2013/10/12

隠しヒロインたち

  PCゲームにおける「隠しヒロイン」の市場的作用と創作的意義をめぐって

  目次
  はじめに:ゲームと「隠しヒロイン」
 Ⅰ. PCアダルトゲーム市場と隠しヒロイン
      1. PCアダルトゲームにおける発売前情報公開
      2. PCゲーム市場の特性と広報との間の関係
      3. 隠しヒロインの広報的効果と創作的意義
      4. 「隠しヒロイン」の要件定義
  Ⅱ. PCアダルトゲームにおける「隠しヒロイン」たち
      1. 初期の恋愛SLGにおける、探索対象としてのヒロイン
      2. 初期のAVGにおける「おまけヒロイン」
      3. ヒロイン「昇格」
      4. 男装/女装するヒロイン
      5. 真相を担うヒロイン
      6. 近年の追加パッチ型ヒロイン
      7. 隠しヒロインの公表過程
  おわりに:隠しヒロインがもたらしているもの


  【 はじめに:ゲームと「隠しヒロイン」 】

  「隠しヒロイン」という形態のキャラクターは、通常のヒロインたちに比べて出現(遭遇)困難になっているヒロインキャラクターである。それらは、通常とは異なるフラグ設定によってあえて特別に出現(遭遇)困難にさせられており、それゆえ、その作品の全体的構成やそのキャラクターの位置づけに関して意図的に例外的な設計が施されているという点で、ゲーム作品における《物語》と《システム》の交錯について考えるうえでも興味深い存在である。
  本稿では、(男性向け18禁の)PCゲームにおける隠しヒロインの様々な実例について、できるかぎり広汎な展望を試みる。このテーマは、因習的な「ネタバレ配慮」の美名の下に詳細な言及が避けられてきたものであるが、以下に検討していくとおり、多様な要素によって成り立っている複雑な現象である。
  第Ⅰ章では、隠しヒロインがゲーム制作(とりわけ商業制作)において有すると考えられる意義について概観し、隠しヒロインについて一応の要件定義を行ったうえで、つづく第Ⅱ章では様々な隠しヒロインのあり方について歴史的/様式的な分類整理を試みる。



  【 Ⅰ. PCアダルトゲーム市場と隠しヒロイン 】

  《 1. PCアダルトゲームにおける発売前情報公開 》
  コンシューマゲーム分野には、今も昔も「隠し要素」は無数に存在する。あるいは、より実態に合わせて述べるなら、コンシューマでは、制作側が意識的に選別したごく一部の情報しか事前公開されないという方が正確だろう。それに対してPCアダルトゲーム分野では、サンプルCGからスタッフ情報に至るまでの多岐に亘る比較的多くの情報が発売前に公開され、そしてユーザーはそれらを元に購入するかどうかを判断する。
  なかでもサンプルCGは、ものによっては収録画像の半数近くが事前公開されることもある。フルプライス作品の製品版に含まれる一枚絵総数はカット単位で平均90枚程度だが、タイトルによっては公式サイトで30枚前後も公開されるという場合もある。ただし、実際には製品版の画像は大量の差分変化を含むのが通例であるが。
  製品版の序盤部分や、あるいはアダルトシーンのいくつかを抜き出して収録した体験版を事前公開するという慣行も、強力に普及している。中にはかなり長大な体験版もあり、おそらく各社の体験版をプレイするだけでも十分に楽しめてしまう(そしてそれだけでも毎月の娯楽時間のほとんどが埋まってしまう)かもしれないほどに。
  近年では、よりいっそう内容に踏み込んだ情報として、「ヒロインたちがヴァージンであるか否か」「作品中に含まれるHシーンの総数」「作品中で描かれる性行為の種類」「寝取られ表現が含まれないこと」などをあらかじめ明言するブランドや、さらには「ヒロイン毎のCG枚数やHシーン数」を事前公開するブランドまで現れている【註1】

【註1】実例はすでに多数に上る。極端な例としては、『炎の孕ませおっぱい身体測定』(SQUEEZ、2010)は各ヒロインの処女膜の形状を公式サイト上で図示した。寝取られ表現の有無のようにストーリー内容に踏み込むことになるデリケートな要素については、作品紹介ページよりもむしろ公式ブログなどでアナウンスされることが多いようである。
  CG枚数などの数量情報に関しては、専門誌が以前から積極的であったが、ブランド公式サイト上でヒロイン毎のイベントCG枚数配分やHシーン数を事前に明言してみせたのは、管見のかぎりではWhirlpoolが2010年に発売した『ねこ☆こい!』※リンク先アダルトゲームサイト注意)のそれが初めてである。CLOCKUP、pajamas soft、MOONSTONEなども、作品の「見どころ」の紹介という形で、作品内容や表現手法についての立ち入った情報公開を継続的に行っている。製品版パッケージそれ自身で数量アナウンスを行うタイトルもある。『ものべの -happy end-』(Lose、2013)は、パッケージ裏面にイベントCG総数やヒロイン毎のHシーン数、そしてHシーンの内容(趣向)に至るまで詳細に記載した。これも、購入前のユーザーに判断材料を明示する一つの方法であろう。
  イベントCGの事前公開については、例えば『ちいさな彼女の夜想曲』(feng、2013)は、44枚ものサンプルCGを公式サイト※リンク先アダルト注意)で公開している。


  《 2. PCゲーム市場の特性と広報との間の関係 》
  これは、アダルトゲームの市場規模が昔も今もそれほど大きくなく、かつ市場に対するユーザー層のコミットメントが比較的強いがゆえの現象と思われる。
  特に後者についてみると、カジュアルにアダルトゲーム売り場に立ち入って、気まぐれに定価9240円のタイトルを購入する者は、ほとんどいないであろう。ユーザー層の多数は、新作発売情報を毎月毎週チェックし、お気に入りのブランドの公式サイトを毎週毎日見に行き、スタッフ情報やキャスト情報まで見逃さず、心情的にもアダルトゲームに対してはっきりした指向性のある好奇心を持ち続けているようなゲーマーであろう。
  そのような顧客層――つまり9240円の高額商品のために厳しく目を光らせている「目利き」たち――をしっかり掴まえるために各メーカーが情報公開の道を選択したのは、広告手段として理に適ったものである。ただ単に物語を楽しませるだけでなく、性表現を提供するメディアでもあり、またキャラ萌えを重要な価値の一つとして含む分野でもあり、そしてユーザー層もそれを十分了知している市場であるため、こうした事前公開はデメリットをほとんど持たず、むしろその作品内容を期待するユーザーが安心して9240円を支払えるようにするための(=売上げが確保されるための)保証になるというアドヴァンテージの側面が非常に強い。もしも仮にイベントCGの全カットが事前公開され、さらに個々のエンディングの内容が知らされたとしても、この分野ではおそらく売上げが落ちることはほとんど無いのではなかろうか。


  《 3. 隠しヒロインの広報的効果と創作的意義 》
  さて、このようにPCアダルトゲーム市場の特性を概観した時、いわゆる「隠しヒロイン」を用意することは、商業的観点でいえば基本的にはデメリットにしかならない。何故なら、登場ヒロインの一人一人が大きな集客要素になるからであり、また、ヒロイン人数もユーザーの厳しい吟味に晒される数字であって、それを隠蔽して過小申告することは、少なくとも作品アピールとセールス確保の観点からいえば、メーカー自身にとって不利にしかならないからである。
  にもかかわらず、これから紹介していくとおり、「隠しヒロイン」を盛り込んだタイトルは、いくつも存在する。制作者があえてそうした意図は、もしかしたらゲーム体験の中で驚きを感じてもらうための意欲的な仕掛けであったかもしれないし、あるいは最初に述べたような古典的な(あるいはコンシューマ寄りの)ゲーム観に制作者が立っているからなのかもしれないし、あるいはユーザーの購入意欲や話題性を刺激するためのしたたかな戦略なのかもしれない。
  それでは、個々の作品におけるそれぞれの実態を検討することによって、「隠しヒロイン」たちがPCゲームシーンをいかに豊かなものにしてきたか、あるいは個々のゲームブランドがいかにしてその個性を発揮してきたかを確認していこう。


  《 4. 「隠しヒロイン」の要件定義 》
  なお、本稿で「隠しヒロイン」という場合、おおむね以下のような2つの条件を想定している。厳格な定義ではないが、「隠しヒロイン」をめぐる実践の多様性をできるかぎり幅広く捉えようとするがための要件設定である。すなわち:
  1)「隠」されていること。事前広報段階では、パッケージアートに描かれていなかったり、公式サイトではサブキャラクター欄で紹介されていたりするなど、ヒロインであるようには見えないように(あるいは他のヒロインたちとの間に落差があるように)扱われている。あるいは極端な場合には、その存在がまったく示されていない。あるいは、製品版で、そのヒロインを登場させにくく(=イベントフラグが厳しく限定されており)、あるいはそのヒロインとの固有イベントを展開させにくい。
  2)「ヒロイン」であること。本編中では、そのキャラクターとの間に「独立のアダルトシーン(他のヒロインたちとの行為に交じるおまけとしてではなく、あくまで彼女専用のシーン)が存在する」か、あるいはそのヒロインをフィーチャーしつつ物語終盤まで続く「専用ルート」と見做せるほどのまとまったゲーム進行経路が存在するか、あるいはできれば「専用のエンディング」が存在する【註2】

【註2】大規模なSLG作品のように、恋愛要素を物語の主軸にしていないタイトルでは、「専用ルート」のごとき観念は当てはまらない場合が間々あるし、また「専用エンディング」に関しても存在しなかったりあるいは曖昧なかたちであったりする。また、そもそもSLG作品においては、全てのキャラクターが事前公開されるということはあまり無い。それゆえ、本文の定義要件は適用範囲を適切に限定しなければ妥当なものとは言えまい。
  フラグ構造との関係で、ヒロイン配置やエンディング配置の様々な形態を検討した小論として、特殊なエンディングとその重みづけについてを参照。



  【 Ⅱ. PCアダルトゲームにおける「隠しヒロイン」たち 】

  《 1. 初期の恋愛SLGにおける、探索対象としてのヒロイン 》
  隠しヒロインは、美少女ゲーム/ギャルゲーの最初期から存在した。典型的かつ著名な例としては『ときめきメモリアル』(コナミ、1994)の館林見晴があり、性描写を伴うアダルトゲーム分野においても、『同級生』(elf、1992)の成瀬かおり及び草薙やよい、『同級生2』(elf、1995)の杉本桜子のように、隠しヒロインは度々登場し、そしてゲーム体験の奥行きを広げてきた。
  これらの先駆的実例を顧みても判るように、「隠しヒロイン」は歴史的にも内容的にも幅のある概念であって、例えばその隠蔽の仕方を見ても、「広報レベルにおけるキャラクター隠蔽」だけでなく「ゲームシステムに内在した隠蔽」のタイプも存在する。とりわけ上記の恋愛SLG群においては、ヒロインの存在を発見していくこともそのゲーム要素の一部であった。例えば上記『同級生2』では、病院を訪れて、背景画像に桜子がひそかに出現している時にプレイヤーがそこをクリックすると、それ以降出会えるようになるという、システム内在的な隠蔽/発見プロセスが組み込まれていた。プレイヤーは、作中の毎日の行動スケジュールを選択していく中で、試行錯誤しながら目当てのヒロインが、そしてまだ見ぬヒロインが、どこにいるかを探索していく【註3】
  このような「システムに埋め込まれたヒロインを探し出す遊戯性」は、恋愛SLGの初期に闇雲な総当たり的試行錯誤を強いられていた中でのゲーム性、つまりそのようなシステムを所与とすることによって「ゲーム」と見做されることが可能ならしめられていたものであったが、しかしながら、『とらいあんぐるハート』(JANIS、1999)や『ToHeart PSE』(AQUAPLUS、1999[PS版])以降、場所移動選択画面でヒロインの存在を示すアイコンが表示されるようになってからも、隠しヒロインの伝統は継承されていった。実際、『ToHeart』(Leaf、1997[PC版])には雛山理緒、『とらいあんぐるハート』には春原七瀬という隠しヒロインが存在する。『とらいあんぐるハート』では、場所移動候補の中にヒロインアイコンの無い場所――旧校舎――があり、そこに移動すると当初は何の事件も起きないまま手短に時間経過するだけが、何度もくりかえしその場所を訪れているうちにヒロインに会えるようになる。『ToHeart』を制作したLeafは、その後も『こみっくパーティー』(1999)で再び二人の隠しヒロイン(桜井あさひ、立川郁美)を登場させ、さらに『ToHeart』の続編タイトル『ToHeart2』(AQUAPLUS、2004[PS2版]/Leaf、2005[PC用「X-RATED」版])においても、その伝統に向けて再度会釈するかのように隠しヒロイン(草壁優季)を登場させた。
  SLG作品における隠しヒロインは、その物語的役割だけでなく、攻略失敗時の救済エンディングという機能的(ゲーム的)役割を担う場合がある。温泉旅館経営SLG『葵屋まっしぐら』(ソフトハウスキャラ、2000)においては、他のヒロインたちの攻略可能性を失った場合、ゲーム期間後半で千羽良子というキャラクター(公式サイト等ではまったく告知されていないキャラクター)が登場し、そのヒロインとのエンディングを迎えることができる。
  褒賞的役割という点では、ダンジョンRPG『DUNGEON CRUSADERZ 2』(アトリエかぐや、2008)を紹介しよう。この作品では、本編エンディング後のエクストラダンジョンをクリアすることで特別な追加イベントが発生するが、そこに登場するおまけキャラクター「ルーファン」との間にもHシーンが1個存在する。「ヒロイン」概念の捉え方次第ではあるが、アダルト要素に傾注するブランドの作品として見れば、このルーファンもゲームの重要な目的、すなわちヒロインの一人であると見做すことはできよう。

【註3】個々のイベントシーンの中で、会話コマンドや画像クリックによって会話が進行していく古典的なAVG(いわゆる「コマンド総当たり」)や、本文で言及したようなブラックボックス式場所移動選択の試行錯誤的探索の中からヒロインたちのその都度の所在を発見していくタイプのSLG/AVGは、はたして「(狭義の)ゲーム」と呼ぶに値するのかという問は、たびたび提起されてきた。私見では、そのようなシステムの作品もまた、まぎれもなくゲームである。それは広義の「ゲーム」概念(例えば「プレイヤーとの相互作用的要素を伴うマルチメディア的創作物」のようなゲーム観)においてそうであるだけでなく、比較的厳格な「ゲーム」定義(囲碁将棋に代表されるような、合理的計算を基礎として勝利条件充足乃至目的達成を目指す活動)に限った場合でも、そう言える。それは、一方では、システムの中に隠蔽された特定の情報を一定の理に適ったプロセスで探索していく活動としての側面それ自体が――例えば『マインスイーパ』がゲームと呼ばれ得るのと同程度の地位において――十分に「ゲーム」であり得るからであり、また他方で、プレイヤーがそうした探索プロセスを合理的効率的に組織化しつつ好感度等のマスクデータの想定と組み合わせて(ヒロイン攻略という)解を導き出そうとする知的活動の側面においても、まちがいなく「(狭い意味での)ゲーム」定義の要件を満たすからである。これらはけっして「ゲーム性の放棄」などではなく、「ゲーム」というものの一つのあり方である。選択肢を極小化しフラグ構造を単純化した現代AVGを評価するに際しても、この論点は看過されるべきではない。


  《 2. 初期のAVGにおける「おまけヒロイン」 》
  特有のゲーム進行制御システムを伴わない純AVG形式のタイトルにおいても、広報段階で事前公開されないヒロインが登場するものは時折存在した。90年代末から00年代初頭にかけてのそれらは、制作者に余力があった場合に追加された比較的簡素なシナリオであることが多く、彼女等はしばしば「おまけヒロイン」と呼ばれた。上記『ToHeart』の雛山理緒(開発時点の仮名は「浦科理緒」=「裏シナリオ」と呼ばれていた)もまさにこのタイプであるが、実例としては、『Piaキャロットへようこそ!!3』(F&C、2001)の天野織江や、『Crescendo.』(D.O.、2001)の静原美夢、『ショコラ』(戯画、2003)のチロルなどを挙げることができる。あるいは、『水月』(F&C、2002)の大和鈴蘭(幼年キャラ)【註4】『エムM×Sエス』(abogadopowers、2003)の多岐川基茜(ライバル役キャラ)【註5】のように、最初から登場してはいるもののヒロイン待遇(すなわち、Hシーン及び専用エンディング)があるとは予想されなかったであろうようなキャラクターもいる。また、ヒロイン(女性キャラ)ではないが、『ONE』(Tactics、1998)にも、氷上シュンという謎めいた登場人物との間に専用ENDが存在する。この時代の「隠しキャラクター」文化の一端が窺われる。
  そしてその後も、『E×E』(ゆずソフト、2007)の上御霊円、『えむぴぃ』(ぱれっと、2007)の不渡真紀、『朝凪のアクアノーツ』(Fizz、2008)のメリエル&慧本向日葵などの「おまけヒロイン」が現れている。不渡真紀は、専用イベントCGも存在せず、Hシーンも存在しない。この楽屋オチとパロディギャグに満ちた過激なスラップスティック作品の中で、他のヒロインたちから「サブキャラ」「ビジュ無し(=ビジュアル無し)」とくりかえし揶揄されつつ、この金田まひるキャラのためのかりそめの専用ルートが設けられているにすぎない。『朝凪のアクアノーツ』のメリエルと向日葵(実母)は、公式サイトではサブキャラクター欄に置かれているが、それぞれHシーンを経由する専用エンディングが用意されている。ただしそれらはあくまで手短な幕切れにすぎず、基本的には他のヒロイン攻略に失敗した際の救済ENDと見做されるべきものである。
  彼女等の多くは、1)公式サイト等の事前広報にはほとんど露出しておらず、2)作品全体の中では比較的マージナルな存在であり、3)他のキャラクターたちとの絡み合いも乏しく、それどころか4)進め方によっては一度も登場することが無く、5)シナリオやイベントCG枚数は比較的小規模であり、6)フラグのうえでも「特定エンディング到達後でなければルートが開放されない」といったように条件づけられて、他のヒロインに比べて従属的な地位に置かれている。サブキャラにたまたま小規模な専用エンディングが付与されている場合も、そうした従属性は維持されている。
  他方で、作品規模の大きな大作ソフトの中にも、隠しヒロインが現れる例はある。例えば『D.C.』(CIRCUS、2002)の鷺澤頼子や、その系列タイトル『D.C.II P.S.』(CIRCUS、2008[PS2版/PC版])の藤林忍、それから『BALDR FORCE』(戯画、2002)のバチェラ(朝倉ひかる)など。これらは、作品規模の大きさがそうした隠しヒロインの存在を可能にした例だと考えることができる。

【註4】大和鈴蘭は、企画当初は存在しなかったとされている。☆画野朗氏のコメントによれば、「もともと登場する予定がなかった娘なんです」(『水月ビジュアルファンブック』、エンターブレイン、93頁)。

【註5】原画家の小池定路氏が、このキャラクターはサブキャラなのでヒロインらしさに縛られることなく目の描き方などを自由に挑戦することができた、といったような発言をどこかでされていたと記憶する。


  《 3. ヒロイン「昇格」 》
  00年代前半にはすでに、人気タイトルにファンディスクが制作される慣行が一般化していた。そのファンディスク文化の中で、本編タイトルでヒロインとしては扱われていなかったがユーザーの間で人気の出たキャラクターを「救済」する――すなわちそのキャラクターに専用のシナリオや主人公とのHシーン機会を提供する――という流儀が現れてきた。これはしばしばヒロイン待遇への「昇格」とも呼ばれる。そうしたキャラクターたちは、本編タイトルの時点でその存在を知られているため、狭い意味での「隠しヒロイン」と呼ぶのは難しいが、「ヒロインでなかったものがヒロインに転化した」という意味で、ゲームヒロインのあり方のヴァラエティの一つとしてここで紹介しておこう。
  実例は多数に及ぶ【註6】が、有名な例として『はぴねす!』(ういんどみる、2005)の渡良瀬準及び式守伊吹と、『明日の君と逢うために』(Purple software、2007)の七海美菜を挙げておく。渡良瀬準は、本編タイトルでは女装した男性キャラクターであったが、その好評を受けてFD『はぴねす!りらっくす』(ういんどみるOasis、2006)では、ヒロイン待遇を受けるに至った(――選択肢次第で、準と主人公とのHシーンも、そして準が女性化した状態でのHシーンも含まれる)。『明日の君と~』の七海美菜は、本編タイトルではサブキャラクターであったが、ブランド公式サイト上での人気投票※リンク先はアダルトゲームサイト注意)で1位を獲得し、彼女の名前を冠した『明日の七海と逢うために』(2008)が制作されることになった。
  特異な事例としては、『水平線まで何マイル?』(ABHAR、2008)で放送音声でしか登場しなかった(立ち絵等で姿を見せることが一切無かった)千鳥水面が、そのファンディスクでトップヒロイン化された。
  その最も徹底的な例が、『桜吹雪』(Silver Bullet、2009)である。同年末に発売された『花鳥風月』は、『桜吹雪』のFDというよりもむしろそれを換骨奪胎して再構成した新規タイトルと言うべき作品であり、そこでは『桜吹雪』のヒロインたちを脇役とし、その一方で『桜吹雪』では脇役だった4人のキャラクターたちを新たにヒロインにして、まったく新たな物語を編み上げている。『恋色空模様』(すたじお緑茶、2010)も、翌年のFD『恋色空模様 after happiness and extra hearts』で、4人のサブキャラを物語の中心に据え直して、フルプライスに匹敵する規模の新規シナリオを展開してみせた。
   「昇格」とは異なるが、複数タイトルにまたがる特殊な例として、続編タイトルで前作ヒロインたちが再登場してくるというパターンもある。典型的なのはtriangleの『魔法戦士』シリーズであり、本編内で(とりわけその作品のベストエンディングに到達した時などに)前作ヒロインたちが登場し、そしてしばしば濡れ場を晒すことになる。続編タイトルならではの多層性と言える。

【註6】初期の「昇格」事例としては、以下のものがある。『CANVAS』(F&C、2001)のサブキャラクター鷺ノ宮藍については、彼女の専用シナリオを含む『NAKED BLUE』が、コミックマーケット60で限定販売された(――のちに一般販売化)。『ねがぽじ』(Active、2001)では、翌年発売のFD『ねがぽじファンディスク』の中に、遠場透と女装主人公との間の同性愛的シナリオが含まれる。『Like Life』(HOOK、2004)に関しては、サブキャラクター氷庫をフィーチャーしたFD『氷庫版』が制作された(――これも当初はコミケ限定商品。のちに通販化された)。『まじぷり』(Purple software、2004)のサブヒロイン二人(姫川茗子、桜朱鷺乃)は、同年のFD『まじぷり ふぁんでぃすく』で攻略対象となった。移植版でのヒロイン昇格に関する最も早期の実例として、『To Heart』の来栖川綾香が名高い。1997年発売のPC版ではサブキャラクターの一人であった(ちなみに姉の来栖川芹香は当初からヒロインである)が、ユーザーから強い人気を博したため、PS版(1999)ではヒロイン級の扱いを受けるに至った。
  『はぴねす』以降、すなわち2006年以降の実例としては、『ピリオド』(Littlewitch、2007)のサブヒロインズ、『あねいも2』(bootUP!、2007)の平沢和美及び賀曽利優子、『片恋いの月』(すたじお緑茶、2007)のサブヒロインズ、『ヨスガノソラ』(Sphere、2008)の倉永梢及び伊福部やひろ、『るいは智を呼ぶ』(暁WORKS、2008)の3人『さくらテイル』(Fizz、2009)の金宮なつみ、『Signal Heart』(Purple software、2009)のサブキャラ3人、『スズノネセブン!』(Clochette、2009)のサブヒロインたち、『星空へ架かる橋』(feng、2010)の「よっちゃん」及び万千歌、『プリンセスX』(Black CYC、2011)のサブキャラクターたち、『鬼ごっこ!』(ALcot、2011)の浦部葵、『この大空に、翼をひろげて』(PULLTOP、2012)の姫城ほたる及び時雨佳奈子などがある。彼女等は、FDで専用シナリオが作成されてヒロイン級の待遇を受けるに至った。ブランド公式サイトでも、これらはしばしば「(ヒロイン)昇格」とアナウンスされている。
  近年のファンディスクとヒロイン「昇格」に関しては、メモ「FD制作は減っているのか」を参照。


  《 4. 男装/女装するヒロイン 》
  2005年の『はぴねす!』によって可能性を大きく拓かれたのが、「男性ヒロイン」(とりわけ女装した"男の娘"ヒロイン)や「男装ヒロイン」のような、ジェンダー要素の多面化乃至自由化したキャラクター表現である。ここでは特に後者が重要であり、事前広報段階では男性キャラクター(すなわち通念的にいえば「ヒロイン」である筈のないキャラクター)として提示されている登場人物が本編ストーリーの中で女性であると判明するというタイプが、00年代半ば以降、いくつも現れるようになった。これも、「ヒロインであることが隠されていた」という意味では、「隠しヒロイン」の一種と捉えることができる(――ただし、男装ヒロインそれ自体は、例えば『Piaキャロットへようこそ!!2』[カクテルソフト、1997]の神楽坂潤のように、かなり以前から存在していたが)。
  その最も早期の実例――そして大きな成功を収めた例――に属するのが、『ウィズ アニバーサリィー』(CROSSNET、2006)のエンフィ(ルル)である。発売前は女性であることが明かされていなかったが、彼女自身を含めて総勢7人のヒロインが登場するこの作品で彼女は大変な人気を博し、その結果としてFDは『ウィズ アニバーサリィー FUNTA! feat. RURU』(CROSSNET、2006)と彼女の名前を冠したタイトルになった。同様の「隠し-男装-ヒロイン」の実例としては、『D.C.』(CIRCUS、2002)の工藤叶や『DRACU-RIOT!』(ゆずソフト、2012)のニコラなどがある。さらには、「隠し-女装-ショタ-ヒロイン」という二重三重のひねりを利かせた奇抜なキャラクターのいるタイトルすら存在する。『オト☆プリ』(しゃくなげ、2008)の大友真希である。
  フルプライス恋愛AVGにおいては、ヒロインの扱いが固定的になりがちである。一定以上の登場頻度、専用CGの配分、Hシーンの確保、そして専用エンディングに至るまで、AVGにおいてヒロインが「ヒロイン」と見做されるための必要条件は多い。しかし、それに対してSLG作品においては、個々のキャラクターの扱い方には比較的大きな自由裁量が存在する。『門を守るお仕事』(ソフトハウスキャラ、2012)の男装キャラクター「ウェンディ」の扱いは、そうしたSLGの柔軟性と重層性を示す優れた一例である。


  《 5. 真相を担うヒロイン 》
  物語の根幹部分に関わる重要キャラクターが、同時にヒロインとしての扱いを受けるという場合もある。物語の「謎」の内容如何によっては、そのキャラクターを事前公開することができない場合があり、そうした場合にはそのヒロインキャラクターは必然的に事前広報段階では「隠し」キャラクターにされざるを得ない。
  典型例は『星空のメモリア』(FAVORITE、2009)の乙津夢であろう。彼女は、主人公が無くした記憶の対象そのものであり、それゆえ彼女の存在については本編の中でも終盤に入るまでずっと沈黙されたままである。同様の例として、Whirlpoolの2本のタイトル、『77』(2009)の「くぅ」と『Lunaris filia』(2011)のフィリアがある。特にフィリアについては、ブランド公式サイトは発売日直前(前日)にキャラクター紹介を公開するという大胆なプロモーションを行った。比較的古い実例としては『誰彼』(Leaf、2001)の杜若きよみも挙げられるし、近年では『神がかりクロスハート!』(ういんどみる、2012)の千夏や『ハピメア』(Purple software、2013)の鳥海有子もこの文脈で言及されるべきだろう。『3days』(Lass、2004)の柊美柚も、公式サイトでは主要キャラクターの一人として紹介されているが、本編では冒頭時点で彼女が死んだ(殺害された)ところから物語は進んでいく。彼女が生きた姿を、そして本当の姿をプレイヤーの前に見せるのは、ゲーム終盤になってプレイヤーが長大なループ反復を抜け出してからのことである。
  SLG作品やバトルもの作品における敵役(特にラスボス)についても、同じことが言える。特にソフトハウスキャラがこのスタイルを得意としており、『アルフレッド学園魔物大隊』(2002)の黒幕クーチェルを初めとして、数多くの女性敵キャラクターたちが、主人公に敗北し蹂躙されては次々に服従を誓っていく。
  筆者は未プレイだが、『Marguerite Sphere』(Meteor、2011)のマーガレットも、一見ヒロインのようには見えない姿をしているが真相ルートでヒロインになるらしい。そのほか、真相というほどではないが、例えば『イモウトノカタチ』(Sphere、2012)の清宮真結希のように曖昧なかたちでしか事前紹介されていないヒロインを含むタイトルも存在する【註7】『LikeLife』の「沢木椿」も、非常にトリッキーな仕方で登場するキャラクター(たち)である。

【註7】その存在が事前公開されているか否かにかかわらず、真相ヒロイン(物語の結末を引き受けるヒロイン)のためのストーリーは、本編の通常進行から構造的に逸脱することもある。『プリンセス小夜曲』(すたじお緑茶、2005)では、本編のヒロイン4人とのエンディングをすべて制覇した後に、タイトル画面に新たな項目が現れ、その特別なシナリオ――本編ではもっぱら狂言回し的存在であったサーシャの真意を明かす物語であり、そして彼女とのベッドシーンはここにしか含まれない――まで読了することでようやくこの作品は最終的に締め括られる。このように本編外のエクストラシナリオを伴う構成を採用するタイトルは、いくつも存在する。例えば『淫妖蟲』(Tinkerbell、2005)では、白鳥武に関する前日談的内容の特別シナリオが本編クリア後に開放されるし、『初恋撫子』(Carriere、2006)にも、高御千歳とエクルーを中心にした2本の追加的な物語が用意されている。


  《 6. 近年の追加パッチ型ヒロイン 》
  通常のプレイでは発見(遭遇)することが困難乃至不可能であるようなヒロインのことを「隠しヒロイン」と呼ぶのであれば、追加パッチやDLコンテンツによって攻略可能になるヒロインのことも「隠しヒロイン」と呼ばねばなるまい。過去に『さくらビットマップ』(2010)で友人キャラクターを女性化する予約特典「不思議な事もあるもんだ!親友キャラ性転換パッチ!」を制作したHOOKSOFTは、『Strawberry Nauts』(2011)を、予約特典「上級生女子C攻略パッチCD」を適用することによって「上級生女子C」が攻略可能になるという仕様にした(――言い換えれば、この特典パッチが無ければ、このキャラクターはそもそも攻略不可能であり、すなわちヒロイン扱いにならないままである)。さらに『PriministAr』(2013)に際しても、予約特典「そんな馬鹿な!“文化部棟の幽霊”攻略パッチ!」を制作した。
  同様に、近年のPULLTOP系列ブランドは、(期間限定)ダウンロードコンテンツによって特定キャラクターをヒロインとして攻略できるようにするという対処を行っている。『恋神』(2010)で正規ユーザー向けのダウンロードコンテンツ「いちゃラブパッチ」【註8】を提供し、また2012年の『この大空に、翼をひろげて』でも同趣旨の「スウィートラブパッチ」を制作したのに続いて、『彼女と俺と恋人と。』(PULLTOP LATTE、2012)では、サブキャラクター松上すすきの(Hシーンを含む)専用ルートを追加する「お兄ちゃんじゃないとダメなのパッチ」を期間限定でダウンロードできるようにした。その後もブランドはこの方針を継続しており、年内発売の新作『ココロ@ファンクション!』及び『恋する夏のラストリゾート』でも、製品同梱のシリアルコードを使用することでダウンロード可能になるシーン追加パッチが予告されている。
  『ナマイキデレーション』(2013、まどそふと)も、購入者限定コンテンツページ(製品版同封のシリアルコードが必要)で、日向真(※「男の娘」サブキャラ)パッチを限定公開した。twでの告知によれば、パッチによる追加コンテンツは「ショートストーリー+H1シーン」とのこと。
  製品内容を分割してユーザーの使用権に制約を掛ける企業姿勢に対しては、依然として賛否があると思われるが、しかしながら、探索対象としての積極的意義を剥奪されつつあった「隠しヒロイン」に対して再び積極的な意義を付与することに成功したと述べることはできるだろう。

【註8】製品版同梱のカードに記載されているurl上でシリアルコードを入力すると、専用ダウンロードページに入ることができ、キャラクターシステムボイス集や描きおろし壁紙と並んでこのパッチをダウンロードすることができる。製品版をインストール済みの状態でこのパッチを適用すると、製品版のタイトル画面に「アフターSS」(各ヒロインの、Hシーンを含むアフターストーリー集)が追加される。


  《 7. 隠しヒロインの公表過程
  隠しヒロインの存在について、ブランド自身が沈黙したままであるとは限らない。上記『Lunaris filia』で説明したように、発売前または発売後に公式サイトが隠しヒロインの存在を正式に公表するという場合がある。SLG系/ダーク系/ピンク系ブランド群について、実例を紹介しよう。
  例えば低価格のAVG作品『よくばりサボテン』(alicesoft、2006)は、事前広報段階では凰火朱鷺の存在をまったく示唆していなかったが、発売日から一週間後にブランド公式サイトは作品紹介ページを更新して彼女の存在を大きくアピールした。彼女一人のために新たに設けられたキャラクター紹介ページの中では、「隠しヒロイン」であることをブランド自身が明言している。
  同様に、『CURE GIRL』(Noesis、2011)には、ツクヨミ(各務原いつか)という隠しヒロインがいる。Innocent Grey系列らしく、クラシカルなコマンド選択型AVGを採用しつつ、隠しヒロインの伝統も微笑ましく取り込んでいる。発売前販促の中でも、その存在は暗に示唆されていた憶えがあるが、公式サイトでは、製品版発売から約一ヶ月後に、「隠しヒロイン」であることを明言しつつ彼女の紹介ページが公開された。
  そもそも、プレイヤーの介入要素をほとんど選択肢決定の場面のみに縮減してただ直線的に進行する純粋な読み物AVGの場合とは異なり、SLG作品におけるインタラクティヴな物語構築は、――特にモデルとしてターン制SLGを措定するとすれば――ルーチン化されたシステムの中に、様々なフラグによって発生条件を指定された個々のイベントを埋め込み、それらをプレイヤーが参加的に発掘していく過程として捉えることができる。そしてここでは、「イベント」の次元と同様に、それらの中に登場したりしなかったりするヒロインたちもまた、あらかじめシステムの中に関数的に埋め込まれた要素となる。それゆえ、SLG制作に熟達したブランドが「隠しヒロイン」の発想に親しむことはまったく自然なことであろう【註9】
  ダーク系/ピンク系ジャンルには「隠しヒロイン」は珍しいが、実例はいくつか存在する。ダーク系では、例えば『美脚エージェント・麗華』(ルネ、2009)は、公式サイトの「キャラクター」紹介欄に露出しているのは男性主人公を含めて4人のみ――いずれも一連の有名アーケード格闘ゲームを連想させる――であるが、サンプルCGにはそれ以外の何人ものキャラクターたちが現れており、さらにチュートリアルムービーではキャラクター名とキャスト情報まで詳しく紹介されている。プロモーションムービーの中では、隠しキャラクター「冥」の姿もシルエットのみながら一瞬だけ登場しており、ナレーションも「ある条件を満たすことで出現する隠しヒロインも……」とはっきり説明している(※明らかに『STREET FIGHTER』シリーズの豪鬼を連想させるキャラクターである)。
  近年急速に拡大しつつあるピンク系ジャンルの中では、例えば『Chu(治癒)してあげちゃう』(SYRUP -Honey Sweet-、2012)に瀬川晃という隠しヒロインがいるが、このキャラクターは発売直前のカウントダウンヴォイスの中で名前も名乗らずこっそり登場していた。なお、古い例では、『人妻×人妻』(DISCOVERY、2001)の「悦子」という隠しヒロイン(Hシーンは無いとのこと)もあるらしいが、筆者は未プレイ。

【註9】このような事情のほかに、そもそも(大規模な)SLG作品においてはキャラクターの事前公表は非常に限定的なものになっている、あるいはそうならざるを得ないということは、すでに述べた。前掲【註2】を参照。



  【 おわりに:隠しヒロインがもたらしているもの 】

  「隠しヒロイン」というアイデアは、美少女ゲームがいまだ前世紀的な「ゲーム性」の強迫観念とともにあった時代の遺物に過ぎないかのように思われるかもしれないが、実態はけっしてそればかりとは言えない。また、ただ単にびっくり箱的な驚きをプレイヤーに与えるための遊戯的な仕掛けのみに終わるものでもない。それは、ヒロイン人数を増やそうとする制作努力がたまたまそのようにも見えるというだけであったり、あるいは男装ヒロインという設定をつうじてヒロインたちのキャラクター属性に広がりをもたらす動因となっていたり、あるいは大規模化したシナリオの副産物の一つとしての真相ヒロインに対する不可避的制約にすぎなかったりする。それらの様々な意欲的な試みの一部が、たまたま「隠しヒロイン」という既成の枠組を再利用しているのである。
  本文で紹介したとおり、ここ数年の間でも、むしろ以前にも増して数多くの「隠しヒロイン」が現れている。PC(アダルト)ゲームに対して、そのシステムに奥行きを、そのキャラクターに多様性を、その物語に驚きを、そして部分的にはどうやらそのメーカーの財政に余裕を。そうした豊かさをもたらしている一つの契機が、この「隠しヒロイン」たちである。