2015/02/04

インターフェイスデザイン(実例検討その三)

  インターフェイスデザインの実例検討(終わり)。


  ・導入的な語り(1ページ目)。
  ・実例検討。
    - 1. 古典的なAVGの画面デザイン
    - 2. 作中世界に即した様々な意匠(以上、2ページ目
    - 3. 独自のグラフィックデザイン
    - 4. 様々な個性(以上、3ページ目
    - 5. SLG系ブランドによるインターフェイスデザイン(以上、このページ


  【 5. SLG系ブランドによるインターフェイスデザイン 】

『英雄×魔王』 (c)2005 Escu:de
(図1:)魔王主人公が周辺地域を征服して回るファンタジーSLG。テキストボックスも、緑青を吹いた金属のような重々しいデザインになっているが、その一方で、ボックス背景はモダンな透過処理になっている。コマンドメニューは、右クリックした場所にランチャーが現れる(左記引用画像では、画面右上に出している)。
(図2:)戦闘パートの画面。マウスの左/右クリックでリボルバーを回転させて毎ターンの攻撃ユニットを決定するターンバトル。リボルバーを回転させるというレスポンスの楽しさと、視覚的な明快性と、予測及び計画を可能にする戦略性とを併せ持った、秀逸なシステムデザイン(インターフェイスデザイン)である。
(図3:)攻撃行動時の視覚的演出。視覚的デザインだけでなく、演出SEやシステムSEもシンバル音や鉄扉擦過音のような攻撃的な音色であり、またBGMも激しいロックである。なお、本作ではプレイヤーが回転を操作できるが、anastasiaの『魔法が世界を救います!』は目押しルーレット式の戦闘システムにした。
『ヴェルディア幻奏曲』 (c)2008 Escu:de
デビュー当初から奥深いゲームシステムを持つSLG作品を作り続けてきたEscu:deが、2008年に2本のAVG作品(『ワンダリング・リペア!』と本作)を発売した際には、高度に洗練された巧緻なグラフィックデザインの見本を提示することになった。より詳細な紹介は演出技術論Ⅳ-4-5-αを参照。
『彼女は高天に祈らない』
(c)2011 Escu:de
(図1:)はなたかれとも及び蒼瀬による明晰なグラフィックデザインと、TOYによる音色豊かな音響制作(民族楽器の音響感覚から、ヒップホップ的サンプリング手法、ピアノソロの率直なメロディーライン、そして電子音楽の微細進行をもミックスしている)が、日本神話及びその量子論的装飾と結びついたのが本作である。
(図2:)通常画面。インターフェイスは、不規則な多角形のシルエットを青のモノトーンで染めている。右下の「FRAME LOCK」を外すと、外周の枠が消去されて、テキストボックス本体のみの表示になる(下図3)。
(図3:)外周フレームをアンロックした、シンプルなテキストボックスのみの表示。こちらの方が、多角形輪郭のユニークさが際立つだろう。冷たい鉱物を連想させる立体的輪郭及び色彩感覚と、テキスタイルの柔らかな手触りを意識させる斜めストライプの都会的洗練との融合は、美少女ゲームには稀なセンスである。なお、マウスカーソルを画面端に当てると、メニュー枠が出現する。
(図4:)コンフィグは、青黄のツートーンデザイン。コンフィグページやシステムSEに至るまで、ゲーム内事象のあらゆる局面に対して、その都度の作品のコンセプトに合わせた視覚的設計を行う意識は、いよいよ徹底されている(――同様に、例えば2010年の『あかときっ!』については、別掲の記事を参照)。
『ヒメゴト・マスカレイド』 (c)2012 Escu:de
(図1:)女子学園への女装潜入もの。レースフリルと薔薇の花のデザインを随所に配している。『終末少女幻想アリスマチック』『花と乙女に祝福を』も薔薇でテキストボックスの周囲を飾ったが、本作の装飾はそれらに比してさらに豪奢である。
(図2:)「スキンシップ」パートでの行動に応じて「純愛」と「愛欲」のポイント(左記画像の左上)が蓄積していき、それらが「乙女の天秤」に還元されていく。この天秤のゆらぎ表現も、プログラマー(KIT水鼠)による入念な調整によって、可憐で繊細な動きに仕上がっている。
『LEVEL JUSTICE』
(c)2003 ソフトハウスキャラ
(図1:)悪の組織に属して怪人を生み出す主人公の物語。「正義だって砕いてみせる!」というキャッチコピーに窺われるとおり、物語は反逆的でありつつ同時に肯定的な勇ましさに溢れている。それに合わせて、グラフィックデザインも鋼鉄の質感とボルト締めの意匠、そしてそれに合わせた直線的な六角形で成り立っている。
(図2:)通常画面。清潔感のある透過テキストボックスと、板金風デザインのコマンドボタン群、そしてダイナミックな俯瞰/アオリ構図の背景画像が、この物語世界が目指している方向性をはっきりと伝えている。システムSEも鉄琴の軽く硬い音色である。本作の背景画像の特質については、別掲記事「田舎趣味と都会趣味」の中で紹介検討した。
『南国ドミニオン』
(c)2005 ソフトハウスキャラ
(図1:)絶海の孤島に漂着した十人の男女の物語。無人島生活を象徴するかのように、ゲーム内の様々なメッセージは、ありあわせの流木を打ち付けた簡素な木製標識の体裁をとっている。システムSEも、コンガのような素朴で鄙びた音響である。
(図2:)通常画面。本作には、決まり切った特定のイベント進行というものがほぼ存在せず、全てはこのインターフェイス上での行動とその周囲の(ランダム性の強い)リアクションを通じてボトムアップに構築されていく。

(図3:)この自由奔放なSLG作品では、およそ考えうる限りの行動を実行することができる。本作の特質については旧サイトのリメイク論『南国ドミニオン』についての章を参照。

『巣作りドラゴン』
(c)2004 ソフトハウスキャラ
(図1:)画面左の行動メニューの上にマウスカーソルを当てると、執事キャラ「クー」の音声(システム音声)で、それぞれ「巣の増改築をします」「竜が空を飛ぶだけで人間は恐怖におののくでしょう」「誰と結婚するのですか?」といった説明をしてくれる。SLG作品ならではのシステマティックな音響的インターフェイスである。
(図2:)魔界の商社から派遣されてきた「クー」は、巣の運営全体を取り仕切る責任者である。架空状況をシミュレートするSLG+AVG作品において、プレイヤーが相互作用する相手は、キャラクターであり、かつ同時に、ゲームシステムでもありそのインターフェイスでもある。このことから、キャラ表現がインターフェイスの形態を取ってその中で遂行されるのも、完全に正当なことである。
『グリンスヴァールの森の中』
(c)2006 ソフトハウスキャラ
(図1:)『巣作り』の音響的レスポンスというアイデアは、本作でさらに拡張される。この学園運営SLGで、マップ閲覧モード上で各施設にマウスカーソルを当てると、施設の種別に応じて学園生たちの生の声が音声出力される。ここでは、音響的インターフェイスの発想が、作中世界を表現する一手法として発展させられている。
(図2:)「学園の様子」コマンド。学園生活を送るキャラクターたちの声が、音声出力として文字通り多声的に表現される。シミュレートされた世界の表現は、特定のメカニズムや具体的なテキストによるだけでなく、視覚的表現と音響表現を通じても豊かに表現されるものだということの、優れた例証である。シミュレーション作品においては、インターフェイスとは、介入の経路でもあり、また同時に鑑賞の窓でもある。