アニメやゲームの公式サイトのサンプルヴォイスについて。
アニメの公式サイトで、サンプルヴォイスが置かれていないと、各キャラクターのイメージが今一つはっきりしない感じで、もやもやする。提供側としては「必要無い」という判断なのだろうけど。というのは: 1)(とりわけ地上波アニメの場合)無料なのだから、何よりもまず本編を観ればいい、とにかく本編をこそ観てほしい。2)PVやCMを別途公開しているので、そちらを観てくれればサンプルの用は足せる(――ただし、そうしたものがすぐにアクセスできるとは限らないが)。3)アフレコは通常、多人数同時収録であり、サンプルヴォイスのために個別音声を切り出したり別途収録したりするのは手間が掛かる。サンプルヴォイスをわざわざ公開するメリットは、その手間に引き合わない。4)あくまで「アニメ」作品なので、PVのように「映像+音声」形式の宣伝素材を出すのは良いが、音声のみの宣材を出すことには消極的になる。例えば「映像のついていない自己紹介音声」などを出すと、チープだと思われる(ことを懸念する)といったことがあるかもしれない。5)公式サイトは、放映からディスク販売くらいまで期間に情報発信やアクセスの拠点になればよいのであって、アーカイヴとしての役割は期待されていないし、放映後に気になった視聴者のためのサンプル提供サービスも意図していない(――すでに消滅したアニメ公式サイトのなんと多いことか)。推測できる理由は、だいたいこのあたり。
まあ、どちらかといえば、ゲーム公式サイトのサンプルヴォイスの方が例外的なのかもしれない。元々、回線キャパやサーバー容量がきわめて厳しかった00年代前半からの慣習なわけだし。最近では、アダルトゲームでもキャラクター毎に動画形式(映像+音声+BGM+テキストが揃った、ゲーム画面の体裁での動画)でキャラクター紹介素材を出すものがずいぶん増えてきた。実際、それらを一々視聴するかというと、まあ、ほぼ見ずにスルーしているのだけど。
サンプルヴォイスが置かれるようになったのは、いつ頃からだっただろうか。例えばBISHOP公式サイトでは、2000年8月の『特別授業』にはSVが無いが、2001年8月の『学園』にはある。アトリエかぐやは、『恥辱診察室』(02/6)には無いが、同年の『人形の館』(02/10)にはある(各キャラ1個ずつ)。AUGUSTは『バイナリィ・ポット』(02/2)の時点ですでにある。ぱれっとも同様(『はちみつ荘』[02/9])。pajamas softは『パティシエなにゃんこ』(03/03)以降。Xuseは『トーマス』(03/08)以降。Liar-softは『LLE』(03/6)には無くて、『Forest』(04/2)にはあり。ういんどみるも、『くれいどるそんぐ』(04/2)でSVが確認できる。alicesoftは『RanceVI』(04/8)が無し、『アリスの館7』(04/12)があり。戯画も『ショコラ』(04/12)以降だろうか。PULLTOPだと『お願いお星様』(04/5)が無しで、『ゆのはな』(05/3)にはある。UNiSONSHIFTも『Peace@Pieces』(04/12)が無しで『WAGA魔々』(05/4)があり。triangleは『エンシェル・レナ』(05/5)以降。Escu:deは『ふぃぎゅ@メイト』(06/11)以降。BaseSonは、音声付加版の『ONE2 WV』(03/4)があるが、その後SV不掲載に戻っており、実質的には『春恋*乙女』(06/12)以降と言ってよい。
長期間存続しているブランドを適当にチェックしただけなので、サンプルとして偏りがあるかもしれないが、2002年頃からそうした実例が増えていき、2004-05年頃にほぼ一般化したという感じだろうか。意外に遅いように思えるが、そもそもフルヴォイス仕様が一般化したのが00年代初頭なので、そんなにおかしな話ではない。例えば『ONE2』(02/4)が、翌2003年4月に「With Voice」仕様で再発売されていたくらいだ。また、この時期は、ゲーム画面がVGAからSVGA(800*600)解像度に移行した時期でもある。つまり、ちょうどデジタルデータ容量の制約が様々な場面で取り払われていった転換期にあたる。ちなみに、ソフトハウスキャラのようにサンプルヴォイスを公開していないブランドもそれなりに存在する。