは部分的に見えているとしても垂れ下がった横髪によって遮蔽されている。頬から耳へとまっすぐつながって見えるように描かれているキャラクターは、おそらく稀である(――例えば『あまあね』の「高階なつみ」のようなキャラクターですら、頬に沿って横髪が一房垂らされている)。そして、このようなキャラデザ志向の下では、もしもピアスやイヤリングといった装飾を描いたとしても、非常に目立たせにくい。この男性向けコンピュータAVGの分野でイヤリングやピアス表現が発達乃至普及させられないままであるのは、私見では、こうした事情も影響している。

  もちろん、イヤリングキャラクターがいないというわけではない。例えば、『ヴァルーシア』に登場する「ナナイ」や『民族淫嬢』の「ファティマ」のような中近東的世界の踊り子キャラクターがおおぶりなイヤリングを着けているのは、典型例の一つだろう。『家庭教師のおねえさん』の年上キャラクター「秋月沙良」や、『デモニオン』の快活な戦士「ジュリアン」、『pp(ピアニッシモ)』の不法入国者の酒場歌手「韮崎璃宝」、『るいは~』のマフィア少女「尹央輝」、『英雄*戦姫』の華美な君主キャラクターたち(アショーカ、フビライ、カメハメハ等)なども、そのキャラクターの個性を際立たせるかのようにイヤリング/ピアスをしていた。『姫狩り』の「ブリジット」のように、長いエルフ耳のキャラがイヤリングをしている例もある。調べていけば、イヤリングヒロインは、何十人と(あるいは百人以上も)見つけられるだろう。
  そしてこの『カルマルカ』の「朝比奈晴」(名前は「しん」と読むらしい)も、そのピアスによって、「周りから不良と見られているが、本人は自由奔放、マイペースに学園生活をエンジョイしているだけ」(※公式のキャラクター紹介より引用)とされるそのキャラクターの個性を立ち絵の次元であらかじめシンボリックにまざまざと示している。