2023/04/02

Academy「1/350 ウォースパイト」について

 Academy社「1/350 ウォースパイト」について。先にPit-Roadの1/700「ウォースパイト」もストレートに作っていたが、こちらは迷彩の模様を変えつつ、大スケールらしくディテールアップにも取り組むアプローチで制作した。

2023年3~4月制作。約55cmの大物だが、迷彩の柄は比較的シンプル。ただし、パーツ精度は低めだし、あまり親切でないパーツ構成なので、作りにくいところもあった。制作時間は30時間台。


凹凸の多い立体物なので、見る角度によっては迷彩の柄がズレてしまうが、できるだけ繋がるようにした。ライトグレーはCreos「バーリーグレー」、濃いグレーはTAMIYA「NATOブラック」を使った。
錨鎖もプラパーツ(別パーツ)で造形されているのは珍しい。せっかくなのでキットパーツのまま使ってみた。今回の制作では、手摺と梯子類に汎用エッチングパーツを使い、それ以外はキットのまま組んでいる。機銃防弾板も、薄いPEパーツに換えてもよかったかも。
艦橋を仰角気味に。ブロック状にすっきりまとまった艦橋のシルエットはきれいだし、その上に斜め迷彩が大胆にうねっているのも面白い。舷側に単装砲(4×2基)を残しているのはレトロ感があるし、金剛型などの日本艦も連想させる。
艦橋や格納庫などのブロックはすべて箱組みの構成だが、問題無く組める程度の精度はある。細かなパーツも頑張って造形している力作キットではあるが、造形やパーツ構成の甘さを感じるところもあり、少々もったいない。ちなみに、インストの著作権表示を見るかぎりでは、2011年製のキットのようだ。
手摺エッチングは、web上の制作写真等を適当に参考にしつつ、フリーハンドで適当に取り付けた。梯子類はIJN用のエッチングを流用しているので、厳密に言えば形状が違っている可能性がある。梯子PEは計16個使用した。
艦橋を後ろ側から。梯子類は、キットにもプラパーツで用意されているが、せっかくなのでエッチングに置き換えた。梯子や手摺を表現すると、「こんな経路で、こんなサイズ感の人々(乗員たち)が動き回っていたんだなあ」というのが、模型上で見て取れるようになるのが楽しい。
格納庫周辺。8連装ポンポン砲も見栄えがするし、クレーンもエッチングパーツが同梱されている(が、ちょっと作りにくいしディテールがよく分からない)。それにしても、こんなところに単装機銃を並べて大丈夫なのか……。
格納庫のシャッターは別パーツで、開/閉選択できる。格納庫の内側も多少造形されているので、せっかくだからと片方を開いた状態にしてみた。キット同梱の艦載機はスーパーマリン ウォーラス。2機作れるが、デカールは1機分のみ。
艦尾、先端部のスターンウォーク。手摺もプラパーツで造形されているが、ここはエッチングに置き換えてもよかったかも。艦尾の錨は撤去されているのか?
後部を別の角度から。ここも手摺エッチングを適当に取り付けた。甲板面に不可解なピン穴が残ったので(何だろう?)、穴の上に余剰の艦載艇等を設置して隠しておいた。
側面に「WARSPITE」のプレートがある筈だが、残念ながらキットでは再現されていない。主砲側面の梯子は、モールドで浅く表現されているだけなので、ディテールアップしても良かったかも。
左舷からのバックショット。ちなみに、迷彩は両舷同じ(左右対称)。各部がコンパクトにまとまっており、それでいて空疎さも感じない。眺めていて楽しい艦だと思う。
段積みの艦橋にいくつもの梯子類が設けられているのが、立体的な構造が際立つし、多数の乗員が移動(活動)している場所なのだということも意識させてくれる。模型の醍醐味。写真では真っ黒のように見えるが、TAMIYA「NATOブラック」は緑がかった濃いグレーで、なんとなく上品さがあって良い感じ。リタッチにはファレホ(水性アクリル)「ブラックグレー」が、ほぼ同色として扱えた。上面の青っぽいところはファレホ「ロンドングレー」を筆塗り。
艦橋を前方から。窓枠をエッチングに置き換えると、内部が再現されていないので差し障りが生じる。黒ベタで窓を塗ってしまうのが無難かと思う。ちなみに、同じAcedemy社のキットでも、「ダンケルク」は窓枠もきれいに抜けていたが、そのときは透明板を貼って誤魔化した。
左舷中央部あたり。迷彩の模様としてはかなりシンプルだが、直線と曲線が適度に混在しているので、見飽きない面白味がある。外周の手摺を付けるのは、長くて大変だし、破損リスクが高いため、基本的に避けている。格納庫周辺にのみ手摺を付けて、記号的に手摺の存在を示唆したつもり。
中央部分を俯瞰で撮影。探照灯の銀色「チェーンメイルシルバー」)、機銃等の銃身(Creos「黒鉄色」)、防水布(ファレホ「ストーンウォールグレー」)、艦載艇や艦載機の塗り分けは、水性アクリルを多用した。シルバーやホワイトは発色が難しいので、その都度の判断でラッカー吹き付けに頼ってもよいかと思う。
恒例の1/350 & 1/700の同一艦ツーショット。Academy社の1/350「ウォースパイト」は年次不明(1942-1943頃か?)。Pit-roadの1/700キットは1942年の設定で、迷彩の柄は大きく異なる。小ぶりで緻密感のある1/700キットと、悠然とした迫力のある1/350キット、どちらも見応えがある。
これまで制作した1/350英国戦艦模型。上(奥)からTamiya「プリンス・オブ・ウェールズ」、Trumpeter「ドレッドノート(1907年)」、Acedemy「ウォースパイト」。並べてみると、それぞれに時代的-技術的な特徴と、模型的な個性が見て取れて、たいへん刺激的。