52TOYS「BEASTBOX / MEGABOX」シリーズの雑感。
「BEASTBOX」シリーズは、一口に言えば「ZOIDSのようなメカっぽい動物のおもちゃ」。面白いのはそのギミックで、ただのおもちゃではなく、変形させて5cmのキューブ状態にできるというユニークな仕掛けがある。つまり、「ZOIDS的なメカの格好良さ」+「可動玩具としての遊び」+「変形のパズル的刺激」という3つの観点で楽しめる。中国広東省のメーカーとのことだが、マイルストン社が仲介して2022年頃から日本のホビーショップでも見かけるようになり、私もいくつか購入している。
以下、個々の製品の特徴に言及しつつ、私なりの全体展望を示しておく。
1) 構造面。初期(ゴリラ型、カバ型など)は比較的シンプルに折り畳むだけの変形だが、凝った変形ギミックへと急激に進化してきた。ステゴサウルス型も意外性のある変化をするし、アンコウ型(Rustypiece)は特にダイナミックな組み替えをする。しかも、パーツを一切分離せず、ひとまとまりの組み替えだけで完全変形を実現しているのが凄い。コンピュータでの3D処理をホビーとして最大限活用した成果なのだろう。ちなみに、一部のジョイントは金属シャフトでしっかり強度確保しているという親切設計。
変形に際しては、各部にロック機構が設けられているので、グラつかずしっかりとキューブ状に固定できる。そして、ロック機構が同時に、変形のヒントにもなっている。つまり、各部のパーツの嵌め合わせをしっかり留めるストッパー機構があると、例えば「ここに出っ張りがあるので、たぶんあちらのパーツに嵌め込むように回転させていくんだな」といったような推測ができる。
2) クオリティと演出。塗装にも非常に力が入っている。例えばゴリラ型(Johnny)は、全身に複雑な迷彩模様が塗装されている。こんな小さな立体物に……と感心する。それでいて、日本での販売価格は、安いものだと3000円程度。この出来ならば十分リーズナブルだと思う。カラーリングの異なる製品(カラバリ)も多いので、好みの色を選べる余地もある。
遊び心もある。例えばカメレオン型(Phantomaster)は、温度で模様が消える特殊な塗料を使っているし、頭部の横を押すとバネ仕掛けで舌がピョコンと飛び出すし、目玉も動かせる。カブトムシ型(Nightcrawler)も、キューブ変形だけでなく、羽根の開閉までできる。よくもここまで仕込んだものだと驚かされる。また、フクロウ型(Whitenoise)は、キューブ型では実にきれいな面一造形になる。メタルヒーロー型(Unus)もキューブ状に変形してしまう(!)。ちなみに、Unusは16cm程度なので、Figure-rise Standardの仮面ライダーたちと同じくらいのサイズ。航空機型(Icarus : Elite)は2機セットで、ほんの5cm四方の小さなキューブ2個が、それぞれ全長20cmの大きな航空機に展開されて、さらに両方を組み合わせると高さ25cmのロボット1体になる。わけが分からない(笑)。
ただし、最近の製品にはちょっと飽きつつある。四肢を強引に箱状に詰め込んでいくのがダルく、「ここがこんな風に変形するのか!」というパズル的な気持ち良さが無くなってきたように感じる。複雑化ばかりが進行しすぎてマニア的先鋭化の袋小路に入ってしまうと大変なので、そうならないことを願いたい。
下段の航空機型は2個セットで、それぞれキューブ状態になるだけでなく、2つを組み合わせて大型ロボットにもなるという3態変形もの。表裏両面の塗装も含めて、かなり凝った力作。ウミガメ型(Jetsam)は、形状はユーモラスだが、裏側はスカスカで、変形ギミックも今一つ。サメ型(Sharkira)は、長さ22cmの魚を5cmキューブに圧縮させるプロセスが見事で、変形ギミックの面白味もあるのだが、ボールジョイントが外れてしまいやすく、変形時のパーツ干渉がきついといった欠点もある。もったいない。
いずれにせよ、サーヴィス精神と意欲的な挑戦のある、面白いシリーズだと思う。3Dモデリングと模型(玩具)の幸福な結びつきという意味でも、たいへん好ましい。難易度低め(入門向け)だと、ステゴサウルス型あたりがストレスなく変形を楽しめるだろう。ダイナミックな変形ギミックの面白さという観点では、アンコウ型とカブトムシ型が出色のクオリティだと思う。大物では、航空機型2機セットが傑作だと思う。大きな広がりの飛行機がキューブ状に変形するのも刺激的だし、変形プロセスも明快さと意外性を両立させているし、キューブ状でもしっかりロックが掛かってきれいな箱状になる。