2013/10/18

「水の都」舞台のタイトル、そのほか

  いつもの記憶耕し。


  ヴェネツィアのように市中を運河や水路が走っている「水の都」が舞台になっているタイトルというと、まずタイトルでそれを謳っている『水の都の洋菓子店』『水都幻想』(※未プレイ)があるが、『メルクリア』『ウィズ アニバーサリィー』『Primary』『霞外籠逗留記』もそのような舞台設定だった。『霞外籠』のみは洋風(南欧風)ではなく和風の(和服と木造建築の)世界だが。たしか『カタハネ』にも、水路(あるいは川)の流れている石造りの都市背景があった筈。

  多少毛色の違うものとしては、『See In 青』は環状海上都市で、先端研究施設の集中する科学都市でもあった。細かな例としては、『星空のメモリア』には小樽運河の背景画像もあった(――ただし、同じ洋上都市設定でも、『うさみみデリバリーズ!!』には水路描写等は存在しない。海を見晴らす絵とかはあったが)。『月神楽』の戦闘パートには、水場に木道を架けたマップもあった。『BITTER SWEET FOOLS』の舞台モデルはフィレンツェだったか。海面上昇設定のある一連のタイトル(『はるかぜどりに、とまりぎを。』『しすたぁエンジェル』『青と蒼のしずく』『MERI+DIA』『ひめしょ!』)も、しばしばこれと似たような風景を持つ。ウォーターリゾート(例:『トロピカルKISS』)、ウォーターフロント(例:『潮風の消える海に』)、人工島(例:『てとてトライオン!』『ナツユメナギサ』)を舞台とする作品にもそれに近い雰囲気があるが、そこまで話を広げると収拾が付かなくなってしまう。

  調べてみたら、『アルテミスブルー』も似たような舞台設定(人工島空港)らしい。そういえば『祝福のカンパネラ』の舞台背景もヴェネツィアの都市風景をモデルにしていたらしいが、水路描写は無かったかな。

  そういう「水の都」イメージを私が好んでいるのはおそらく、自然と人工物と歴史と生活文化が組み合わさり結びついている有様を感じ取ることができるという点なのだろう。そういう絡み合いを感じられるという点で、私の中では『ウィズアニ』と『霞外籠』の2本はやはり別格だ。他方で、海面上昇の一方的な浸食や洋上研究都市のひたすら人工的な冷たさに際しては、そうした相互作用的側面は希薄であり、だからそれほど好みではない。

  大阪を舞台にした場合も、やりようによってはそのような描写を盛り込むことができる(実際にも道頓堀クルーズが行われているくらい)のだが、明示的に大阪を舞台にしているタイトルになんてあったっけ……あ、『大阪CRISIS』か。『大悪司』も一応。『LEVEL JUSTICE』もいかにも大阪らしい雰囲気で、背景画像や戦闘マップの随所に港湾都市らしさを表していた(――ちなみにSHC自身も在阪メーカー)。

  そういえば『ぷにぷに★はんどメイド』も途中で挫折してしまっていた……。

  声高に主張するには至らない単なる推測次元の話だが、必ずしも物語(ドラマ)の要請から導き出されたのではない舞台設定を組み込んで作品世界に彩りや魅力を与えようとするのは、近年(ここ5年ほど)の白箱系タイトルが試みるようになっている新たな方向性だろう。そのような新動向が確かに存在することは、先日の記事「公式サイトの背景紹介について」でも確認したとおりだが、このような傾向をもたらした事情については、「他作品との差別化の一手法としての案出」(商業的理由)、「ワイド画面演出が背景の充実を要求していること」(表現様式上の理由)、「制作者の意識がキャラクター以外にも向かうようになっていること」(表現密度との関連)、「いくつかの成功例が追従されているという可能性」(流行の存在)など、様々なものを想像することができる。