2013/10/15

ゲームCGとイラスト

  ゲーム中のCGとイラストワークの違いをめぐって少々。


  深崎氏はもうPCゲームのお仕事はなさらないのかなあ。氏の画風を最も純粋なかたちで完成させるにはゲーム原画よりも手塗りイラストの方が良いのだという考え方もありはするが、しかし個人的には、氏のイラストワークは人物と背景のマッチングやライティング処理などで気に入らないものがたまにあり、全体的にいえばゲームCGの時の方が安心して見られた。フルプライスゲーム作品の方が、一人のイラストレーターの絵を集中的に観賞することができるし、表情差分の豊かさや一枚絵とテキストの相互作用なども楽しめるし、デジタルCGならではの精密さもあり、そして単発イラストではできないようなタイプの絵も描かれるので、仮に「絵だけが目的」という場合であってもゲームというメディアにも十分なアドヴァンテージはある。
  TOMA氏も、販促イラストなどの単体イラストになると、好みの構図をあまりに多用してしまうためか、どれも似たり寄ったりの単調なものになってしまいやすい(cf. 『TOMAイラストワークス』)。それに対して、物語の中に埋め込まれた(埋め込まれるための)イベントCGになると、途端にダイナミックで生き生きとしたレイアウトを切ってこられる。『AYAKAHI』しかり、『桜花センゴク』しかり、『Maple Colors』シリーズしかり、そして近年のピンク系タイトル群においても。これも、作家個人の資質というものだろう。
  それとは逆のタイプもあって、たとえば珈琲貴族氏のゲームCGは(おそらくは作中のイベントの内容に合わせるために、あるいは一本のタイトルの中でのヴァラエティを確保するために)無理のあるポージングやストレスフルなカメラワークが頻出し、その結果としてわりとつらい絵が散見されるようになる。あまり肩の凝らない単発イラストの方が、心配せずに観賞することができる。


『水平線まで何マイル?』
(c)2008 ABHAR (図1:)ゲーム中で使用されるイベントCGは、その都度のシチュエーションに拘束されるだけでなく、その状況設定及び描写の全体に支えられることによって自由度を得るという側面もある。主人公側(プレイヤー側)に向けられる明確な視線も特徴的である。
(図2:)イベントCGは、バトルものなどでカットイン的に使用される一枚絵などの一部の例外を除いて、基本的には画面全体に描き込まれた画像になる。それゆえ、人物部分だけでなく、背景部分の密度も鑑賞の対象として重要である。左記画像の背景にあるのは競技用モーターグライダーの機首部分。

(図3:)ゲームCGは、テキストボックスなどによって一部が遮蔽されることが多く、そのため構図設計にも特有の配慮が要求されがちである。特にアダルトシーンの一枚絵の作画では、胸部や股間部をテキストボックスによって隠してしまわないことが肝要であるとされる。

(図4:)立ち絵+背景パートでは、画面はいわば記号的に意味づけられつつ構成されたコラージュであり、人物画像と背景画像との写実的整合性は必ずしも必須的なものではない。その傾向はSLG作品の画面作りにおいていっそう顕著であるが、AVG作品に際してもその原則は基本的に同じである。

『桜花センゴク』 (c)2010 ApRicoT
『Maple Colors』(2003)や『AYAKASHI』(2005)以来、TOMA氏は十年を閲したそのゲーム原画業の中で常に、刺激に満ちた外連味溢れるイベントCGを制作し続けてきた。