2023/04/04

TAMIYA「プリンス・オブ・ウェールズ」(1/350、1/700)について

  TAMIYA「プリンス・オブ・ウェールズ」、1/350と1/700の双方の制作記事。

こんな感じに、1/350キットと1/700キットの感想を簡単に書き留めておく。


 【 1/350キット 】

Tamiya「プリンス・オブ・ウェールズ」(1/350)。2023年3月上旬制作。古めのキットだが、比較的安価に購入できて、パーツ構成もきれいだし、完成時のシルエットも迫力があるので、1/350入門に好適かも。
 
 半年ぶりの大スケール艦船模型制作なので、腕慣らしとして軽めに制作した。TAMIYAキットはパーツ構成がきれいだし、しかも海外艦は艦橋構造がシンプル(※日本戦艦のような多段積みやマスト通しが無い)。なので、大物を快適に制作したい場合や、大型キットに初めて挑戦するという場合は、海外艦は取り組みやすい素材だろう。今回も、一切迷うことなくストレートに制作できた。船底パーツの刻印には1985年とあり、かなり古いキットのようだが、バリも無いしエッジもきれいで、各部のディテールも整っている。
 1/350 POWは実売6000円程度で買えて、ほんの数日でも完成させることができ、それでいて60cm級のビッグサイズと十分なディテールを味わえて、非常にリーズナブル。もちろん、じっくり手を掛けて制作することも出来るが。TAMIYAの1/350キットは筑摩や最上も作ったが、どれも気持ち良いキットだった。
 
 今回のコンセプト(実験)は4つ。
 1) 1/350での省力制作(※手抜きできる余地の確認)、
 2) 1/350での高速制作(※作業速度を上げる実験)、
 3) 水性筆塗りを艦船模型に本格導入、
 4) 久しぶりの英国艦制作(というか、ほぼ初めて)。
それぞれに手応えがあった。
 
 1) 制作は、ほぼキットのまま。船体と木甲板はエアブラシでざっくり塗装し、一部の甲板上面や艦載艇などを水性アクリル塗料で筆塗りした。このくらいの簡素な作り込みで、1/350キットがどのくらいの見栄えになるかを確かめるのが目的。下記写真のとおり、これはこれできれいな出来だし、1/350キットならではの迫力も十分に楽しめる。こういうアプローチもありかと思える。
 2) 制作時間は、20時間くらい。おおまかな組み立てに6時間、マスキング+塗装で6時間、最終組み立てが8時間。高速制作でも、最低限の色再現をキープしようとするとこのくらいは掛かった。1/700キットだと、全塗装+エッチングでも20時間で作れるので、やはり1/350キットは作業量が多めになることが分かる。
 3) 塗装について。ここ数年はいろいろなジャンルで水性塗料(+筆塗り)の導入を進めてきた。今回は大型艦船キットの塗り分けに本格導入してみた。甲板上の小物の塗り分け、迷彩表現、艦載艇など。筆塗りを使える箇所の判断と、筆塗りの技術そのもの、どちらもようやく実用レベルになってきた。まだまだ下手だけど。ちなみに、船体はCreos #334「バーリーグレー」で塗装した。
 4) 英国艦は、やや小さめなドレッドノート(Trumpeter、1/350)も手掛けたことがあるが、今回は大きめのPOW。色彩感も構造も気に入ったので、その後1/700で何隻か制作し、結局この3月は英国戦艦祭になった。

中央部。ブロック形の艦橋は適度にパーツ整理されていて、非常に組みやすい。Tamiyaらしく全体のディテールはあっさりしているが、浮輪の造形がなかなか細やかで、精密感を高めている。
艦橋周囲を拡大。上面の濃いグレーは、水性ファレホ「ロンドングレー」を筆塗りした。このくらいの面積を、発色の良い濃色で塗るのであれば、筆塗りも十分効率的。吹き付け塗装よりも小回りが利くので、艦載艇などの塗り分けはとても便利(※ラッカーだとすぐに乾燥してガサガサになってしまうが、アクリル塗料だとゆっくり塗れるし、上からのリタッチも出来る)。
水平からの撮影。端正にまとまった箱状の艦橋が、やや仰々しく見えるレーダー塔を背負っているのがちょっと面白い。簡易制作とはいえ、窓の内部はブラックで塗っておいた方が良かったかも。8連装ポンポン砲も、きちんと塗り分ければ良いアイキャッチになりそう。
後部。きれいな直線と優美な曲線の幾何学的な取り合わせが楽しい。木甲板上の小物は筆塗り。このくらいの数であれば、マスキングするよりも筆塗りの方が効率的だし、塗り分けもきれいに出来る(※マスキングも、しばしば吹きこぼれが生じて、結局は筆でのリタッチが必要になるので)。
俯瞰で撮影。煙突2本の間を割って艦載機が置かれているのも、なかなか個性的(このレイアウトを採用しているのは、このKGⅤ級だけ?)。上面を塗り分けておくと、立体感が視覚的に強調されて面白味が増す。
バックショット。梯子類もプラパーツで表現されている(※キットにはエッチングパーツは皆無)。ディテールアップについては、脇の連装両用砲の周囲を手摺で囲む際に、縁の複雑な凹凸に合わせて折り曲げるのが大変そう。

背面をクローズアップで。清潔感のあるライトグレーの平面構成に基づきながら、複雑で密度感のある艦橋構成になっている。

Trumpeterの「1/350 ドレッドノート (1907年)」と、Tamiya「プリンス・オブ・ウェールズ」を並べて。戦艦同士とはいえ、約46cmと65cmで彼我のサイズは大きく異なる。全体構造も各部のデザインも、時代的-技術的懸隔を窺わせる。このように艦ごとの特質を見比べられるのも、模型の醍醐味だろう。



 【 1/700キット 】

Tamiya「プリンス・オブ・ウェールズ」(1/700)。2023年3月下旬制作。舷側の不規則な迷彩模様がたいへん物珍しく、完成後も手に取って矯めつ眇めつ、じっくり眺めて楽しめる。

 1/350キットが楽しかったので、勢いづいていろいろ英国艦を作り、総仕上げとして1/700 POWに戻ってきた。船底パーツの刻印には1975年とあり、かなりのオールドキットだが、Tamiyaキットらしく上品にまとまった造形で、バリなどの緩みも見られず、非常に美しいキットだと感じた。ただし、Tamiyaでも全てが素晴らしいというわけではなく、例えば「ネルソン」などはかなりダルだったが(パーツ構成も中途半端で、モールドも甘め、さらに金型も緩み気味だった)。

Tamiya「1/700 プリンス・オブ・ウェールズ」。制作コンセプトは、「1/700キットでの、多色+曲線的な迷彩塗装の実験」。Tamiyaネルソン(無塗装スピードラン)→Tamiyaフッド+E型駆逐艦(単色塗り分け)→Tamiyaレパルス(単色の大掛かりな塗り分け)→Pit-roadウォースパイト(多色の直線的な迷彩の練習)と来て、最後にPOWで本格的な迷彩塗装に着手した。
ベース塗装(Creosダークシーグレー)と木甲板はエアブラシ、それ以外は水性塗料の筆塗り。曲線迷彩の模様は、模型誌等(esp. 『艦船模型スペシャル』80号)を適当に参照した。パーツ切り出し1時間、ベース塗装1時間、塗り分け&組み立てに12時間。今月7隻目ということもあり、わりとスムーズに制作できた。
入り組んだ造形の艦船に迷彩塗装を施すのは、複雑な立体塗り絵パズルのようなものだが、水性塗料は上塗りの修正が利くし、作業工程をあらかじめ整理して臨んだこともあって、あまりもたつかず、快適に制作できたと思う。
格納庫のシャッターは別パーツ化されている。格納庫の内部も多少はモールドされているので、せっかくだからと片側を開いた状態で組んでみた。
Pit-road「ウォースパイト(1942年)」と並べて。色調については、グリーン寄りでふんわりシックなPOWと、ブルー寄りできびきびクールなWSという感じで調整した(※色選択は、厳密な考証に基づいているわけではない)。
恒例の1/350 & 1/700並列写真。造形面での違いは比較的少ないが、ディテールと大迫力の1/350に対して、カラフルで愛嬌のある1/700と、面白い対比になった。しかし、1/350サイズで迷彩塗装をするのは相当な荒行だな……。