2015/02/17

みすみ氏について

  みすみ氏についてのいろいろな感想。


  みすみ氏の芝居は、元気で享楽的な雰囲気という点で、渋谷氏にやや近い方向性で捉えている。もちろんその質感はまったく別物だが。渋谷氏の場合は、楽しげにつらつらと言葉がつながっていく抑揚にそのユニークな魅力があるのに対して、みすみ氏の場合は、跳ねるような弾力感とパワフルな推進力の併存がその芝居全体を充実したものにしていると思う。あるいは、深井氏との比較でいうと、深井氏の開放的なおおらかさに対して、みすみ氏はもっとストレートではっきりした指向性を示している、と言ったらよいだろうか。

  00年代半ばの『鬼神楽』『MinDeaD BlooD』の主演2作はいまだに印象深いし、『燐月』『夢幻廻廊』『いな☆こい』もこの声優さんの美質を活かした素晴らしいキャスティングだった。一方、『あおぞらマジカ!!』では底の知れない大魔法使いを、『借金姉妹』シリーズでは苦しい境遇にある美少女――ちなみにその姉を木村氏が演じている――を、『ク・リトル・リトル』では複雑な屈託のある女性を演じていた。

  美少女ゲーム特有のフィクショナルな約束事を、鷹揚にからかいつつ、もちろん正面からしっかりと受け入れて演じつつも、根っこのところではちっともそれに耽溺することなく覚めた現実感覚――サバサバした世俗的感性――の中でいったん相対化したうえで、美少女ゲームの虚構的世界での芝居を確立されていた(ように聴こえる)という点でも、稀有な手触りがあった。『鬼神楽』でも、いわゆるおばかキャラを担当しているのだが、たとえば桜川氏のようにオタク的な人工性に徹底するのではなく、あくまで現実的な直情性をベースとしてキャラクターを造形されていた。その鋭くも生き生きとした力強さと、地に足の付いた親しみやすさ(あるいは、気持ちの良い馴れ馴れしさとでも言うべきか)によって、美少女ゲーム声優シーンの中で、余人をもって替えがたい一つの側面を担い続けてきた方だと思う。

  ちょうど『アルスマギカ』公式サイトで緋乃氏のフリートークが公開されているが、この声優ご本人としての語りの中でも、美少女ゲームに対する上記のような接し方ははっきり表明されている。ちなみに、triangleやWhirlpoolでの、親友の木村氏をいじり回すフリートークもたいへん楽しかった。なにしろ「木村あやかを観察する会会長」なのだそうで!(『いな☆こい』フリートーク後半)


  おまけ。ゲームブランド公式サイトにある、みすみ氏フリートーク集。
  「あたし、千尋、あたしが千尋みたいな」編(『いな☆こい』、Whirlpool、2006年)
  「木村あやかを観察する会会長、みすみです」編(『いな☆こい』、Whirlpool、2006年)
  「でも肩凝るよね」編(『催淫孕ませキーワード』、アンダームーン、2008年)
  「巷で噂のJ・ベロアさん」編(『いな☆こい!FD』、Whirlpool、2007)※期間限定でした。
  「木村さんが麻婆丼食べてます」編(『MagusTale』、Whirlpool、2007)
  「言えるわけないでしょー!」編(『MagusTale Infinity』、Whirlpool、2008)
  「竜美ちゃんも、恋をしてほしいな」編(『Lunaris Filia』、Whirlpool、2012年)
  「その思いはすべて私のところに届いて」編(……たしか『いじプリ』)