TAMIYA「プリンス・オブ・ウェールズ」、1/350と1/700の双方の制作記事。
【 1/350キット 】
Tamiya「プリンス・オブ・ウェールズ」(1/350)。2023年3月上旬制作。古めのキットだが、比較的安価に購入できて、パーツ構成もきれいだし、完成時のシルエットも迫力があるので、1/350入門に好適かも。
半年ぶりの大スケール艦船模型制作なので、腕慣らしとして軽めに制作した。TAMIYAキットはパーツ構成がきれいだし、しかも海外艦は艦橋構造がシンプル(※日本戦艦のような多段積みやマスト通しが無い)。なので、大物を快適に制作したい場合や、大型キットに初めて挑戦するという場合は、海外艦は取り組みやすい素材だろう。今回も、一切迷うことなくストレートに制作できた。船底パーツの刻印には1985年とあり、かなり古いキットのようだが、バリも無いしエッジもきれいで、各部のディテールも整っている。
1/350
POWは実売6000円程度で買えて、ほんの数日でも完成させることができ、それでいて60cm級のビッグサイズと十分なディテールを味わえて、非常にリーズナブル。もちろん、じっくり手を掛けて制作することも出来るが。TAMIYAの1/350キットは筑摩や最上も作ったが、どれも気持ち良いキットだった。
今回のコンセプト(実験)は4つ。
1) 1/350での省力制作(※手抜きできる余地の確認)、
2) 1/350での高速制作(※作業速度を上げる実験)、
3) 水性筆塗りを艦船模型に本格導入、
4) 久しぶりの英国艦制作(というか、ほぼ初めて)。
それぞれに手応えがあった。
1) 制作は、ほぼキットのまま。船体と木甲板はエアブラシでざっくり塗装し、一部の甲板上面や艦載艇などを水性アクリル塗料で筆塗りした。このくらいの簡素な作り込みで、1/350キットがどのくらいの見栄えになるかを確かめるのが目的。下記写真のとおり、これはこれできれいな出来だし、1/350キットならではの迫力も十分に楽しめる。こういうアプローチもありかと思える。
2) 制作時間は、20時間くらい。おおまかな組み立てに6時間、マスキング+塗装で6時間、最終組み立てが8時間。高速制作でも、最低限の色再現をキープしようとするとこのくらいは掛かった。1/700キットだと、全塗装+エッチングでも20時間で作れるので、やはり1/350キットは作業量が多めになることが分かる。
3) 塗装について。ここ数年はいろいろなジャンルで水性塗料(+筆塗り)の導入を進めてきた。今回は大型艦船キットの塗り分けに本格導入してみた。甲板上の小物の塗り分け、迷彩表現、艦載艇など。筆塗りを使える箇所の判断と、筆塗りの技術そのもの、どちらもようやく実用レベルになってきた。まだまだ下手だけど。ちなみに、船体はCreos #334「バーリーグレー」で塗装した。
4) 英国艦は、やや小さめなドレッドノート(Trumpeter、1/350)も手掛けたことがあるが、今回は大きめのPOW。色彩感も構造も気に入ったので、その後1/700で何隻か制作し、結局この3月は英国戦艦祭になった。
バックショット。梯子類もプラパーツで表現されている(※キットにはエッチングパーツは皆無)。ディテールアップについては、脇の連装両用砲の周囲を手摺で囲む際に、縁の複雑な凹凸に合わせて折り曲げるのが大変そう。
背面をクローズアップで。清潔感のあるライトグレーの平面構成に基づきながら、複雑で密度感のある艦橋構成になっている。
Trumpeterの「1/350 ドレッドノート (1907年)」と、Tamiya「プリンス・オブ・ウェールズ」を並べて。戦艦同士とはいえ、約46cmと65cmで彼我のサイズは大きく異なる。全体構造も各部のデザインも、時代的-技術的懸隔を窺わせる。このように艦ごとの特質を見比べられるのも、模型の醍醐味だろう。 【 1/700キット 】
1/350キットが楽しかったので、勢いづいていろいろ英国艦を作り、総仕上げとして1/700 POWに戻ってきた。船底パーツの刻印には1975年とあり、かなりのオールドキットだが、Tamiyaキットらしく上品にまとまった造形で、バリなどの緩みも見られず、非常に美しいキットだと感じた。ただし、Tamiyaでも全てが素晴らしいというわけではなく、例えば「ネルソン」などはかなりダルだったが(パーツ構成も中途半端で、モールドも甘め、さらに金型も緩み気味だった)。